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鼓動を速める

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 僕らは同棲を始めた。ある日、2人でソファーに座りながらテレビを見ていると、有名人の夫婦が出演していた。彼女はテレビを見ながら何気なく言った。
「結婚ってどう思う?」
鼓動が速まった。
「どう思うって?」
「“何のためにするか”とか。」
「それはまあ、永遠の愛を誓うとか。そういうものだろう。」
「ロマンチストなのね。」
 僕の頬を小突いた。彼女は僕の肩に頭をもたれた。
「私のこと愛してる?」
「愛してるよ。」
「私もよ。」
 僕らは口づけした。そして僕らは"愛"を確かめ合うように寝た。いつもより激しく、いつもより長い時間かけてお互いを求め合った。
 並んで横になりながらタバコを吸っていると、彼女は左手の甲を眺めていた。
「結婚したらさ、指輪ってするべきだと思う?」
また鼓動が速くなる。
「それはまあ、人それぞれじゃないかな。」
「あなたの両親はしてたかしら?」
「そういえばしてなかったな。」
「うちの両親もしてなかったわ。」
彼女はタバコをひと口吸って話を続けた。
「子どもは欲しい?」
彼女は自然とこういう話をする。
「君は?」
「わからないわ。」
彼女は少し考えてから話し始めた。
「もし私達に子どもが生まれたとするじゃない。その子が“私達のような経験”をしたら、それって幸せだと思う?」
「どうだろう。」
「私もわからないわ。」
「ただ僕は今すごく幸せだよ。」
「私もよ。」
彼女は僕の頬に口づけした。それから僕らは続けてもう一度寝た。
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