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しおりを挟む「…透はどんな子だった?」
「どんな子って、普通の子でしたよ」
そう言って何も聞き出せなかった俺は後日、透が留守の日に彼の兄を呼び出した。
要するに俺のお義兄さんである。
彼の両親は彼に淡白だが、兄の方はその分透と仲が良いらしい。
よく湧を可愛がってもらっている。俺が忙しい時はよく顔を出していたので義兄さんがパパと呼ばれてしまうのではないかと気が気でなかった。
「すーおじちゃんだよ~湧~!!!」
「すー!」
彼の名は俊という。
湧にはすーおじさんと名乗り、湧もすーと呼んで懐いている。
「すみません、義兄さん…急に来ていただいて」
「いいよー、こちらこそ甥に会えて嬉しいからさ。呼んでくれてありがとうね」
外見は透と全く似ていないがこうして話していると彼に通ずるものがある。
「で、何が聞きたいのかな」
「よくお分かりで…」
「勘だって。で、なになに??」
なかなか読めない人だ。
良い人だが少しだけ、ほんの少しだけ苦手でもある。
「透ってどんな子供だったんですか?」
「かわいかったよ」
「それは周知の事実です。…そうではなくて、エピソードというか内面というか」
「ああ、そっちね。そうだなぁ…。今のまんまって感じだけど、今よりちょっと尖ってたというか」
あの透が尖ってた!?
「ヤンキーとか、そういのじゃないよ。なんというか…キレッキレというか、毒舌かな。でも可愛かったよ!」
義兄さんも俺と同じく透が大好きだ。もちろん、俺の愛とは別の形だ。
俺よりも年上だから歳も離れていて可愛がっていたのだろう。
「透オメガじゃん?…だから結構絡まれてたんだけど…」
『…お前、1発俺とやらせろよ。飢えてんだろ?』
(っ?!あれは透?!またベータに絡まれてるな、ここは兄の俺がかっこよく…!)
『飢えてる飢えてないは分からないけど…君とするほどまではいってないかな。…見た目も口も凄く下品な君でもやってくれる人見つかるといいね』
『っ、くそ…!この淫乱野郎が!』
『バイバイ、また明日。お下品ベータさん』
「め、めげませんね。」
「そうなんだよね。うち親もちょっとおかしいからさ、そんな風に変に強くなっちゃったみたい」
口喧嘩は強そうだ。
…でも確かに今も俺は上手く尻に敷かれているような。
いや、透の尻になら敷かれても構わない。肘置きたって別にいい。
「潤也君が聞きたいのは恋愛系でしょ?」
「そうだな~」と湧におやつを食べさせながら義兄さんが首を捻る。
『透~おかえり、今日バレンタインだろ?にいちゃんには??にいちゃんは透に用意済みだぞ』
『ただいま。あるよ、友達と作ったから…でもその前にこれ置いてくるね』
『大荷物だな…なんだそれ』
「…大きい箱の…高級チョコ、日本じゃ買えない高級菓子が3、4箱」
「それって…」
「透が通ってたの経営者とかの子供が集まるおぼっちゃま男子校でね。アルファとかがチラホラいたんだけど…男性オメガなんてそう居なかったから…アルファにモテたね」
「大丈夫だったんですか…?!」
「もちろん。すんごい頑丈な首輪してたから」
「あ、あの…彼氏とか」
「いたねぇ」
「そいつと…なんか…」
「人は選ばせたからね。…きちんと体にあった抑制剤も飲んでたから安全だったよ」
「義兄さん…ありがとうございます」
俺は改めて深々と義兄さん…いや、お義兄様に頭を下げた。
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