119 / 121
4章 高校最初の夏休み
32話 実家で夜を共にする
しおりを挟む
九月が近付くにつれて、気候も少しずつ穏やかになってきた。
昼間は外を歩けば汗が噴き出すほどの猛暑だけど、夜はもうクーラーに頼らなくても過ごせる。
今日はお母さんに車を出してもらい、秋服を取りるため実家に向かう。
昼過ぎにアパートを出て、萌恵ちゃんと一緒に車へ乗り込む。
一部を除いてバッグに詰め込んだ夏服は、アパートに帰る頃には秋服へと入れ替わっていることだろう。
家の前で別れた後は、各々の家で目的を果たす。
家が真隣なだけでなく部屋も向かい合っているので、スマホを使わなくても窓を開ければ普通に話せる。
用事を済ませたら私の部屋に集合し、ベッドに腰を落ち着ける。
萌恵ちゃんは以前と同じように、私が愛用していた大きなアザラシの抱き枕を抱きしめている。
「萌恵ちゃん、昔からそれ好きだよね」
「うんっ、あたしのお気に入り! かわいいし、もちもちしてて抱き心地いいし、ほんとに癒されるよ~」
嬉々として褒めちぎりながら、むぎゅっと抱きしめて頬ずりをする。
幼い頃に買ってもらった当初から家に来るたびにこんな様子なんだけど、ハッキリ言って羨ましい。萌恵ちゃんに抱きしめられて頬ずりしてもらえるなんて、私物ながら嫉妬せずにはいられない。
「萌恵ちゃん、ちょっと横になって」
「ん? 分かった」
私が促すと、萌恵ちゃんは一瞬疑問符を浮かべながらも素直に従ってくれた。
抱き枕を抱いたまま、ベッドに身を投げ出す。
すかさず私も寝転んで、背後から萌恵ちゃんを抱きしめた。
「あっ、もしかして真菜も抱っこしたかった? ごめんね、真菜の抱き枕なのにあたしが独占しちゃって」
「ううん、違う。萌恵ちゃんに抱っこしてもらえる抱き枕が羨ましかったの」
口に出してみるとなんとも恥ずかしい理由だけど、れっきとした事実なので仕方ない。
一拍置いて、萌恵ちゃんが「そっか~」と漏らしつつ抱き枕を手放す。
「えいっ」
萌恵ちゃんは器用に体勢を変え、こちらを向くと同時に私を抱きしめる。
「も、萌恵ちゃん」
「んふふっ、抱き枕に嫉妬するなんてかわいいな~。真菜が離してって言うまで、ずっと離さないよっ」
「……うんっ」
それからお母さんに夕飯ができたと声をかけられるまで、私たちはベッドの上で抱擁を交わした。
仕事から帰宅した萌恵ちゃんのお母さんも招き、食卓を囲んで思い出話や近況報告に花を咲かせる。
明日の朝にアパートへ戻る予定なので、今夜はこの家で萌恵ちゃんと過ごす。
こういうときはそれぞれ久々に実家の自室で寝るのが普通なのかもしれないけど、私たちにそんな選択肢は存在しない。
アパートでの生活と同じように二人でお風呂に入り、電気を消してベッドで身を寄せ合う。
昨年までは、恋人として萌恵ちゃんとこの部屋で一夜を共にするなんて、叶わぬ夢だと思っていた。
「おやすみ」
「おやすみ~」
いつものようにおやすみのキスをして、そっと手をつないで眠りに就く。
――つもり、だったんだけど。
ついイタズラ心が芽生えて、萌恵ちゃんの胸を揉んでしまった。
すると、萌恵ちゃんも対抗して私の胸を触る。
お腹をツンツンと指で突いたり、太ももを撫でたり、スキンシップを重ねていく。
日付をまたぐ時分には愛の営みと呼べるような行為に発展し、それは明け方まで続いた。
***
ところで、お母さんが朝ごはんにお赤飯を炊いてくれたんだけど……もしかしなくても、声や物音が漏れてたってこと、だよね?
