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彼女の想い

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 そうして僕は大学の4年間を終えて大学院に進んだ。1年後に卒業した彼女は児童養護施設に就職した。お互いに忙しくなり会う頻度は減ったが、不安はなかった。たまに会うと、僕らはいつものように公園でじっと座ったり川沿いを歩いたりした。
「君は社会人の先輩だね。」
「まだ1年目だけれどね。」
「児童養護施設で働くのって大変?」
「そうね。楽な仕事ではないけど、学べることも多いわ。」
「子どもは好き?」
“子どもが好きか”と言われると正直わからないわ。でもね、彼らと接していると昔の自分を見ているような気がするのよ。本当は優しい心を持っているけど心を閉ざしてしまっている。それから公園で初めてあなたを見た時を思い出すの。だから、あなたと同じように彼らのことも支えてあげたいとは思っているの。昔の私達を助けるような気持ちでね。
「やっぱり君は素敵だよ。」
「ありがとう。」
そんな風にして僕らの時は流れていった。
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