私がガチなのは内緒である

ありきた

文字の大きさ
87 / 121
番外編

番外編 百合の日の私たち

しおりを挟む
 今日は6月25日。百合の日と呼ばれていて、私たちが通う学校の創立記念日でもある。

「萌恵ちゃん、今日はたくさんイチャイチャしようねっ」

「んふふっ、もちろんだよ~!」

 常日頃から仲睦まじく暮らしているけど、百合の日にあやかるのもまた一興。
 率直に言えば、朝から晩までイチャイチャしたい!
 現在時刻は午前八時。今日という日はまだまだ始まったばかりだ。



 そして朝食。対面ではなく隣に座り、口の中の物を同じタイミングで飲み込んだらキスをするというルールで食べ進める。
 実家だったら行儀が悪いと怒られるかもしれないけど、この家にいるのは私と萌恵ちゃんだけ。文句を言われる心配は無用だ。

「ちゅっ」

 食器を置いて顔を見合わせ、二人の唇が重なる。
 おはようのキスも含めれば、本日九度目のキス。
 食事中ということもあって短めに済ませるけど、間にキスを挟むことで、萌恵ちゃん特製のご飯がさらにおいしく感じる。ただでさえ世界一おいしいのだから、これ以上の美食は存在しない。
 私好みの甘い玉子焼きを口に運び、よく味わってから飲み込む。
 すると、再び萌恵ちゃんと嚥下のタイミングが重なった。

「んむっ」

 今度はさっきよりも少し大人のキス。
 お互いに相手の口腔に舌を入れ、これも食事の一環であるかのように味覚と触覚を働かせる。

「萌恵ちゃん、あーん」

「あ~ん」

 炊き込みご飯を一口分、萌恵ちゃんの口に運ぶ。
 萌恵ちゃんはパクッと食べつつ、私にも同じことをしてくれた。
 間髪入れずにお返ししてくれた意味が分からないほど、私は鈍感ではない。
 おこげの香ばしさと具材の旨味を存分に堪能し、萌恵ちゃんとタイミングを合わせて飲み込む。
 もはや主旨が変わっている気もするけど、細かいことは気にしない。

「んっ」

 私たちは再び口付けを交わす。
 萌恵ちゃんお手製のご飯に舌鼓を打ちつつ萌恵ちゃんとのキスを楽しめるなんて、最高の贅沢だ。



 今日は私も食器洗いを手伝い、萌恵ちゃんには洗濯を手伝ってもらうことにした。
 少しでも一緒にいられる時間を増やすため――というより、可能な限り離れ離れになる時間を減らすために。
 トイレの中まではさすがに入れないけど、それ以外はずっと一緒。移動中は恋人つなぎで手を握り、隙があれば密着する。
 昼食にも朝と同じルールが適用され、食後のデザートを食べる頃にはキスの回数が百回に届こうとしていた。
 昼過ぎになるとさすがに蒸し暑く、常に密着していることもあって二人とも全身にじっとりと汗をかいてしまう。
 とはいえ、それぐらいで距離を取るわけがない。
 制汗シートを取り出して二人とも下着姿になり、お互いに相手の体を隅々まで念入りに拭く。
 背中を拭いているときに不意打ちで首筋にキスをすると、萌恵ちゃんが「ひぁんっ」とかわいらしい嬌声を上げた。
 仕返しとばかりに押し倒されて顔中にキスされたので、私も負けじと萌恵ちゃんを抱き寄せて濃厚な口付けを強行する。



 始まったばかりだと思っていた一日も、残る時間は決して長くない。
 布団に入り、後は眠りに就くだけだ。
 入浴時に洗いっこしたり湯船の中で触り合ったりしたのを思い出し、興奮のあまり眠気が覚める。

「萌恵ちゃん、どうしよう。ムラムラしすぎて眠れない」

 事実とはいえ、いくらなんでも正直に言いすぎただろうか。
 萌恵ちゃんを困らせてしまったかもしれないと思って隣を見ると、同じくこちらに顔を向けた萌恵ちゃんと視線が重なる。

「んふふっ、実はあたしも。明日は学校だけど、我慢は体によくないよね~」

 二人の意見が一致した以上、もはや悩む余地はない。
 もう間もなく日付は変わってしまうけど、陽が昇るまでは百合の日ということで。
 今日一番の濃厚なキスを合図に、愛の営みが始まるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~

桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。 高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。 見知らずの後輩である自分になぜと思った。 でも、ふりならいいかと快諾する。 すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...