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海の駅
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電車の中は、多からず少なからず、数人乗っている。
優馬とアリアは、空いていた四人掛けの席を見つけ、向かい合うように座る。
二人が乗った電車は、北上する電車らしいが、そんなの二人にとって関係なかった。この街じゃないどこかに、行けれるなら何処でもよかった。
ガタンコトン、ガタンコトン
二人を乗せた電車は徐々に加速していき、住宅街から田んぼや畑が見える田舎へ来た。
その間、二人は互いに外を眺めているだけで会話はなかった。
優馬はちらっと横目でアリアを見るものの、どう話しかければいいのか迷っていた。会話のきっかけが思いつかなかった。
悩みながら外を眺めていると、電車は駅に停車した。
席との反対側の扉が開き、人が出入りをする。
着いた駅は、緑豊かな駅だった。駅の待ち合い席もホームも地面から伸びてきた太い木の幹で造られている。
こんなところ現実世界ではありえない。
だが、ここは夢の中の世界。何かあってもおかしくない。これは誰が想像して作られたのか・・・
優馬がファンタジーな世界観を想像することはできない。考えたこともないだろう。
だとすると、ありうるのはアリアだ。
「なー、アリア。この駅を想像したのって」
ようやく話しかけた優馬だが、向かいに座っているはずのアリアが居なかった。
優馬は席を立ってキョロキョロする。
すると、電車の中の窓から駅の中を眺めていたアリアが居た。
なんと今までの無表情が嘘みたいに、目を輝いていた。まるで、電車の中で外の景色を楽しんでいる子供のようだ。
優馬はそう考えると、プッと笑いした。
そして、景色を楽しんでるアリアの真後ろに行く。後ろに来ているのに全然気づいていない。
「外の景色楽しいか?」
優馬が話しかけると、アリアはビクッと肩を一瞬震わせ、後ろを振り向く。
優馬の顔は、悪戯をした子供ようににやにやしながらアリアを見ている。
「いや、その、め、珍しい駅だったからつい、はしゃいで、その・・」
アリアはだんだんかを真っ赤になり、口籠もる。
「これ、想像したのアリアだろう。」
「ち、違う、私じゃない。優馬でしょ。この駅を想像したの」
「いーや。俺はこんなファンタジーでお伽の国のような駅は想像しないぞ。この世界を想像して作ることできるのは、俺とアリアだけだからね」
「わ、私が考えたってわからないよ、もしかしたら、私たちのほかに第三者がいるかもしれない。」
アリアは必死に抵抗してくる。苦しい否定だ。
「もし、第三者がいたして、それは誰かな?俺達と同じ電車に乗ってるのか?」
「そ、それは・・・」
アリアは俯いた。さすがにいじめすぎたかなと優馬は罪悪感を覚えた。
『まもなく、発車します。扉付近にご注意ください。駆け込み乗車は危険ですので、おやめください。間もなく、発車します』
アナウンスが鳴り、アリアは二人が座っていた席に戻った。優馬も席に戻って座る。
そして、扉が閉まり、電車が動く。最初と戻ってしまった。
暫く外を眺めていると、アリアが話を切り出した。
「あの駅を想像したのは、・・・・私よ」
優馬はアリアを見ると、真っ赤になりながら仏頂面になっている。
「いきなりどうした。」
「電車が出る前に言ってたあれを答えただけよ。あんなファンタジーでお伽の国のような駅を想像したのは私よ」
最後の言葉を強調するかのように強く話す。
「なんだ、その言葉に気にしてたのか?意外に子供だな」
