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混血の放浪者 5-1
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ポータルを抜け、放浪者達の視界がパッと開け、曇天の空は、その昏さを湛えている。
閃光を伴った雷鳴は、その重く黒い雲の間を抜けて、その異様さを際立たせた。
稲光に照らされた大地には、めい一杯の鮮烈な血のように紅い花が咲き乱れていた。
「こいつは、たまげたな……確かにこりゃ庭園だがよ、見てみろよ。これじゃあ花畑で呑気に茶会って訳にもいかなそうだな」
むせかえるような花の臭いにシェイガンは眉を顰めた。放浪者はその緩やかに登る丘の上に目を止めていた。
「シェイガン、あれが、おそらく『叢生の珠玉』……だったものだ」
でたらめにねじくれた枝は、まるで手足のようにその天に向けて開かれていた。その枯れかけているかに見える巨木の大きな洞には。禍々しい歪んだ輝きが渦巻く。その収束は、力を増している事を告げるかのようにその明滅を繰り返していた。その中心には紅く輝く珠玉がうねり佇んでいた。
「ひぇぇ……ありゃなんだ、枝に首吊り死体でも垂れ下がっててもおかしくねぇな。まるで死人の木じゃねえか」
「ハッバンはどこに居る……ッ」
このような場所に、長くダヤンを置いておく訳にはいかない。放浪者は、精神を集中し、意識を拡大した。だが、ここは悪意に満ちている、その中からハッバンの持つ邪悪さを検知するのは困難だった。
「旦那ッ、あそこだ……!」
丘の上、ハッバンはその巨木のふもとで諸手を挙げて歓喜をしていた、その手の中から流れる脈動した光はまるで輸血のようにその木に注がれ、その量が増えるごとに。洞の輝きは増してゆく。
放浪者は手斧を握りなおし、見つけるや否や駆け出した。シェイガンもそれに続く。
「シェイガン、気を抜くな……奴は目的を完了しきっていないようだッ、いっきにカタを付けるぞッ!」
「あいよッ、あんたに合わせるぜッ!」
シェイガンが放浪者の傍らに並び、太ももから手投げ用の短剣を早抜きし、指に挟み構えると同時、その疾駆よりも早い速度でハッバンの後頭部目掛け放った。
「……ッ!!」
それを皮切りに、十分な距離を駆け抜けた放浪者は助走の勢いを利用して飛び掛かった。花びらを巻き上げ揺らめいたマントの風のいなしは、放浪者をハッバンの喉元まで届ける。
「……忌々しい蛆どもめ、今頃来ても…‥ッ!」
ハッバンは振り向きざま、その目の前に風を切り迫ったナイフの鋭い切っ先が、鼻先に触れるのを感じた。その瞬間に、ガラスが弾けたように飛散する。
「……遅いッ!!!!」
ハッバンは無傷だった、砕けたガラスの奥に憎悪に歪んだ顔が鋭く視線を迫る放浪者に向ける。飛び掛かりの勢いに乗せて、水平に振るった手斧の薙ぎは、またもやガラスを弾けさせた。
「旦那ッ!気を付けろ『鏡像の術』を使ってやがる!野郎ッ防衛は万全のようだ!」
「あぁ、だが2枚割ったぞ…多くともあと2枚だ……」
シェイガンはすぐさま、短剣を両手に抜き去り。距離をとった。
着地を終えた放浪者は、ハッバンの反撃にあう前に身をよじり、地を転がった。立ち上がった位置はハッバンを挟み、シェイガンの対岸に居た。
「御挨拶じゃないか、旅人の諸君……念のために防衛していた策が早速功を奏したようだ」
「よく言うぜ、魔術師さんよ……こうも簡単に近寄らせるとは。ちょいとばかり油断が過ぎるんじゃあないかい?」
「ダヤンはどこだ……ハッバン!」
ハッバンは、焦りの無い不敵な笑みで交互に視線を送った。村人の衣装は脱ぎ捨て、その姿は不吉な模様の描かれたローブを身にまとう魔術師そのものだった。
「まぁ、そう焦るなハーフオークよ。彼は私の育てた『エーグ』の最後の贄となるのだ、丁重にもてなしているよ……ほらそこに」
「お……おじさんッ」
「……ッ!!」
少年は力の無い叫びを挙げた、その姿は憔悴しきっている。彼は巨木のひざ元に拵えられた即席の幹のテーブルの上に括り付けられ、その自由を奪われている。放浪者はその姿を見て怒りを露わにしハッバンを睨みつけたのだった。
「……ったくひでェ事しやがるッ!おたくが、子供の教育によろしくないってのは十分に理解したぜッ!」
その怒りはシェイガンも供にしている。短剣使いは、両の手の短剣を逆手に握りなおし、踏み出した一歩を境に、一気に距離を詰めた。
「ダヤンを解放しろハッバンッ!」
放浪者も動くのは同時であった、大きく踏み出した一歩はハッバンに届く間合いであり、その前へ進む運動力を振り上げた斧へ伝え、魔術師の脳天に迫らせた。
