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14.襲いかかる不安
しおりを挟む殿下とは半年に一回くらいしか、会えなくなって一年半が経った頃、貴族令嬢の間である噂が広まっていた。
ある一人の少女を殿下や殿下に近しい側近達が取り合っているという、噂だ。
最初は、信じていなかったが久しぶり会える日、殿下から大事なお客様が来るからと断られてしまった。
その時、王妃教育で王宮にいた私は見てしまったのだ。
庭園の中で仲睦まじく寄り添う殿下と可愛らしい少女を始めは見間違いかと思ったが、まるで恋人の様に楽しむ二人に声をかけることも出来なかった。
その日、ナタリーに相談するとナタリーも噂は知っていた様で、私に悲しそうな顔で
「アリシア様、アリシア様は1人ではありません。今は、殿下を信じましょう。もし、殿下が本当に噂みたいなことしてるのであれば、私がアリシア様を嫁に貰います!絶対に幸せにします!」
私を励ますために、言ってくれる冗談が心に染みた。
その言葉が嬉しくてその日は一日、声を出して泣いた。
殿下との、幸せな日々は本当は夢で今が現実なのかもしれない。
私には2人の仲睦まじい姿を見ながら過ごすなんて、耐えられない。
次の日、泣きすぎて熱が出てしまい王妃教育を休んだ。
声も掠れて上手くでない私に、ナタリーが心配して蜂蜜たっぷりのドリンクを持ってきてくれる。
いつも、厳しいお父様も私の様子を見に来て下さり、昔好きだった熊の人形を持って来てくださった。
「アリシア様、殿下がお見舞いに来られました。お通ししますか?」
殿下と言われて、思わず体が反応してしまう。
「お通しして。」
昨日の今日で、心の整理は出来ていない。
けれど、いまお会いして聞かなければいけない気がする。
「アリシア、久しぶり体調はどうだい?」
「昔のように、呼んではくれないのですね…。」
「久しぶりに会ったから、なんだか名前で呼ぶのは照れくさくてね。」
そう言って、私の髪に触れようとする殿下の手を思わず払ってしまった。殿下を見ると、何故かとても傷ついた顔で私を見ている。
「殿下は、何か私に言いたいことはないのですか?」
「言いたいこと?」
「えぇ、例えば婚約を解消したいとか」
「解消?」
私が婚約解消を切り出した途端、殿下の目が今まで見た事ないほど冷たくなった。
恐ろしくなって目を逸らすと、ベットで寝ている私の肩を押し倒すと身動きが取れない様に手で拘束された。
今までの殿下なら有り得な行動にビックリして体が震えている。
「何故、僕が君と婚約を解消すると思っているの?」
「殿下は、ご自身の噂をご存知ないの?愛する方がいるならば言ってくださいませ!」
「何のことだ!僕は昔から愛してるのは君だけだ!」
「何のことですって!ご自身の胸に聞いてください!」
拘束されている手から逃れようと、足をバタつかせて手を動かそうとするがびくともしない。
手がとても痛いのに、殿下はそれさえも気づいてくれない。
「婚約は解消しないからな、君は僕と結婚するんだ。」
何故殿下が傷ついた顔をするの?噂だけなら我慢できた。けれど、私との約束を断ってまで2人で寄り添っていた姿を見て傷ついたのは私ですわ!
「ふっ、う、ナタリー!ナタリーー!けほっけほっ」
怖さと悲しさで、泣きてしまった私に驚いたのか殿下の手が緩まった。
その隙にナタリーを、呼ぶとすぐに駆けつけてくれた。
ナタリーは私の手にできている痕を見て、殿下を睨みつけると殿下に殴りかかった。
殿下は咄嗟に、受け身を取るがナタリーの拳で殿下は勢いよくかべにぶつかった。
「ルーカス様、暫く私が許すまでアリシア様に近づくのを禁止します!アリシア様を大切にすると誓ってくださったので、婚約者として認めて差し上げたのに、いつからそんなに腑抜けになられたのですか?今、あなたが学園で行っていることは浮気と変わりません。噂まで広げてアリシア様を苦しめた。ご自身で理解されていますか?学生ごときの、簡単な呪詛に掛けられていてはアリシア様はお渡しできかねる!愛想尽かされて、婚約を解消される前にご自身で誠心誠意を見せなさい!!」
ナタリーが殿下に、大きな声で怒鳴ると殿下は怯えて震え泣くアリシアの手を見て自分自身に失望した。
「アリー、すまなかった。」
殿下はスッと立ち上がると、アリシアに頭を下げ部屋から出て行った。アリシアは2人の会話の中で『呪詛』と言う言葉が気になった。
「ナタリー、呪詛ってどう言うこと?」
「一般的に呪詛は呪う力なんですけど、殿下が掛けられているのは恋愛の呪詛だと思われます。ただ、王族は基本的にそういった類にはかからない様にしてあるのですが…。
何かしらで隙ができるとそこにつけ込まれてしまいます。いま、殿下の中で例の少女とアリシア様が混合している状態なのでしょう。」
「そんなことが、あるのね」
「いま、殿下に会うのは危険なので必ず私と一緒にいきましょうね。」
「わかったわ」
手首の痛みが強くなるたび、此れからの不安を感じた。
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