「それは、優馬も同じでしょ。小さい女の子にいじめるなんて、大人げない。」
なんだか、喧嘩腰の会話になってしまっている。
「そういわれても、俺、アリアの歳知らないしな。見た目からすると、中学生くらいだな」
優馬はアリアを足のつま先から頭のてっぺんまで見る。アリアは見られることに気づき、両腕で自分の体を抱く。
「な、何見てんのよ変態!」
「変態じゃねぇよ、誰がちんちくりんな体を求めるかよ」
優馬の言葉に、アリアの心を突き刺さった。
「わたしは、これでも・・・・・・」
何か言いかけたようだか、急に黙り込んだ。
「アリア?」
急に様子が変わったことで、優馬は名前を呼んだ。
アリアの表情はさっきまでも子供のような無垢な表情なく、初めて会った時のような無表情に戻って、俯いている
「アリア」
優馬は再び名前を呼ふと同時に、アリアの頭をなでる。
アリアは驚いて、顔を上げる。目と目が合った。優馬は真面目な視線を送っている。
「歳を触れて悪かったな。すまん。」
「・・・ううん。」
アリアは首を横に振った。
「いつか、話せるときがきたら話してくれ、俺も話すから」
子供をなだめるように優しい声で言う。
「うん」
アリアは小さく頷く。
見た目は小さく、小柄で抱けば折れてしまうかもしれないほど細い体をしている。
十四歳の時にこの世界に来ていると言っていたが、一体どれくらい暮らしていたのだろうか。一年、五年、十年。もしかしたら、それ以上かもしれない。
優馬もこの世界に来てから、どれくらい経ったのかわからない。
現実世界に戻ったら、どれくらいの年月が経つのだろうか。
考えても切がない。アリアの頭をなでる手を放し、再び外の景色を見ると、遠くに海が見える。清々しい空と海は空の色を映して深く沈み、大きくうねりながら、波頭を白くきらめかせている。
優馬は、電車の窓を開けて、身を乗り出す。
「アリア、見て見ろよ。海が見えるぜ。」
優馬が興奮して声をあげる。アリアはつられて外を見ると、目を丸ませて優馬と同じように窓から身を乗り出した。
「綺麗・・・・」
アリアはぽつりとつぶやく。
「駅に着いたら、降りて海に行こうか」
「でも、旅をしている途中じゃ・・・」
「ずっと電車の中じゃ、つまらないだろう。ちょっと息抜きだ」
優馬の楽しそうな声に、アリアは薄く笑い頷いた。
そして、次に着いた駅は海の家のような白のペンキで塗られた木造の駅に着いた。二人は降りて
駅をでると、目の前が砂浜と海だ。
二人は目を輝かせる。真っ先に走ったのは、アリアだった。
楽しそうに笑いながら、砂浜と波の境目まで来る。ワンピースの裾を上げて、ゆっくりと海の中に足のくるぶしまでつける。
「ふふふ、冷たーい。優馬も早くおいでよー!」
「いや、俺はここにいるよ」
優馬は砂浜の流木に腰を下ろす。
「えー、こんなに気持ちいのに」
「いいから、気が済むまで遊んどけ」
「一人でどう遊べばいいのよ!」
するとアリアは頬を膨らませ、海岸に上がる。優馬の隣に座る。
「なんだ、いいのか?」
「ひとりじゃ、寂しいよ・・・」
アリアが小さくつぶやく。その表情はどこか寂しげだった。
優馬は何か閃いたのか、立ち上がって数歩下がる。体をしゃがむなり、両手いっぱいに砂をすくい持ち上げる。
すくった砂を別の砂場に移す。
「何してるの?」
アリアは後ろを振り向いて問う。
「これから、でっかい砂の城を作るんだ。アリアも作るか?」
「うん!」
アリアは満面の笑みを浮かべ、一緒に砂の城を作ることにした。
土を掘って、すくって、山のようになった土を上から重ね、水を含ませ形を整える。
そして、西洋の城のような立派な砂の城が出来上がった。
「完成―!」
アリアが両手を上げて万歳のポーズをする。
