30 / 37
もうひとつのワンルーム
30. 仁と敦司
しおりを挟む
12月25日。
日本では無宗教が多いため、クリスマスという日は誰かの誕生日を祝うよりも、恋人や家族とパーティをする者だという認識が強い。
それはもちろん、美月も例外ではなくアサギにクリスマスのことをそんな風に教えると、アサギは目を輝かせてパーティに向けて準備を始めたのである。
アサギには別の目的もあったのだが、それは当日のお楽しみと、特に仁には教えなかった。そんな中、アサギは美月と一緒にデパートの『アルト』へ来ていた。
「ふんふふんー♪ 小さいけどツリーに、おーなめんとは買ったし、後は食材ね!」
「あ、プレゼントも必要ですよ? 仁さんに贈るんですよね」
「そうよ! 何か魔王である私に思うところがあるみたいだから、こっちに敵意はないことを伝えないとね!」
そんな決意を鼻息荒く言う。美月はそんなアサギを見てニコニコしていた。だが、アサギはそれはそれとして別の警戒を強めていた。
「……とりあえず昨日の変質者は居ないみたいね……」
「あ、そうですね……」
少し表情を曇らせて俯く美月。流石にデパートの中では襲っては来ないだろうとは思うが、用心に越したことはない。
「ま、さっさと用事を済ませて帰るのが吉ね! 今日はみんな休みだし、楽しみね」
「居酒屋は古谷さんと赤嶺さんが『どーせひとり者だよ!』って言いながら変わってくれたのが良かったです」
「あと、月菜ちゃんもね! 今度お礼しようっと♪」
「夕方には仕込みたいので、手早く行きましょう!」
「そうね! あっちゃんは上手く仁を連れだしてくれたかなあ」
「先輩は大丈夫ですよ? さ、行きましょう♪」
◆ ◇ ◆
「……で? どこへ行くんだ?」
「……さあ?」
敦司は仁を連れて公園のブランコに座っていた。とりあえず美月に頼まれたもののこうしてふたりで出かけることは無かった上、友達と遊びに行くという知識が欠落している敦司は公園以外の選択肢が無かったのだ。
「よくわからんが、久々の休みなんだ。帰って寝ていいか?」
スッとブランコを立ち上がる仁を見て慌てて引き留める敦司。
「ま、待ってくれ、その……(ここで家に仁さんがいたら三叉路に何を言われるかわからねぇ。ど、どうする俺……!)」
「? 用があるなら早くしてくれないか?」
「あ、えーと……そうだ! 仁さん、今日はクリスマスって言うんだけどな――」
苦し紛れに敦司は今日がクリスマスであることを話しだす。最初は興味が無さげな仁だったが、プレゼントをするという部分で耳を傾ける気になった。
「なるほど、飲めや歌えの後にプレゼントか。ミツキには世話になっているし、ここはひとつ奮発するか」
「そう来なくっちゃな! それじゃ、行こうぜ」
確かふたりはアルトデパートへ行くと言っていたことを思い出し、そことは真逆にある商店街へと仁を連れて行く。
「女性にプレゼントなどしたことないが……何を贈ればいいんだ……?」
「あー……そこは俺もわからねぇや。大学で喋っている女は指輪やら、ネックレスみたいなアクセサリーを好んでるみてぇだがよ」
「ふむ……」
アクセサリーなら、元の世界で国の南に居を構えている職人がいいものを作るのだと思いつつ、無いものねだりはできないと商店街を散策し、靴やアクセサリーにバッグといった商品を物色し、仁は美月に似合いそうなイヤリングを購入した。
「お、いいじゃん仁さん意外とセンスあるな。なら俺は同じブランドのネックレスにしようかな。アサギさんはいつも手ぶらだしカバンだな。後はTシャツにしとくか」
『歓迎』と書かれたTシャツをどこからか持ってきて会計を済ませる。
「(どこにでもあるなあのTシャツ……)」
そう胸中で呟きながら、アサギの分も買わないとうるさいだろうなと考える。しかしアクセサリーが必要だろうか? 贅沢はできないからぬいぐるみとTシャツでいいだろう、他の店にするかと移動しようとしたところでふとアクセサリーが目に止まる。
「(指輪か……。そういえば子供のころ、迷子を助けた時に結婚しろとうるさいやつがいたな。すぐ父親に連れられてどこかへ行ってしまったが)」
(わたしとけっこんしてねー!! するのー!!)
