お隣どうしの桜と海

八月灯香

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別れる。

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秋になってきたはずなのにまだ暑い日が続いててまだ夏日が多い。



{俺もう無理、龍介と別れる}

出た…久しぶりの秀一からの別れるメッセージ。
これ、時々秀一がなるお別れモード。
きっといつもと同じ事情だなと思った俺はすぐに三上君にメッセージを送る。

{三上君、つかぬ事をお伺いしますが今顔面にあざある?}

と。

すぐに返事が来て、スパーリング練習で相手の肘が目の近くに当たって左目が腫れてる、と返って来た。
三上君、滅多にボコボコになったりはしないんだけど、ボクシングやってる以上はこう言う事がある。
始めた当初は全身アザだらけだったって言ってたし。

秀一はその度に好きな人の顔が酷い事になって心配が爆発してもう無理ってなるみたい。

三上君は初めは秀一にメッセージアプリブロックされるわ学校では徹底的に避けられるわで大慌ての大パニックで俺に連絡よこした。

秀一は秀一で話聞いたら心配すぎて怖いからもうやだって泣くし。

三上君は秀一の通ってる高校に進学出来たけど、秀一から徹底的に避けられてしまってるらしい。
これも別れる騒動での毎度の事。


でもって今回も三上君のメッセージアプリはブロックされてるそうだ。
しゃーない、土曜日に二人を呼び出すか…。
こういう事に首を突っ込むべきじゃないかもしれないけど、相手が同性だっていう秀一の事情を知ってるから放置するわけにもいかないんだよ…

初めてのことじゃ無いから俺も慣れたもんだ。




土曜日に桜に出かけようって誘われたけど断る。
昨日上映が始まったやつで超観たいけど、映画より友情を今回は取る。

万が一部屋に居るじゃねえかって桜に乱入されたら二人が困るから窓枠には侵入禁止のクマがスタンバイだ。

母さんは父さんと出かけた。
海も来る?って言われたけど今日はダメなんだ。


昼過ぎに秀一が地獄でも見て来たかの様な顔でやって来た、インターホンが鳴ってドアを明けたら連勤明けで疲労困憊のブラック企業で働いてる人みたいな事なっててうわって声出ちゃった。

秀一は三上君の事、ほんとに好きなんだよな。
なのにボクシングで怪我したりしてくるから、気が気じゃなくなって別れるって言っちゃう。
自分で会わないってつっぱねたくせに会いたくてしょうがないんだ。
勢いで別れるって言った手前、自分から態度を軟化させる事が出来なくなってるだけなんだよなこれ。

ほんとに別れたかったらわざわざ別れるなんて俺に言ってこないと思う。
しかし目の下に隈がばっきり出てるのは流石に…

「上がりなよ….」

げっそりとした秀一を見るのも何度目だろうな、でも顔色は過去一悪い。
秀一を俺の部屋にあげる。
お茶を出して、俺のベットにかけさせた。

秀一は、前にもいつか三上君がうっかりでもっと酷い事になるんじゃ無いかって想像が止まらないって言ってた。
そもそも秀一は温厚で殴り合いの喧嘩なんてした事ないようなタイプだ。
世の中には格闘技をやってる人がいっぱい居るし、テレビでも少しは見る。
頭では理解してるんだけど、こと三上君があざを顔面にってなるともう耐えられないってなってしまう、と。

「だからっていきなり一方的に別れるってメッセージ送ってブロックして避けるのは秀一がさらに苦しくなるだけじゃん。」

「…わかってる…けど咄嗟にやっちゃうんだ…今回は特に酷い怪我に見えてもうほんと無理…」

秀一が静かにそう言って俯いてしまった。
秀一は映画の拷問シーンとかでもちょっと青くなってる事あるもんなぁ…
このままだと泣き始めてしまいそうだなと思ってたら三上君からメッセージが届いた。

{海さんの家つきました}

「秀一ちょっと待ってて」

玄関まで降りて行ってドアを開けると、左眼に黒っぽいあざを作った三上君が居た。
あざの範囲がデカい…腫れてるから目もちゃんと開いてない。
完全に喧嘩した後のどヤンキーの見た目になってて、こ…これは怖い…………

「んおお……!ええ…目、大丈夫なの…」
「やられて暫くは霞んで見にくかったですけど今は大丈夫です。骨も異常ないし見た目ほど酷く無いって医者に言われました」
「そっか、よかった。秀一俺の部屋に居るけど落ち込んでるからちゃんと話しなよ。」
「…すみません。お邪魔します。」

キッチンで三上君に出すお茶をとってから部屋に戻る。
先に部屋に入って、秀一に三上君が来た事を告げる。

「ちゃんと二人で話して。秀一が不安に思ってることとか怖いこと、三上君に何度でも言ったらいいよ。
下にいるから困ったらスマホにメッセージして。」

秀一が不安な顔をしてるけど頷いたから三上君に入って、と促して部屋を出る。

秀一と三上君なら今回も大丈夫だろ。

なんでもそうだけど、相手が何思ってるとかなんて、会話しない限り全てを察する事なんて出来ない。
感情的にならずに落ち着いて話し合いが出来れば大概は大丈夫だと思ってるけど。

多分俺だって第三者目線で、秀一と三上君を見てるからなんとなく大丈夫だなとか分かる気がしてるけど、本当に大丈夫かは当人たちにしかわかんない。
自分が秀一や三上君の立場になったらなんもわかんないし秀一と同じ事しそうな気がする。
だから会話ってほんとに大事。


暫くリビングでテレビをザッピングして時間を潰した。
面白そうな番組もあるけど、上でちゃんと話がまとまってるのか心配も少しある。
二人とも強引に言うこと聞かせるタイプじゃないはずだけど。

1時間くらいしたら、二人が部屋から出来て下に降りて来た。
秀一は泣き腫らした目をしてたけどスッキリしててよかった。

「おう、まとまった?」と聞くと、秀一はうん、と頷いた。
「海….ありがとう」と照れくさそうに秀一が言った後、三上君が「海さんご心配おかけしました」って腰を負って礼をして来た。

秀一が三上君の服の裾を掴んでるのを俺は見逃さなかった。
うまくまとまったんだな。

「いいよぜんぜん。まだ早いしどっかデートして帰れば」

と言うと途端に秀一の顔が真っ赤になったので笑ってしまった。

あいつら人の部屋でチューしたんじゃねぇだろうな…しただろ、おい。

まぁ、いいけど。


道路まで出て二人を見送って、暇になった俺は桜にメッセージを入れようとしたら、ちょうど桜がランニングから返って来て俺に気が付いて手を上げた。

「お帰り桜。今暇になったから夕方からの回、間に合いそうだから観にいかない?」

と誘うと、ちょっと待ってて、すぐ支度する。
と言って桜が家に引っ込んだ。

俺も準備しよ。

後で三上君にメッセージアプリで話し合いの顛末をちょっとだけ聞いたら

あくまでスポーツとしてやってて、殺し合いじゃない。
ちゃんとトレーナーとか、大人の目があってやってるから秀一の考えるもしもは起こりにくい。

を言い聞かせたって。
一回練習見に来て欲しいって言われた秀一は、練習する三上君があんまりにかっこよすぎてそれも無理ってなってたけど、三上君があざを作っても大丈夫になってた。


よかったよかった。



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