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第二十五話
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「まあまあ大きなギルドだなー。……ですね」
「王都に近いのもあるからな。とりあえず依頼ボードは奥だ、行こうぜ」
「オッケー」
「うう、煙草とお酒くさいよー」
シルファーがあたしの背後に隠れながら顔を顰めていた。酒はシルファーも飲むけど、ギルドは色々な奴が色々な酒を飲むため、臭いがきついのである。
「おー、イフリーさんじゃないか」
「よう、調子はどうだ」
「まあ、ボチボチってところだ。王都のギルドと切磋琢磨しているよ」
受付に行く途中、壁を背にして話しているパーティの一人がイフリーを見つけると手を上げて声をかけてきた。
「王都のギルドと競り合っている……んですか?」
「ん? そちらのお嬢さんは……ま、まさか!?」
「ああ、そうそう。聖女のアリアだ」
「や、やっぱりか!?」
「な、なんでこんなところに……」
イフリーがあっさりと正体を暴露し、そこに居た冒険者連中が驚愕していた。あたしは小声でイフリーに言う。
「おい、良かったのか?」
「ん? まあ顔を知っている奴は知っているし構わないだろ」
「マジで? あっちでディーネが超怖い顔しているけど大丈夫か?」
「……ま、まあ、大丈夫だろ」
多分、帰ったら文句を言われるだろうなあ……まあ、イフリーの責任だから放っておこう。
「それで王都のギルドと競り合っているのはどういう……?」
「ええっと、聖女様はご存知ないでしょうけど、本来ならギルド同士、協力するものなんですよ。だけどあっちの連中は情報を流してこないんだ」
「そうそう。だから依頼自体、この町は少ないんだ。それでも調査して魔物が増えていたら討伐するけどね」
「なるほど」
ただ、王都側も調査をしているため魔物討伐が被ることがあるのだとか。
「どうしてそんなことに?」
「あー……まあ、ギルドマスター同士のな……」
「仲が悪いんだ」
「わ、くだらない理由―……」
チラリと受付を見ながら小声で冒険者が理由を話してくれた。で、あたしもシルファーの意見と同じでくだらないと感じていた。
「じゃあ……じゃない、では王都に依頼が集まっているということですか」
「そうだな。こっちは討伐依頼よりもダンジョンとか採集がメインになってますかね」
「ふうん」
肩を竦めて女性冒険者がため息を吐いた。そこでディーネが口を尖らせて言う。
「……ひとまず受付に行きましょう。それが目的だったはずです」
「お、おお、そうだな。行こう。じゃあな」
「よく分からんがまたな。さて、それじゃ俺達も行くか」
「ありがとうございます」
イフリーが片手を上げると、冒険者も挨拶をして依頼へと向かった。あたしも礼を言ってから受付へと向かう。
「一人で歩いてはいかんぞ」
「あ、そうだった」
急ぐ足を止めてあたしはサッとイフリーの後ろに移動する。そのまま受付へ向かうと、いかつい顔をした……親父に近い人種だなと思える男がこちらに気づく。
「お、イフリー様じゃないか!」
「様はいらないって、エルゴ! というかギルドマスターが受付に立っているとはどういうこった?」
どうやらいかつい男はギルドマスターだったようだ。で、イフリーの言う通りマスター自ら受付をすることは滅多にない。
イフリーの疑問にあたしもそう感じた。するとエルゴと呼ばれた男は腕組みをして息を吐く。
「いやあ、こっちも国から助成金を貰って給料は払っているけど、王都のギルドに鞍替えする奴も多いってこった」
「そういや、人が少ない気がするな。……しますわね」
さっきの冒険者パーティと話していた間も周囲に気を配っていた。その時に冒険者もだけど働いている人間も少ないなと思った。
「ん? お嬢さんは――」
「ああ、俺が護衛を務めている聖女のアリアだ!」
「おー、あの……って、聖女様!? こ、こんなむさくるしいところに何故!?」
「ほーっほっほ! たまには視察をと思いまして。あまり状況は良くないようですけれど」
「アリア、その笑いは無いと思うよー……」
小声でシルファーが『ブレているよ』よとダメ出しをしてきた。間違えたかな? まあ、細かいことはいいとして、あたしは依頼掲示板に目を向けながら話を続ける。
「ギルドは魔物退治や貴重な薬草を採ってくれたりとお仕事に励んでいます。他にどういったお仕事があるのか知りたくてイフリーに頼みました」
