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4話 二人きり
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とある休日のお昼過ぎ、あたしは雫ちゃんの家にお邪魔している。
ご両親が用事で夜まで帰ってこないらしく、予定がなければ遊びたいと誘われた。
雫ちゃんは台所に飲み物を取りに行ってくれていて、あたしは静かに待機している。
ふわふわした純白のカーペット、フリルがあしらわれた薄いピンクのカーテン、シックなデザインの勉強机、小さなガラステーブル、枕元にぬいぐるみが置かれたシングルベッド。
昔から何回も来ているけど、恋人という関係を意識すると感じ方も違う。
さらに、部屋には雫ちゃんが放つ甘い香りが充満しているわけで。
安心するんだけど……そわそわするというか、どこか落ち着かない。なんとも不思議な気分だ。
ほどなくして廊下から足音が聞こえ、両手が塞がっているだろうと思い、先んじて扉を開けておく。
「ありがとうございます。お待たせしました」
我ながら完璧なタイミングだった。
雫ちゃんは足を止めることなく部屋に入り、テーブルにトレーを置く。
お茶の他にスナック菓子も用意してくれていて、あたしも家から持参したクッキーをバッグから取り出した。
二人でお菓子を食べながら、スマホで面白そうな動画を漁って鑑賞する。
「ふぅ、ちょっと休憩~」
一緒に動画を見ようとすれば、必然的に顔は横向きのままとなる。
あたしは少し移動してベッドにもたれかかり、開脚して上体を前に倒したり首を回したりと、軽くストレッチをする。
スッと立ち上がった雫ちゃんも同じように体をほぐすのだろうと思っていたら、あたしの脚の間に座ってきた。
「邪魔だったら言ってください」
「ずっとこのままでも大丈夫!」
平淡な口調ながらも甘えたいという意思がひしひしと伝わってきて、本当にいつまでもこの状態でいたいぐらいだ。
雫ちゃんがスマホを少し高めの位置で持ち、それを二人で眺める。
シャンプーのいい匂いがする頭を軽く撫でてみると、珍しく上機嫌な吐息が漏れた。
サラサラの銀髪は繊細かつ滑らかで、目を細めて凝視しても枝毛や痛みが見当たらない。
「気持ちいい?」
「はい、それなりに」
普段なら「べつに気持ちよくないです」と返されていたはず。
一見すると素気ない反応だけど、あたしには雫ちゃんが喜んでくれているのだと分かる。
動画に広告が流れたタイミングで、あごを肩に乗せ、後ろからそっと抱きしめてみた。
「っ!? し、しし、栞先輩、な、なにを……っ?」
珍しく動揺を露わにする雫ちゃん。
反応がかわいくて、ついイジワルしたくなってしまう。
「もっとくっつきたいな~って思ったんだけど、嫌だった?」
耳元で囁くように問いかけつつ、胸を押し当てる。
なにを隠そうあたしもドキドキしているので、これだけ密着していたら鼓動が伝わっているかもしれない。
「い、嫌じゃないです」
「そっか。じゃあ、しばらくこのままでいさせてもらうね」
あたしがそう言うと、雫ちゃんはコクリとうなずいた。
その後はこれといった会話もなく、お互いに相手の体温を感じながら、二人で同じ映像を見続ける。
脚の痺れと雫ちゃんの尿意がほぼ同時に限界を迎え、一時的に中断されたものの、夜になって雫ちゃんの両親が帰宅するまで、あたしたちはずっと密着していた。
***
あたしは三大欲求の中だと食欲と睡眠欲が強いタイプだとは思っていたけど、決して残りの一つが皆無というわけではなかったらしい。
寝る前に雫ちゃんのことを想って自分を慰めてしまったことは、中学生の彼女にはまだ内緒。
ご両親が用事で夜まで帰ってこないらしく、予定がなければ遊びたいと誘われた。
雫ちゃんは台所に飲み物を取りに行ってくれていて、あたしは静かに待機している。
ふわふわした純白のカーペット、フリルがあしらわれた薄いピンクのカーテン、シックなデザインの勉強机、小さなガラステーブル、枕元にぬいぐるみが置かれたシングルベッド。
昔から何回も来ているけど、恋人という関係を意識すると感じ方も違う。
さらに、部屋には雫ちゃんが放つ甘い香りが充満しているわけで。
安心するんだけど……そわそわするというか、どこか落ち着かない。なんとも不思議な気分だ。
ほどなくして廊下から足音が聞こえ、両手が塞がっているだろうと思い、先んじて扉を開けておく。
「ありがとうございます。お待たせしました」
我ながら完璧なタイミングだった。
雫ちゃんは足を止めることなく部屋に入り、テーブルにトレーを置く。
お茶の他にスナック菓子も用意してくれていて、あたしも家から持参したクッキーをバッグから取り出した。
二人でお菓子を食べながら、スマホで面白そうな動画を漁って鑑賞する。
「ふぅ、ちょっと休憩~」
一緒に動画を見ようとすれば、必然的に顔は横向きのままとなる。
あたしは少し移動してベッドにもたれかかり、開脚して上体を前に倒したり首を回したりと、軽くストレッチをする。
スッと立ち上がった雫ちゃんも同じように体をほぐすのだろうと思っていたら、あたしの脚の間に座ってきた。
「邪魔だったら言ってください」
「ずっとこのままでも大丈夫!」
平淡な口調ながらも甘えたいという意思がひしひしと伝わってきて、本当にいつまでもこの状態でいたいぐらいだ。
雫ちゃんがスマホを少し高めの位置で持ち、それを二人で眺める。
シャンプーのいい匂いがする頭を軽く撫でてみると、珍しく上機嫌な吐息が漏れた。
サラサラの銀髪は繊細かつ滑らかで、目を細めて凝視しても枝毛や痛みが見当たらない。
「気持ちいい?」
「はい、それなりに」
普段なら「べつに気持ちよくないです」と返されていたはず。
一見すると素気ない反応だけど、あたしには雫ちゃんが喜んでくれているのだと分かる。
動画に広告が流れたタイミングで、あごを肩に乗せ、後ろからそっと抱きしめてみた。
「っ!? し、しし、栞先輩、な、なにを……っ?」
珍しく動揺を露わにする雫ちゃん。
反応がかわいくて、ついイジワルしたくなってしまう。
「もっとくっつきたいな~って思ったんだけど、嫌だった?」
耳元で囁くように問いかけつつ、胸を押し当てる。
なにを隠そうあたしもドキドキしているので、これだけ密着していたら鼓動が伝わっているかもしれない。
「い、嫌じゃないです」
「そっか。じゃあ、しばらくこのままでいさせてもらうね」
あたしがそう言うと、雫ちゃんはコクリとうなずいた。
その後はこれといった会話もなく、お互いに相手の体温を感じながら、二人で同じ映像を見続ける。
脚の痺れと雫ちゃんの尿意がほぼ同時に限界を迎え、一時的に中断されたものの、夜になって雫ちゃんの両親が帰宅するまで、あたしたちはずっと密着していた。
***
あたしは三大欲求の中だと食欲と睡眠欲が強いタイプだとは思っていたけど、決して残りの一つが皆無というわけではなかったらしい。
寝る前に雫ちゃんのことを想って自分を慰めてしまったことは、中学生の彼女にはまだ内緒。
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