お隣どうしの桜と海

八月灯香

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ふうふ

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朝起きたら、いつも通り身体は綺麗にされてしっかり寝かしつけられていた。
今日は部屋に戻ったんだなってぼんやり考えながら起きる。
あんなセックスした後だから余計に朝もダラダラ絡まれるものだとばかり思っていたから意外だ。


ケツと腰の違和感がやばい。
俺はしばらくベッドの中で安静にしていた。

あの後ももう一回、もう一回って俺がイキすぎて泣いて気絶するまでやられたんだからそりゃそうなるわ、アスリートと凡人の体力の差考えろ。

普段あんな回数してこないだろっていうかまさかアイツ本当は絶倫なのか。
婚約した日も絶対あんなだっただろ。

俺はスケベな事が好きと言ってもあんなの結婚したから解禁だっつって毎回されたんじゃたまったもんじゃない…
毎回あんな事なったら死がみえる……

結婚早まったかも…

腰を庇ったのそのそした動きで顔を洗いに洗面台に降りて行き、キッチンにいくと母さんがおはようをいう前に「あんた寝癖すごい事なってるわよ」って言いながら爆笑しながらスマホのカメラを向けてくる。

「昨日のシグくん凄かったわねー!
あれはファン増えたに違いないわ。」

目の前に手際よく朝食が準備されていく。
近所の母さんのお気に入りのベーカリーの食パンのトースト、目玉焼き、焼いたソーセージと砕いたナッツが乗ったサラダ。

湯気のたつマグカップに手をかけた時、

「あら…」

と何かに気がついた母さんが目を輝かせた。
何だ?茶柱でもたってる?
とマグを持ち上げようとしたら左手の薬指に違和感を感じた。

「ん?」

は?なんか銀色の指輪勝手に嵌められてる。
こんなの知らん。

知ら…

「アーーーーーーー!何だこれ!!!!」

ごめんめっちゃでかい声でた。
母さんがビクってなってたごめんごめん。

アイツ…勝手に結婚指輪はめていきやがった。
なにこれ、映画とかだと今はこれで…とか言ってカフェのテーブルの備え付けペーパーを捻って嵌めるやつとか道端の露天で買うおもちゃのとかじゃないなんかシンプルだけど高級そうなやつ。

アイツなんで俺の指のサイズ知ってんだよとマジマジ見指輪を見てる俺をニヤつきながら「早くご飯食べちゃいなさいよ」と促してくる。

なんなんだよアイツ。
こんなヘビー級の下準備して俺がもしお断りしたらどうする気だったんだとも思うけど、お断り禁止状態で俺の頭ぐちゃぐちゃにして押し切る気で居たよな。
っていうかこれいくらしたんだよ。

っていうか結婚しようとは言ったけど意識ない間に指輪嵌めていくな。

そうかー、やっとねーなんて一人で楽しそうにしてるから放っておく。

「シグ君ならお父さんもお母さんも安心だから。」

とトーストを齧りながら母さんが話し始める。
父さんは昨日盛り上がりすぎてグンナーおじさんと飲みすぎてまだ寝てるらしい。

「あんたが小さい時に、シグ君の事女の子だと思っちゃってた時があってシグ君と結婚するって言ってたの覚えてる?」

そりゃ覚えてるよ、ちんちんついてたけど顔が可愛すぎるから女の子認定してたんだ。

「シグ君ずーっとあんたの事今の今まで好きで居たのよね。
あんたが小学校入った時位に俺はやっぱり男だからかわいいお嫁さん貰うって言いはじめた時、シグ君落ち込んでご飯食べれなくなった事あったって菜奈穂が言ってた事あんのよ。」

それは初耳のやつ…

「海は男の子だから、仕方ないことだし、シグ君にもいい人できるよって言い聞かせてもシグ君ガンとして海と一緒になれないなら他の人なんかいらないって自分の思いを曲げ無かったんだって。
自分が海に振り向いて貰えるように頑張るって。」

ドラマチックだわ、なんて言ってる…。
自分が思ってるよりもずっと、大人達が見ていた桜の俺への気持ちが大きい。
うわ、なんかめちゃくちゃくる。
目頭が熱い。

「父さんも母さんもグンナー君も菜奈穂もあんたたち二人をずーっと見てきたからさ。
あんたはかわいい女の子見て喜んでるし。
本人達の気持ち次第だからなるようにしかならないなとは思ってだけど。
あんた女装したらモテるとか言い始めた時はギョッとしたわ。

シグ君ずっと努力の人だし、何年経っても毎回海のもとにすぐ帰って来ちゃうし。
海の事大事にしてくれるだろうなって。
海がシグ君の気持ちに応えてあげられたらいいのにって、母さん思ってたよ。」