「うんうん」
ディーネがドヤ顔で頷いていたけど、ギルドの視察というより、恐らく言葉遣いのことを褒めてくれているに違いない。
「ありがたいことです、聖女様……!」
「さて、どんな依頼が……って、え、マジ!?」
掲示板に目を通すと驚くべき状況であたしは思わず素に戻ってしまった。それも仕方ないことだと思う。
「ゴブリン討伐、オーク討伐……村からビッグタスクの依頼がある……どれも早くて三日前……これは、思ったよりまずいのでは……」
「ま、そうなんだよな」
「面目ない……」
イフリーはこの状況を知っていたようだ。エルゴはため息を吐いて情けないと頭を垂れた。
曰く、金回りの良さそうな依頼は王都に持っていかれて、面倒な依頼だけが残っているという有様とのこと。
「決定権は王都側にあるって感じですかな?」
「依頼を持ってくるのは町の人か王都、ギルド同士の連携で持ちつ持たれつというのが常なのですが、王都側がランクが上だからとロクな依頼を持って来ないのですよ」
「なるほどねえ」
「アリア」
ディーネが言葉遣いを窘めてくるが、今は少しイラっとしているので聞いていない。
人が居なかったら依頼はこなせないから必要ないと撤退する必要がでてくる。
だが、ギルドが無ければ討伐依頼も出せないので、さっき依頼で見た村が救援を出したくても出せなくなる。
国が補助金を出しているのは潰させないためでもあるのだ。
で、王都のギルド連中はそのギリギリのラインで嫌がらせをしているという感じがするね。
「ゴブリンを放置していて大丈夫なのか……なんですか?」
「パーティで動ける冒険者が居ないんですよ。採取などはソロでも行けますけど、目撃情報からするとそれなりに数がいるため迂闊に行ってもらう訳にも」
「ですよね」
「結構、困ってたんだー。だからイフリーはたまにこっちを手伝っていたのー?」
「まあな。魔物が増えたら聖殿付近も危ないだろ? 謁見に来る奴等が危険な目に合うとアリアの評判も落ちるからな」
「確かにのう」
イフリーの説明にノルム爺さんが手をポンと打って納得する。別に悪いことをしているわけではないけどやり方が気に入らない。
「……エルゴ、さん。提案があります」
「え? なんですか聖女様」
イラっとしたあたしはギルマスターへ提案を投げかけた。
「王都に近いのもあるからな。とりあえず依頼ボードは奥だ、行こうぜ」
「オッケー」
「うう、煙草とお酒くさいよー」
シルファーがあたしの背後に隠れながら顔を顰めていた。酒はシルファーも飲むけど、ギルドは色々な奴が色々な酒を飲むため、臭いがきついのである。
「おー、イフリーさんじゃないか」
「よう、調子はどうだ」
「まあ、ボチボチってところだ。王都のギルドと切磋琢磨しているよ」
受付に行く途中、壁を背にして話しているパーティの一人がイフリーを見つけると手を上げて声をかけてきた。
「王都のギルドと競り合っている……んですか?」
「ん? そちらのお嬢さんは……ま、まさか!?」
「ああ、そうそう。聖女のアリアだ」
「や、やっぱりか!?」
「な、なんでこんなところに……」
イフリーがあっさりと正体を暴露し、そこに居た冒険者連中が驚愕していた。あたしは小声でイフリーに言う。
「おい、良かったのか?」
「ん? まあ顔を知っている奴は知っているし構わないだろ」
「マジで? あっちでディーネが超怖い顔しているけど大丈夫か?」
「……ま、まあ、大丈夫だろ」
多分、帰ったら文句を言われるだろうなあ……まあ、イフリーの責任だから放っておこう。
「それで王都のギルドと競り合っているのはどういう……?」
「ええっと、聖女様はご存知ないでしょうけど、本来ならギルド同士、協力するものなんですよ。だけどあっちの連中は情報を流してこないんだ」
「そうそう。だから依頼自体、この町は少ないんだ。それでも調査して魔物が増えていたら討伐するけどね」
「なるほど」
ただ、王都側も調査をしているため魔物討伐が被ることがあるのだとか。
「どうしてそんなことに?」
「あー……まあ、ギルドマスター同士のな……」
「仲が悪いんだ」
「わ、くだらない理由―……」
チラリと受付を見ながら小声で冒険者が理由を話してくれた。で、あたしもシルファーの意見と同じでくだらないと感じていた。
「じゃあ……じゃない、では王都に依頼が集まっているということですか」