ザザ……とその時のことが脳裏によぎる。
「(そういえば……あいつに似ていた、ような……)」
「なあ、仁さんどうだ? アサギさんのプレゼント、いいのあったか?」
「!?」
不意に敦司に話しかけられ、どきりとして飛び上がる仁は慌てて振り返って口を開く。
スッ
「あ、ああ! あいつにはこんな高いものは必要ない。適当なぬいぐるみにでもする」
「そうかぁ? まあ金を出すのは仁さんだし、いいけどよ。あの狼のぬいぐるみ気にいってたみたいだし、アリかもしれねぇなあ」
へへ、と美月とアサギが喜ぶであろうことを想像し笑みを見せる敦司をよそに、仁はすぐにレジへと向かう。
「お会計、一万二千円になります! プレゼント用の袋おわけ――」
「あー! 頼む! ほら、丁度だ!」
「?」
敦司が変な汗をかく仁を訝しむが、紙袋を手にした仁が戻ってきたので店を後にする。
「じゃ、次はぬいぐるみか?」
「ああ。またゲームセンターとやらにいかないとな……」
一体いくらかかるのか……そう思い憂鬱になる仁に、敦司はあっけらかんとした調子で答える。
「ぬいぐるみやに行けばいいのがあるだろうぜ。ちっと男だけで入るのは厳しいけど、ま、今日くらいはプレゼント探してますって雰囲気出せばいけるか」
「そうなのか」
ファンシーなお店に入った武骨なふたりは、中に居た女子高生や大学生たちに好奇の目にさらされることになるのだが、それはまた別のお話。その中から大きな熊のぬいぐるみを購入し、げっそりとしたふたりが店から出てくる。
「く、くそ……ひそひそされていたじゃないか……!」
「し、しかたねぇだろ!? 逆にクリスマスだから人があんなに多いとは思わなかったんだよ! ……ま、いいのがあって良かったじゃねぇか」
「しかし、八千円……アクセサリーより高いとは……」
「その熊、人気だからなぁ。ラスト一個だったし、アサギさんなら喜ぶだろうぜ!」
「ふう……」
二カっと笑う敦司に、仁は嘆息しながら上半身ほどのぬいぐるみを見て歩くのだった。
――そして夕方。
敦司はオペレーション通りに仁を夕方まで外へ連れ出すことに成功し、安堵しながらワンルームへと戻って行く。
「いやあ、仁さんゲーム下手だよなぁ! 俺よりも下手なやつぁ久しぶりだぜ!」
「車など乗ったことがないから仕方がないだろう」
「いや、俺も乗ったことねぇんだけど……」
「ふん……」
妙な対抗意識を燃やされ呆れる敦司が、ふと、周囲が騒がしいことに気付く。
「なんだ……? こいつらどこに向かってんだ?」
直後、
ウー! ウー! カンカンカン!
と、消防車が数台目の前を過ぎ去っていった。
「火事か……? 冬場は乾燥するから多いって聞くけど、何もクリスマスになることあぁねえよな……」
「そうだな……」
ふたりが消防車の向かった方を見ると、じわじわと黒煙が立ち上ってきた。それを見て仁が目を大きく見開いて駆け出した。
「あ! どうしたんだよ仁さん!」
「……嫌な予感がする……!」
すぐに現場に到着すると、野次馬を押しのけて仁と敦司は前にでる。そこで見えた光景は――
「マジか!? あれって!」
「ミツキの部屋だ……! くそ、アサギとミツキは大丈夫だろうな!」
部屋へ行こうとした仁を、敦司は慌てて肩を押さえ引き留めてから口を開く。
「ふたりは大丈夫だ! 今日は買い物に出ているはず! ……ん? ならなんで火が出ているんだ……?」
「どちらにせよ荷物もある、俺は行くぞ。最悪魔法で火を消せばいい」
「待てって!」
するとそこで聞きなれた声が耳に入り、そちらへ目を向ける。
「ダメですよアサギさん!」」
「いや! 離して美月ちゃん!」
「もうあれだけ火が回っていたらダメです!」
「だってあそこには仁からもらったぬいぐるみが! それに、私達が暮らしてきた思い出の場所よ!」
「行かせませんから……!」
近くでアサギと美月が言い争っているところに出くわした。無事だったか、という安堵が先にきた後、話を聞くため駆け寄る。
「ミツキ!」
「あ! 仁さん! ウチの部屋から火が出たって大家さんから連絡があって慌てて帰ってきたんです!」
「火の元は?」
「大丈夫……だったと思いますけど、朝ご飯の時になにかミスしたのかも……」
「くそ……!」
仁が部屋を見ながら毒づいたその時、美月の手を振り切ってアサギが飛び出した!
