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第二紀
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第二紀
神々との戦いを勝利した功績により、シルファリスとモルガンディルはそれぞれ地上を治めた。二人は神格に至らなかったとしても、地上に住まう者達による多大なる支持を得て平和は保たれていた。
時は数百年を経た。寿命を持たぬアルヴァールの民であるシルファリスは、未だ全盛期の若々しさを保っていたが、ブラウティルの寿命は長くても千年ほどである。若かりし頃モルガンディルは逞しい巨木のようであったが、今では枯れ木に等しいほどやせ細りその生気はみるみる失いつつあった。
モルガンディルは死を恐れた。ブラウティルの王国はアルヴァールと並ぶほどの強国であったが、彼の統治なくしてはすぐに瓦解するほどの脆さを秘めていた。自らの死、そして王国の死は彼のもっとも恐れる事であった。
死の間際に、彼の元に一人の妖術使いが訪れた。その妖術使いは、モルガンディルに永遠の寿命を授ける悪しき秘宝「ギルンドの帯」を携えていた。それは頑丈な鎖のようであり、か細い麻糸のようなものであった。それを自らに巻きつける事で寿命とかつての力以上のものを授けるという話であった。
モルガンディルはこの妖術使いの甘言を一度は断ったが、欲深いブラウティルの性はその申し出を受け入れた。モルガンディルはその秘宝を身体に巻きつけるや否やそれは彼の身体の芯の底まで食い込み、肉体は力を増し尽きかけた命の灯火は再び燃え上がった。
さらに数百年の時を経た。モルガンディルはその欲深さにより、勢力を拡大しオリヴェトリ達の土地をも支配下に治めた。彼が育てた王国は数万から数十万、そして数百万の戦士を従える一大王国と化した。モルガンディルの欲深さは留まらず、アルヴァールの土地をも支配に治めようとした。
かつての盟友。今やオーダインと呼ばれる若き秘術の神は大地に降り立ち、この暴君を嗜めようと説得を試みた。だがすでにモルガンディルの精神は欲望に支配されており、あろうことかこのオーダインを返り討ちにしてしまった。この裏切りを知った一部のブラウティルの氏族はモルガンディルを見限り王の元を去った。
神をも手にかけたモルガンディルは、シルファリスの土地を侵攻しはじめた。それまで静観していたアルヴァールの長たるシルファリオスはモルガンディルを討つ事を決意した。
かつての盟友同士の戦は1000年にも及んだ。その間に肥沃なは荒れ果て荒廃した。アルヴァール達は倒しても立ち上がるモルガンディル達の強靭さに疲弊し、その数を減らしていった。
アルヴァールの民の一部は、モルガンディルに恐れをなし彼の元に下った。シルファリスの王国は風前の灯であった。彼もまた疲弊しアルヴァールの民の生き残りも僅かとなった。
そんなシルファリスを見捨てなかったのは、彼らアルヴァールの祖とも呼べる神格ミスティルであった。彼女は、シルファリスに力を与えた。だがその代償にアルヴァールは永遠の寿命を捨てなければならなかった。モルガンディルを止めたかったシルファリスはその力を受け入れた。その力は「囁く力」であった。
彼の言葉は、かつての盟友秘術神オーダインを蘇らせそして太陽神たるソリスを大地に呼び覚ました。
オーダインはしたたかにこの戦乱の世を生き残ったかつてのオリヴェトリ達を彼の元に招集した。この長い時の中で、彼らは人間、そしてハーフリングといった様々な種族へと変化し世界に適応していた。
中でもオリヴェトリの多様性を強く受け継ぐ人間達は力強く纏まり小さいながらも幾つもの王国を築いていた。シルファリスの「囁く力」はかつてのオリヴェトリ達の子孫に立ち向かう勇気を授けた。そこにさらに集ったのは、かつてモルガンディルの配下にあった今やドワーフと呼ばれる種族であった。
それを、太陽神ソリスは後押しした。モルガンディルの勢力は、この連合軍の勢いに押され地下へ追いやられた。シルファリスはアンダーダークと呼ばれる地下世界に攻め入りモルガンディルと一騎打ちへともつれ込んだ。
オーダインの鍛えた弓と剣を携えたシルファリスは、モルガンディルを圧倒しついには彼の胸に深々と「ティンタシルの剣」を突き刺した。それと同時に、モルガンディルを支配していた「ギルンドの帯」を砕いたのであった。
悪しき秘宝は砕かれた際に、モルガンディルに与していた者達に呪いを与えた。彼らは陽の光を嫌いその肌を浅黒く染め上げ地上に居られなくした。そうしたブラウティル達はドゥエルガルと呼ばれるようになり、暴君に寝返ったアルヴァール達はドラウと呼ばれるようになった。
シルファリスは、力を得た代償として時を得てしまった。彼は討ったモルガンディルをその胸に抱き寿命を迎え光を放ち尽きた。
戦いは終わり、かつてのアルヴァール達は等しく寿命を得た。そうした彼らは自らをエルフと名乗り、地上に残った種族と共に世界の再生に務めた。
神々はこの地上の戦いを見て、自らの力がまだ定命者達に必要である事を悟り、それぞれの種族の神格は助言を与えその行く末を見守っていく事を決意したのであった。
