お隣どうしの桜と海

八月灯香

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海と桜ファンタジー設定番外編

魂の番✴︎(オメガバース設定)

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保育園の時のパッチテスト検査で、俺の第二の性別がΩである事がわかった。

αじゃない事だけは確実なのはわかってたけど…。


「第二の性別のせいで海が卑屈にならない様にしないと…」と強く思ったそうだ。

父さんと母さんはβの夫婦だ。
二人は俺がΩである事がわかっても俺の事を可愛がった。

お隣にウチと懇意にしてる超仲のいい親子が住んでいるのだが、一つ問題があった。

息子がαなのだ。

おじいちゃんがαだから覚醒遺伝が出たのかも、とか言ってた。

お隣のαの息子桜は、第二の性がわからない頃から俺を猫可愛がり状態だった。

俺が産まれた時から今に至るまで『海、かわいいね』とずっと言い続けている。


母親同士が高校の同級生で物凄く仲の良い家族なので当然ながら子供をのけてお隣と即家族会議になった。

『今はいいかもしれないけど海君に発情期が来た時に、シグルドが近くに居ると二人とも大変な事になる。』

と。

Ωが発情したフェロモンは強烈にαを惹きつける。
本人達の意思など関係なく、ただ本能に支配される。


αの見本のような桜は見た目の良さだけではなく体格にも恵まれ、運動能力もずば抜けている。

誰の目から見てもまごう事なきαで、まぁモテにモテていた。

ひっきりなしに交際やら縁談の話が来ているのを桜は全部断っていた。

中には財界人のお孫さんとかも居たらしい。

一方の俺は小柄で、βにもいるタイプだけどΩらしいっちゃらしかった。

父方のじいちゃんには「海は可愛いから旦那さん貰うかもなぁ」って言われてた。

「バカ言うなよじいちゃん、俺はβだぞ可愛い嫁さん貰ってハッピーライフ送るわ」って笑いながら返してたし、クラスメイトとも猥談とかエロ動画の女優がああだこうだ言っていた。

オナニーだってアダルト動画とか女の子の写真でしてたし。
女の子のαは強そうすぎてオカズにした事はないし、男を想像して抜いた事もない。

ある程度の歳まで桜には俺の事は両親もβだし、βだと言っていた。

桜も『そう。』と返してきたそうだ。

俺だって自分がβでしかないと思ってた。

Ωは中学校の時に診断書提出が義務づけられているが、親が学校側に事情を説明して俺には伏せられていたし、アウティングする様な先生も居なかったし在学中には発情期も来なかった。

時々テレビで酷い事件が起きているのを見てΩは大変だなーとうすぼんやり思っていたものが突然自分の身に降りかかった。

「なんか熱っぽいのが引かないんだけど母さん病院連れてって…」

「海…ごめんね、海に隠してた事があるの。」

あの時の母さんと父さんの目は我が子を憐れむ目だった。

発情期の兆しが来てしまった時に実は俺がΩである事を知らされた。
桜にはインフルエンザになってるから、と母さんが伝えて近づかせない様にしてた。

病院からは自衛の為の発情期抑制剤のピルと特効薬の注射が処方された。

思春期前に個別に行われるΩの心構え教室で色々話を聞かされたけど、Ωは数が少ない上に迫害された歴史もあるし今でも偏見を持っている者が居て、発情期になった時に男女関係なく酷い性被害に会う場合がある…という有様だ。

望まない性交、望まない妊娠、望まない番。

発情期のΩフェロモンに当てられて、ヒートを起こして更にラットという凶暴な状態になったαに征圧されたら勝てない事、発情期の性交中に首を噛まれたら強制的に番にさせられるが、噛んだαが逃げて廃人になったΩもいる。
そして発情中、ヒートを起こしているαに腹の中に吐精されたら男だろうが100%Ωは妊娠してしまう。

