土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

文字の大きさ
252 / 256

カメコン【3】

しおりを挟む
 翌日はスッキリとした雲1つないいい天気だった。
 暑くもなくむしろ風が涼しくて気持ちいいぐらいで汗もかかない。
 言いたくはないけど撮影日和という奴であろう。
 
 
 昨日の食事の時にお義父様から聞いた説明では、今日の朝9時から午後3時までに参加者が撮影したフィルムを、ポルタポルタ支店のエンジェル電気の人が会場まで取りに来てくれるそうだ。
 
 更には夜通し現像してくれた作品を、翌日の早朝会場に受け取りに来た参加者がチェックし、出品用として2点引き伸ばすのを決める。
 
 そして会場に持ち込んだ引き伸ばし機で引き伸ばした写真を昼には一斉に貼り出し、来場者の得票数でその日の夕方には優勝者が決まるらしい。
 
 丸2日で終了するスピード感が凄いが、エンジェル電気も社員を総動員してるし、残業もしないとならないし、いくらカメラを売りたいと言ってもそんなに店を閉める訳にもいかないだろうから、協力する日数にも限りがあるようだ。
 
「マーブルマーブル店の店長の友人にも帰る前にリーシャも孫たちも引き受けてくれたし、ルーシーにも協力してもらえる事になった、と手紙を送ったら、昨日こちらに返事が届いていてな、
 『それは盛り上がりますね。周りにも宣伝しておきます! ついでに私もヘルプで会場に行きますのでシャインベック夫人やお子さま方、ルーシー・ロイズ夫人にも是非お礼かたがたご挨拶を』
 と書いてあった。アイツも忙しそうで大変だな」
 
 と同情していたが、ルーシーが言うには
 
「カメラの売り上げ大幅アップになりそうな大物が釣れたので、ポルタポルタ町の社員への自慢ついでに、あわよくばリーシャ様やお子さまたちと記念写真でも撮らせて貰おうとか企んでいるに違いありませんわ」
 
 との事だが、大物でも何でもないし、よそん家の人妻や子供と一緒に撮って何が嬉しいのか分からないから、きっとルーシーのいつもの過剰妄想だろうと思う。
 
 
 ルーシーもマイカメラ持参で驚くほどフィルムも持ってきている。
 まだ私や子供の撮影に慣れてないお義父様にコツを教えながら、自分のコレクションも増やすつもりらしい。
 まあ子供たちの写真が増えるのは結構な事である。
 
 グエンさんは今日1日は助手として荷物もちだそうで、疲れそうねと思って同情していたら、
 
「妻との協力作業……何か夫婦っぽくて、いい……」
 
 と身悶えしていたので労る言葉をかけるのは止めた。
 リア充め。
 
 
 私はこそこそと子供たちと円陣を組んで、
 
「……こうなったら仕方ないわ。バージョン2で乗り切りましょう。早く済ませれば早く解放されるから、町にチーズ買いに行くわよ!!」
 
 と励まし合う事にしたが、
 
「愛する子供への痛烈な裏切り行為はチーズだけで誤魔化されるとでも? 母様」
 
 とカイルから叱られ、
 
「バージョン2はいいけど、チーズおかきもあるらしいの。アナはそれをお土産に沢山欲しいな。レイモンドにもあげたいし」
 
「チーズスティックというプリッツみたいなのもあるそうなんで、僕はそれで傷ついた心を癒します母様」
 
「クロエは悲しみをこらえるのは甘い方がいいのでレアチーズタルトがいいです母様」
 
 と賄賂の増量が要求された。
 実に私の血をよく引いた子供たちである。
 しかし私も押し付けようとした負い目はあるので今回は認めざるを得なかった。
 
 
 
 ◇  ◇  ◇
 
 
 
「いってらっしゃいませ。お気をつけて」
 
 お達者クラブな使用人たちに見送られ、徒歩で会場に向かう。屋敷から15分ほど、町の外れの多目的スペースのような所に到着した。
 屋外で、大きな板の看板がいくつも立っている。
 ここにこれから作品が飾られるのね。
 
 既に結構な参加者が番号のついたバッジを受付で貰っているようだ。
 
「やあデューク! 待ってましたよ!」
 
 という大きな声がして、受付から男性が走ってきてお義父様と握手をした。
 もしやこの人が店長か、と思ってたら私にも目を向けてきた。
 
「シャインベック夫人、いつもロイズ夫人には大変、大変お世話になっております」
 
 と隣のルーシーにも併せて頭を深く下げた。
 いや、ルーシーはともかく私関係ないよね?
 お義父様はまた知人に話しかけられてそちらと笑い合っている。
 
「──店長、今回はカメラコンテストにリーシャ様やお子さま方を引っ張り出せた事、年末の給料アップ査定に大変影響があるのでございましょうねえ」
 
 ルーシーが静かに語る。
 
「い、いえまさか滅相もないっ、そんな事は考えてもおりませ──」
 
「顧客情報の漏洩って、結構な犯罪行為ですわよね?」
 
 ルーシーの台詞にビクッ、と顔がひきつらせた店長が、
 
「ゆゆゆ、友人との飲みの席での共通の知り合いの話でございますしっ」
 
 と慌てて弁明した。
 
「新しいカメラのモニターと、1年の現像フリーパスでしたかしら? 犯罪行為を擁護するには安く見られたものですわねわたくしも。被害者なのですが。
 ポルタポルタ支店の店長はこちらにはおられないのでしょうか? 情報共有ってとても大切ですわよね」
 