「なかなか上出来じゃないか」
優馬は他人事のように言う、だが、落ち着いた言葉とは逆に、砂の城を色々な角度から鑑賞している。
「はぁー」
すると、優馬はため息をついて、砂浜の上で寝転ぶ。
「どうしたの?」
心配そうに声を掛け、顔を覗くアリア。優馬の顔は優しいに微笑む。
「なんかな・・・・疲れた、かな。この世界に疲れを感じないはずなのにな」
優馬は両手を頭に乗せ枕代わりにし、じっと、流れる雲を見つめていた。
「それ、達成感って言うんじゃないの?」
アリアも優馬の隣りで寝転び、空を見る。時間が存在していない世界で、空を見てもなんも面白味がないのに、なぜか、空が見たくなった。
「そっか・・・達成感か。これが、達成感っていうのか。」
優馬は独り言のようにつぶやく。すると、急に小さく笑い出した。
笑い出した優馬に怪訝そうに見るアリア。
「ど、どうしたの急に」
「いや、俺、達成感を感じた事なかったなって思ってさ。現実の世界じゃ、いつも同じことの繰り返しで、つまらなかったのに」
「今は?」
アリアの問いに、優馬は軽く笑う。
「楽しい」
優馬の笑みは、この世界どころか現実世界で見たことのない。満面の笑みを見せる。
まるで、子供のようで無邪気な笑みだった。
その笑みに、アリアの鼓動が少し高鳴った。
「優馬って子供ね」
アリアはからかうように言う。
「お前に言われたくないよ」
優馬は苦笑いしながら言う。
こんな気持ちが晴れやかなのは、いつ振りだろうか。まだ逢って間もないのに、傍にいたいと思うのは何故だろうか。もっと、アリアの事が知りたい。
「冷たっ!」
急に足が冷えてきたと思い、足を上げる優馬。海面が上がってきたのだ。
おそらく、満潮が近づいてきたのだろう。
「アリア、そろそろ潮時らしいな」
優馬はアリアに一声を掛ける。アリアは名残惜しそうに悲しそうな目で優馬を見て、小さくうなずく。
二人は、すぐに駅に向かい、電車が来るのを待っていた。
待っている間、ホームの外側に座って、足に付いた砂を払っていた。
「もう少し、あそこにいたかったな」
アリアは足の砂を払いながら口を尖らせつぶやく。
「そういうな、俺達の目的は夢の世界から眼覚める方法なんだから。別の場所に移動しなければならないし、ちょうどよかったかもな」
落ち着いた口調で、アリアに言い聞かす。
それでも、アリアは不満らしい。
「なら、現実世界に帰ったら、海に行こうな」
「えっ」
優馬の言った言葉に疑っているのかアリアは思わず聞き返した。
アリアの反応を見て、自分が言ったことを思い返すと、急に顔が沸騰したように熱くなった。
「い、今の言ったのは無しだ!忘れろ!」
優馬は早口にいうなり、口元を隠して顔を逸らす。優馬が言った言葉がまるで現実でも逢おうっていう約束してるみたいで、アリアはクスッと軽く笑う。
「あ、見ろ。海が」
優馬の声で、アリア後ろを振り返る。二人は立ち上がって、改札口近くまで行き、そこから見える海を眺めていた。干潮していた海と全く別の海に変わった。
満潮の海は、海の水平線上に立っているかのような感覚になる。
空と海の境界が美しく見える。
二人がそう見えるのは、海面が駅の出入り口である階段の上段まで浸水していたからだ。
「現実の世界にもこんな景色見られるかな?」
アリアは小さくつぶやく。
「アリア・・・」
「こんな景色、この世界しか見られないよね。しっかり心の中に刻んでおかなきゃね」
アリアは笑みを見せるが、その笑みはどこか寂しそうだった。
すると、そのとき電車が到着した。ドアが開き、アリアは優馬の手をとり引っ張る。
「早く夢から覚める方法を探そう」
アリアのなすがままされ、電車の中に乗り込む。
