土偶と呼ばれた女は異世界でオッサンを愛でる。R18

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ

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カメコン【5】

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「あの……一生の記念にしたいので是非一緒に写真を」
 
「亡くなった姉にほんのり似ているような気がしなくもなくもないんです。お願いしますそのベンチで一緒に撮影して下さい。墓場まで持っていきます!」
 
「私の流産した子供の面影があるんです。御守りにしたいので是非お子さま方と写真をっ!!」
 
「町に女神と天使が訪れたという証拠に店の看板の前で一緒に俺と撮って下さい!」
 
 
 
 
 お義父様といい撮影場所を求めてうろついていた私たちであるが、ハーメルンの笛吹きのように後ろからぞろぞろと人が付いてきて一緒に写真を撮ろうとしてくる。
 
 似てるような気がしなくもなくもない、って結局似てないじゃんか。
 流産した子の面影って何だ。うっかり同情しかけたけど生まれてもないじゃないのよ。不幸をネタにするのは止めて欲しいわ。
 却下却下却下ー!
 
 大体、芸能人でもあるまいし知らん人と写真なんて撮れるかい。
 何でいきなりこんな……とふと人が多い売店の方を見ると、飲み物や軽食などを売りながら、
 
「今、マーブルマーブル町の女神と天使が降臨なさってまーす。普段はシャイで滅多に俗世間に姿を見せない方々ですので、今回が生涯で最初で最後の撮影チャンスなも知れません!
 今なら手ぶれもしにくいエンジェル電気の『ゴッドハンド・お手軽タイプ』が当店通常価格のなんと2割引でご提供でーす!
 フィルムも1割引でご用意してありますよー!
 女神が撮れるのも天使が撮れるのも今だけっ!!」
 
 と群がるお客さんに揉まれながら、大声でカメラを売りまくってるマーブルマーブルの店長がいた。
 
「……」
 
 私はルーシーにくいっと顎をしゃくった。
 頷いたルーシーが獲物を狙うライオンのように静かに移動して行き、店長の腕を掴んで引っ張り出す。
 
「ル、ル、ル、ルーシー様、これはですね、そのっ」
 
 キタキツネでも呼ぶのかルールル言っている店長に、私は近づき微笑みかけた。
 
「まあ、何故こんなに人がいらっしゃるのやらと思っておりましたら、原因は店長さんでしたのね。
 ウチの主人は私に嫌がるような事をする人間に対しては容赦がございませんのよ?
 困りますわあ、旅から戻ったら逐一報告しないとご機嫌が悪くなるのに、更にご機嫌が悪くなる要素を足されては」
 
「ももも、申し訳ありません! しかしこんな滅多にないチャンスを、商売人として──」
 
「──私、とても困っておりますのよ」
 
 私は微笑みを崩さないようにしつつも、大和民族連合の同胞たちにさりげなく目を向けた。
 
「僕たちも、帰ってからの父様のお叱りを思うと……いえ、僕らはいいんですが、母様を困らせた店だ、とエンジェル電気のマーブルマーブル店に父様が不利益を被らせるのではないかと……荒くれ者が店に現れて揉め事が起きても出来る限りゆっくりと向かうですとか……」
 
「……ひっ」
 
「副官のヒューイおじ様は顔が広いですから、友人に買い物はエンジェル電気以外で、なんて勧めたりする事も、ええ」
 
「私はアーデル国のジークライン王子ととてもとても親しくさせて頂いております。
 こんなことが知れたら、観光客収入で潤っていたのであれば、打撃なんかも大変な事に……」
 
「ひえっ、外交に大変な力をお持ちのジークライン王子様がっ……」
 
 よく口が回る子供たちである。
 店長がもう顔面蒼白だ。
 
 しかし、地味にあることないこと言ってる訳じゃないのが我がシャインベック家の怖さである。
 
 まだ話題に出てないレイモンド王子も、激おこになったら正直洒落にならないのはアーデル国以上なのである。
 
 まあ、無駄に虎の威を借りたい訳ではない。
 放っておいてくれるだけでノープロブレムなのだ。
 
 
「私の、私のクビだけでは済まない問題になりますので、何卒、何卒ご容赦をっ!!
 もうシャインベック家の話で宣伝行為は致しません!」
 
 
 店長が土下座をしているが、ダークやウチの子たちの土下座なんか見惚れるほど綺麗だぞ。
 お前なんかまだまだだ。ばーかばーか。
 
 何しろやらかしてる回数が違うからねぇ。
 
 心のオイチャンが鼻をほじほじしていたが、こんな所で悪目立ちするのも困る。
 
「顔をおあげになって下さいな。
 でしたら、今何をすべきかお分かりですわね?」
 
 周りを見回して、頭をコクコクすると大声で周りの人たちに叫んだ。
 
「皆様ー、女神と天使は大変お疲れです!
 嫌な思い出を残されて2度とこの町に来られなくなっては町の損失です!
 撮るなら遠くからコッソリと! 風景を撮ってたら、たまたま女神や天使が撮れてしまったならばグレーゾーンですがギリセーフです!
 女神と天使を煩わせる事のないよう切にお願いしまーす!!」
 
