土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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ルーシーの天敵【3】

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 昼食パーティーは何事もなく料理やお菓子を誉められたりしつつ、和やかに楽しく終わった。

 …………のであるが。



 次の日から、グエン・ロイズの猛攻は始まった。


 ルーシーに対して連日花束を贈る事に始まり、アクセサリーや小物のプレゼント、お菓子なんかも持って我が家にいそいそ訪れる。


 ダークに話を聞くと、彼もダークと同じ剣術好きで、騎士団で身を立てつつ、剣術も上手くなりたいと言うタイプだそうだ。
 かなり腕は立つとのこと。

 イケメン枠だし伯爵子息なので、第一か第二部隊に配属が可能なのを、強くなりたいと希望して第四部隊に配属されたらしい。

 25だと言うので、ルーシーより7つ下なのだが、まだ女性と付き合った事もないという。

「これと決めた女性に自分からアプローチする事に決めていた」

 そうで、それがどうやらルーシーらしい。

 個人的にはよくぞルーシーにロックオンしてくれた!という思いと、ルーシーが全く嬉しそうな様子を見せない事に、こりゃあ見込み薄かなぁ、と陰ながら心配したりとモヤモヤしている訳なのである。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……ねえルーシー」

 私は原稿の下書きの手を止めて、ルーシーに話しかけた。
 サリーはひと休みする為のお茶を淹れに図書室から出ていったばかりである。

「はい何でしょうか?──あ、リーシャ様、ここのミハイルの髪の毛のベタ忘れておりました。今急いでやりますわね」

「まあ〆切はまだ余裕あるから後ででいいわ。ところでどうするのよ」

「どうするとは?」

「グエンさんの事よ」

「ああ……」

 ペタペタとなかなか上達したベタ塗りをしつつ、苦笑した。

「──リーシャ様、私を幾つだと思っておられるのですか?」

「32でしょ。私の2こ上なんだから」

「グエン・ロイズ様は25でございます。伯爵家のご子息ですし、もっと年の釣り合う若く可愛らしい女性がおられますわ。
 何もこんな三十路過ぎの行き遅れと結婚を前提にお付き合いする必要がどこにあるのですか」

「惚れたなら年上とか年下とか関係ないでしょう?私だってダークと14違うのよ?それにほら、伯爵家とはいっても三男坊だし、独立して家を出る立場の方よ?」

「それは男性が上の場合のお話ですわ。女が5歳以上も年上なんて滅多に聞く話ではございません。
 老け込むのは女の方が先ですし、あちらにも申し訳ないではありませんか。
 それに、わたくし一生こちらでお世話になると決めているのです」

 ルーシーが私を見た。

「でも、結婚しても好きな仕事を続けて欲しいと仰ってたじゃない」

「家事などの傍らにと言う意味でしょう。正直、家庭を持って家事の片手間に仕事、というのはわたくしには向いておりません。
 仕事も好きですし、体を鍛える時間も、好きな小説やマンガを読む時間も大切です。わたくし今が一番幸せなのです」

「うーん……グエンに好意はないのかしら?」

 私は疑問をぶつけてみる。

 グエンは顔も悪くない。人懐っこいし、話した感じもなかなか気配りの出来る人だ。
 貴族だからと言う驕りもない。

「好きとか嫌いとか考えて見た事がございません。
 顔立ちも整っておられますし、いい方かとは思いますが……正直言えば、リーシャ様や旦那様、お子様たちのお世話をする方が魅力的でございます」

「そうなの……」

 ちょっと私はガッカリしてしまった。
 
「でも、メリーだってもう60越えたし、孫の顔が見たいって言われたのでしょう?」

 メリーはルーベンブルグ家で働くルーシーのママで私の乳母でもある。

「兄のところに子供もおりますし、毎度の事ですから。わたくしは一生独身だと宣言しておりますし。今さら子供など、頑張っても生まれるかどうかも分かりませんでしょう?」

「まあそれは誰にも分からない事だけれど。
 いずれルーシーに旦那様が出来たらいいなと思っていたから、少し残念だわぁ」

「老後手足が利かなくなるか、ボケでもするまではシャインベック家にお世話になるつもりです。
 リーシャ様、ずっと家にいてねと仰っておられたじゃないですか。わたくしをポイするおつもりだったのでございますか?」

 ルーシーが悲しそうな表情で私を見た。

「まさか!ずっといてもらいたいけど、貴女の幸せを妨害するつもりもないのよ。
 私だって、ほら、頑張れば……色々出来ると思うわよ。教えて貰えれば」

「向き不向き、という言葉をご存知ですかリーシャ様?財務管理は何度か教えようとトライしましたのに、油断すると直ぐに耳から魂が抜け出ておられたじゃありませんか?その口でよくもそんな事が言えますわね」

「違うの、違うのよ!昔から細かい計算が苦手でね、数字の羅列を見るとふわりふわりと妖精さんが脳内で踊りだすの よ。他は何とかイケそうな気がするの!ホントよ!」

「でしたら〆切の調整は全てをお任せしてもよろしいですか?網の目をくぐるような繊細なスケジューリングが必要になりますが」

「お任せされるのはよろしくないわね。他に何かないかしら?」

「お子様たちが暴漢に襲われた時は」

「…………えーと」

「旦那様の荒ぶる想いを適度に逸らしたりですとか」

「…………」

「何かにつけてアクセスしようとする王族を様々な理由をつけてなるべく避けたり等は?」

「…………」

「それでは何なら大丈夫なのでしょうか?」


 私は膝をついて床を見つめた。
 いっそ清々しいほどのダメ人間だった。

 ルーシーがいないと私の生活は早々に暗礁に乗り上げそうな気がする。

「……アズキのお世話、かしら……ね……」

 視線の先にいたアズキを抱き上げてすりすりする。

「オイチャン頑張らないといけないねぇアズキ……」

「ンニャ」

「──お、慰めてくれるのかい?
 ……おいおい、肉球でオイチャンをたぶらかそうなんて、いつからそんな色仕掛けをするような悪い子になったんだい?
 いや、オイチャンは据え膳は頂くタイプだよ?『マーブルマーブルの狼』とはオイチャンの事さ。がおーー」

「何ががおーーですか。オイチャンには帰って頂かないと仕事が溜まっているのですよ」

「……分かったわ、やるわよ。
 でもねルーシー。グエンも真剣に貴女に向き合っているのだから、貴女も1度位はちゃんとデートでもしてみて、それで無理だと思ってから断りなさい。グエンにも悪いし、いつまでも避けていても仕方ないじゃない?」

「……左様でございますね。
 それでは近々お約束を致しますので、旦那様がお休みの時にでも1日お休みを頂ければ」

「ええ、いつでもいいわよ」




 そして、ルーシー初の男性と2人のデートという一大イベントは幕を開けるのである。




 
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