 店長の額からだらだらと汗が流れ出した。
 
「……も、勿論おりますが、情報共有は必要ないかと。
 あっ! お伝えするのを忘れておりました!
 今回のサポートでフィルム! フィルムも1年分お付けするつもりでしたのにすっかり失念しておりました」
 
 今度は蒼白になった店長に、
 
「フィルムなどは沢山購入済みですので必要ありませんわ。ただ、出来ましたらモニターで借り受けるアップの撮影が出来るカメラ、気に入ったらそのまま安く譲って頂けると、わたくしも口が堅くなるのですけれど……」
 
「──へ? いや、そんなことでいいなら喜んで!」
 
 今の撮影頻度を見ていると、ルーシーの1年分のフィルム代って相当だろうから、店長としてはかなり痛い出費だった筈だ。
 それを、必要なモニターもしてもらえてテスト製作した使い古しのカメラを譲る程度なら、必要経費で落ちてむしろ御の字だろう。
 
 お義父様に声をかけ、是非とも記念に! と私や子供たちと一緒に、首から下げていたカメラでカメラマンルーシーに撮ってもらい、スキップでもしそうなほどご機嫌に受付に戻っていった。
 
 だから何で記念撮影すんだ。
 私も子供も関係ないじゃろ。
 
「……ルーシー、穏便に済ませたのねえ」
 
「まあこれからも使う店舗でございますし、永久名誉モニター会員の座は捨てられません」
 
 ルーシーはくいっとメガネを直すと、
 
「それに弱味は握っておいた方が、まあ先々使い道がございますし」
 
 と口角を上げた。
 穏便じゃなかった。こわー。ルーシー怖いわー。
 
「うわールーシーかっこいー! さすが俺の妻ー!」
 
 グエンさんがルーシーを抱きしめて人前ですと押し戻されていたが、ルーシーほど味方にすると心強く敵に回すと恐ろしい人は今まで見たことがない。
 
 味方枠だからいいけど、敵だったらいつ寝首をかかれていても不思議ではないのだ。
 
「ルーシー、貴女が家に来てくれて本当に良かったわ」
 
「どうしたんですいきなり? リーシャ様やお子さま方に会えて私もようございましたわ」
 
「僕は? ねえ僕は?」
 
「……グエンとも会えて良かったですわ」
 
「僕もー! 愛してるールーシー!」
 
「だから昼間っから公衆の面前で抱きつかないで下さい。恥ずかしいじゃありませんか」
 
「やだー僕の妻アピールするんぐふぉっっ!」
 
 グエンさんが変な声を出してうずくまった。
 
 ルーシーの脇パン、結構効くのよねえ。
 経験者だから知ってるけど。
 
「いきなりは酷いじゃないかルーシー……」
 
「人が嫌だと言う事はしちゃいけないと教わりませんでしたかグエン?」
 
「ごめん、だって可愛いからルーシーが照れてるの」
 
 今度は何も言わずルーシーの回し蹴りが飛んだが、予測していたのか綺麗に避けていた。
 
 バカップルは放置しておいて、お義父様の受付が終わるのを子供たちと待っていたが、周りの視線が痛い。
 
 ザワワザワワと大和民族上げがひどい。私にはディスられてるのと同じようにメンタルが弱る。
 子供たちも空を眺めたりしつつ如何に視線を遠くに飛ばすかに神経を注いでいる。
 
 でも今日と明日の辛抱だものね。明後日にはダークの待つマイホームに戻るわー。
 
 
「待たせたな」
 
 お義父様が戻って来たのでルーシーたちといい撮影場所はないかと歩き出したところで、背後から
 
「おい、そこにいるのはデュークじゃないか?
 負け戦でも参加はするんだな。感心感心」
 
 などと不穏な声が聞こえてきた。 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

召しませ、私の旦那さまっ!〜美醜逆転の世界でイケメン男性を召喚します〜

紗幸
恋愛
「醜い怪物」こそ、私の理想の旦那さま! 聖女ミリアは、魔王を倒す力を持つ「勇者」を召喚する大役を担う。だけど、ミリアの願いはただ一つ。日本基準の超絶イケメンを召喚し、魔王討伐の旅を通して結婚することだった。召喚されたゼインは、この国の美醜の基準では「醜悪な怪物」扱い。しかしミリアの目には、彼は完璧な最強イケメンに映っていた。ミリアは魔王討伐の旅を「イケメン旦那さまゲットのためのアピールタイム」と称し、ゼインの心を掴もうと画策する。しかし、ゼインは冷酷な仮面を崩さないまま、旅が終わる。 イケメン勇者と美少女聖女が織りなす、勘違いと愛が暴走する異世界ラブコメディ。果たして、二人の「愛の旅」は、最高の結末を迎えるのか? ※短編用に書いたのですが、少し長くなったので連載にしています ※この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています

