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37話 クレーンゲーム①
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学校から少し離れたところにあるショッピングモールの空きテナントに、百均が入ったらしい。
目当ての品は特にないものの、私と彩愛先輩は興味本位で放課後に寄り道することにした。
目的地に着くと、私たちは店内を一通り見て回り、お菓子を二つほど購入して店を後にする。
すぐに帰るのはもったいないという話になって、ふと視界に入ったゲームコーナーに足を運ぶ。
通路に面したところにはクレーンゲームの筐体が並び、内部には有名キャラクターや動物をデフォルメしたぬいぐるみが置かれている。
「このぬいぐるみ、かわいいわね」
「そうですね。大きくて丸っこくて、抱き心地もよさそうです」
緩んだ表情が愛らしく、見ているだけで心が和む。
数秒ほど眺めていると、彩愛先輩がスッと財布を取り出し、おもむろに百円を投入した。
「猫って歌恋にピッタリだし、プレゼントしてあげるわ」
彩愛先輩にこそふさわしいと思うんだけど、ここは黙っておこう。
「嬉しいですけど、そう簡単に取れたら苦労は――」
「あっ!」
アームから離れた景品が取り出し口に落下し、軽快な音楽が鳴り響く。
まさかの一発ゲットだった。
「すごいですよ彩愛先輩!」
「ふふんっ、あたしにかかれば楽勝よ!」
二人して大喜びしていると店員さんが現れ、「おめでとうございます!」と言って手持ちの鐘を鳴らしながら持ち運び用の袋を渡してくれた。
「ほら、約束通りあんたにあげるわ」
「ありがとうございますっ、彩愛先輩だと思って大切にしますね」
「ええ、そうしなさい。変なことに使うんじゃないわよ」
「変なこと?」
「あ……え、い、いまのは忘れなさい! なんでもないわ! ぬいぐるみを変なことに使えるわけないわよね! っていうか変なことってなんのことかしら! あたしには全然分からないわ!」
彩愛先輩が壊れた。百円で景品を獲得できた喜びは、私の想像以上に刺激が強かったらしい。
「あ、そうだ。私も彩愛先輩にプレゼントしますよ。せっかくですから、おそろいのぬいぐるみを飾りましょう」
「取れるとは限らないけど、それなりに期待しておくわ」
「一発でゲットしますから、しっかり見ててください」
私は百円玉を入れ、ボタンを押してアームを操作する。
絶妙な位置にアームが引っかかり、掴まれたぬいぐるみは持ち上げられ――ることなく滑り落ちた。
「も、もう一回です」
私はめげずに財布から硬貨を取り出し、投入し、取り出し、投入し、取り出し、投入し……。
「やった! 取れました! 彩愛先輩、取れましたよ!」
八百円ほど使って、ついに景品を獲得。
感動のあまりぬいぐるみをギューッと抱きしめ、顔を埋めて頬ずりをしてしまう。
新たに店員さんから袋を貰い、彩愛先輩に手渡す。
「ありがとう。たくさん使――じゃなくて、大切にするわ」
「それにしても、クレーンゲームって取れた時の感動がすごいですよね。積み重ねてきたものが報われるというか、思わず大声が出ちゃいました」
「確かにね。でも、一発ゲットの喜びに勝るものはないわよ」
「そんなことないと思いますけど」
「は? そんなことあるわよ」
ケンカしそうになったら一旦落ち着いてイチャイチャするという取り決めも無視して、私たちは鋭い眼光でお互いを睨む。
そして財布と相談もせず、次の獲物を求めてゲームコーナーの中へと進むのだった。
目当ての品は特にないものの、私と彩愛先輩は興味本位で放課後に寄り道することにした。
目的地に着くと、私たちは店内を一通り見て回り、お菓子を二つほど購入して店を後にする。
すぐに帰るのはもったいないという話になって、ふと視界に入ったゲームコーナーに足を運ぶ。
通路に面したところにはクレーンゲームの筐体が並び、内部には有名キャラクターや動物をデフォルメしたぬいぐるみが置かれている。
「このぬいぐるみ、かわいいわね」
「そうですね。大きくて丸っこくて、抱き心地もよさそうです」
緩んだ表情が愛らしく、見ているだけで心が和む。
数秒ほど眺めていると、彩愛先輩がスッと財布を取り出し、おもむろに百円を投入した。
「猫って歌恋にピッタリだし、プレゼントしてあげるわ」
彩愛先輩にこそふさわしいと思うんだけど、ここは黙っておこう。
「嬉しいですけど、そう簡単に取れたら苦労は――」
「あっ!」
アームから離れた景品が取り出し口に落下し、軽快な音楽が鳴り響く。
まさかの一発ゲットだった。
「すごいですよ彩愛先輩!」
「ふふんっ、あたしにかかれば楽勝よ!」
二人して大喜びしていると店員さんが現れ、「おめでとうございます!」と言って手持ちの鐘を鳴らしながら持ち運び用の袋を渡してくれた。
「ほら、約束通りあんたにあげるわ」
「ありがとうございますっ、彩愛先輩だと思って大切にしますね」
「ええ、そうしなさい。変なことに使うんじゃないわよ」
「変なこと?」
「あ……え、い、いまのは忘れなさい! なんでもないわ! ぬいぐるみを変なことに使えるわけないわよね! っていうか変なことってなんのことかしら! あたしには全然分からないわ!」
彩愛先輩が壊れた。百円で景品を獲得できた喜びは、私の想像以上に刺激が強かったらしい。
「あ、そうだ。私も彩愛先輩にプレゼントしますよ。せっかくですから、おそろいのぬいぐるみを飾りましょう」
「取れるとは限らないけど、それなりに期待しておくわ」
「一発でゲットしますから、しっかり見ててください」
私は百円玉を入れ、ボタンを押してアームを操作する。
絶妙な位置にアームが引っかかり、掴まれたぬいぐるみは持ち上げられ――ることなく滑り落ちた。
「も、もう一回です」
私はめげずに財布から硬貨を取り出し、投入し、取り出し、投入し、取り出し、投入し……。
「やった! 取れました! 彩愛先輩、取れましたよ!」
八百円ほど使って、ついに景品を獲得。
感動のあまりぬいぐるみをギューッと抱きしめ、顔を埋めて頬ずりをしてしまう。
新たに店員さんから袋を貰い、彩愛先輩に手渡す。
「ありがとう。たくさん使――じゃなくて、大切にするわ」
「それにしても、クレーンゲームって取れた時の感動がすごいですよね。積み重ねてきたものが報われるというか、思わず大声が出ちゃいました」
「確かにね。でも、一発ゲットの喜びに勝るものはないわよ」
「そんなことないと思いますけど」
「は? そんなことあるわよ」
ケンカしそうになったら一旦落ち着いてイチャイチャするという取り決めも無視して、私たちは鋭い眼光でお互いを睨む。
そして財布と相談もせず、次の獲物を求めてゲームコーナーの中へと進むのだった。
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