電車の中は二人だけだった。
二人はロングシートに座り、海の景色を見えなくなるまでずっと眺めていた。
次はどこの駅に着くのだろうか・・・・・
優馬とアリアは、空いていた四人掛けの席を見つけ、向かい合うように座る。
二人が乗った電車は、北上する電車らしいが、そんなの二人にとって関係なかった。この街じゃないどこかに、行けれるなら何処でもよかった。
ガタンコトン、ガタンコトン
二人を乗せた電車は徐々に加速していき、住宅街から田んぼや畑が見える田舎へ来た。
その間、二人は互いに外を眺めているだけで会話はなかった。
優馬はちらっと横目でアリアを見るものの、どう話しかければいいのか迷っていた。会話のきっかけが思いつかなかった。
悩みながら外を眺めていると、電車は駅に停車した。
席との反対側の扉が開き、人が出入りをする。
着いた駅は、緑豊かな駅だった。駅の待ち合い席もホームも地面から伸びてきた太い木の幹で造られている。
こんなところ現実世界ではありえない。
だが、ここは夢の中の世界。何かあってもおかしくない。これは誰が想像して作られたのか・・・
優馬がファンタジーな世界観を想像することはできない。考えたこともないだろう。
だとすると、ありうるのはアリアだ。
「なー、アリア。この駅を想像したのって」
ようやく話しかけた優馬だが、向かいに座っているはずのアリアが居なかった。
優馬は席を立ってキョロキョロする。
すると、電車の中の窓から駅の中を眺めていたアリアが居た。
なんと今までの無表情が嘘みたいに、目を輝いていた。まるで、電車の中で外の景色を楽しんでいる子供のようだ。
優馬はそう考えると、プッと笑いした。
そして、景色を楽しんでるアリアの真後ろに行く。後ろに来ているのに全然気づいていない。
「外の景色楽しいか?」
優馬が話しかけると、アリアはビクッと肩を一瞬震わせ、後ろを振り向く。
優馬の顔は、悪戯をした子供ようににやにやしながらアリアを見ている。
「いや、その、め、珍しい駅だったからつい、はしゃいで、その・・」
アリアはだんだんかを真っ赤になり、口籠もる。
「これ、想像したのアリアだろう。」
「ち、違う、私じゃない。優馬でしょ。この駅を想像したの」
「いーや。俺はこんなファンタジーでお伽の国のような駅は想像しないぞ。この世界を想像して作ることできるのは、俺とアリアだけだからね」
「わ、私が考えたってわからないよ、もしかしたら、私たちのほかに第三者がいるかもしれない。」
アリアは必死に抵抗してくる。苦しい否定だ。
「もし、第三者がいたして、それは誰かな?俺達と同じ電車に乗ってるのか?」
「そ、それは・・・」
アリアは俯いた。さすがにいじめすぎたかなと優馬は罪悪感を覚えた。
『まもなく、発車します。扉付近にご注意ください。駆け込み乗車は危険ですので、おやめください。間もなく、発車します』
アナウンスが鳴り、アリアは二人が座っていた席に戻った。優馬も席に戻って座る。
そして、扉が閉まり、電車が動く。最初と戻ってしまった。
暫く外を眺めていると、アリアが話を切り出した。
「あの駅を想像したのは、・・・・私よ」
優馬はアリアを見ると、真っ赤になりながら仏頂面になっている。
「いきなりどうした。」
「電車が出る前に言ってたあれを答えただけよ。あんなファンタジーでお伽の国のような駅を想像したのは私よ」
最後の言葉を強調するかのように強く話す。
「なんだ、その言葉に気にしてたのか?意外に子供だな」
「それは、優馬も同じでしょ。小さい女の子にいじめるなんて、大人げない。」
なんだか、喧嘩腰の会話になってしまっている。
