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ヲタクは誉め言葉である。

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 私の家では、ヲタクというのは「専門特化」であるという誉め言葉なので、ヲタク呼ばわりはご褒美でしかない訳なのだが、ヲタクと呼ばれると嫌な気持ちになる人が多いらしい。勿体ない話である。

 1つの分野だけでもかなり深く掘り下げた話が出来る人というのは、どんな話題もそこそこしか語れない人より私には魅力的に思える。


 きっと、昔のヲタクと呼ばれていた人達は、1つの事に集中する余りに見た目の清潔感とか人へのコミュニケーション能力とかをポイ捨てしてる方々が一定数以上いたので、そこからのイメージ的なモノが根深いのではないかと思われる。

 今のヲタクって、みんな小綺麗にしてるしそれなりにコミュニケーション取れる人も多いのだが。


 勿論、私のように仕事以外では精神的に疲れるから人と密接に関わるのを出来るだけ避けたい、というコミュ障的な人も別に減ってはいないと思うのだが、私は社会生活が送れてるだけましな方である。

 今は普通の人も、油断するといつの間にかヲタクの階段をスキップしながら上っているパターンも散見されており、割とヲタとヲタでない層がマーブルチョコのように境界が曖昧になっている気もする。



 まあそれはいいとして、うちの姉の話である。


 近所に住む私の姉は、普通の主婦と言う皮を被った、そらもう生粋のアニヲタである。

 ケーブルテレビをそのために契約し、朝から晩までHDDがフル稼働。
 新作のアニメはどれも一先ず数回は録って観てみる。面白ければ継続され、つまらなければぶったぎる。

 少年少女マンガ原作系からなろう派生の転生モノ系まで、かなりの数を網羅する猛者である。

 正直私はアニメは普段それほど観ない(まあ家にテレビもないし)のだが、姉はハードが段々圧迫されて来ると、減らさないとならないし気に入ればCMをカットして保存するためにDVDに落とし込みをする作業が必要になる。

 『逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ』

 と言い出すと、既に残りのハードの容量が20時間を切るか切らないかという切羽詰まった状態になっていることが多い。

 でも一人で観るのはしんどいのか、甥っ子と私が時々巻き込まれる。


 甥っ子は若いし元々二次元に生きてる子なのでいいだろうが、私は無理の利かないお年頃。

 6時間一挙放送とかを録画したのを見せようとする鬼畜な姉との必死のバトルが高頻度で繰り広げられたりもする。

 きゃいんきゃいん言っても逃げられない事が多いので、何話か付き合い面白ければそのまま観るし、(自分に取って)つまらなければそのアニメは好みじゃないからもう観ないと宣言する。

 姉も、私の好みでないアニメを無理矢理継続して観させる事はしないが、そうすると別のアニメを勧めてくる。

 気に入って見続けているアニメがあると、それも終わってないのに追加がかかる。

 アニメのわんこそば状態なのである。

 まあお陰様でテレビのない私でも、なろう系のアニメなんかも一通り要点は押さえられたりするのだが、うちの姉がぱないのは、それにプラスしてライダーとかの特撮系や海外ドラマまでしっかりホールドしているのだ。

 今のライダーがどういう話なのか、レンジャー系がこうで、海外ドラマはこれが今面白い等いくらでも情報は引き出せる。

 映像系データバンクのような存在である。

 舞台もよく行くのでそちらも強い。


 私は紙媒体がメイン嗜好なので、長時間アニメとか観てると時々耳とか鼻から魂が抜け出てくる。

 それを「きゅっきゅっ」と詰め直されていたりする。恐ろしい姉である。

 ただこのスパルタ鑑賞方式は、私のような

「えー面倒臭いからみなーい」

 とのたまう輩には効果的であることは確かである。


 そんな手間暇をかけてくる姉が実は大好きだったりもする。



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