神々との戦いを勝利した功績により、シルファリスとモルガンディルはそれぞれ地上を治めた。二人は神格に至らなかったとしても、地上に住まう者達による多大なる支持を得て平和は保たれていた。
時は数百年を経た。寿命を持たぬアルヴァールの民であるシルファリスは、未だ全盛期の若々しさを保っていたが、ブラウティルの寿命は長くても千年ほどである。若かりし頃モルガンディルは逞しい巨木のようであったが、今では枯れ木に等しいほどやせ細りその生気はみるみる失いつつあった。
モルガンディルは死を恐れた。ブラウティルの王国はアルヴァールと並ぶほどの強国であったが、彼の統治なくしてはすぐに瓦解するほどの脆さを秘めていた。自らの死、そして王国の死は彼のもっとも恐れる事であった。
死の間際に、彼の元に一人の妖術使いが訪れた。その妖術使いは、モルガンディルに永遠の寿命を授ける悪しき秘宝「ギルンドの帯」を携えていた。それは頑丈な鎖のようであり、か細い麻糸のようなものであった。それを自らに巻きつける事で寿命とかつての力以上のものを授けるという話であった。
モルガンディルはこの妖術使いの甘言を一度は断ったが、欲深いブラウティルの性はその申し出を受け入れた。モルガンディルはその秘宝を身体に巻きつけるや否やそれは彼の身体の芯の底まで食い込み、肉体は力を増し尽きかけた命の灯火は再び燃え上がった。
さらに数百年の時を経た。モルガンディルはその欲深さにより、勢力を拡大しオリヴェトリ達の土地をも支配下に治めた。彼が育てた王国は数万から数十万、そして数百万の戦士を従える一大王国と化した。モルガンディルの欲深さは留まらず、アルヴァールの土地をも支配に治めようとした。
かつての盟友。今やオーダインと呼ばれる若き秘術の神は大地に降り立ち、この暴君を嗜めようと説得を試みた。だがすでにモルガンディルの精神は欲望に支配されており、あろうことかこのオーダインを返り討ちにしてしまった。この裏切りを知った一部のブラウティルの氏族はモルガンディルを見限り王の元を去った。
神をも手にかけたモルガンディルは、シルファリスの土地を侵攻しはじめた。それまで静観していたアルヴァールの長たるシルファリオスはモルガンディルを討つ事を決意した。
かつての盟友同士の戦は1000年にも及んだ。その間に肥沃なは荒れ果て荒廃した。アルヴァール達は倒しても立ち上がるモルガンディル達の強靭さに疲弊し、その数を減らしていった。
アルヴァールの民の一部は、モルガンディルに恐れをなし彼の元に下った。シルファリスの王国は風前の灯であった。彼もまた疲弊しアルヴァールの民の生き残りも僅かとなった。
そんなシルファリスを見捨てなかったのは、彼らアルヴァールの祖とも呼べる神格ミスティルであった。彼女は、シルファリスに力を与えた。だがその代償にアルヴァールは永遠の寿命を捨てなければならなかった。モルガンディルを止めたかったシルファリスはその力を受け入れた。その力は「囁く力」であった。
彼の言葉は、かつての盟友秘術神オーダインを蘇らせそして太陽神たるソリスを大地に呼び覚ました。
オーダインはしたたかにこの戦乱の世を生き残ったかつてのオリヴェトリ達を彼の元に招集した。この長い時の中で、彼らは人間、そしてハーフリングといった様々な種族へと変化し世界に適応していた。
中でもオリヴェトリの多様性を強く受け継ぐ人間達は力強く纏まり小さいながらも幾つもの王国を築いていた。シルファリスの「囁く力」はかつてのオリヴェトリ達の子孫に立ち向かう勇気を授けた。そこにさらに集ったのは、かつてモルガンディルの配下にあった今やドワーフと呼ばれる種族であった。
それを、太陽神ソリスは後押しした。モルガンディルの勢力は、この連合軍の勢いに押され地下へ追いやられた。シルファリスはアンダーダークと呼ばれる地下世界に攻め入りモルガンディルと一騎打ちへともつれ込んだ。
オーダインの鍛えた弓と剣を携えたシルファリスは、モルガンディルを圧倒しついには彼の胸に深々と「ティンタシルの剣」を突き刺した。それと同時に、モルガンディルを支配していた「ギルンドの帯」を砕いたのであった。
悪しき秘宝は砕かれた際に、モルガンディルに与していた者達に呪いを与えた。彼らは陽の光を嫌いその肌を浅黒く染め上げ地上に居られなくした。そうしたブラウティル達はドゥエルガルと呼ばれるようになり、暴君に寝返ったアルヴァール達はドラウと呼ばれるようになった。
シルファリスは、力を得た代償として時を得てしまった。彼は討ったモルガンディルをその胸に抱き寿命を迎え光を放ち尽きた。
戦いは終わり、かつてのアルヴァール達は等しく寿命を得た。そうした彼らは自らをエルフと名乗り、地上に残った種族と共に世界の再生に務めた。
神々はこの地上の戦いを見て、自らの力がまだ定命者達に必要である事を悟り、それぞれの種族の神格は助言を与えその行く末を見守っていく事を決意したのであった。
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