雇われ聖女となったシーフ娘はやがて世界を救う?

八神 凪

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第二十六話

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「その依頼、あたし達が受けるよ」
「は?」
「ええ!?」
「なにを言うておるのじゃ!」

 あたしが神妙な顔で提案を口にすると、その場に居た精霊達が困惑の声を上げた。だけどイフリーだけは驚かず、ニヤリと笑みを浮かべた。

「はっはっは。まあ、リ……アリアならそう言うと思ったぜ。どうだ、ディーネ、ノルム。ちょっと『聖女がいいことをする』手伝いをしねえ?」
「なんでわたしには聞かないのさー!?」
「お前は多分行くだろうなって。ちょっと来い」
「な、なんですか……」

 イフリーはディーネの腕を掴んでエルゴから離れていく。目配せをしてあたし達にも来るように指示して来たのでシルファーと顔を見合わせてからそっちへ行く。

「アリアの時は出来なかったけど、リアならこの状況を見たら行くだろうなとは思ったんだよ。ぶっちゃけ、ゴブリンなんざ俺一人でもやれるけど、折角だから聖女の功績としてもいいんじゃと考えていた」
「そういうことか。依頼を完遂した聖女となれば評判は良くなるのう」
「し、しかし、平等に接するというのが聖女でしょう? だからこそ先ほどギュスター伯爵のお誘いを断ったのですし」
「そうなんだ?」
「まあねー」

 ああいったお誘いを断る理由の一つに『どこかに肩入れしている』と思われないためだそうだ。
 もしギュスター伯爵のところに行った場合、その件が別の貴族の耳に入ったとしたら自分のところにもとなってしまう可能性が高いとのこと。
 そうなると『あいつのところには行って、ウチには来なかった』と悶着が起こるだろう。
 だけど、イフリーは織り込み済みだという感じであたし達へ告げる。

「だけどギルドはどこにでもあるだろ? 困っている村や町の人のためにと考えればギルドに協力するのはアリだ」
「あたしは賛成。聖女は誰かを助けるために謁見をしているんだろ? こっちから助けに行ってもいいと思う」
「はあ……リアは冒険者だし、そう思うかー。わたしはリアが行くなら着いていくよ。確かに、ギルドの依頼は個人を贔屓にしているわけじゃない……っていう逃げ道はあるしねー」
「正気ですかシルファー!? ぐも……」

 ディーネが悲鳴に近い声を上げたので、あたしは慌てて口を塞ぐ。その様子をノルム爺さんが難しい顔で口を開く。

「しかし、一回だけで意味があるとは思えんがのう。中途半端に関わるより、そっとしておくのも手じゃ」
「ノルム爺さんが言いたいことも分かる……だけど、やり方が気に入らない。精霊達がいいなら、あたしは町に来るたびに依頼を受けてもいいと思っている」
「買い物は――」
「そんなの適当な日にディーネが買ってくりゃいいだろ?」

 訝しむディーネにハッキリと告げてやると、呻くように言葉を詰まらせた。

「はいはい、ディーネの負けだよー。リアはこうなったらやるまで帰らないと思う。わたし達が居ればすぐ終わるし」
「さすがシルファー、話が分かる!」
「むぎゅ」
「仕方ないのう……町に危機があるのは良くないから、ということにしておくか」
「もうノルムまで……わかりました! さっさと終わらせて食材を買いに行きますよ!」

 ノルム爺さんも行く気になり、ディーネは不満を露わにしたまま着いて来ることになった。
 受付に向かうと、あたしはギルマスターのエルゴの下へ向かう。

「どうしたんですかい?」
「そのゴブリン討伐依頼、あたし達『ホーリーガーデン』が受けますわ!」
「ええ!?」

 エルゴは突然何を言い出すのかと目を丸くして驚いていた。だけど、イフリーがあたしの横に来てさらに続ける。

「ま、そういうこった。パーティ名はよくわからねえが、アリア……様が倒しに行くんだってよ」
「しかし、聖女様に……」
「精霊達が居れば問題ありません。もちろん、あたしも戦えますので自衛は余裕です。なにより町に危機が迫るのはよくありません」
「うーむ……聖女様本人がそうおっしゃるなら……ギルドカードは――」
「ギルドカードは無くてもイフリーの協力という形であれば同行できるはずですが?」
「あ、はい。詳しいですね?」
「ま、まあ、勉強しているからねー聖女様は」
「そ、そうそう!」

 ギルドの常識なんて小さいころから教えられているから、すぐに分かる。けど、ちょっと興奮しすぎて言い過ぎたなと反省する。

「なら、イフリーお願いしていいか?」
「おう、ぶっ飛ばしてくるぜ! 最低十体か」
「ああ。近況だけでもいい。手に負えそうにないなら、面倒だが王都に依頼を飛ばす」
「任せとけって!」

 イフリーが依頼票にサインをして受領完了となった。それを見届けたあたし達は踵を返してギルドを出ていく。

「気を付けてな!」

 エルゴが背後から声をかけてくれ、あたしは片手を上げて応えておいた。
 外へ出ると、そのまま厩舎へと向かう。

「場所は?」
「ここから馬車で三十分ほど移動したところに森があるんだ。その辺りでゴブリンが度々目撃されているそうだぜ」
「オッケー、急ごう」
「はあ……なんでこんなことに……」
「まあ、冒険者は少ないようじゃし、誰かに見られるわけでもなかろう」
「いいこと言うじゃん、ノルム爺さん♪」

 そんな話をしながら厩舎に辿り着くと、ハリヤーを連れてすぐに出発した。

「悪いな、休んでいるところで」

 荷台の小窓からハリヤーに声をかけると問題ないって感じで鳴いてくれた。イフリーが御者をしながら言う。

「とりあえずリアは武器が無いから俺達の後ろで待機だ。魔法の練習するなら手伝ってくれ」
「ふむ、今後もギルドの依頼を受けるなら、リア殿は魔法だけで戦う、というのはどうじゃ?」

 ノルム爺さんが割と無茶なことを言う。まあ、魔力はたくさんあるからやろうと思えば出来なくはないけど。

「ああ、いいかもねー。リアの魔法は制御がしにくいから、練習がてら使うのはアリだよ」
「……森なら火以外で、というところでしょうか」

 それにシルファーが同意し、ディーネは鋭い目つきをしながら、その場に合った魔法をきちんと使うように呟く。

「機嫌治してくれよ、ディーネ。人のためってことでさ」
「ここまできたら仕方ありませんすぐに終わらせましょう。ゴブリンに王都のギルド……許せませんね……」
「あらら、ディーネがお怒りだー」

 ぶっちゃけあたしに怒っているわけではなく、こういう状況にしたギルドとゴブリンに怒っているようである。
 まあ、それが無ければあたしも依頼を受けようなんて言わないしね。
 ……とはいえ、親父に報告するのはちょっと止めた方がいいな、と感じた。
 聖女の代わりをやっている限り、こちらから呼ぶことはしない。けど、状況を知らせば来るはずなのだ。だから呼ばない。
 けど、王都に集中して依頼があるというならきっと来てしまう。
 だから、今は元気でやっているくらいの手紙で良さそうだ。
 ま、アリアとフランツが見つかればその限りではないけどな?
 とりあえず久しぶりにゴブリン討伐だ。魔法、試してみるか。
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