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確信
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泳ぎの調子が悪い。
大きな大会に出る為にトレーニングと調整をしてるのに全然思ったようにいかない。
もっと高みにいけるはず。
あと少しで手が届きそうで届かない感覚に苛立ちを覚える。
筋肉の使い方とフォームを意識しろ、
もっともっと水を蹴れ、
そんなもんじゃないだろう、お前ならもっとやれる。
タイムは絶対伸びるはずだ。
気を抜くな。
どれもこれも煩い。
言われなくてもわかってる。
ストップウォッチを持ちながら必死でコーチが喚いてきて、耳障りな声にムカつきすぎて何度も壁を殴りつけそうになった。
何か一つでいい、今を飛び越える為にきっかけが欲しい。
苛立ちでどうにかなりそうな時は海に甘えた。
海が触れたところから落ち着いて溶けていくように思えた。
殺気だった肌を柔らかく撫でられて目を閉じた。
海の存在がある事で俺の精神はたもたれていく。
俺の精神状態が酷い分、海に触れる手は最大限に優しくしたい。
ゆっくり、海が俺だけを意識するように丁寧に身体を開く。
皮膚を確かめるようになぞり、舌で愛撫すると海は甘い息を吐いて恍惚としている。
「海に抱かれてるみたい。」
海が俺を受け入れているのを確かめるようにゆっくりと中を擦り上げた。
「ぁ……あ………ッ…!」
小さく声をあげて顎が上を向いて揺れた。
熱い息を吐く海の中が肉を絞るように痙攣してたまらずに吐精してしてしまう。
絶対に勝つ。
俺は今回の試合で勝って、海を完全に俺の物にしたい。
だから誰にも追いつけないくらいの場所に自分を持っていきたい。
俺より若い選手達が俺を追い上げようとして来てる事なんてわかってる。
そんな状態の俺の影響なのか、いつも通りに察してくれようとしている海が時々押し黙ってしまう事が増えた。
不安ごとがあるのかと聞いても「大丈夫」と返ってくる。
練習から帰ってきて海の部屋に行くと、
「おなかいたい…」
とブランケットにくるまってる事があった。
俺の今の状態が悪いせいな気がする。
発熱してる時もあった。
このまま試合に出て、俺が負けたら海は自分のせいだと思ってしまうんじゃないか。
海を安定剤にしながらも、何が不安なのか、何を苦しんでいるのか海が何を考え込んでいるのか分からなくて不安も生まれていた。
海の部屋のベッドから映画を観てる途中で海が「桜ちょっと下ついてきて。」と俺の手を取って立ち上がった。
手を引かれたまま、階段を降りてキッチンに向かうと、楓さんと謙一郎さんが居た。
「父さん、母さん。ちょっといい?」
と海が声をかけると二人はすぐに海を見た。
形の良い頭が緊張している。
海は何を言うつもりなのか…。
沈黙が長く続いて、謙一郎さんが何か言おうかと口をひらこうとして楓さんに止められた。
海が深呼吸して少しだけ頭を上に上げた。
「俺、桜と付き合ってる。
ごめんだけど孫は諦めてくれ。
…以上です。」
と言ってから頭を下にむけた。
今なんて?
海が?
婚約してからずっと親たちには関係を黙っていて欲しいって言ってた海が。
自発的に二人に俺との事を報告した。
ずっと悩んでたのはこれだったのか…!