「私は焦るな、と申したはずだぞ。塵芥ども」
その二人の攻撃の重なりは、ハッバンに触れる寸前。魔術師はその姿を歪め、その場からダヤンの傍へと転移させたのだ。
「まぁ、まずは私のもてなしを受けていくが良い。魔術師が好んで近寄らせるとは、こういう事だ」
放浪者と短剣使いが踏み込んだ一歩。その足場で、収束する輝きがあった、浮かんだ魔法陣はその二人の行動を鍵として発動する。
「くッ……!」
「おっと……こいつはマズいッ!!」
危険を察知した二人は互いに踏み込んだ一歩を無理やりさらに踏み込ませ、その場を飛びのかせた。破裂した魔法陣はその魔力を爆発に変え、その場で轟音と熱を生みだし、大地もろとも吹き飛ばしたのだ。
はじけ飛んだ二人は、煙を巻き上げ。また距離をとる事になった。花を散らし転がった二人は、燃える様な痛みに耐えまた立ち上がった。
「シェイガン、無事か……ッ!」
「あぁ旦那、死んでたら返事はできねえだろう。おかげで、冷静になれたよ」
巨木のふもとで勝ち誇ったようにハッバンは二人を見下ろしていた。十分に笑いよじれた様子は、堪らないと手を打って、ダヤンが寝そべるその傍に腰を下ろしたのだ。その手には、いつの間にか杖が握られ、その輝きが魔術師の消費した魔力に応じて怪しく光り、魔術師自身の体を包んだのだ。
「野郎…余裕しゃくしゃくじゃねえか。鏡像をわざと割らせ、こちらの油断を誘い、陣に突っ込ませられた……。悔しいが……魔術師としては良い腕前のようだな……クソッ!このオレがまんまと騙されるたぁ、ヤキが回ったぜッ!」
「……だが、奴も魔術師であるなら、秘術を行使するには限度がある。巻物を携えている形跡もない。ならば……あの杖をなんとかすれば」
放浪者とて、無策で突っ込んだ訳ではなかった。その一瞬で相手の身振り、そしてその装備や身の回りの状況、その脅威を測ったのだ。
「アンタ、オレをダシに使ったのかい旦那……ハッ!あんたも人が悪いぜ。確かにあれで、どこからか魔力のプールにアクセスしているようだな。なるほど……あいつ自身にゃ、そう大した魔力はないのかもしれねえ」
「と言っても、あの杖を奪えなければ。奴にはこちらを何度もなぶる機会を与え続ける……どうする?」
その言葉に、シェイガンはちらりと放浪者に一瞥をくれた。その顔は真剣そのものだったが、その眼は不敵に放浪者に笑いかけ、自信の色に満ちていた。
「旦那、オレの事を信じ切ってくれるかい?」
閃光を伴った雷鳴は、その重く黒い雲の間を抜けて、その異様さを際立たせた。
稲光に照らされた大地には、めい一杯の鮮烈な血のように紅い花が咲き乱れていた。
「こいつは、たまげたな……確かにこりゃ庭園だがよ、見てみろよ。これじゃあ花畑で呑気に茶会って訳にもいかなそうだな」
むせかえるような花の臭いにシェイガンは眉を顰めた。放浪者はその緩やかに登る丘の上に目を止めていた。
「シェイガン、あれが、おそらく『叢生の珠玉』……だったものだ」
でたらめにねじくれた枝は、まるで手足のようにその天に向けて開かれていた。その枯れかけているかに見える巨木の大きな洞には。禍々しい歪んだ輝きが渦巻く。その収束は、力を増している事を告げるかのようにその明滅を繰り返していた。その中心には紅く輝く珠玉がうねり佇んでいた。
「ひぇぇ……ありゃなんだ、枝に首吊り死体でも垂れ下がっててもおかしくねぇな。まるで死人の木じゃねえか」
「ハッバンはどこに居る……ッ」
このような場所に、長くダヤンを置いておく訳にはいかない。放浪者は、精神を集中し、意識を拡大した。だが、ここは悪意に満ちている、その中からハッバンの持つ邪悪さを検知するのは困難だった。
「旦那ッ、あそこだ……!」
丘の上、ハッバンはその巨木のふもとで諸手を挙げて歓喜をしていた、その手の中から流れる脈動した光はまるで輸血のようにその木に注がれ、その量が増えるごとに。洞の輝きは増してゆく。
放浪者は手斧を握りなおし、見つけるや否や駆け出した。シェイガンもそれに続く。
「シェイガン、気を抜くな……奴は目的を完了しきっていないようだッ、いっきにカタを付けるぞッ!」
「あいよッ、あんたに合わせるぜッ!」
シェイガンが放浪者の傍らに並び、太ももから手投げ用の短剣を早抜きし、指に挟み構えると同時、その疾駆よりも早い速度でハッバンの後頭部目掛け放った。
「……ッ!!」
それを皮切りに、十分な距離を駆け抜けた放浪者は助走の勢いを利用して飛び掛かった。花びらを巻き上げ揺らめいたマントの風のいなしは、放浪者をハッバンの喉元まで届ける。
「……忌々しい蛆どもめ、今頃来ても…‥ッ!」
