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潤也目線
しおりを挟む非常事態だ。
透に自慰を見られてしまった。しかも彼を…想像していた時に。
いや、でも彼を見たのは終わってタオルを取りに出たところだったから気が付かれたとは限らない。
でも彼の態度からして…。
あぁ、考えたくない。決して悪意を持ったわけではないがせっかく両想いになった彼に嫌われたくはない。
彼が置いて行ってくれた服に袖を通し、頭を抱える。髪を乾かす気力もない。
ふらりと廊下に出ると相変わらず美味しそうな匂いがする。
こんな俺でもまだ料理をしてくれるのか、と少し感動さえ覚えてしまう。
様子を伺いながらリビングへ入ると台所の透と目が合う。
「ご、ご飯出来てますよ」
「あ、あぁ。…ありがとう」
まともに顔が見れない、罪悪感でいっぱいだ。
席について食べ始めても頭は混乱している。
「あの…今日は何かご用事は?」
「ないな…何かしたいことあるか?」
「お願いしたいことがあって」
「あぁ、俺に出来ることなら…何でもする」
彼は特に普通だが…気がついていなかったのか。
それならこちらもしてもほっとする。
「今作っている服のサンプルが届いたので着てみて欲しくて。…嫌じゃなかったらお願い出来ますか」
「もちろんいいが…俺でいいのか?」
「はい、潤也さんがいいです」
にっこり笑顔の彼と言葉に顔が緩んでしまう。テーブルを挟んでいるかどうしようもなくキスしたい。
「困ったな…」
「何がですか?」
「凄く…キスしたい」
だめか、と少しねだってみる。勇気をだしてみたがやはりダメだろうか。
「いいですよ、僕もキスしたいです」
彼の言葉に安堵しつつ立ち上がると彼の元に回る。
そっと彼の柔らかい頬を撫で、指を顎へと這わせると少し上を向かせる。
なんて可愛い、何時間でも見ていられる光景だ。
腰を曲げてそっと口付ける。が、1回では止められなかった。
角度を変えて2回、3回とショートキスを繰り返す。
「じゅ、潤也さん…?」
彼の戸惑った言葉に我に返り慌てて離れる。
しまった、がっつきすぎた。
「すまない…止められなくて」
なんでこうも彼の前では失敗してしまうのか。そう少ししょげているとふんわりと彼が抱きついてくる。
「今はこれで我慢ですよ。…また後からならたくさんしましょう」
彼から抱きしめてくれたのは初めてでは無いか。嬉しすぎて記念日にしたい。
彼を抱き締め返して「もちろん」と最後に1度だけ頭部に口付け席に戻る。
席について冷静になったが、かなり進展してしまった気がする。
そう思いながら今の幸せを噛み締めた。
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