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kaoru

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第一章 黒猫の夢?

二話

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 そう昨日の放課後、教室で帰り支度をしていると、辺りが急に暗くなり、外を見ると黒い雨雲が空を覆いはじめていた。
 俺達の他に数人残っていたクラスメイトは、慌てて教室から出ていき、何故か、俺達だけが教室に残るかたちになった。
 そして俺達も早くと思い瑞樹に、声をかけようとした瞬間。

ピカッ  ドシャーン

と、雷、そう、あれは雷が落ちたのだと思う。
驚いて思考が停止しているところに、「ニャー」という鳴き声と[光輝ぃ]という、何か違和感がある瑞樹の声が聞こえてきた。
 声がした方に目をやると、夏季の制服であるワイシャツと紺のスラックスが落ちていて、そのワイシャツから黒い物体が出てきた。

 それからのコトは、あまり覚えていない。
黒猫に爪をたてられ、正気に戻ったと思っていたが、家に着き、バッグの中から猫の鳴き声と俺の名前が連呼されているのを聞いてから、自分がどうやって帰ってきたのか、思い出せなかった。
 その後も、どうしていいのか分からないまま、腹が減ったので、買い置きしてあったパンを食べて寝たんだった。
 夢であってくれって、願いつつ。

「ニャー?」
 [瑞樹?]

「わるい、昨日のコト思い出してた」

[…それも、大変な事だけど、どうでもよくなるかもしれない]

「ん?どういうことだそれ、って、今お前鳴いたか?」

「にゃっにゃ」
[ううん]

「鳴かずに、俺に話しかけてみろよ」

[…マンガとか小説なんかに出てくる念話って感じか?]

「おっ、それ、そうやって話してくれよ。鳴き声と二重音声だとウザすぎる」

[そうなのか?]

「うん、スッキリして良い感じだ。で、イヤな夢ってなんだよ」

「にゃー」
[あー]

「だから鳴くな、しかも大声出しやがって」

[ごめん、でもさ、俺が鎧を着た人に斬られた夢みたんだよ。もしかして、光輝も見てたりする?]

 鎧?あの紅い眼のイケメンは鎧を着ていたか?斬られた?刺されただよな…

[光輝?見たのか?]

「…微妙に、違うと思う。お前の夢詳しく聞かせろよ」

[えっと、なんかものすごい、どしゃ降り中、西洋の城みたいな建物を、空から近付いていって、窓の1つを覗くと、赤い鎧を着た人と俺が向き合っていて、突然、その男が大剣を抜いて、俺を斬ったんだ。俺はその場に倒れると思ったら、赤い光に包まれて、二人は消えていた。そして、部屋に紅い石が転がっているのを見たところで、目が覚めた]

「…」

[なんだよ、難しい顔して、光輝の夢はどうだったんだ?]

俺達兄弟には、ちょっとした秘密がある。

最初は三才ぐらいの時だと思う。昼寝から覚めて二人揃って大泣きした。怖い夢を見たからだ。
 大雨の中、父親が運転する車がスリップして、谷に転落した夢だった。
 そして、その何時間後に現実になり、父親は帰らぬ人になった。
 
 次は十一年前だ。小学校に上がる直前だった。
その時、住んでいた祖父母の家の近くの林の中、湿地帯に沼にちかい池が在って、そこに母親が入って行く夢だった。
 父親の時は、ただ怖いというだけで、理解出来ていなかった…でも、この時、二人で同じ夢を見たら、正夢になるのかもしれないと、瑞樹と意見があった。父親の時は、ただ泣いて騒いで、母親を困らせただけだったから、なんとかしたかった。父親が死んだ後、俺達を祖父母に預けて、離れて暮らす事を選んだ母親だったけど、生きていて欲しかった。
  でも、小さい俺達はどうすれば良いのか分からずに、その時、俺達の中で、一番頼りになる祖父に夢の事を話した。
 祖父は…じいちゃんは、夢だからと、バカにすることはせずに、ちゃんと聞いてくれて、村の消防団の人に話をつけて、林の回りに立ち入り禁止の札を立て、なるべく見回りもして、母親を見かけたら、直ぐに連絡をしてもらえるようにしてくれた。
 でも、その時に、じいちゃんは、凄く悲しそうな顔をしていた。
 それから、三日後だった。見回りしていたのに、いつの間にか林近くに軽自動車が止められているのが発見され、母親のかと問い合わせがあり、じいちゃんが確かめに行って…
 母親の遺体は見つからなかったが、早い段階で、入水自殺として、処理された。
 湿地のせいで、人も重機もあまり入れず、捜索が思うように出来なかったらしいけど、母親が持っていた物が、いくつか発見されたのと、湿地にあった足跡が、女性一人分しかなかったのが、決め手になったということだった。
 その時に、じいちゃんには、夢の事は気にしないようにと言われたけど、俺達は気になって、怖くてしかたがなかった。
 でも、それからしばらくは、二人同じ夢を見ることはなかった。

 三度目は、五年前、小六の時だった。
 輸入雑貨のバイヤーをしている叔父…母親の弟で、叔父さんと言うより、兄さん的で、祖父母の次に頼りにしていた。
 その叔父が、乗った飛行機が乱気流に突っ込み墜落する夢だった。
 その時には、自分達で、電話もかけれたので、叔父のケータイに連絡して、しばらく飛行機に乗らないように頼み込んだ。でも、叔父は大丈夫だと言って、次の日、飛行機に乗り込んだ。
 俺達は、堕ちないようにと、ずっと、祈り続けていた。無事に着いたと連絡がきた時は、泣きそうだった。
 帰りの事もあるけど、もしかしたら正夢じゃなかったのかも、思った矢先、叔父がいる国の近くの海上で、旅客機が消息不明のニュースが流れて、搭乗していたと思われる日本人として、叔父の名前がテレビから聞こえてきた。
 やっぱり、正夢だったんだと、ショックを受けていた俺達に、じいちゃんは大丈夫だと言った。
 母親の時と違って、笑顔で俺達の頭を撫でてくれた。
 そして、その言葉通り、次の日浅瀬に胴体着陸した機体が見つかり、搭乗者は、軽傷者はいるものの、全員無事というニュースが流れた。
  ばあちゃんと俺達は、笑いながら大泣きした。

今までの夢は、二人して全く同じ夢だった。
だけど、今回の夢は…

 
 
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