雇われ聖女となったシーフ娘はやがて世界を救う?

八神 凪

文字の大きさ
25 / 57

第二十五話 

しおりを挟む
「まあまあ大きなギルドだなー。……ですね」
「王都に近いのもあるからな。とりあえず依頼ボードは奥だ、行こうぜ」
「オッケー」
「うう、煙草とお酒くさいよー」

 シルファーがあたしの背後に隠れながら顔を顰めていた。酒はシルファーも飲むけど、ギルドは色々な奴が色々な酒を飲むため、臭いがきついのである。

「おー、イフリーさんじゃないか」
「よう、調子はどうだ」
「まあ、ボチボチってところだ。王都のギルドと切磋琢磨しているよ」

 受付に行く途中、壁を背にして話しているパーティの一人がイフリーを見つけると手を上げて声をかけてきた。

「王都のギルドと競り合っている……んですか?」
「ん? そちらのお嬢さんは……ま、まさか!?」
「ああ、そうそう。聖女のアリアだ」
「や、やっぱりか!?」
「な、なんでこんなところに……」

 イフリーがあっさりと正体を暴露し、そこに居た冒険者連中が驚愕していた。あたしは小声でイフリーに言う。

「おい、良かったのか?」
「ん? まあ顔を知っている奴は知っているし構わないだろ」
「マジで? あっちでディーネが超怖い顔しているけど大丈夫か?」
「……ま、まあ、大丈夫だろ」

 多分、帰ったら文句を言われるだろうなあ……まあ、イフリーの責任だから放っておこう。

「それで王都のギルドと競り合っているのはどういう……?」
「ええっと、聖女様はご存知ないでしょうけど、本来ならギルド同士、協力するものなんですよ。だけどあっちの連中は情報を流してこないんだ」
「そうそう。だから依頼自体、この町は少ないんだ。それでも調査して魔物が増えていたら討伐するけどね」
「なるほど」

 ただ、王都側も調査をしているため魔物討伐が被ることがあるのだとか。

「どうしてそんなことに?」
「あー……まあ、ギルドマスター同士のな……」
「仲が悪いんだ」
「わ、くだらない理由―……」

 チラリと受付を見ながら小声で冒険者が理由を話してくれた。で、あたしもシルファーの意見と同じでくだらないと感じていた。

「じゃあ……じゃない、では王都に依頼が集まっているということですか」
「そうだな。こっちは討伐依頼よりもダンジョンとか採集がメインになってますかね」
「ふうん」

 肩を竦めて女性冒険者がため息を吐いた。そこでディーネが口を尖らせて言う。

「……ひとまず受付に行きましょう。それが目的だったはずです」
「お、おお、そうだな。行こう。じゃあな」
「よく分からんがまたな。さて、それじゃ俺達も行くか」
「ありがとうございます」

 イフリーが片手を上げると、冒険者も挨拶をして依頼へと向かった。あたしも礼を言ってから受付へと向かう。

「一人で歩いてはいかんぞ」
「あ、そうだった」

 急ぐ足を止めてあたしはサッとイフリーの後ろに移動する。そのまま受付へ向かうと、いかつい顔をした……親父に近い人種だなと思える男がこちらに気づく。

「お、イフリー様じゃないか!」
「様はいらないって、エルゴ! というかギルドマスターが受付に立っているとはどういうこった?」

 どうやらいかつい男はギルドマスターだったようだ。で、イフリーの言う通りマスター自ら受付をすることは滅多にない。
 イフリーの疑問にあたしもそう感じた。するとエルゴと呼ばれた男は腕組みをして息を吐く。

「いやあ、こっちも国から助成金を貰って給料は払っているけど、王都のギルドに鞍替えする奴も多いってこった」
「そういや、人が少ない気がするな。……しますわね」

 さっきの冒険者パーティと話していた間も周囲に気を配っていた。その時に冒険者もだけど働いている人間も少ないなと思った。

「ん? お嬢さんは――」
「ああ、俺が護衛を務めている聖女のアリアだ!」
「おー、あの……って、聖女様!? こ、こんなむさくるしいところに何故!?」
「ほーっほっほ! たまには視察をと思いまして。あまり状況は良くないようですけれど」
「アリア、その笑いは無いと思うよー……」

