犬猿の仲だけど一緒にいるのが当たり前な二人の話

ありきた

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65話 ちくわパーティー

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 彩愛先輩のお部屋で動画を参照しながら初心者向けのヨガを小一時間ほど行い、休憩がてら小腹を満たすために一階へと足を運ぶ。

 キッチンに入って冷蔵庫を漁っていると、セールの時にでもまとめ買いしたと思しきちくわを発見した。

 計五袋のちくわは、どれも賞味期限が明日に迫っている。


「お母さん、奥の方に突っ込んだまま忘れちゃってたみたいね」


 呆れたような口ぶりで言いながら、彩愛先輩はちくわの袋を手に取った。

 そして冷蔵庫の扉を閉め、調理台に五袋のちくわを置く。


「歌恋って、ちくわ好きだっけ?」


「好きですよ」


「よし、それじゃあ決まりね。悪いけど、ちくわパーティーに参加してもらうわよ」


「ちくわパーティー? ただ食べるだけじゃないんですか?」


 この場で足を止めたことが気になり、素朴な疑問を投げる。


「いくらおいしくても、そのまま五袋分も食べたらさすがに飽きるわよ。だから、アレンジを加えるの」


 なるほど。一理ある。

 ちくわパーティーというネーミングについては、あえて触れないことにしよう。


「とりあえず、ササッと一品作るわね」


 言うが早いか、彩愛先輩は袖をまくって流しで手を洗い、一袋分――四本のちくわをまな板に転がした。

 フライパンに油を引いて、熱されるのを待つ間にちくわを斜め切りにしていく。

 私は邪魔にならない位置で突っ立ったまま、無駄のない洗練された動きに見惚れてしまう。

 シンプルな作業だからこそ、手際のよさが如実に表れている。

 私が真似しても、きっと同じ光景は生まれない。

 斜め切りにしたちくわをフライパンに投入し、追加で冷蔵庫から取り出したソースを全体的に回しかける。

 ジュワァァァッと威勢のいい音が鳴り、ソースが焦げる香ばしい匂いが漂ってきた。

 ちくわにソースをまとわせ、火を止めてからフライパンの中身をお皿に移す。

 テーブルに移動し、いよいよ実食。


「ん、それなりの出来ね」


「それなりどころか、すっごくおいしいですよ!」


 絶妙な厚さに切りそろえられたちくわは、香ばしく焼かれながらもモチッとした食感を失っていない。

 斜め切りにしたことで、ソースが絡む面積が増えている。なんとなくではなく、調理法に合わせて切り方を選択したのだと思い知らされた。


「さすが彩愛先輩、料理の腕だけは一流ですね!」


「や、やめなさいよ。この程度でべた褒めされても、逆に恥ずかしいわ。あと、『だけ』ってのは余計よ。あたしはすべてにおいて一流なんだから」


 謙遜しなくてもいいのに。柄にもなく謙虚な反応だ。


 後半の戯言は、空耳だと思って聞き流そう。


「味変したかったら、マヨネーズとか青のりをかけてお好み焼き風にしてもいいんじゃないかしら。いま以上に味が濃くなるから、かけすぎは禁物だけど」


 彩愛先輩のアイデアを実践したりしつつ、パクパクと食べ進める。

 お腹が空いていたのもあって、お皿が空っぽになるまでそう時間はかからなかった。


「彩愛先輩のおかげで、インスピレーションがわきました。次は私が、パンケーキ風のちくわを――」


「ちょっ、ちょっと待った!」


 やる気を燃やして立ち上がった瞬間、目にも留まらぬ速さで近付いてきた彩愛先輩に肩を掴まれ、強制的に座らされる。

 いったいどうしたのだろうか。


「チャレンジ精神は大事だけど、いまは黙って座ってなさい。いいわね?」


「材料なら私の家から――」


「い・い・わ・ね?」


「は、はい……」


 有無を言わせぬ圧力に、私は素直に従うことしかできなかった。

 ちくわは淡白だから、デザート風の味付けでもおいしくなると思うんだけどなぁ。

 試したことはないから、断言はできないけども。

 その後、折衷案ということで二人並んで台所に立ち、彩愛先輩にいろいろと教えてもらいながら仲よくちくわを料理した。

 最後に作ったちくわとチーズの磯部揚げは、お店で出せるレベルだと言っても過言ではない。
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