浮気αと絶許Ω~裏切りに激怒したオメガの復讐~

飴雨あめ

文字の大きさ
165 / 169
第1章

第165話《必死に嘘に嘘を重ねる総一郎》

しおりを挟む
「は……なんだって…?」


俺の提示した条件に、総一郎は眉間にしわを寄せ、苦しそうに息をつまらせた。

こいつが今何を思っているかは簡単に想像できる。
総一郎にとって、俺と別れること自体は大した問題じゃない。
総一郎が気にしているのは、この場にいるギャラリー――噂好きそうなハイスペαたちと美しいΩたちの前で、自分がこの俺にフラれるという屈辱だ。どうにかして、この窮地を打破しようと必死に頭を回しているのだろう。


(さて、総一郎は一体どんな嘘を白状してくるかな?)



「は、はは、…すずめにはやはり叶わないなあ。……実はすずめの言う通り僕は3つ程君に嘘をついている事があるんだ。…恋人なのに、今まで黙っていたせいで傷つけてしまっていたよね?」
「そ、総一郎君……!!やっと白状する気になってくれたんだね?」


少し間を置いた後、総一郎は、ようやく打ち明ける言葉を選び出したようだ。
申し訳なさそうに見せているが、その表情は相変わらずどこか薄っぺらい。

(3つ?すっくな。お前の嘘がそんなに少ないはずがないだろ。)



「勿論、全て洗いざらい話させてもらうよ…別れ話だなんて突拍子もない事を条件に出されたら流石に嘘ついている場合じゃないからね。全部すっきりさせて、もう一度すずめに僕を信頼させてみせる。」

「…。そっか。その気持ちは嬉しいよ。じゃあ、一つずつ嘘を教えてくれる?」


「ああ、そうだな…、まずはやはり、オーダーメイドのドレスの件から行こうか。
…先ほどは僕の嘘のせいですずめを誤解させてしまって申し訳なかったと思ってるよ。
……すずめの事だから多分あの後、たくさん泣いちゃったよね?誤解とはいえ、本当に可哀そうな事をしたな…。」


(いや、涙なんか微塵も流してる訳ないだろ。

…それにしても、まず最初にドレスの件を出してくるとはな。ひなのために作ったと認めるのか?…って、んん??誤解、だと…?)

まさか、こいつ…この後に及んでまだグチグチと言い訳するつもりか…?



「……誤解ってどういうこと?あれはどう見ても、ひなちゃんのために作られたドレスだったよね。サイズもぴったりだったし、さっき本人が採寸してもらったって言ってたけど?」


「…確かに愛野を採寸に連れて行ったのは本当だよ?
でもそれは、サプライズのためにすずめに隠れてドレスを購入したかったからなんだ。
後ろ姿や体形がすずめに似ているひなだったら君の代わりになると思いついてね…。

…すずめには、その事を馬鹿正直に言ったら愛野との関係を誤解されるんじゃないかと思って、つい将来成長したすずめに合わせて作った等という嘘をついてしまったんだ。」

「………。ふーん…」


(いやいやいや!もう最初っから嘘まみれじゃないか!なーにが『愛野との関係を誤解される』だ。誤解もなにもそっちが本命だった癖に!…ドレス件に関してもそんな滅茶苦茶な言い訳、誰も信じる訳が無いだろ…。)






「はあ……それで次の嘘はなんなの?」


本当なら、この時点で一発アウトだが、ここまでくると後2つの嘘が気になるので続きを促した。


「次は…、やはりスマホのGPSの件かな。スマホを変えた時点でもうすずめにはバレているんだろうけど、一応僕の口から謝らせてもらうよ。
…実はすずめのスマホには黙ってGPSアプリをいくつか入れてしまっていたんだ。
でもこれはすずめの事が心配だったからであって悪気は無かったんだよ。」

「そう…。」


(いや、それは心底どうでもいいー…。そんなの今更だし、確かにスマホの容量がひっ迫して新しいアプリを入れられなくて困ってたけど、その程度あの最悪な浮気と比べると全然可愛いものだ。)

昔の俺なら、むしろ愛されてるんだと勘違いして喜んでいたかもしれないが、今となってはそんな感傷に浸る気にもならない。



「……その事については、正直に白状したって事でもういいよ。俺の事を心配しての事だったんだもんね?(どうでもいいけど)」
「すずめ…!分かってくれて嬉しいよ!」


総一郎はその流れで何故か俺に抱きしめようと手を伸ばしてきて、見事に巧斗さんに叩き落とされていたが、その音が案外大きく、『バチン!!』という破裂音が控室中に広がった。

その音に自分の身だしなみを整えていた相田君もびくっとこちらを振り返って、にらみ合いしている二人を見て『いつの間にかどえらい修羅場になっちまってるっす…!』とあわあわしている。



「…で?3つ目の嘘は?」


「3つ目はやっぱり、昨日の朝の事かな。」
「昨日の朝…?」

それに関しては一体何のことだか分からない。
まぁ俺が心当たりが無いと言う事はどうせしょうもない嘘なのだろう。



「昨日、ミスターコンの第一審査のテーマについて話していた時に、僕たちの結婚の話になったよね?」
「…ああ、卒業したらすぐに結婚しようねって約束したやつ?」

「そう、それだよ。…でもごめんね?あれは真っ赤な嘘なんだ。」


「!!!!」


衝撃の嘘の告白に俺どころか、巧斗さんや周りのギャラリーも目を見開く。



(!まさか…。総一郎、本当に白状するつもりなのか?実は俺とじゃなくてひなと結婚するつもりで、俺の事は嫁候補どころか本命ですらなかったと言う事を…。)


…成程な…。そういう事か…。

総一郎はおそらく、俺にフラれる前に自分の方から俺をこっ酷くフるつもりなのだろう。
そうすれば、総一郎のプライドも綺麗に守られたまま俺と別れる事が出来るのだ。

(…してやられたな。別れ話に関しては先を越されるつもりは無かったのに、俺とした事がこいつにその隙を与えてしまった。)

…まぁいい。今だけは俺の方が屈辱を甘んじて受けてやろう。

後で何倍返しにもして返してやると誓いながら総一郎の言葉を待っていると、こいつは誰も想定し得ないようなとんでもない事を言い出した。



「まあ、嘘と言っても結婚自体の事じゃなくて、結婚の次期の事なんだけどね。

…すずめ、僕と卒業後じゃなくて今年中を目途に二人きりで式を挙げよう。

訳あって籍はまだ入れられないけど、とりあえず形だけでもやっておきたいんだ。
確かすずめ、今月の20日あたりから発情期が始まるよね?そこでまずは番になって…挙式は聖夜あたりがいいかな?

…今まで散々待たせてしまったね。でも大丈夫。これからは誰よりも幸せなΩにしてあげるから。」



「____は?」


いやいやいやいや…この状況で一体何を言ってるんだこいつは…。もしかして、宇宙人なのか?

というか、公衆の面前で俺の発情期の詳しい日にちをバラすな!!!
巧斗さんがどん引きして、物凄い形相でこちらを凝視しているじゃないか!
しおりを挟む
感想 511

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱えて、離縁をつきつけ家を出た。 そこで待っていたのは、 最悪の出来事―― けれど同時に、人生の転機だった。 夫は、愛人と好きに生きればいい。 けれど、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 彼女が選び直す人生と、 辿り着く本当の幸せの行方とは。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

処理中です...