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咲夜の恋路
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しおりを挟む「予定だと3日後くらいから発情期だから」
その一言を昨晩電話で聞き、今俺はドラッグストアの前にいる。
夏休みと言えど昼間、客はまばらで店員もおばあちゃん。
いける…。
俺は今日、初めてゴムを買う。
これでも男子高校生、ふざけてゴムを持っていた友達からもらったりそれで遊んだりする機会はあったが本来の目的で使うのは初めてだ。
楽しみと言えば楽しみだが、それ以上に緊張している。
そろそろと他の商品を見つつ遠回りをしてゴムが売っているであろう場所までやってきた。
いろいろ種類があるが、すでに調べ済みだ。
男性同士、そして発情中の使用がオススメなのはこれだ。
蓮から以前、唐突に「ローションは家にあるから」と連絡が来たのでローションはいらない。
一応自分もα用の抑制剤を打つからフェロモンに当てられて理性を失うということはないけれど、万が一、蓮に酷いことをしてしまったらどうしようと心配になってくる。
大事にしたい。
あー、俺…全然余裕ない。
カッコつかないな、と思いつつも自分のプライドより蓮を優先したいと思う。
これだけレジに持っていくのもどうかと思い適当に他のものとレジを通した。
夜、課題を進めていると蓮から電話がかかってくる。
「もしもし?…どうしたの?」
『…咲夜…声、聞きたかった…』
「可愛いことしないで…急にどうしたの」
『…発情少し早く来て…家1人だから…寂しかった』
いつもより怠そうな声。
今すぐにでも会いに行きたい。
「蓮、明後日に俺行く予定だったけど…大丈夫?ご飯とか…」
『……しかたないじゃん…母さんが食べやすいご飯用意してくれてったけど…動きたくない』
「今日は何食べた?」
『…氷…』
氷??
なぜ?
「…蓮、明日行っていい?」
『…うん…はやく…』
「とりあえず、なんか食べて薬飲んで早く寝な。電話繋いでていいから」
『…ゼリー食べる…なんか喋ってて』
「そうしな。…喋るって…課題終わった?」
『終わった…』
ガタガタと物音が聞こえる。とりあえず、ゼリーを食べさせて薬を飲ませなければ。
それよりも、この量の課題をもう終わらせたことに驚いている。
さすがだ。
『なかなか楽しい課題だった…』
しばらくチュウチュウとゼリーを吸う音の後に『ご馳走様』と小さく聞こえる。
ちゃんとゼリーでもご馳走様言うのか…可愛いな。
こんなの会いたくなってしまう。
「薬飲んだ?」
『…うん』
「いい子だなー…ほら、もう寝よう」
『…うん』
以前蓮から聞いたのだが、発情期の初日は薬を飲むと風邪のような体になるらしい。
蓮の両親は旅行に出かけているらしい。放っておいているわけではなく、蓮が頼んだらしい。
「発情期の時に親と会うのなんか恥ずかしいし、だから2人で出かけてもらってる」とのことだ。
電話を繋げながら課題を進めたり話したりしているとやがて小さな寝息が聞こえてくる。
そっと電話を切り、おじさんと透さんのグループラインに明日から泊まることを連絡する。
おじさんから後で個人的にファイト!のスタンプがに来たのは少し面白かった。
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