ハッバンは振り向きざま、その目の前に風を切り迫ったナイフの鋭い切っ先が、鼻先に触れるのを感じた。その瞬間に、ガラスが弾けたように飛散する。
「……遅いッ!!!!」
ハッバンは無傷だった、砕けたガラスの奥に憎悪に歪んだ顔が鋭く視線を迫る放浪者に向ける。飛び掛かりの勢いに乗せて、水平に振るった手斧の薙ぎは、またもやガラスを弾けさせた。
「旦那ッ!気を付けろ『鏡像の術』を使ってやがる!野郎ッ防衛は万全のようだ!」
「あぁ、だが2枚割ったぞ…多くともあと2枚だ……」
シェイガンはすぐさま、短剣を両手に抜き去り。距離をとった。
着地を終えた放浪者は、ハッバンの反撃にあう前に身をよじり、地を転がった。立ち上がった位置はハッバンを挟み、シェイガンの対岸に居た。
「御挨拶じゃないか、旅人の諸君……念のために防衛していた策が早速功を奏したようだ」
「よく言うぜ、魔術師さんよ……こうも簡単に近寄らせるとは。ちょいとばかり油断が過ぎるんじゃあないかい?」
「ダヤンはどこだ……ハッバン!」
ハッバンは、焦りの無い不敵な笑みで交互に視線を送った。村人の衣装は脱ぎ捨て、その姿は不吉な模様の描かれたローブを身にまとう魔術師そのものだった。
「まぁ、そう焦るなハーフオークよ。彼は私の育てた『エーグ』の最後の贄となるのだ、丁重にもてなしているよ……ほらそこに」
「お……おじさんッ」
「……ッ!!」
少年は力の無い叫びを挙げた、その姿は憔悴しきっている。彼は巨木のひざ元に拵えられた即席の幹のテーブルの上に括り付けられ、その自由を奪われている。放浪者はその姿を見て怒りを露わにしハッバンを睨みつけたのだった。
「……ったくひでェ事しやがるッ!おたくが、子供の教育によろしくないってのは十分に理解したぜッ!」
その怒りはシェイガンも供にしている。短剣使いは、両の手の短剣を逆手に握りなおし、踏み出した一歩を境に、一気に距離を詰めた。
「ダヤンを解放しろハッバンッ!」
放浪者も動くのは同時であった、大きく踏み出した一歩はハッバンに届く間合いであり、その前へ進む運動力を振り上げた斧へ伝え、魔術師の脳天に迫らせた。
「私は焦るな、と申したはずだぞ。塵芥ども」
その二人の攻撃の重なりは、ハッバンに触れる寸前。魔術師はその姿を歪め、その場からダヤンの傍へと転移させたのだ。
「まぁ、まずは私のもてなしを受けていくが良い。魔術師が好んで近寄らせるとは、こういう事だ」
放浪者と短剣使いが踏み込んだ一歩。その足場で、収束する輝きがあった、浮かんだ魔法陣はその二人の行動を鍵として発動する。
「くッ……!」
「おっと……こいつはマズいッ!!」
危険を察知した二人は互いに踏み込んだ一歩を無理やりさらに踏み込ませ、その場を飛びのかせた。破裂した魔法陣はその魔力を爆発に変え、その場で轟音と熱を生みだし、大地もろとも吹き飛ばしたのだ。
はじけ飛んだ二人は、煙を巻き上げ。また距離をとる事になった。花を散らし転がった二人は、燃える様な痛みに耐えまた立ち上がった。
「シェイガン、無事か……ッ!」
「あぁ旦那、死んでたら返事はできねえだろう。おかげで、冷静になれたよ」
巨木のふもとで勝ち誇ったようにハッバンは二人を見下ろしていた。十分に笑いよじれた様子は、堪らないと手を打って、ダヤンが寝そべるその傍に腰を下ろしたのだ。その手には、いつの間にか杖が握られ、その輝きが魔術師の消費した魔力に応じて怪しく光り、魔術師自身の体を包んだのだ。
「野郎…余裕しゃくしゃくじゃねえか。鏡像をわざと割らせ、こちらの油断を誘い、陣に突っ込ませられた……。悔しいが……魔術師としては良い腕前のようだな……クソッ!このオレがまんまと騙されるたぁ、ヤキが回ったぜッ!」
「……だが、奴も魔術師であるなら、秘術を行使するには限度がある。巻物を携えている形跡もない。ならば……あの杖をなんとかすれば」
放浪者とて、無策で突っ込んだ訳ではなかった。その一瞬で相手の身振り、そしてその装備や身の回りの状況、その脅威を測ったのだ。
「アンタ、オレをダシに使ったのかい旦那……ハッ!あんたも人が悪いぜ。確かにあれで、どこからか魔力のプールにアクセスしているようだな。なるほど……あいつ自身にゃ、そう大した魔力はないのかもしれねえ」
「と言っても、あの杖を奪えなければ。奴にはこちらを何度もなぶる機会を与え続ける……どうする?」
その言葉に、シェイガンはちらりと放浪者に一瞥をくれた。その顔は真剣そのものだったが、その眼は不敵に放浪者に笑いかけ、自信の色に満ちていた。
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