「あ! アサギさん待って!」
「俺が行く! 敦司、ミツキを頼む!」
『君! 待ちなさい!』という消防団員の怒号が聞こえる中、敦司に荷物を託して仁もアサギの後を追った――
日本では無宗教が多いため、クリスマスという日は誰かの誕生日を祝うよりも、恋人や家族とパーティをする者だという認識が強い。
それはもちろん、美月も例外ではなくアサギにクリスマスのことをそんな風に教えると、アサギは目を輝かせてパーティに向けて準備を始めたのである。
アサギには別の目的もあったのだが、それは当日のお楽しみと、特に仁には教えなかった。そんな中、アサギは美月と一緒にデパートの『アルト』へ来ていた。
「ふんふふんー♪ 小さいけどツリーに、おーなめんとは買ったし、後は食材ね!」
「あ、プレゼントも必要ですよ? 仁さんに贈るんですよね」
「そうよ! 何か魔王である私に思うところがあるみたいだから、こっちに敵意はないことを伝えないとね!」
そんな決意を鼻息荒く言う。美月はそんなアサギを見てニコニコしていた。だが、アサギはそれはそれとして別の警戒を強めていた。
「……とりあえず昨日の変質者は居ないみたいね……」
「あ、そうですね……」
少し表情を曇らせて俯く美月。流石にデパートの中では襲っては来ないだろうとは思うが、用心に越したことはない。
「ま、さっさと用事を済ませて帰るのが吉ね! 今日はみんな休みだし、楽しみね」
「居酒屋は古谷さんと赤嶺さんが『どーせひとり者だよ!』って言いながら変わってくれたのが良かったです」
「あと、月菜ちゃんもね! 今度お礼しようっと♪」
「夕方には仕込みたいので、手早く行きましょう!」
「そうね! あっちゃんは上手く仁を連れだしてくれたかなあ」
「先輩は大丈夫ですよ? さ、行きましょう♪」
◆ ◇ ◆
「……で? どこへ行くんだ?」
「……さあ?」
敦司は仁を連れて公園のブランコに座っていた。とりあえず美月に頼まれたもののこうしてふたりで出かけることは無かった上、友達と遊びに行くという知識が欠落している敦司は公園以外の選択肢が無かったのだ。
「よくわからんが、久々の休みなんだ。帰って寝ていいか?」
スッとブランコを立ち上がる仁を見て慌てて引き留める敦司。
「ま、待ってくれ、その……(ここで家に仁さんがいたら三叉路に何を言われるかわからねぇ。ど、どうする俺……!)」
「? 用があるなら早くしてくれないか?」
「あ、えーと……そうだ! 仁さん、今日はクリスマスって言うんだけどな――」
苦し紛れに敦司は今日がクリスマスであることを話しだす。最初は興味が無さげな仁だったが、プレゼントをするという部分で耳を傾ける気になった。
「なるほど、飲めや歌えの後にプレゼントか。ミツキには世話になっているし、ここはひとつ奮発するか」
「そう来なくっちゃな! それじゃ、行こうぜ」
確かふたりはアルトデパートへ行くと言っていたことを思い出し、そことは真逆にある商店街へと仁を連れて行く。
「女性にプレゼントなどしたことないが……何を贈ればいいんだ……?」
「あー……そこは俺もわからねぇや。大学で喋っている女は指輪やら、ネックレスみたいなアクセサリーを好んでるみてぇだがよ」
「ふむ……」
アクセサリーなら、元の世界で国の南に居を構えている職人がいいものを作るのだと思いつつ、無いものねだりはできないと商店街を散策し、靴やアクセサリーにバッグといった商品を物色し、仁は美月に似合いそうなイヤリングを購入した。
「お、いいじゃん仁さん意外とセンスあるな。なら俺は同じブランドのネックレスにしようかな。アサギさんはいつも手ぶらだしカバンだな。後はTシャツにしとくか」
『歓迎』と書かれたTシャツをどこからか持ってきて会計を済ませる。
「(どこにでもあるなあのTシャツ……)」
そう胸中で呟きながら、アサギの分も買わないとうるさいだろうなと考える。しかしアクセサリーが必要だろうか? 贅沢はできないからぬいぐるみとTシャツでいいだろう、他の店にするかと移動しようとしたところでふとアクセサリーが目に止まる。
「(指輪か……。そういえば子供のころ、迷子を助けた時に結婚しろとうるさいやつがいたな。すぐ父親に連れられてどこかへ行ってしまったが)」
(わたしとけっこんしてねー!! するのー!!)