繋いだ腕を引っ張ると海が回転してこちらを向いたのを思わず抱きしめた。
「すみません、ちょっと出かけます。」
海を抱えたまま足早に家に向かった。
「母さん車貸して」
帰ってきたばかりの母親が丁度玄関にいたのでそのまま鍵を受け取って海の元に急ぐ。
海は大人しく降ろした母親のクーパーの脇に立っていた。
運転席に滑り込んで助手席を開ける。
「乗って」
海は素直に乗り込んだ。
「シートベルトして。」
海のベルトが固定されたか確認して車を走らせた。
夕方混む道を避けて、海の誕生日によくいく海岸まで飛ばした。
図らずとも丁度日の入りのタイミングで、海には光の道が出来ているようだった。
助手席を開けると「自分で出れる」と海が言ったが、裸足のまま連れ出してきたので抱き上げた。
砂場じゃなくてコンクリートの地面には割れたガラスが落ちてる事があるからだ。
後部座席に海を移動させて自分も乗り込む。
日が沈みきってあたりは突如暗闇に近づいたが、海の俺を見つめる眼は光を拾って光って見えた。
俺の宝物。
両手で海の顔を包んでキスをした。
今は触れるだけのキスで多幸感に満たされる。
「婚約してるとは言えなかった。」
申し訳なさそうに海が言った。
無理矢理俺が取り付けた婚約。
それなのにその事を海はちゃんと受け止めていた。
純粋に嬉しかった。
「いい、海かっこよかった。」
腹を括った海はいつだってかっこいい。
さっきだってどれほど緊張していたか痛いほど伝わって来たのに、はっきりと二人に言い切ってくれた。
日々の葛藤も大きかったのが体調にでたのだろう。
バレたら良いのに、と時々本心を溢すと、
まだ言わないで、と言って海の目は不安でいっぱいの目をしていた。
海への愛しさと周りに言えない悔しさがいつもあった。
海は気が付いてない。
海がどんどん人を惹きつける空気を放って居る事を。
俺が身体を押し開いてから、海は日毎に纏う魅力が増していった。
婚約の後、海が俺を急激にそういう対象として意識した。
今も間違いなく海の気持ちは俺に向けられている。
だからこそその気持ちがわかる今のうちに、更に海を縛る約束が欲しい。
そう思っていた。
毎日苛立ちが強くなり、焦りが身を焦がしていた。
それが海の両親へのカミングアウトで全てが解放された様な気がした。
俺は必ず勝負に勝てる。
そう確信している。
大きな大会に出る為にトレーニングと調整をしてるのに全然思ったようにいかない。
もっと高みにいけるはず。
あと少しで手が届きそうで届かない感覚に苛立ちを覚える。
筋肉の使い方とフォームを意識しろ、
もっともっと水を蹴れ、
そんなもんじゃないだろう、お前ならもっとやれる。
タイムは絶対伸びるはずだ。
気を抜くな。
どれもこれも煩い。
言われなくてもわかってる。
ストップウォッチを持ちながら必死でコーチが喚いてきて、耳障りな声にムカつきすぎて何度も壁を殴りつけそうになった。
何か一つでいい、今を飛び越える為にきっかけが欲しい。
苛立ちでどうにかなりそうな時は海に甘えた。
海が触れたところから落ち着いて溶けていくように思えた。
殺気だった肌を柔らかく撫でられて目を閉じた。
海の存在がある事で俺の精神はたもたれていく。
俺の精神状態が酷い分、海に触れる手は最大限に優しくしたい。
ゆっくり、海が俺だけを意識するように丁寧に身体を開く。
皮膚を確かめるようになぞり、舌で愛撫すると海は甘い息を吐いて恍惚としている。
「海に抱かれてるみたい。」
海が俺を受け入れているのを確かめるようにゆっくりと中を擦り上げた。
「ぁ……あ………ッ…!」
小さく声をあげて顎が上を向いて揺れた。
熱い息を吐く海の中が肉を絞るように痙攣してたまらずに吐精してしてしまう。
絶対に勝つ。
俺は今回の試合で勝って、海を完全に俺の物にしたい。
だから誰にも追いつけないくらいの場所に自分を持っていきたい。
俺より若い選手達が俺を追い上げようとして来てる事なんてわかってる。