一番最悪なのは望まない子供は堕胎…産んだとしても虐待の目に遭う事が多く、妊娠させて逃げたαにおとがめは無いが我が子を虐待したΩは当たり前に罰せられる。

産んだ子供がαで、それを知った逃げたαに取り上げられてしまった話もあるらしい。

αに噛まれたΩは噛んだαとしか性交ができない。

噛まれた相手としか性交出来ないのに発情期はあるし、その唯一の相手が逃げるなんて酷い話だ。

数の少ないΩの放つ発情フェロモンが、絶対数の少ないαを強烈に引き寄せてしまって事故が起きる。
フェロモンに反応したβにも襲われることもある。

そこには本人達の意思や尊厳は意味が無くなる。
ただ動物的な本能だけがそういうふうに行動させる。


社会的地位も低い挙句に危険が盛り沢山だけど自分の運命だし仕方ないから受け入れて頑張ってね!って言われてるみたいでヤバすぎる。

「血液検査のこの数値もここの数値もΩの特徴が完全にでてます。」

改めて病院で検査でΩ確定の結果を並べられて天を仰いだ。

お気楽思考の俺は完全にΩだった。

「マジか~~~~~~~~。」

「まぁ、今は薬である程度は抑えられるし、取れる対策はしていきましょう。
ネックガードもあった方がいい。
困ったらシェルターに逃げるのも手だし、Ωだけが利用できる施設の紹介リーフレットも後で渡すからお家で見てみて。」


その後は漢方薬と抑制剤のピルを飲むようになり、暫くは発情期は抑えられて何も起こらなかった。

だけどある日、ピルを飲んでも抑えきれない発情期が来た。

「なんかおかしい…病院電話して。」

俺の発情は特異体質によるものだった。
とりあえず特効薬を打って様子を見てくれと言われたが、打ったあと発情はすぐにおさまったが三日間吐き続けて水分も受け付けられず、衰弱して病院送りとなり一週間点滴の世話になってしまった。

医者に相談してみるも拒否反応が出てしまってるから、体質的に特効薬を使う事は身体の負担が大きすぎてやめた方がいいと言われてしまった。

…そしてまたそんな発情期はいつか必ず起きると言われた。


「積んだ…体質って言われたらどうしようもないじゃん…どうしよ…」


この発情が起こるたびに毎度入院騒ぎになるのも困る。

インフルエンザだから、なんかのアレルギー反応出て寝込んでるからと都度桜を遠ざけてはみたが、薬も効いてる発情期とかそうじゃない日に桜が俺に「なんかコロンとかつけてる?」って聞いてきた。

発情期関係無く、桜を誘うフェロモンを放ち始めたんだと思った。

桜の顔を見るだけでも身体の熱が勝手に上がる事が増えた。

そうなると「海からいい匂いする」と言って来る様になった。

「母さんやばい…このままだと桜を犯罪者に俺がしちゃう。」

俺だけ引っ越すか、Ωの施設に入れないかを話し合った。


「…海君が何処かに行ったらシグルドは血眼になって探すかもしれない…あのね、海君…」


桜の母親の菜奈ちゃんが苦しそうに話してくれた。

聞いたら特効薬を注射して入院した時の桜の心配のしようが大変だったらしい。

桜は俺の事を小さい頃から好きで、βでも番になりたいし、俺の事を親達は違うって否定してるけどΩなんじゃないかって疑いをずっと持っていて。

俺からいい匂いがし始めて時確信に変わったって。

事あるごとに親達に「海を他の人間になんか渡したく無い」と言っていたが、特効薬の副作用で入院までいってしまった後に自分にΩである事を隠す為にこれ以上海をこんな目に遭わせないでくれと怒ったらしい。