 
 グレーゾーンはほぼアウトだ。
 遠くからコッソリも認めた覚えはないが、これだけ人が多いとたまたま撮れてしまうことは確かにあるだろう。話しかけて来られなければまだ耐えられる。
 
 さっさと撮影してフィルム現像頼んで帰るのが得策だ。
 
「──それじゃ、お義父様行きましょう」
 
「あ、ああそうだな。
 ……いや、つい見慣れていたので軽く見ていたが、やはりリーシャやカイルたちは思っていた以上に周りへの影響がすごいなあ。
 ダークは本当に幸せ者だ。私もだがな」
 
「私もデュークと籍を入れたくなったわあ。
 まあ馬鹿息子夫婦が調子に乗って貴族貴族うるさく言わなければ直ぐにでも結婚したかったけど、リーシャや優しくて可愛い4人の天使とも家族になれるなら、とか迷ってしまうわね」
 
 しみじみとモリーさんが呟くと、
 
「私はいつでもウェルカムだからね」
 
 とお義父様が笑顔になった。
 
「モリーさ……モリーだってもう家族だと思ってますわよ。ねえみんな?」
 
「「「「はーい。お祖父様とこれからもずうっと仲良くして下さーい!」」」」
 
 と手を上げた。
 
「ま! なんて可愛いらしいのかしら!!
 ありがとうみんな、私みたいなガサツな平民に優しくしてくれて」
 
 うるうると目を潤ませるモリーさんに、アナも笑みを浮かべ、
 
「大丈夫よモリーおば様。ガサツな人は家で見慣──ゴフッッ」
 
 滑るようにアナの横に移動したルーシーに脇パンを食らってうずくまった。
 昔の自分を見ているようである。
 
「まあアナ様! お腹の調子でも悪いのでございますか? 撮影前にお手洗いに行った方がよろしいですわね。クロエ様やカイル様、ブレナン様は如何でございますか?」
 
 ふるふると首を横に振る子供たちを見て、
 
「──それでは大旦那様、アナ様と少々失礼致します。直ぐ戻りますので」
 
「分かった。悪いねルーシー」
 
「いえとんでもありませんわ」
 
 私は引きずられるように拉致られる娘を見送りながら、アナは思った事が素直に口に出ちゃうタイプだものねぇ、と同情した。
 
 ルーシーは、自分は好き放題ディスるくせに、外では私のダメな部分を極力隠蔽したがる。
 
 別に事実なので私がガサツでも大雑把でもオープンで良かろうと思うのだが、
 
「リーシャ様の神秘性は保たねば」
 
 だの、
 
「ガーランドの永遠の女神ですから、マイナスイメージがつくのはよろしくありません」
 
 だのとのたまい、子供たちにも厳しいのだ。
 
 3人は骨身に染み込んでいるのかしくじらないが、アナだけは能天気な性格なのでするするっと口が滑る事が多く、ルーシーに始終説教されている。
 
「まだまだだよねアナは。ルーシーは母様の話に敏感なんだから気をつけないと」
 
「母様が誉められたりすると、余りのイメージの良さに動揺して目がマグロみたいに泳ぎまくるものねー」
 
「あんなに顔に出やすいとレイモンドと結婚した時に大変だと思うけど」
 
 などと子供たちにも小声で言われたい放題である。
 
 でも、あの性格的に真っ直ぐで歯に衣着せないところがアナのいいところなのだけど。
 私に対してルーシーは未だに過保護だからねー。
 
 強く生きれアナ。なむなむ。

 
 戻ってきたアナやルーシーと合流し、待ってる間に撮影場所に決めた公園へと向かう。
 
「アナ、大人しいけどルーシーに大分言われたの?」
 
 私はアナに囁いた。
 
「今バージョン1なのよ母様。喋るとまた余計な事を言っちゃうから私は撮影終わるまで大人しくしてるの」
 
 とアナは口に親指を当ててしー、と言うポーズをした。
 
「……そう。早く帰れるよう頑張りましょうね」
 
 
 あの店長のお陰で声を掛けてくる人たちが居なくなったのはいいが、撮り鉄ならぬ撮りシャインベック家が発生し、あちこちでシャッター音が聞こえるようになったが、気にしない事にした。
 
 気にしたらオイチャンが舞い降りてしまう。いやラッパーかも知れない。
 
 
 頑張れ私。頑張れ子供たち。
 
 
 
 
 
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