「そういわれても、俺、アリアの歳知らないしな。見た目からすると、中学生くらいだな」
優馬はアリアを足のつま先から頭のてっぺんまで見る。アリアは見られることに気づき、両腕で自分の体を抱く。
「な、何見てんのよ変態!」
「変態じゃねぇよ、誰がちんちくりんな体を求めるかよ」
優馬の言葉に、アリアの心を突き刺さった。
「わたしは、これでも・・・・・・」
何か言いかけたようだか、急に黙り込んだ。
「アリア?」
急に様子が変わったことで、優馬は名前を呼んだ。
アリアの表情はさっきまでも子供のような無垢な表情なく、初めて会った時のような無表情に戻って、俯いている
「アリア」
優馬は再び名前を呼ふと同時に、アリアの頭をなでる。
アリアは驚いて、顔を上げる。目と目が合った。優馬は真面目な視線を送っている。
「歳を触れて悪かったな。すまん。」
「・・・ううん。」
アリアは首を横に振った。
「いつか、話せるときがきたら話してくれ、俺も話すから」
子供をなだめるように優しい声で言う。
「うん」
アリアは小さく頷く。
見た目は小さく、小柄で抱けば折れてしまうかもしれないほど細い体をしている。
十四歳の時にこの世界に来ていると言っていたが、一体どれくらい暮らしていたのだろうか。一年、五年、十年。もしかしたら、それ以上かもしれない。
優馬もこの世界に来てから、どれくらい経ったのかわからない。
現実世界に戻ったら、どれくらいの年月が経つのだろうか。
考えても切がない。アリアの頭をなでる手を放し、再び外の景色を見ると、遠くに海が見える。清々しい空と海は空の色を映して深く沈み、大きくうねりながら、波頭を白くきらめかせている。
優馬は、電車の窓を開けて、身を乗り出す。
「アリア、見て見ろよ。海が見えるぜ。」
優馬が興奮して声をあげる。アリアはつられて外を見ると、目を丸ませて優馬と同じように窓から身を乗り出した。
「綺麗・・・・」
アリアはぽつりとつぶやく。
「駅に着いたら、降りて海に行こうか」
「でも、旅をしている途中じゃ・・・」
「ずっと電車の中じゃ、つまらないだろう。ちょっと息抜きだ」
優馬の楽しそうな声に、アリアは薄く笑い頷いた。
そして、次に着いた駅は海の家のような白のペンキで塗られた木造の駅に着いた。二人は降りて
駅をでると、目の前が砂浜と海だ。
二人は目を輝かせる。真っ先に走ったのは、アリアだった。
楽しそうに笑いながら、砂浜と波の境目まで来る。ワンピースの裾を上げて、ゆっくりと海の中に足のくるぶしまでつける。
「ふふふ、冷たーい。優馬も早くおいでよー!」
「いや、俺はここにいるよ」
優馬は砂浜の流木に腰を下ろす。
「えー、こんなに気持ちいのに」
「いいから、気が済むまで遊んどけ」
「一人でどう遊べばいいのよ!」
するとアリアは頬を膨らませ、海岸に上がる。優馬の隣に座る。
「なんだ、いいのか?」
「ひとりじゃ、寂しいよ・・・」
アリアが小さくつぶやく。その表情はどこか寂しげだった。
優馬は何か閃いたのか、立ち上がって数歩下がる。体をしゃがむなり、両手いっぱいに砂をすくい持ち上げる。
すくった砂を別の砂場に移す。
「何してるの?」
アリアは後ろを振り向いて問う。
「これから、でっかい砂の城を作るんだ。アリアも作るか?」
「うん!」
アリアは満面の笑みを浮かべ、一緒に砂の城を作ることにした。
土を掘って、すくって、山のようになった土を上から重ね、水を含ませ形を整える。
そして、西洋の城のような立派な砂の城が出来上がった。
「完成―!」
アリアが両手を上げて万歳のポーズをする。
「なかなか上出来じゃないか」
優馬は他人事のように言う、だが、落ち着いた言葉とは逆に、砂の城を色々な角度から鑑賞している。
