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32話 ひたすらイチャイチャしてみる①
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今日も今日とて、彩愛先輩の爆音アラームによって目が覚めた。
布団を跳ね除けるように起き上がり、いつも通り隣人を叩き起こすべく窓を開けて身を乗り出す。
と、ここで大事なことを思い出し、深呼吸をして半ば強引に怒りを心の奥へと押し込む。
ケンカしそうになったら、一旦怒りを堪えて抱きしめる。
二人で相談して決めたばかりだというのに、いきなり反故にするわけにはいかない。
この場で抱擁や握手はできないので、とりあえず穏便に彩愛先輩を起こすとしよう。
「彩愛先輩、起きてください。もう朝ですよ。早く起きてイチャイチャしましょう」
怒りを堪えようとする意識が過度に働き、穏やかな口調を通り越して猫なで声を出してしまった。
黒歴史の一つとして数えられる程度には、普段とかけ離れた声色になっている。
強烈な羞恥に顔が熱くなるのを感じながら、私はコンコンコンコンとノックを高速で繰り返す。
「ふあぁ~……んん、歌恋、おはよ」
大きなあくびを漏らしつつ、彩愛先輩が窓を開けて姿を現す。
両者とも窓際にベッドがあることにより少し動くだけで顔を合わせられるというのは、恋人関係になったいま、改めてありがたいと思う。
「おはようございます。殴りに――じゃなかった。抱きしめに行ってもいいですか?」
「んー、いいわよ」
眠そうに目を瞬かせる彩愛先輩に許可を貰い、私は窓を伝って向かいの部屋に移動する。
ベッドの上に降り立ち、腰を下ろすと同時に彩愛先輩の背中に腕を回した。
ふわりと香るシャンプーの匂いや華奢な体の温もりを零距離で感じ取り、愛する人を腕に抱いているという幸福感も相俟って、先ほどまでの怒りはあっという間に消え去った。
彩愛先輩も私のことをギュッと抱きしめてくれて、昨日まで毎朝のように殴り合っていたのが嘘のようだ。
「この方法、思った以上に効果的ですね」
「……ん、そうね」
「まだ眠いんですか?」
「いや、そうじゃなくて……む、胸が、その、当たって……」
「ハグしてるんだから当たるに決まってるじゃないですか」
「そうだけど、どうしてもドキドキしちゃうのよ! 察しなさいよ!」
いま私たちはお互いに相手の肩にあごを預けている状態なので、彩愛先輩の特徴的なアニメ声が至近距離から私の鼓膜を攻撃した。
「数え切れないぐらい私の胸を揉んでるくせに、なにをいまさら」
「確かにそれもそうだけど、イタズラとかその場のノリで揉むのとは違うっていうか、こうしてる間にも変な気持ちになってきたというか……」
後半になるにつれて段々と小声になり、ごにょごにょとつぶやく彩愛先輩。
「この調子だと、これからいろいろ大変そうですね」
「否定できないわね。歌恋はあたしと密着してても、なにも感じないの?」
「尋常じゃないほどの幸せを感じてますよ」
不安気に訊ねられたので、ハッキリと本音で答える。
けっこう大胆なことを言ってしまったと気付き、照れ臭いのを紛らわせるために腕の力を強めた。
「そっか……よかったっ」
彩愛先輩はとても嬉しそうな声でそう言い、私と張り合うように腕に力を込める。
後になって思い返せば間違いなく赤面するような甘い触れ合い。
どうせ照れて悶絶するのなら、いまは時間の許す限り、このまま抱き合っていよう。
布団を跳ね除けるように起き上がり、いつも通り隣人を叩き起こすべく窓を開けて身を乗り出す。
と、ここで大事なことを思い出し、深呼吸をして半ば強引に怒りを心の奥へと押し込む。
ケンカしそうになったら、一旦怒りを堪えて抱きしめる。
二人で相談して決めたばかりだというのに、いきなり反故にするわけにはいかない。
この場で抱擁や握手はできないので、とりあえず穏便に彩愛先輩を起こすとしよう。
「彩愛先輩、起きてください。もう朝ですよ。早く起きてイチャイチャしましょう」
怒りを堪えようとする意識が過度に働き、穏やかな口調を通り越して猫なで声を出してしまった。
黒歴史の一つとして数えられる程度には、普段とかけ離れた声色になっている。
強烈な羞恥に顔が熱くなるのを感じながら、私はコンコンコンコンとノックを高速で繰り返す。
「ふあぁ~……んん、歌恋、おはよ」
大きなあくびを漏らしつつ、彩愛先輩が窓を開けて姿を現す。
両者とも窓際にベッドがあることにより少し動くだけで顔を合わせられるというのは、恋人関係になったいま、改めてありがたいと思う。
「おはようございます。殴りに――じゃなかった。抱きしめに行ってもいいですか?」
「んー、いいわよ」
眠そうに目を瞬かせる彩愛先輩に許可を貰い、私は窓を伝って向かいの部屋に移動する。
ベッドの上に降り立ち、腰を下ろすと同時に彩愛先輩の背中に腕を回した。
ふわりと香るシャンプーの匂いや華奢な体の温もりを零距離で感じ取り、愛する人を腕に抱いているという幸福感も相俟って、先ほどまでの怒りはあっという間に消え去った。
彩愛先輩も私のことをギュッと抱きしめてくれて、昨日まで毎朝のように殴り合っていたのが嘘のようだ。
「この方法、思った以上に効果的ですね」
「……ん、そうね」
「まだ眠いんですか?」
「いや、そうじゃなくて……む、胸が、その、当たって……」
「ハグしてるんだから当たるに決まってるじゃないですか」
「そうだけど、どうしてもドキドキしちゃうのよ! 察しなさいよ!」
いま私たちはお互いに相手の肩にあごを預けている状態なので、彩愛先輩の特徴的なアニメ声が至近距離から私の鼓膜を攻撃した。
「数え切れないぐらい私の胸を揉んでるくせに、なにをいまさら」
「確かにそれもそうだけど、イタズラとかその場のノリで揉むのとは違うっていうか、こうしてる間にも変な気持ちになってきたというか……」
後半になるにつれて段々と小声になり、ごにょごにょとつぶやく彩愛先輩。
「この調子だと、これからいろいろ大変そうですね」
「否定できないわね。歌恋はあたしと密着してても、なにも感じないの?」
「尋常じゃないほどの幸せを感じてますよ」
不安気に訊ねられたので、ハッキリと本音で答える。
けっこう大胆なことを言ってしまったと気付き、照れ臭いのを紛らわせるために腕の力を強めた。
「そっか……よかったっ」
彩愛先輩はとても嬉しそうな声でそう言い、私と張り合うように腕に力を込める。
後になって思い返せば間違いなく赤面するような甘い触れ合い。
どうせ照れて悶絶するのなら、いまは時間の許す限り、このまま抱き合っていよう。
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