お隣どうしの桜と海

八月灯香

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桜と海番外編

砂場事件簿

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桜8歳、海5歳


海に公園で砂場遊びしようって言ってた休みが土砂降りになってしまった。
どうしてるかなとお隣に行くと楓ちゃんが海を慰めるが納得がいかない海は行きたい、桜ちゃんと砂場いくを連呼していた。

「海、お外雨降ってるでしょ。桜ちゃんも困っちゃうよ。二人とも風邪ひいちゃう」

と楓ちゃんが宥めても海はヤダを連呼している。

「やだやだやだぁ!やくそくしたのに!すなばいくぅ!」

と目に涙を溜めてもう泣く一歩手前まで来ている。
海は頑固なところがあるので時々仕方がなくやめるしかない事を諦めさせるのは骨が折れる。
これは一度連れて行くしかないと一応砂場セットのバケツを持たせ、レインコートを着せて手を引いて公園を覗きに行った。
楓ちゃんがついてこようとしてくれたけど「お母さんきちゃだめ!」と海が怒ったので大人の傘を借りて濡れないように二人で連れ立って歩いた。
5分もかからない距離の公園には誰一人おらず、遊具も地面もびしょ濡れになっていた。
晴れた日にはいろんな犬種が来る海が大好きなドッグランにも誰も居ない。

「海、今日はやっぱり晴れた休みにまた来よう」

と傘の下で唇を尖らせる海に話しかけると流石にコレはダメだと思った海がうん、と頷いた。
納得してくれてよかった。
しゃがんで目を見て、尖った唇に軽いキスを送ると、海は少しはにかんでから首に手を回してくる。

「おうちで一緒におやつ食べよ」というと機嫌が直った声で「たべる!」と返事した。
海と桜は手を繋いで家まで戻った。



その翌週はとても気持ちのいい晴れだった。
午前中は水泳があったので午後から公園に出掛ける事にした。

先週と違って海の機嫌がとても良く桜にまとわりつくので可愛くて仕方がない。
砂場遊びをするので絵の具がついた汚れてもいい洋服を着ている。

「後で迎えにいくからね。海、シグ君の言う事よく聞いてね。」

ニコニコしながら「はぁい」という海の姿に楓もほっとして二人を送り出した。 



「ほら、海今日はワンちゃんもいっぱい居るね」

公園に入ってドッグランを見ると、さまざまなな犬種が戯れあっていた。

「わんちゃん…」

と海は目をキラキラさせている。
何匹か愛想の良さそうな犬を連れた飼い主に触っていいか聞いて触らせて貰うと、海はそれはもううっとりとした目をしていた。

「お嬢ちゃん犬好きなの?」

と飼い主のおじさんが言うと、海は「ちやう!おれ!男なの!」と強めに返した。

桜の事を「お姫様」と海は言うが海も顔立ちが女の子と見分けがつかない。
少し吊り目がちだが大きい目をしていて、顔のパーツの作りが整っていて可愛い。

おじさんが「ごめんねぇ」と謝ると「いいよ。」と海は返事をする。
犬が少しだけ大声を出した海に驚いてからしきりに海の頬を舐めている。
「わんちゃんびっくりさせてごめんね」と言いながら海が犬を撫でた。
その様子を桜は目を細めて見ていた。

この公園は敷地面積が広く、遊具が充実していて砂場の面積も大きい。
緑が多く暑い夏でも過ごしやすい。


男の子が数人、固まって砂場遊びをしていた。
海がニコニコしながらそのグループに近づいて行く。

「おれも砂遊び入れてほしい」

というと、海と歳のそう変わらなそうな四人のうちの意地が悪そうな一人が海を頭からつま先まで値踏みするようにみてから

「女は仲間に入れねーよ」

と言い放った。

海は「おれおんなじゃない」と言い返すが「おんなみたいなやつもいれない」といって四人でゲラゲラ笑い始めた。

海はお腹の前で両手を握りしめて俯いてしまう。

「海、あっちで桜ちゃんと砂遊びしよ」
と砂場の離れたところを指さして背中を撫でると、先ほどの子供らが桜を見て可愛いと思ったのか顔を赤らめた。

「おれ、おんなじゃないのに」

とさっきまでご機嫌だった海が沈んだ表情を浮かべている。
桜は海が居なかったらぶん殴ってやるのにと思った。

「今日は桜ちゃんが海にお城作ってあげる」

というと海はパッと顔をあげた。
桜は器用で時々海の出来ない事をやって海を喜ばせてくれる。

バケツや小さなシャベルを駆使して海の為に立派なお城を作ってくれた。

「海、ここにトンネルつくろう」と言って手伝わせてくれる。
桜が言ったところを海が小さな手で砂をかいていくと反対側から桜の手があたった。

「できた。」

桜が作ってくれた砂のお城は海が感動する程よく出来ていた。
後ろで見ていた男の子達も自分たちの砂の山のトンネルを作るのをやめて見ている。

先ほど海を女呼ばわりした子供が近づいてくる。
「おい、お前仲間に入れてやるよ」
と偉そうに海に声をかける。

「ほんと?」と海は嬉しそうに返事をしたが桜はおもしろくなかった。

「Dritt gutt」

ノルウェー語で「クソガキ」と言い放ったが、四人と海は意味がわからずぽかんとしていた。

「よかったね海。」と笑顔を海に向けると素直にうんと頷いた。


その後は社交的な海は上手に子供達と交流して、お城から続く城壁を作ったり、池を作って水を流したりして大いに楽しんだ。
海は自分が出来ない事を素直に「すごい」と褒めるので男の子達も機嫌よくしていた。

「海、そろそろお家帰ろうか」

と先ほどから眠くて船を漕ぎ始めている海に声をかけると海は「うん」と返した。

砂がついた手で目を擦ろうとするのを止めさせたりしながら海を抱き上げるとすぐに耳元で寝息を立て始めてしまった。

砂場セットをバケツに入れて持ち上げたところで四人が「もう帰るのかよ」やら「まだいいじゃん」やら口々に煩い。

「おい、お前ら2度とああいう意地悪な事海にすんなよ、次は許さないからな。」

と表情のない顔で桜は四人に言い放つ。
海に優しく接していた桜が放った声とは思えない。
四人がゾッとした顔になったのに満足してにっこり笑って「またね」と言った。

公園の入り口まで楓が迎えにきていた。

「あ!居た!シグ君!ごめんなさいね。
やだ海やっぱり寝ちゃったか、昨日桜ちゃんと遊ぶって興奮して遅くまで起きてたのよ。
海重たいでしょ。替わるわ」

と楓は海を受け取った。
家までそんなに距離があるわけではないが小柄とはいえ眠って重さのました海を家まで抱いて帰るのはまだ桜には難しい。
公園のベンチで海が起きるまで待とうかと思っていたところだったので助かった

「本当に助かるわ、公園に私がついて行くと海怒るから任せっきりにしちゃってごめんね。」

と楓ちゃんが言う。

「海といるの楽しいから」と本心からの言葉をかえした。
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