 小声でシルファーが『ブレているよ』よとダメ出しをしてきた。間違えたかな? まあ、細かいことはいいとして、あたしは依頼掲示板に目を向けながら話を続ける。

「ギルドは魔物退治や貴重な薬草を採ってくれたりとお仕事に励んでいます。他にどういったお仕事があるのか知りたくてイフリーに頼みました」
「うんうん」

 ディーネがドヤ顔で頷いていたけど、ギルドの視察というより、恐らく言葉遣いのことを褒めてくれているに違いない。

「ありがたいことです、聖女様……!」
「さて、どんな依頼が……って、え、マジ!?」

 掲示板に目を通すと驚くべき状況であたしは思わず素に戻ってしまった。それも仕方ないことだと思う。

「ゴブリン討伐、オーク討伐……村からビッグタスクの依頼がある……どれも早くて三日前……これは、思ったよりまずいのでは……」
「ま、そうなんだよな」
「面目ない……」

 イフリーはこの状況を知っていたようだ。エルゴはため息を吐いて情けないと頭を垂れた。
 曰く、金回りの良さそうな依頼は王都に持っていかれて、面倒な依頼だけが残っているという有様とのこと。

「決定権は王都側にあるって感じですかな?」
「依頼を持ってくるのは町の人か王都、ギルド同士の連携で持ちつ持たれつというのが常なのですが、王都側がランクが上だからとロクな依頼を持って来ないのですよ」
「なるほどねえ」
「アリア」

 ディーネが言葉遣いを窘めてくるが、今は少しイラっとしているので聞いていない。
 人が居なかったら依頼はこなせないから必要ないと撤退する必要がでてくる。
 だが、ギルドが無ければ討伐依頼も出せないので、さっき依頼で見た村が救援を出したくても出せなくなる。
 国が補助金を出しているのは潰させないためでもあるのだ。
 で、王都のギルド連中はそのギリギリのラインで嫌がらせをしているという感じがするね。

「ゴブリンを放置していて大丈夫なのか……なんですか?」
「パーティで動ける冒険者が居ないんですよ。採取などはソロでも行けますけど、目撃情報からするとそれなりに数がいるため迂闊に行ってもらう訳にも」
「ですよね」
「結構、困ってたんだー。だからイフリーはたまにこっちを手伝っていたのー?」
「まあな。魔物が増えたら聖殿付近も危ないだろ? 謁見に来る奴等が危険な目に合うとアリアの評判も落ちるからな」
「確かにのう」

 イフリーの説明にノルム爺さんが手をポンと打って納得する。別に悪いことをしているわけではないけどやり方が気に入らない。

「……エルゴ、さん。提案があります」
「え? なんですか聖女様」

 イラっとしたあたしはギルマスターへ提案を投げかけた。
しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎
ファンタジー
こんにちわ!!私はティファ。18歳。 ある国で軽い気持ちで兵士になったら気付いたら最強騎士になってしまいました!でも私、本当は小さな料理店を開くのが夢なんです。そ・れ・な・の・に!!私、仲間に裏切られて敵国に捕まってしまいました!!あわわどうしましょ!でも、何だか王様の様子がおかしいのです。私、一体どうなってしまうんでしょうか? *小説家になろう様にも掲載されております。

俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた

ましろ
恋愛
「俺の妻になれ」 「嫌ですけど」 何かしら、今の台詞は。 思わず脊髄反射的にお断りしてしまいました。 ちなみに『俺』とは皇太子殿下で私は伯爵令嬢。立派に不敬罪なのかもしれません。 ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻R-15は保険です。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編) 王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編) 平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー
ファンタジー
気がつけば昔読んだ少女マンガの世界だった。マンガの通りなら決して幸せにはなれない。そんなわけにはいかない。自分が幸せになるためにやれることをやっていこう。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

処理中です...