ザザ……とその時のことが脳裏によぎる。
「(そういえば……あいつに似ていた、ような……)」
「なあ、仁さんどうだ? アサギさんのプレゼント、いいのあったか?」
「!?」
不意に敦司に話しかけられ、どきりとして飛び上がる仁は慌てて振り返って口を開く。
スッ
「あ、ああ! あいつにはこんな高いものは必要ない。適当なぬいぐるみにでもする」
「そうかぁ? まあ金を出すのは仁さんだし、いいけどよ。あの狼のぬいぐるみ気にいってたみたいだし、アリかもしれねぇなあ」
へへ、と美月とアサギが喜ぶであろうことを想像し笑みを見せる敦司をよそに、仁はすぐにレジへと向かう。
「お会計、一万二千円になります! プレゼント用の袋おわけ――」
「あー! 頼む! ほら、丁度だ!」
「?」
敦司が変な汗をかく仁を訝しむが、紙袋を手にした仁が戻ってきたので店を後にする。
「じゃ、次はぬいぐるみか?」
「ああ。またゲームセンターとやらにいかないとな……」
一体いくらかかるのか……そう思い憂鬱になる仁に、敦司はあっけらかんとした調子で答える。
「ぬいぐるみやに行けばいいのがあるだろうぜ。ちっと男だけで入るのは厳しいけど、ま、今日くらいはプレゼント探してますって雰囲気出せばいけるか」
「そうなのか」
ファンシーなお店に入った武骨なふたりは、中に居た女子高生や大学生たちに好奇の目にさらされることになるのだが、それはまた別のお話。その中から大きな熊のぬいぐるみを購入し、げっそりとしたふたりが店から出てくる。
「く、くそ……ひそひそされていたじゃないか……!」
「し、しかたねぇだろ!? 逆にクリスマスだから人があんなに多いとは思わなかったんだよ! ……ま、いいのがあって良かったじゃねぇか」
「しかし、八千円……アクセサリーより高いとは……」
「その熊、人気だからなぁ。ラスト一個だったし、アサギさんなら喜ぶだろうぜ!」
「ふう……」
二カっと笑う敦司に、仁は嘆息しながら上半身ほどのぬいぐるみを見て歩くのだった。
――そして夕方。
敦司はオペレーション通りに仁を夕方まで外へ連れ出すことに成功し、安堵しながらワンルームへと戻って行く。
「いやあ、仁さんゲーム下手だよなぁ! 俺よりも下手なやつぁ久しぶりだぜ!」
「車など乗ったことがないから仕方がないだろう」
「いや、俺も乗ったことねぇんだけど……」
「ふん……」
妙な対抗意識を燃やされ呆れる敦司が、ふと、周囲が騒がしいことに気付く。
「なんだ……? こいつらどこに向かってんだ?」
直後、
ウー! ウー! カンカンカン!
と、消防車が数台目の前を過ぎ去っていった。
「火事か……? 冬場は乾燥するから多いって聞くけど、何もクリスマスになることあぁねえよな……」
「そうだな……」
ふたりが消防車の向かった方を見ると、じわじわと黒煙が立ち上ってきた。それを見て仁が目を大きく見開いて駆け出した。
「あ! どうしたんだよ仁さん!」
「……嫌な予感がする……!」
すぐに現場に到着すると、野次馬を押しのけて仁と敦司は前にでる。そこで見えた光景は――
「マジか!? あれって!」
「ミツキの部屋だ……! くそ、アサギとミツキは大丈夫だろうな!」
部屋へ行こうとした仁を、敦司は慌てて肩を押さえ引き留めてから口を開く。
「ふたりは大丈夫だ! 今日は買い物に出ているはず! ……ん? ならなんで火が出ているんだ……?」
「どちらにせよ荷物もある、俺は行くぞ。最悪魔法で火を消せばいい」
「待てって!」
するとそこで聞きなれた声が耳に入り、そちらへ目を向ける。
「ダメですよアサギさん!」」
「いや! 離して美月ちゃん!」
「もうあれだけ火が回っていたらダメです!」
「だってあそこには仁からもらったぬいぐるみが! それに、私達が暮らしてきた思い出の場所よ!」
「行かせませんから……!」
近くでアサギと美月が言い争っているところに出くわした。無事だったか、という安堵が先にきた後、話を聞くため駆け寄る。
「ミツキ!」
「あ! 仁さん! ウチの部屋から火が出たって大家さんから連絡があって慌てて帰ってきたんです!」
「火の元は?」
「大丈夫……だったと思いますけど、朝ご飯の時になにかミスしたのかも……」
「くそ……!」
仁が部屋を見ながら毒づいたその時、美月の手を振り切ってアサギが飛び出した!
「あ! アサギさん待って!」
「俺が行く! 敦司、ミツキを頼む!」
『君! 待ちなさい!』という消防団員の怒号が聞こえる中、敦司に荷物を託して仁もアサギの後を追った――
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる