雇われ聖女となったシーフ娘はやがて世界を救う?

八神 凪

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第二十七話

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 ――馬車に揺られること三十分。イフリーの予測した時間であたし達は森の入口に到着した。
 広い森で、馬車も通れそうな場所だ。速度を落としてハリヤーをゆっくり進ませる。

「さって、ここでわたしの出番だねー」
「ん? どういうこと?」

 シルファーがポニテにしているリボンを外してストレートになる。これも似合うなと思っていると、彼女から魔力の高まりを感じた。
 これも訓練の成果だろう。以前は魔法を使った人にこういう感覚を得ることは無かったもんなあ。

「わたしは風の精霊だからねー。風や木々、草花の声を聞くことができるんだよー」
「へえ、便利だな! ということはそれでゴブリンの位置を特定するのね」
「正解―! さて、わたしの声を聞いて――」

 シルファーが目を瞑って呟くと、髪の毛がふわりと浮かび周囲に魔力が飛ばされたのが分かった。
 そこで御者台からイフリーが声をかけてきた。

「シルファーの能力は冒険者だったらかなり欲しい能力なんだよな。何度か連れていきたいって思ってたぜ」
「あー、わかる」
「ほう、そうなんじゃな」

 ノルム爺さんが顎髭を撫でながらピンと来ていない様子だった。なので魔物をピンポイントで見つけられるメリットを話す。

「わ、わかったわい! そんなに詰め寄らんでも聞こえておるよ」
「シッ、反応があったよ! ……イフリー、南東に馬車を向けて」
「……オッケーだ!」

 シルファーが告げると、馬車は方向を変えた。その後も何度か方向を変えて森の奥へと進んでいく。

 そしてさらに二十分ほど経った頃――

「止まれ、ハリヤー。……見つけたぜ」
「っと、相変わらず醜悪な連中だな」

 イフリーが声を潜めて馬車を止めてあたし達へそう告げた。馬車の窓から覗くと数匹のゴブリンがウロウロしていた。

「獲物を探しているって感じでしょうか?」
「だな。両方とも近接武器か、魔法なら楽勝だな」
「そうなんだー?」
「ああ。弓を使う個体が居ると、こっちが近接しか出来ない場合は木の上とかから一方的に撃ってくるんだ。数だけは多いゴブリンならではって感じで面倒くさいんだよ」
「はー、詳しいのう」
「そりゃ冒険者だからな!」
「なんだかいつもより元気ですね」

 ディーネが呆れた声であたしに言う。ま、久しぶりなんで許して欲しい。とりあえず馬車から降りて様子を見る。

「どうする?」
「リアはいつもどうしている?」

 あたしが尋ねるとイフリーが逆に質問して来た。冒険者としての質はあたしの方が上だと思ってくれているのかもしれない。
 それならといつもの考えを述べることにした。

「あたしはまず一体を倒してから残った奴が逃げたらこっそり追って、巣があればそこを叩く。一人なら見つけた後に戻って報告するけど、このメンバーなら潰した方が早いかも」
「流石だな。同じ意見だ。万が一、見失ってもシルファーが居るから巣ごと叩くか」
「いいよー」

 シルファーが指で丸を作りながら微笑んでいた。ひとまずイフリーが斬りこみ、ディーネとノルム爺さんが援護という形になった。
 あたしは服も動きにくいし、魔法で牽制が良さそうだと言われたので従うことにした。ハリヤーはシルファーが守る。

「行くぜ……!」

 剣を抜いたイフリーが駆け出していった。そこでどこから出したのか援護の二人はいつの間にか杖を手にしている。

「……! グオォウウ!」

 イフリーに気づいたゴブリンが雄たけびを上げた。だが、その程度でイフリーが怯むはずもなく走りながら剣を構えた。

「グギャォウ!」
「大丈夫だ、手を出さなくていい」

 二匹のゴブリンが同時に動き、手にした斧と長剣を振り回してイフリーに迫る。

「ふん!」

 振り回される凶器をものともせず、彼はゴブリンの武器を薙ぎ払う。
 二匹同時の攻撃を力で負けるとは思っていなかったようで、ゴブリンの顔が驚愕に染まる。
 だが、態勢を立て直すことなく、一体のゴブリンは上半身が斬り裂かれた。

「グギャ!?」
「さて、相棒は死んだぜ? ……む」
「大丈夫じゃ! 〈ストーンスピア〉」
「おお!」

 ノルム爺さんが杖を掲げて魔法を使うと、ぽわっと杖の先が光りそこから尖った石の槍が複数出てきた。
 その攻撃は隠れていた弓ゴブリンに突き刺さり絶命させた。

「ヒャァァァ!?」
「おっと、逃げるか」
「ま、そうなるよな。さて、本当ならここでシーフのあたしが斥候をするんだけど……この服じゃなあ」
「あはは、流石にフレアスカートで木登りは無理だよねー。大丈夫、わたしが見つけられるからね!」
「行きましょう、久しぶりに見ましたがあの醜悪な魔物は放置できませんね。人間に害があるなら猶のことです」
「やっぱりディーネは嫌いだと思ったよ」

 見たまんま不潔だしな。いつもきれいにしていて花を育てている彼女が顔を顰めるのは当然だと思う。

「えっと、あっちみたい。足が速いねー。ちょっと距離があるかな?」
「よし、馬車で行くぞ」

 すぐに行動をし、馬車を走らせた。段々と木々が増えてきたので荷台を置いた方がいいかもしれない。
 そう考えていたところで目を瞑っていたシルファーが目を開いた。

「止めて! 近いよ」
「ああ、そうみたいだな。へへ、こりゃ楽しくなりそうだ」
「うわ」
「こりゃ凄いのう」

 のぞき窓から確認すると、開けた場所が目に入った。そこにはさっき逃げたゴブリンが焦りながら仲間になにかを話している。
 さらに近くには洞穴が見える。今までの経験からするとあれが巣で間違いない。

「さて、どうする? 見えているだけで二十体はいるし」
「そうだな……」

 この場合、リーダーはイフリーだ。作戦をオーダーしてもらう必要がある。

「リア、ちょっと魔法を使ってみてくれねえか?」
「え、あたしか?」

 そこで意外な提案が出て来てドキッとした。意図を尋ねると、イフリーは口元に笑みを浮かべて言う。

「リアの魔力が凄いことはこの前判明しただろ? なら魔法で一掃できるんじゃねえかなって。で、フォローはノルム、頼むぜ」
「ふむ、ワシは問題ないがリアにはなんの魔法を使わせるんじゃ?」
「そこは俺の属性でってところか? リア、ちょっと」
「ん?」

 イフリーがあたしを呼ぶ。近くに行くと、あたしに使って欲しい魔法を即興で伝えて来た。
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