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 強烈な香水の香りと煙草の匂いが混じり合うその部屋は、キャスト達の控室らしい。

 真ん中の大きなガラスのテーブルを中心に、黒革の大きなソファが四つ。部屋の両端には、ライトのついた大きな鏡台。奥にはロッカー。

 ソファには煙草を吸いながら何やらイライラした様子でノートパソコンと向き合っている男が一人。

「オイ」

「あ?」

 鵺雲さんが話し掛けるとその男は顔を上げ、俺らの方を睨みつけてきた。

 オールバックの黒髪、銀縁の眼鏡、そして眉上の傷。


 ――あ、この人。ヤバい人だ。

 直感で分かる。どう考えてもヤバ目の世界で生きている人の風貌だ。

 もしかして、ヤのつく人……?



「このブス、ロマネ割りやがった」

 そう言って、鵺雲さんは俺の背中を押して男の方へと突き出した。

「……ふうん」

 男は俺の身体を頭のてっぺんから足元まで一通り見た後、再びパソコンへと顔を向ける。

 ……あれ?思ったより興味なさそう。

 俺は何だかホッとしてしまった。

 興味がないならさっさと帰してくれそうな気がして。


 しかし――




「山にでも埋めれば?」


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