「そうだな。こっちは討伐依頼よりもダンジョンとか採集がメインになってますかね」
「ふうん」
肩を竦めて女性冒険者がため息を吐いた。そこでディーネが口を尖らせて言う。
「……ひとまず受付に行きましょう。それが目的だったはずです」
「お、おお、そうだな。行こう。じゃあな」
「よく分からんがまたな。さて、それじゃ俺達も行くか」
「ありがとうございます」
イフリーが片手を上げると、冒険者も挨拶をして依頼へと向かった。あたしも礼を言ってから受付へと向かう。
「一人で歩いてはいかんぞ」
「あ、そうだった」
急ぐ足を止めてあたしはサッとイフリーの後ろに移動する。そのまま受付へ向かうと、いかつい顔をした……親父に近い人種だなと思える男がこちらに気づく。
「お、イフリー様じゃないか!」
「様はいらないって、エルゴ! というかギルドマスターが受付に立っているとはどういうこった?」
どうやらいかつい男はギルドマスターだったようだ。で、イフリーの言う通りマスター自ら受付をすることは滅多にない。
イフリーの疑問にあたしもそう感じた。するとエルゴと呼ばれた男は腕組みをして息を吐く。
「いやあ、こっちも国から助成金を貰って給料は払っているけど、王都のギルドに鞍替えする奴も多いってこった」
「そういや、人が少ない気がするな。……しますわね」
さっきの冒険者パーティと話していた間も周囲に気を配っていた。その時に冒険者もだけど働いている人間も少ないなと思った。
「ん? お嬢さんは――」
「ああ、俺が護衛を務めている聖女のアリアだ!」
「おー、あの……って、聖女様!? こ、こんなむさくるしいところに何故!?」
「ほーっほっほ! たまには視察をと思いまして。あまり状況は良くないようですけれど」
「アリア、その笑いは無いと思うよー……」
小声でシルファーが『ブレているよ』よとダメ出しをしてきた。間違えたかな? まあ、細かいことはいいとして、あたしは依頼掲示板に目を向けながら話を続ける。
「ギルドは魔物退治や貴重な薬草を採ってくれたりとお仕事に励んでいます。他にどういったお仕事があるのか知りたくてイフリーに頼みました」
「うんうん」
ディーネがドヤ顔で頷いていたけど、ギルドの視察というより、恐らく言葉遣いのことを褒めてくれているに違いない。
「ありがたいことです、聖女様……!」
「さて、どんな依頼が……って、え、マジ!?」
掲示板に目を通すと驚くべき状況であたしは思わず素に戻ってしまった。それも仕方ないことだと思う。
「ゴブリン討伐、オーク討伐……村からビッグタスクの依頼がある……どれも早くて三日前……これは、思ったよりまずいのでは……」
「ま、そうなんだよな」
「面目ない……」
イフリーはこの状況を知っていたようだ。エルゴはため息を吐いて情けないと頭を垂れた。
曰く、金回りの良さそうな依頼は王都に持っていかれて、面倒な依頼だけが残っているという有様とのこと。
「決定権は王都側にあるって感じですかな?」
「依頼を持ってくるのは町の人か王都、ギルド同士の連携で持ちつ持たれつというのが常なのですが、王都側がランクが上だからとロクな依頼を持って来ないのですよ」
「なるほどねえ」
「アリア」
ディーネが言葉遣いを窘めてくるが、今は少しイラっとしているので聞いていない。
人が居なかったら依頼はこなせないから必要ないと撤退する必要がでてくる。
だが、ギルドが無ければ討伐依頼も出せないので、さっき依頼で見た村が救援を出したくても出せなくなる。
国が補助金を出しているのは潰させないためでもあるのだ。
で、王都のギルド連中はそのギリギリのラインで嫌がらせをしているという感じがするね。
「ゴブリンを放置していて大丈夫なのか……なんですか?」
「パーティで動ける冒険者が居ないんですよ。採取などはソロでも行けますけど、目撃情報からするとそれなりに数がいるため迂闊に行ってもらう訳にも」
「ですよね」
「結構、困ってたんだー。だからイフリーはたまにこっちを手伝っていたのー?」
「まあな。魔物が増えたら聖殿付近も危ないだろ? 謁見に来る奴等が危険な目に合うとアリアの評判も落ちるからな」
「確かにのう」
イフリーの説明にノルム爺さんが手をポンと打って納得する。別に悪いことをしているわけではないけどやり方が気に入らない。
「……エルゴ、さん。提案があります」
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