そんな状態の俺の影響なのか、いつも通りに察してくれようとしている海が時々押し黙ってしまう事が増えた。
不安ごとがあるのかと聞いても「大丈夫」と返ってくる。
練習から帰ってきて海の部屋に行くと、
「おなかいたい…」
とブランケットにくるまってる事があった。
俺の今の状態が悪いせいな気がする。
発熱してる時もあった。
このまま試合に出て、俺が負けたら海は自分のせいだと思ってしまうんじゃないか。
海を安定剤にしながらも、何が不安なのか、何を苦しんでいるのか海が何を考え込んでいるのか分からなくて不安も生まれていた。
海の部屋のベッドから映画を観てる途中で海が「桜ちょっと下ついてきて。」と俺の手を取って立ち上がった。
手を引かれたまま、階段を降りてキッチンに向かうと、楓さんと謙一郎さんが居た。
「父さん、母さん。ちょっといい?」
と海が声をかけると二人はすぐに海を見た。
形の良い頭が緊張している。
海は何を言うつもりなのか…。
沈黙が長く続いて、謙一郎さんが何か言おうかと口をひらこうとして楓さんに止められた。
海が深呼吸して少しだけ頭を上に上げた。
「俺、桜と付き合ってる。
ごめんだけど孫は諦めてくれ。
…以上です。」
と言ってから頭を下にむけた。
今なんて?
海が?
婚約してからずっと親たちには関係を黙っていて欲しいって言ってた海が。
自発的に二人に俺との事を報告した。
ずっと悩んでたのはこれだったのか…!
繋いだ腕を引っ張ると海が回転してこちらを向いたのを思わず抱きしめた。
「すみません、ちょっと出かけます。」
海を抱えたまま足早に家に向かった。
「母さん車貸して」
帰ってきたばかりの母親が丁度玄関にいたのでそのまま鍵を受け取って海の元に急ぐ。
海は大人しく降ろした母親のクーパーの脇に立っていた。
運転席に滑り込んで助手席を開ける。
「乗って」
海は素直に乗り込んだ。
「シートベルトして。」
海のベルトが固定されたか確認して車を走らせた。
夕方混む道を避けて、海の誕生日によくいく海岸まで飛ばした。
図らずとも丁度日の入りのタイミングで、海には光の道が出来ているようだった。
助手席を開けると「自分で出れる」と海が言ったが、裸足のまま連れ出してきたので抱き上げた。
砂場じゃなくてコンクリートの地面には割れたガラスが落ちてる事があるからだ。
後部座席に海を移動させて自分も乗り込む。
日が沈みきってあたりは突如暗闇に近づいたが、海の俺を見つめる眼は光を拾って光って見えた。
俺の宝物。
両手で海の顔を包んでキスをした。
今は触れるだけのキスで多幸感に満たされる。
「婚約してるとは言えなかった。」
申し訳なさそうに海が言った。
無理矢理俺が取り付けた婚約。
それなのにその事を海はちゃんと受け止めていた。
純粋に嬉しかった。
「いい、海かっこよかった。」
腹を括った海はいつだってかっこいい。
さっきだってどれほど緊張していたか痛いほど伝わって来たのに、はっきりと二人に言い切ってくれた。
日々の葛藤も大きかったのが体調にでたのだろう。
バレたら良いのに、と時々本心を溢すと、
まだ言わないで、と言って海の目は不安でいっぱいの目をしていた。
海への愛しさと周りに言えない悔しさがいつもあった。
海は気が付いてない。
海がどんどん人を惹きつける空気を放って居る事を。
俺が身体を押し開いてから、海は日毎に纏う魅力が増していった。
婚約の後、海が俺を急激にそういう対象として意識した。
今も間違いなく海の気持ちは俺に向けられている。
だからこそその気持ちがわかる今のうちに、更に海を縛る約束が欲しい。
そう思っていた。
毎日苛立ちが強くなり、焦りが身を焦がしていた。
それが海の両親へのカミングアウトで全てが解放された様な気がした。
俺は必ず勝負に勝てる。
そう確信している。
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