雇われ聖女となったシーフ娘はやがて世界を救う?

八神 凪

文字の大きさ
24 / 57

第二十四話

しおりを挟む
「ふっふっふー。なかなかイイものがあったよー」
「良かったですね、シルファー。私も少し糸を補充しました」
「あたしは砥石とコップを買ったよ。よくわからないけど、お土産になりそうな『魔石で風をおこす』道具も」
「おー」

 なんだかんだと物色が楽しくなり、色々と棚を探していると砥石を見つけたので、武具が買えないなら今の装備を修復しておこうと思った。

「お、終了か?」
「うんー。わたしは調理器具! ふるいも買っておいたよー」
「サンキュー。アリアは?」
「あたしはディーネに付き合って編み物と工芸用の道具ね」
「へえ、編み物か。いいんじゃねえ? じゃ、次はどこにする?」

 イフリーが意外という顔をしていた。だけどからかってくることは無かった。フッと笑ってから次の目的地を尋ねてきた。

「あたしが編み物って変とか言いそうだったのに」
「はは、流石に趣味をからかうことはしねえって。まあ、アリアはそういうの全然やらなかったけどな」

 そう言いながら護衛の位置につく。仕事はきっちりするタイプなのは好感がもてる。

「あれ? ノルム爺さんは?」
「あ、出てきたよー」

 そういえば一緒に居なかったなと爺さんを探す。すると雑貨屋から出てきた。手になにやら持っていた。

「おお、すまんすまん。風呂桶を見ておったわい」
「そういや、ぶっ壊れてたっけ。……壊れてましたわね」
「まあ、作ろうと思えばあれくらい余裕ですよ」

 ディーネが風呂桶はそれこそ工芸で作れますとドヤ顔をしていた。自信ある感じで、教えてもらうのが少し楽しみになった。

「ディーネの工芸? ははは、お前が風呂桶を作ったら水が漏れる桶ができるだろ」
「うるさいですよ……!」
「え、もしかして下手なのか?」
「モノによるのう。イフリーが言うほどひどいとは思わんが」

 ノルム爺さんがそういうと、ディーネが頬を膨らませて、ふんと鼻を鳴らしていた。

「そんじゃ次は――」
「これは、これは、聖女様ではありませんか」
「え?」

 イフリーがくっくと笑いながら目的地の確認をしていると誰かに声をかけられた。
 あたしが声の方を向くと、そこに立派な服を着たお爺さんが帽子を上げながらお辞儀をしていた。

「えっと、こんにちは」
「まさかここで会えるとは思いませんでした」
「ギュスター伯爵。お久しぶりですね」

 柔和な笑顔を見せてくるお爺さんに、ディーネがギュスター伯爵だと告げながらあたしを見る。
 なるほど、知っている顔というやつみたいだな。名前と顔を覚えるのは得意なので問題ない。対応は精霊達に任せればいいか。

「町中で会うとは珍しいですねー」
「これはシルファー様、ごきげんよう。家はもう息子が継いでいるので隠居ジジイは散歩くらいしかやることが無いのですよ」
「大旦那様、そんなことはありませんよ」

 もう隠居しているからやることが無いと言うギュスター伯爵に、従者が困った顔で笑う。
 貴族だけど、いい人かもしれないな。

「ここで会ったのもなにかの縁。屋敷でお茶でも如何ですかな?」
「いや、俺達は休暇中で、たまのショッピングをしているんだ。悪いがお誘いは受けられねえな」
「……ふむ、そうですか。残念ですな。美味しいお茶とケーキがあるのですが……」
「ケーキ! ……ひゃ!?」
「聖女様は毎日忙しいのじゃ。こういう時くらい、そっとしておいてもらいたいわい」
「そ、そうですわね」

 シルファーにお尻を叩かれたあたしはノルム爺さんの言葉に同調する。最近、美味しいものを食べ放題だけどやっぱりケーキと聞くと嬉しくなってしまう。

「では、また謁見をしにいきますので、ごきげんよう」
「ええ、それでは」

 ディーネがお辞儀をし、ギュスター伯爵も帽子を被り直してその場を後にした。

「……」

 去り際に従者がこちらを見る目がちょっと怪しい気がしたけどなんだろうな?

「ふう……知り合いに会うのは勘弁して欲しいね」
「リ……アリアの言う通りだよー。早く買い物をして帰ろうか」
「じゃあ後はお肉とお魚、それとお野菜を買いたいですね」
「あたしはギルドー!」
「「ダメ!」」
「ちぇ。でも手紙は出していいだろ?」
「ギルド経由じゃなければ……いや、でもどこでバレるかわからないからもう少し我慢してもらっていいかなー」

 手紙だけでも親父に出したいけど、シルファーが腕組みをして考えた末に却下された。
 現状、どこでなにがあるか分からないのでその気持ちはわかる。
 なので、内容はきちんと考えてきたんだ。

「内容を見てもいいよ。その上で判断してくれ」
「えー、無理だと思うけど」

 あたしはシルファーに手紙を渡して中身を見るように言う。訝しんだ顔で手紙を広げると、手紙を読み始める。

「どうじゃな?」
「あー、なるほどねー。これならいいかも」
「だろ?」
「ふむ、確かに……ですがこれだとギルドには行ったほうがいいかもしれませんね」

 そこでディーネがギルド行きを提案してくれた。
 内容は単純で、あたしは『リア』としてシーフクランに現状を伝えるという形なのだ。
 聖女の件は伏せておき、元気でやっていることギルドの状況を、だ。
 ただ、ギルドの状況は想像でしかないため、適当だ。それでも精霊達から聞いた話を顧みると依頼自体は多いのでは、とも感じていた。

「うーん、行ってみる? 騒ぎになると思うけど」
「俺は行ってもいいぜ。なに、なんかあっても俺達四人に勝てる人間はそう居ないし」
「まあ、周辺の環境がどうなのか見るのもアリ、かあ」
「すぐ帰ればいいでしょう。アリア、それでいいかしら?」
「ああ!」

 ちょっとでも見れればだいたいギルドの様子は分かるもんだ。まだ朝もそれなりに早いから、依頼も残っているはずだ。

「よし行こう、すぐ行こう!」
「ちょ、押さないでよー」

 鼻歌まじりにシルファーの背を押してギルドを目指すことにした。
 気が変わらない内にさっさと移動しないとな。

「どこにあるんだ?」
「言葉」
「っと……どこにあるんですか?」
「こっちだ。俺はたまに来るから場所はよく知っているぜ」

 イフリーが前に立って歩き、ギルドへ向かう。たまに来るのはどうしてだろうな?
 聖殿で聖女を守るだけならギルドは行く必要は無さそうだけど理由があるのかねえ。
 そんなことを考えつつ、この町のギルドに足を踏み入れるのだった。
しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編) 王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編) 平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー
ファンタジー
気がつけば昔読んだ少女マンガの世界だった。マンガの通りなら決して幸せにはなれない。そんなわけにはいかない。自分が幸せになるためにやれることをやっていこう。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

処理中です...