朝ごはん食べながら母さんの話をうんうん頷きながら泣いた。
アホみたいにめちゃくちゃ鼻水と涙出てくる。

母さんはそんな俺を優しい目で見つめてくる。

本当に、出来た人だなぁと改めて思った。

「同性だし、周りの目もあるし、シグ君あんな凄い人だから大変に思う事もあるかもしれないけど大丈夫だって信じてるわ。」

あんたら今までずっと大丈夫だったでしょ。と母さんは満足げに言った。

母さん達は、ずっと俺らがこうなることを否定しないように気持ちの準備してくれてたんだなって。
桜が、ずっと大人達にこうなる将来が来たら俺が不安にならないように大人達に覚悟させてくれてたんだなって。
他の親だったら同性とくっつくなんて否定的な事もあるだろうに。
長い時間をかけて認めさせてくれたんだ。

いろんな場面での大人達の反応を思い出すと、そう言う事だったのかと合点がいく。

思わず母さんに抱きついた。

うめくみたいな泣き声しか出て来てないけど、感謝の気持ちは溢れてる。



結婚とは言ったけど、そんなのはこの国では認められていない。
だけどパートナーシップ宣言制度とかが出来てきてる地方もあるみたいだけど。

俺は思い立って区役所で婚姻届を貰ってきた。
届け用紙はこんなに簡単に手に入るし、なんなら雑誌にだって付録としてついてるのにどれだけ丁寧に書いたって俺たちのは同性を理由に受理されないんだよな。

どんなに好きで将来を誓っても、公的に認めて貰えない。
それって本当に変な事じゃないかって思う。


昼過ぎに桜がグンナーおじさんと菜奈ちゃんを連れてうちに来た。
なんか桜とグンナーおじさんがみつ揃えのスーツでやってきて、
桜はでかい花束抱えてやってきた、あんなデカいのどこぞのお店の開店祝いレベルでしか見た事ないぞ。
グンナーおじさんはマフィア映画に出てくるボスの用心棒みたいだった。

何だ?勝利報告か???

菜奈ちゃんは清楚系ワンピース姿でニコニコしてて相変わらず美少女のようで…

俺は何も聞かされてないので今から何が始まるんだと一人だけ身構えていた。

リビングで向かい合わせに床に座る。

身体が縦にも横にも大きなビシッと決まったマフィアなグンナーおじさん、スーツで王子度メーター振り切ってる桜、ニコニコ可愛い菜奈ちゃん…正面の絵の完成度がエグい。
なんかキラキラのエフェクトが舞ってる…
撮影とかじゃないの?カメラとかどこかにあんじゃないのかと両親に挟まれながらキョロキョロしてしまう。

「謙一郎さん、楓さん。」

王子が床に膝をついて居住まいを正す。
桜の左手に昨日まで無かった指輪がはまっている…

その瞬間俺は気が付いてしまった。

おい!まて!ちょっとまって!まてまてまて!!!
このままでは俺が嫁に貰われる奴じゃないの!それはダメだ!沽券に関わる!!!

俺は思わず両手で床を叩いた。

「わー!わー!さくら!まって!ダメ!!おじさん菜奈ちゃん!!!!俺に桜、嫁にちょうだい!」

あまりの勢いでこんな場面なのにめちゃくちゃな軽口になってしまった。
ちょうだいってなんだよ…お菓子じゃないんだぞ…

桜は弾けんばかりの笑顔になってるし、グンナーおじさん笑いすぎて涙出てるし菜奈ちゃんも「あげるぅ」とか言ってるけど俺は「あんた…」と怒る時の声がして怖くて母さんの方を振り向けなかった。
父さんも爆笑してる。

寿命縮む…

こうして俺はかろうじて俺が旦那であるという体だけは死守した…

っていうか指輪って、この話の後ではめる物なんじゃ無いの…少なくとも寝てる間に勝手にはめていくものじゃないよな…




六人で談笑しながら菜奈ちゃんが焼いてきてくれたお菓子を食べてる時に、

「海、今全員揃ってるんだから婚姻届書いちゃえば?」 

と母さんが言い放つ。

待って…心の準備出来てからちょっとずつ埋めてこうと思ってたのに…
「いや…今じゃなくてもぉ…」と言いかけたら

「海、婚姻届貰ってきてくれたの!?」

桜がキラキラで俺の眼を潰しにくる勢いで喜色満面になった。

いや、家で出力してもよかったんだよ。
でもなんか、そんなよりちゃんと公的な場所が出してる紙に記入したかったんだ。

桜は俺が婚姻届を取りに行った事がよほど嬉しかったのか、歓喜しすぎて自分の欄を埋める時俺を無理やり膝の上に乗せた。

俺が書く間もだ!

お前そんな高そうなスーツシワシワにする気か!
双方の両親が見てる中だったから死ぬほど恥ずかしかった。
恥ずかしくてうつむくと首に唇押し当ててくる…!!!
付き合ってる宣言した後もそうだけどコイツの行動がどんどんオープンになるのは困る。
そのうち外でもブチュブチュやり始めるぞ……

勿論提出する事は出来ないが、俺と桜と、お互いの両親が書き込んだものを御守りに持つ事にした。

全員が書き終わるまで俺はずっと嬉しい、嬉しいと言う桜に頬を吸われていた…


俺たちは世間様には認められないかもしれないけど、間違いなく両親達に祝福されている。

日々の生活はいつもと変わらない。

だけど何よりも、家がお隣の幼馴染から俺と桜はふうふになった。

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