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しおりを挟む「湧、ご用意おっけー?」
「おっちぇー!」
今日は湧の幼稚園の入園式。
無事に3歳になるまで色々あった。
玄関で湧に靴を履かせている潤也さんは社長に就任した。
自分はといえば、特に変わりは無いが…仕事は順調だ。ふと気がつけばもうすぐ30代ということにも最近気がついた。
なかなかトイレトレーニングが上手くいかなかった湧だが、なんとか今日までにトイレはできるようになった。
…たまに怪しい。
「まま!いこー!」
「はーい」
最後に玄関を出て、湧と一緒に後部座席へ乗り込むとウキウキな潤也さんが「出発ー」と車を発信させる。
「透~!こっちこっち!」
「楓斗君!…海來君も、こんにちは」
「こーにちは!」
むぎゅ、と会うなり湧に抱きつく海來君と嬉しそうに海來君の頭をぽんぽんする湧。
…かわいい…
親一同、心の声がダダ漏れだ。
幼稚園の集合場所に4人で向かいながら、子供同士、潤也さんと翼さん、自分と楓斗君という組み合わせで話しながら歩く。
それにしても、やっぱり楓斗君は綺麗だ。
「そうそう、あの甥っ子の件…どうなったの?」
「まだ家から通って様子見るらしいけど…やっぱり遠そうで」
「あーね…でもいい子なんでしょ?」
「うん、いい子だよ。僕は楽しみ」
話は1ヶ月ほど前に遡る。
潤也さんの鳩子、らしいがほぼ甥っ子のように接している子がいるらしい。
今年から高校生なのだが、家からかなり遠く…という話だった。
寮もなく、一人暮らしも高校生では心配ということで学校から近い我が家に下宿させてくれないかということだった。
自分も結婚式の時やちょくちょく話したことはある。物腰柔らかないい子だった。
自分は歓迎なのだが、どうも潤也さんが心配らしい。
「甥っ子のことは好きだが、αなので少し心配」だそうな。
既に自分は潤也さんと番だからフェロモンも他のαには聞かないはずと話し合った結果、下宿OKになったのだが、全く通えない距離では無い為少し頑張って見ることにしたらしい。
確かに慣れ親しんだ自分の家の方がいいもんな、と少し納得である。
…だがかなりキツかったらしく、下宿の話を進める方向になった。
部屋も余っているし、人が多いのは嬉しい。
「じゃあ、お子様お預かりしますね。保護者の方はホールでお待ちください」
「わかりました。…じゃあ湧、また後でね」
「ままとぱば…は?」
海來君が快く翼さんと楓斗君にバイバイ!と手を振る反面、不安げで泣き出しそうな湧。
立ち去りながら様子を見ると、大きな目が涙でうるうるしている。
…泣いちゃうか、と思ったその時、海來君が湧の手を取った一緒にバイバイをしてくれた。
「あっち!いっしょにいよ!」
「うん…!」
大丈夫そうだな、と潤也さんが微笑んだのに頷きながら保護者組はホールへ向かった。
…一時保育もしてきたが、それとは違う雰囲気の中離れるのは慣れない。
もうこんなに大きくなってしまった。
「…子供の成長って本当に早いんですね」
「そうだな…毎日思うよ」
入園式のプログラムを見ながら既に感動モードな潤也さん。…テンションがまるで卒業式ではないか。
「入園式で泣いたらだめですよ?」
「大丈夫だ」
ほんとかな、なんて少し笑ってしまった。
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