昼間は外を歩けば汗が噴き出すほどの猛暑だけど、夜はもうクーラーに頼らなくても過ごせる。
今日はお母さんに車を出してもらい、秋服を取りるため実家に向かう。
昼過ぎにアパートを出て、萌恵ちゃんと一緒に車へ乗り込む。
一部を除いてバッグに詰め込んだ夏服は、アパートに帰る頃には秋服へと入れ替わっていることだろう。
家の前で別れた後は、各々の家で目的を果たす。
家が真隣なだけでなく部屋も向かい合っているので、スマホを使わなくても窓を開ければ普通に話せる。
用事を済ませたら私の部屋に集合し、ベッドに腰を落ち着ける。
萌恵ちゃんは以前と同じように、私が愛用していた大きなアザラシの抱き枕を抱きしめている。
「萌恵ちゃん、昔からそれ好きだよね」
「うんっ、あたしのお気に入り! かわいいし、もちもちしてて抱き心地いいし、ほんとに癒されるよ~」
嬉々として褒めちぎりながら、むぎゅっと抱きしめて頬ずりをする。
幼い頃に買ってもらった当初から家に来るたびにこんな様子なんだけど、ハッキリ言って羨ましい。萌恵ちゃんに抱きしめられて頬ずりしてもらえるなんて、私物ながら嫉妬せずにはいられない。
「萌恵ちゃん、ちょっと横になって」
「ん? 分かった」
私が促すと、萌恵ちゃんは一瞬疑問符を浮かべながらも素直に従ってくれた。
抱き枕を抱いたまま、ベッドに身を投げ出す。
すかさず私も寝転んで、背後から萌恵ちゃんを抱きしめた。
「あっ、もしかして真菜も抱っこしたかった? ごめんね、真菜の抱き枕なのにあたしが独占しちゃって」
「ううん、違う。萌恵ちゃんに抱っこしてもらえる抱き枕が羨ましかったの」
口に出してみるとなんとも恥ずかしい理由だけど、れっきとした事実なので仕方ない。
一拍置いて、萌恵ちゃんが「そっか~」と漏らしつつ抱き枕を手放す。
「えいっ」
萌恵ちゃんは器用に体勢を変え、こちらを向くと同時に私を抱きしめる。
「も、萌恵ちゃん」
「んふふっ、抱き枕に嫉妬するなんてかわいいな~。真菜が離してって言うまで、ずっと離さないよっ」
「……うんっ」
それからお母さんに夕飯ができたと声をかけられるまで、私たちはベッドの上で抱擁を交わした。
仕事から帰宅した萌恵ちゃんのお母さんも招き、食卓を囲んで思い出話や近況報告に花を咲かせる。
明日の朝にアパートへ戻る予定なので、今夜はこの家で萌恵ちゃんと過ごす。
こういうときはそれぞれ久々に実家の自室で寝るのが普通なのかもしれないけど、私たちにそんな選択肢は存在しない。
アパートでの生活と同じように二人でお風呂に入り、電気を消してベッドで身を寄せ合う。
昨年までは、恋人として萌恵ちゃんとこの部屋で一夜を共にするなんて、叶わぬ夢だと思っていた。
「おやすみ」
「おやすみ~」
いつものようにおやすみのキスをして、そっと手をつないで眠りに就く。
――つもり、だったんだけど。
ついイタズラ心が芽生えて、萌恵ちゃんの胸を揉んでしまった。
すると、萌恵ちゃんも対抗して私の胸を触る。
お腹をツンツンと指で突いたり、太ももを撫でたり、スキンシップを重ねていく。
日付をまたぐ時分には愛の営みと呼べるような行為に発展し、それは明け方まで続いた。
***
ところで、お母さんが朝ごはんにお赤飯を炊いてくれたんだけど……もしかしなくても、声や物音が漏れてたってこと、だよね?
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる