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第1章
第165話《必死に嘘に嘘を重ねる総一郎》
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「は……なんだって…?」
俺の提示した条件に、総一郎は眉間にしわを寄せ、苦しそうに息をつまらせた。
こいつが今何を思っているかは簡単に想像できる。
総一郎にとって、俺と別れること自体は大した問題じゃない。
総一郎が気にしているのは、この場にいるギャラリー――噂好きそうなハイスペαたちと美しいΩたちの前で、自分がこの俺にフラれるという屈辱だ。どうにかして、この窮地を打破しようと必死に頭を回しているのだろう。
(さて、総一郎は一体どんな嘘を白状してくるかな?)
「は、はは、…すずめにはやはり叶わないなあ。……実はすずめの言う通り僕は3つ程君に嘘をついている事があるんだ。…恋人なのに、今まで黙っていたせいで傷つけてしまっていたよね?」
「そ、総一郎君……!!やっと白状する気になってくれたんだね?」
少し間を置いた後、総一郎は、ようやく打ち明ける言葉を選び出したようだ。
申し訳なさそうに見せているが、その表情は相変わらずどこか薄っぺらい。
(3つ?すっくな。お前の嘘がそんなに少ないはずがないだろ。)
「勿論、全て洗いざらい話させてもらうよ…別れ話だなんて突拍子もない事を条件に出されたら流石に嘘ついている場合じゃないからね。全部すっきりさせて、もう一度すずめに僕を信頼させてみせる。」
「…。そっか。その気持ちは嬉しいよ。じゃあ、一つずつ嘘を教えてくれる?」
「ああ、そうだな…、まずはやはり、オーダーメイドのドレスの件から行こうか。
…先ほどは僕の嘘のせいですずめを誤解させてしまって申し訳なかったと思ってるよ。
……すずめの事だから多分あの後、たくさん泣いちゃったよね?誤解とはいえ、本当に可哀そうな事をしたな…。」
(いや、涙なんか微塵も流してる訳ないだろ。
…それにしても、まず最初にドレスの件を出してくるとはな。ひなのために作ったと認めるのか?…って、んん??誤解、だと…?)
まさか、こいつ…この後に及んでまだグチグチと言い訳するつもりか…?
「……誤解ってどういうこと?あれはどう見ても、ひなちゃんのために作られたドレスだったよね。サイズもぴったりだったし、さっき本人が採寸してもらったって言ってたけど?」
「…確かに愛野を採寸に連れて行ったのは本当だよ?
でもそれは、サプライズのためにすずめに隠れてドレスを購入したかったからなんだ。
後ろ姿や体形がすずめに似ているひなだったら君の代わりになると思いついてね…。
…すずめには、その事を馬鹿正直に言ったら愛野との関係を誤解されるんじゃないかと思って、つい将来成長したすずめに合わせて作った等という嘘をついてしまったんだ。」
「………。ふーん…」
(いやいやいや!もう最初っから嘘まみれじゃないか!なーにが『愛野との関係を誤解される』だ。誤解もなにもそっちが本命だった癖に!…ドレス件に関してもそんな滅茶苦茶な言い訳、誰も信じる訳が無いだろ…。)
「はあ……それで次の嘘はなんなの?」
本当なら、この時点で一発アウトだが、ここまでくると後2つの嘘が気になるので続きを促した。
「次は…、やはりスマホのGPSの件かな。スマホを変えた時点でもうすずめにはバレているんだろうけど、一応僕の口から謝らせてもらうよ。
…実はすずめのスマホには黙ってGPSアプリをいくつか入れてしまっていたんだ。
でもこれはすずめの事が心配だったからであって悪気は無かったんだよ。」
「そう…。」
(いや、それは心底どうでもいいー…。そんなの今更だし、確かにスマホの容量がひっ迫して新しいアプリを入れられなくて困ってたけど、その程度あの最悪な浮気と比べると全然可愛いものだ。)
昔の俺なら、むしろ愛されてるんだと勘違いして喜んでいたかもしれないが、今となってはそんな感傷に浸る気にもならない。
「……その事については、正直に白状したって事でもういいよ。俺の事を心配しての事だったんだもんね?(どうでもいいけど)」
「すずめ…!分かってくれて嬉しいよ!」
総一郎はその流れで何故か俺に抱きしめようと手を伸ばしてきて、見事に巧斗さんに叩き落とされていたが、その音が案外大きく、『バチン!!』という破裂音が控室中に広がった。
その音に自分の身だしなみを整えていた相田君もびくっとこちらを振り返って、にらみ合いしている二人を見て『いつの間にかどえらい修羅場になっちまってるっす…!』とあわあわしている。
「…で?3つ目の嘘は?」
「3つ目はやっぱり、昨日の朝の事かな。」
「昨日の朝…?」
それに関しては一体何のことだか分からない。
まぁ俺が心当たりが無いと言う事はどうせしょうもない嘘なのだろう。
「昨日、ミスターコンの第一審査のテーマについて話していた時に、僕たちの結婚の話になったよね?」
「…ああ、卒業したらすぐに結婚しようねって約束したやつ?」
「そう、それだよ。…でもごめんね?あれは真っ赤な嘘なんだ。」
「!!!!」
衝撃の嘘の告白に俺どころか、巧斗さんや周りのギャラリーも目を見開く。
(!まさか…。総一郎、本当に白状するつもりなのか?実は俺とじゃなくてひなと結婚するつもりで、俺の事は嫁候補どころか本命ですらなかったと言う事を…。)
…成程な…。そういう事か…。
総一郎はおそらく、俺にフラれる前に自分の方から俺をこっ酷くフるつもりなのだろう。
そうすれば、総一郎のプライドも綺麗に守られたまま俺と別れる事が出来るのだ。
(…してやられたな。別れ話に関しては先を越されるつもりは無かったのに、俺とした事がこいつにその隙を与えてしまった。)
…まぁいい。今だけは俺の方が屈辱を甘んじて受けてやろう。
後で何倍返しにもして返してやると誓いながら総一郎の言葉を待っていると、こいつは誰も想定し得ないようなとんでもない事を言い出した。
「まあ、嘘と言っても結婚自体の事じゃなくて、結婚の次期の事なんだけどね。
…すずめ、僕と卒業後じゃなくて今年中を目途に二人きりで式を挙げよう。
訳あって籍はまだ入れられないけど、とりあえず形だけでもやっておきたいんだ。
確かすずめ、今月の20日あたりから発情期が始まるよね?そこでまずは番になって…挙式は聖夜あたりがいいかな?
…今まで散々待たせてしまったね。でも大丈夫。これからは誰よりも幸せなΩにしてあげるから。」
「____は?」
いやいやいやいや…この状況で一体何を言ってるんだこいつは…。もしかして、宇宙人なのか?
というか、公衆の面前で俺の発情期の詳しい日にちをバラすな!!!
巧斗さんがどん引きして、物凄い形相でこちらを凝視しているじゃないか!
俺の提示した条件に、総一郎は眉間にしわを寄せ、苦しそうに息をつまらせた。
こいつが今何を思っているかは簡単に想像できる。
総一郎にとって、俺と別れること自体は大した問題じゃない。
総一郎が気にしているのは、この場にいるギャラリー――噂好きそうなハイスペαたちと美しいΩたちの前で、自分がこの俺にフラれるという屈辱だ。どうにかして、この窮地を打破しようと必死に頭を回しているのだろう。
(さて、総一郎は一体どんな嘘を白状してくるかな?)
「は、はは、…すずめにはやはり叶わないなあ。……実はすずめの言う通り僕は3つ程君に嘘をついている事があるんだ。…恋人なのに、今まで黙っていたせいで傷つけてしまっていたよね?」
「そ、総一郎君……!!やっと白状する気になってくれたんだね?」
少し間を置いた後、総一郎は、ようやく打ち明ける言葉を選び出したようだ。
申し訳なさそうに見せているが、その表情は相変わらずどこか薄っぺらい。
(3つ?すっくな。お前の嘘がそんなに少ないはずがないだろ。)
「勿論、全て洗いざらい話させてもらうよ…別れ話だなんて突拍子もない事を条件に出されたら流石に嘘ついている場合じゃないからね。全部すっきりさせて、もう一度すずめに僕を信頼させてみせる。」
「…。そっか。その気持ちは嬉しいよ。じゃあ、一つずつ嘘を教えてくれる?」
「ああ、そうだな…、まずはやはり、オーダーメイドのドレスの件から行こうか。
…先ほどは僕の嘘のせいですずめを誤解させてしまって申し訳なかったと思ってるよ。
……すずめの事だから多分あの後、たくさん泣いちゃったよね?誤解とはいえ、本当に可哀そうな事をしたな…。」
(いや、涙なんか微塵も流してる訳ないだろ。
…それにしても、まず最初にドレスの件を出してくるとはな。ひなのために作ったと認めるのか?…って、んん??誤解、だと…?)
まさか、こいつ…この後に及んでまだグチグチと言い訳するつもりか…?
「……誤解ってどういうこと?あれはどう見ても、ひなちゃんのために作られたドレスだったよね。サイズもぴったりだったし、さっき本人が採寸してもらったって言ってたけど?」
「…確かに愛野を採寸に連れて行ったのは本当だよ?
でもそれは、サプライズのためにすずめに隠れてドレスを購入したかったからなんだ。
後ろ姿や体形がすずめに似ているひなだったら君の代わりになると思いついてね…。
…すずめには、その事を馬鹿正直に言ったら愛野との関係を誤解されるんじゃないかと思って、つい将来成長したすずめに合わせて作った等という嘘をついてしまったんだ。」
「………。ふーん…」
(いやいやいや!もう最初っから嘘まみれじゃないか!なーにが『愛野との関係を誤解される』だ。誤解もなにもそっちが本命だった癖に!…ドレス件に関してもそんな滅茶苦茶な言い訳、誰も信じる訳が無いだろ…。)
「はあ……それで次の嘘はなんなの?」
本当なら、この時点で一発アウトだが、ここまでくると後2つの嘘が気になるので続きを促した。
「次は…、やはりスマホのGPSの件かな。スマホを変えた時点でもうすずめにはバレているんだろうけど、一応僕の口から謝らせてもらうよ。
…実はすずめのスマホには黙ってGPSアプリをいくつか入れてしまっていたんだ。
でもこれはすずめの事が心配だったからであって悪気は無かったんだよ。」
「そう…。」
(いや、それは心底どうでもいいー…。そんなの今更だし、確かにスマホの容量がひっ迫して新しいアプリを入れられなくて困ってたけど、その程度あの最悪な浮気と比べると全然可愛いものだ。)
昔の俺なら、むしろ愛されてるんだと勘違いして喜んでいたかもしれないが、今となってはそんな感傷に浸る気にもならない。
「……その事については、正直に白状したって事でもういいよ。俺の事を心配しての事だったんだもんね?(どうでもいいけど)」
「すずめ…!分かってくれて嬉しいよ!」
総一郎はその流れで何故か俺に抱きしめようと手を伸ばしてきて、見事に巧斗さんに叩き落とされていたが、その音が案外大きく、『バチン!!』という破裂音が控室中に広がった。
その音に自分の身だしなみを整えていた相田君もびくっとこちらを振り返って、にらみ合いしている二人を見て『いつの間にかどえらい修羅場になっちまってるっす…!』とあわあわしている。
「…で?3つ目の嘘は?」
「3つ目はやっぱり、昨日の朝の事かな。」
「昨日の朝…?」
それに関しては一体何のことだか分からない。
まぁ俺が心当たりが無いと言う事はどうせしょうもない嘘なのだろう。
「昨日、ミスターコンの第一審査のテーマについて話していた時に、僕たちの結婚の話になったよね?」
「…ああ、卒業したらすぐに結婚しようねって約束したやつ?」
「そう、それだよ。…でもごめんね?あれは真っ赤な嘘なんだ。」
「!!!!」
衝撃の嘘の告白に俺どころか、巧斗さんや周りのギャラリーも目を見開く。
(!まさか…。総一郎、本当に白状するつもりなのか?実は俺とじゃなくてひなと結婚するつもりで、俺の事は嫁候補どころか本命ですらなかったと言う事を…。)
…成程な…。そういう事か…。
総一郎はおそらく、俺にフラれる前に自分の方から俺をこっ酷くフるつもりなのだろう。
そうすれば、総一郎のプライドも綺麗に守られたまま俺と別れる事が出来るのだ。
(…してやられたな。別れ話に関しては先を越されるつもりは無かったのに、俺とした事がこいつにその隙を与えてしまった。)
…まぁいい。今だけは俺の方が屈辱を甘んじて受けてやろう。
後で何倍返しにもして返してやると誓いながら総一郎の言葉を待っていると、こいつは誰も想定し得ないようなとんでもない事を言い出した。
「まあ、嘘と言っても結婚自体の事じゃなくて、結婚の次期の事なんだけどね。
…すずめ、僕と卒業後じゃなくて今年中を目途に二人きりで式を挙げよう。
訳あって籍はまだ入れられないけど、とりあえず形だけでもやっておきたいんだ。
確かすずめ、今月の20日あたりから発情期が始まるよね?そこでまずは番になって…挙式は聖夜あたりがいいかな?
…今まで散々待たせてしまったね。でも大丈夫。これからは誰よりも幸せなΩにしてあげるから。」
「____は?」
いやいやいやいや…この状況で一体何を言ってるんだこいつは…。もしかして、宇宙人なのか?
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