βがαの怒りに勝てる事はない。
親達も怒りを露わにした桜は相当怖かったと思う。

親達も更に話し合いをして、外に出て嫌な目に遭うよりはと桜がそう言う気持ちでいる事を俺に伝えてきた。

桜にももう俺がΩだという事は親達からも伝えられていた。

「どうするかは、海が決めなさい。」
と母さんが俺に言った。


無い頭でいっぱい考えた。
俺も桜の事は幼馴染として好きだけど、いろんな能力値の高い桜を俺が縛りつけるのは未分不相応だなと思った。

桜が俺を好きだと言ってたとしても、何の能力も持たない俺は伴侶として桜に相応しくない。


「…俺やっぱり施設の世話になるよ。
桜の将来俺のせいで棒に振らせたくないし。
俺の発情期に振り回されて生活すんのも皆が疲れるし。」

「…海…」

「すぐ手続きするから桜には上手く言っておいて欲しい。」

母さんは少しショックを受けたような表情になったが父さんも俺の意思を尊重してくれた。

俺に仕事をくれてた桜の父親のグンナーおじさんにも辞めさせてくれとお願いした。

おじさんは俺がどっか行かなくても、桜を選ばなくても上手いやり方があるはずだって納得いってない顔だった。


「海、一週間後に受け入れ出来ますって。」

「わかった。」


Ωが入れる施設はαからは隠されている。
そこでならもう桜が俺の存在にやきもきしなくていい。


…だけど身体は言う事を聞かなかった。

薬が効かない発情期が施設に行く準備中に再び来た。

体質的に特効薬は使えない。

抑え込めない欲求に怯えて部屋の鍵をかけて籠った。
ベッドの上でうずくまって吐精した。

欲求は性的なものなのに、解放しようとしても腹の中の熱はおさまらない。
頭が沸騰して涎が止まらない。

俺の部屋の異変に気がついた桜は窓を外から開けた。
前まではこう言う時、うつる病気だからと言われてたけど、今回は桜は俺がどういう状態なのかわかってる。
子供の頃から時々桜はこうやって俺の部屋の窓の鍵をを外から開けて入ってくる事がある。

カーテンが揺らめいて桜が近づくのを感じる。

「桜!駄目だ!入ってくんな…入ってくんなよ!!」

桜が近づいて来て俺は身をすくませた。

「海、俺とつがいになろう。」

「だ…め…!」

自我がかろうじてあるうちに押し問答を繰り返したが、桜が身体に触れて来てとうとう抗えなくなった。

「う…ぁ……あ………!」

「駄目じゃないでしょ。
海、俺以外の誰とつがうの?」

「さ…くら……!だめ!!」

初めて性的な意図を持って桜に触られて更に強烈に発情し、後ろの孔から大量の愛液が漏れ出る異常事態に恐怖した。

「さくら………!」

 自分の身体が無理矢理作り変えられてしまったかの様だった。

口では桜を止めさせようとする言葉が出るのに、身体は桜に縋りついた。
桜が何度もキスして来る。
頭の中は桜に抱かれて解放される事でいっぱいになって自分をコントロールする事はもはや不可能になってしまっていた。

桜は何度も「大丈夫」って言い聞かせながら恐怖状態に陥った俺を抱きしめた。

「ずっと一緒にいよう。」

桜が優しい声で言って来て、俺は助けて、とうわごとの様に何度も言って桜に縋りついた。

桜に身体を開かれて、後ろから貫かれた瞬間、身体中に甘美な電気が走り抜けた。
初めてなのに、俺の後ろの孔は凶器の様な桜のチンコを容易く飲み込んだ。

濃いフェロモンを撒き散らす俺を前にして、桜はヒートを起こしていたけど暴走しない様に自分の腕を強く噛んでそれを押さえ込んだ。
後で見たら酷い噛み傷になっていた。

「ァ………あ………なか……なかぁ……!」

自慰では感じた事のない昂りに支配されて俺は腹の中に吐精をしてくれとねだった。

強い快感の中「海、俺の事選んで」って言われて俺は頷くしかなかった。

「ん…ぁ……さくら…さくらがいい…!
さくらが…い…からあ………ア………ァ"ッ!!」

桜は俺を絶頂させた瞬間うなじを噛んだ。

生々しい歯が皮膚にあたる感触と、強い痛み。
その瞬間の怖い事から全部解放される様な高揚感を今でも鮮明に覚えている。

桜が胎の中に射精したけど、アフターピルを持っていたので妊娠せずに済んだ。


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