転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。  全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。  そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。  人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。  1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。  異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります! 【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

不憫な貴方を幸せにします

紅子
恋愛
絶世の美女と男からチヤホヤされるけど、全然嬉しくない。だって、私の好みは正反対なんだもん!ああ、前世なんて思い出さなければよかった。美醜逆転したこの世界で私のタイプは超醜男。競争率0のはずなのに、周りはみんな違う意味で敵ばっかり。もう!私にかまわないで!!! 毎日00:00に更新します。 完結済み R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

天使は女神を恋願う

紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか! 女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。 R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m 20話完結済み 毎日00:00に更新予定

今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月
恋愛
 私の理想の容姿は「人形の様な整った顔」。  クールビューティーっていうの? 華やかで目を引くタイプじゃなくて、ちょっと近寄りがたい感じの正統派美人。  皆の人気者でいつも人に囲まれて‥ってのじゃなくて、「高嶺の花だ‥」って遠巻きに憧れられる‥そういうのに憧れる。  そりゃね、モテたいって願望はあるよ? 自分の(密かな)願望にまで嘘は言いません。だけど、チヤホヤ持ち上げられて「あの子、天狗になってない? 」とか陰口叩かれるのはヤなんだよ。「そんなんやっかみだろ」っていやあ、それまでだよ? 自分がホントに天狗になってないんなら。‥そういうことじゃなくて、どうせなら「お高く留まってるのよね」「綺麗な人は一般人とは違う‥って思ってんじゃない? 」って風に‥やっかまれたい。  ‥とこれは、密かな願望。  生まれ変わる度に自分の容姿に落胆していた『死んで、生まれ変わって‥前世の記憶が残る特殊なタイプの魂(限定10)』のハヅキは、次第に「ままならない転生」に見切りをつけて、「現実的に」「少しでも幸せになれる生き方を送る」に目標をシフトチェンジして頑張ってきた。本当の「密かな願望」に蓋をして‥。  そして、ラスト10回目。最後の転生。  生まれ落ちるハヅキの魂に神様は「今世は貴女の理想を叶えて上げる」と言った。歓喜して神様に祈りをささげたところで暗転。生まれ変わったハヅキは「前世の記憶が思い出される」3歳の誕生日に期待と祈りを込めて鏡を覗き込む。そこに映っていたのは‥  今まで散々見て来た、地味顔の自分だった。  は? 神様‥あんだけ期待させといて‥これはないんじゃない?!   落胆するハヅキは知らない。  この世界は、今までの世界と美醜の感覚が全然違う世界だということに‥  この世界で、ハヅキは「(この世界的に)理想的で、人形のように美しい」「絶世の美女」で「恐れ多くて容易に近づけない高嶺の花」の存在だということに‥。   神様が叶えたのは「ハヅキの理想の容姿」ではなく、「高嶺の花的存在になりたい」という願望だったのだ!   この話は、無自覚(この世界的に)美人・ハヅキが「最後の人生だし! 」ってぶっちゃけて(ハヅキ的に)理想の男性にアプローチしていくお話しです。

【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一
恋愛
織原朔真16歳は人前で話せない。息が詰まり、頭が真っ白になる。そんな悩みを抱えていたある日、妹の織原萌にVチューバーになって喋る練習をしたらどうかと持ち掛けられた。 織原朔真の扮するキャラクター、エドヴァルド・ブレインは次第に人気を博していく。そんな中、チャンネル登録者数が1桁の時から応援してくれていた視聴者が、織原朔真と同じ高校に通う国民的アイドル、椎名町45に属する音咲華多莉だったことに気が付く。 彼女に自分がエドヴァルドだとバレたら落胆させてしまうかもしれない。彼女には勿論、学校の生徒達や視聴者達に自分の正体がバレないよう、Vチューバー活動をするのだが、織原朔真は自分の中に異変を感じる。 ネットの中だけの人格であるエドヴァルドが現実世界にも顔を覗かせ始めたのだ。 学校とアルバイトだけの生活から一変、視聴者や同じVチューバー達との交流、eスポーツを経て変わっていく自分の心情や価値観。 これは織原朔真や彼に関わる者達が成長していく物語である。 カクヨム、小説家になろうにも掲載しております。

処理中です...