「はぁー」
すると、優馬はため息をついて、砂浜の上で寝転ぶ。
「どうしたの?」
心配そうに声を掛け、顔を覗くアリア。優馬の顔は優しいに微笑む。
「なんかな・・・・疲れた、かな。この世界に疲れを感じないはずなのにな」
優馬は両手を頭に乗せ枕代わりにし、じっと、流れる雲を見つめていた。
「それ、達成感って言うんじゃないの?」
アリアも優馬の隣りで寝転び、空を見る。時間が存在していない世界で、空を見てもなんも面白味がないのに、なぜか、空が見たくなった。
「そっか・・・達成感か。これが、達成感っていうのか。」
優馬は独り言のようにつぶやく。すると、急に小さく笑い出した。
笑い出した優馬に怪訝そうに見るアリア。
「ど、どうしたの急に」
「いや、俺、達成感を感じた事なかったなって思ってさ。現実の世界じゃ、いつも同じことの繰り返しで、つまらなかったのに」
「今は?」
アリアの問いに、優馬は軽く笑う。
「楽しい」
優馬の笑みは、この世界どころか現実世界で見たことのない。満面の笑みを見せる。
まるで、子供のようで無邪気な笑みだった。
その笑みに、アリアの鼓動が少し高鳴った。
「優馬って子供ね」
アリアはからかうように言う。
「お前に言われたくないよ」
優馬は苦笑いしながら言う。
こんな気持ちが晴れやかなのは、いつ振りだろうか。まだ逢って間もないのに、傍にいたいと思うのは何故だろうか。もっと、アリアの事が知りたい。
「冷たっ!」
急に足が冷えてきたと思い、足を上げる優馬。海面が上がってきたのだ。
おそらく、満潮が近づいてきたのだろう。
「アリア、そろそろ潮時らしいな」
優馬はアリアに一声を掛ける。アリアは名残惜しそうに悲しそうな目で優馬を見て、小さくうなずく。
二人は、すぐに駅に向かい、電車が来るのを待っていた。
待っている間、ホームの外側に座って、足に付いた砂を払っていた。
「もう少し、あそこにいたかったな」
アリアは足の砂を払いながら口を尖らせつぶやく。
「そういうな、俺達の目的は夢の世界から眼覚める方法なんだから。別の場所に移動しなければならないし、ちょうどよかったかもな」
落ち着いた口調で、アリアに言い聞かす。
それでも、アリアは不満らしい。
「なら、現実世界に帰ったら、海に行こうな」
「えっ」
優馬の言った言葉に疑っているのかアリアは思わず聞き返した。
アリアの反応を見て、自分が言ったことを思い返すと、急に顔が沸騰したように熱くなった。
「い、今の言ったのは無しだ!忘れろ!」
優馬は早口にいうなり、口元を隠して顔を逸らす。優馬が言った言葉がまるで現実でも逢おうっていう約束してるみたいで、アリアはクスッと軽く笑う。
「あ、見ろ。海が」
優馬の声で、アリア後ろを振り返る。二人は立ち上がって、改札口近くまで行き、そこから見える海を眺めていた。干潮していた海と全く別の海に変わった。
満潮の海は、海の水平線上に立っているかのような感覚になる。
空と海の境界が美しく見える。
二人がそう見えるのは、海面が駅の出入り口である階段の上段まで浸水していたからだ。
「現実の世界にもこんな景色見られるかな?」
アリアは小さくつぶやく。
「アリア・・・」
「こんな景色、この世界しか見られないよね。しっかり心の中に刻んでおかなきゃね」
アリアは笑みを見せるが、その笑みはどこか寂しそうだった。
すると、そのとき電車が到着した。ドアが開き、アリアは優馬の手をとり引っ張る。
「早く夢から覚める方法を探そう」
アリアのなすがままされ、電車の中に乗り込む。
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