21 / 125
第一章 黒猫の夢?
二話
しおりを挟む
そう昨日の放課後、教室で帰り支度をしていると、辺りが急に暗くなり、外を見ると黒い雨雲が空を覆いはじめていた。
俺達の他に数人残っていたクラスメイトは、慌てて教室から出ていき、何故か、俺達だけが教室に残るかたちになった。
そして俺達も早くと思い瑞樹に、声をかけようとした瞬間。
ピカッ ドシャーン
と、雷、そう、あれは雷が落ちたのだと思う。
驚いて思考が停止しているところに、「ニャー」という鳴き声と[光輝ぃ]という、何か違和感がある瑞樹の声が聞こえてきた。
声がした方に目をやると、夏季の制服であるワイシャツと紺のスラックスが落ちていて、そのワイシャツから黒い物体が出てきた。
それからのコトは、あまり覚えていない。
黒猫に爪をたてられ、正気に戻ったと思っていたが、家に着き、バッグの中から猫の鳴き声と俺の名前が連呼されているのを聞いてから、自分がどうやって帰ってきたのか、思い出せなかった。
その後も、どうしていいのか分からないまま、腹が減ったので、買い置きしてあったパンを食べて寝たんだった。
夢であってくれって、願いつつ。
「ニャー?」
[瑞樹?]
「わるい、昨日のコト思い出してた」
[…それも、大変な事だけど、どうでもよくなるかもしれない]
「ん?どういうことだそれ、って、今お前鳴いたか?」
「にゃっにゃ」
[ううん]
「鳴かずに、俺に話しかけてみろよ」
[…マンガとか小説なんかに出てくる念話って感じか?]
「おっ、それ、そうやって話してくれよ。鳴き声と二重音声だとウザすぎる」
[そうなのか?]
「うん、スッキリして良い感じだ。で、イヤな夢ってなんだよ」
「にゃー」
[あー]
「だから鳴くな、しかも大声出しやがって」
[ごめん、でもさ、俺が鎧を着た人に斬られた夢みたんだよ。もしかして、光輝も見てたりする?]
鎧?あの紅い眼のイケメンは鎧を着ていたか?斬られた?刺されただよな…
[光輝?見たのか?]
「…微妙に、違うと思う。お前の夢詳しく聞かせろよ」
[えっと、なんかものすごい、どしゃ降り中、西洋の城みたいな建物を、空から近付いていって、窓の1つを覗くと、赤い鎧を着た人と俺が向き合っていて、突然、その男が大剣を抜いて、俺を斬ったんだ。俺はその場に倒れると思ったら、赤い光に包まれて、二人は消えていた。そして、部屋に紅い石が転がっているのを見たところで、目が覚めた]
「…」
[なんだよ、難しい顔して、光輝の夢はどうだったんだ?]
俺達兄弟には、ちょっとした秘密がある。
最初は三才ぐらいの時だと思う。昼寝から覚めて二人揃って大泣きした。怖い夢を見たからだ。
大雨の中、父親が運転する車がスリップして、谷に転落した夢だった。
そして、その何時間後に現実になり、父親は帰らぬ人になった。
次は十一年前だ。小学校に上がる直前だった。
その時、住んでいた祖父母の家の近くの林の中、湿地帯に沼にちかい池が在って、そこに母親が入って行く夢だった。
父親の時は、ただ怖いというだけで、理解出来ていなかった…でも、この時、二人で同じ夢を見たら、正夢になるのかもしれないと、瑞樹と意見があった。父親の時は、ただ泣いて騒いで、母親を困らせただけだったから、なんとかしたかった。父親が死んだ後、俺達を祖父母に預けて、離れて暮らす事を選んだ母親だったけど、生きていて欲しかった。
でも、小さい俺達はどうすれば良いのか分からずに、その時、俺達の中で、一番頼りになる祖父に夢の事を話した。
祖父は…じいちゃんは、夢だからと、バカにすることはせずに、ちゃんと聞いてくれて、村の消防団の人に話をつけて、林の回りに立ち入り禁止の札を立て、なるべく見回りもして、母親を見かけたら、直ぐに連絡をしてもらえるようにしてくれた。
でも、その時に、じいちゃんは、凄く悲しそうな顔をしていた。
それから、三日後だった。見回りしていたのに、いつの間にか林近くに軽自動車が止められているのが発見され、母親のかと問い合わせがあり、じいちゃんが確かめに行って…
母親の遺体は見つからなかったが、早い段階で、入水自殺として、処理された。
湿地のせいで、人も重機もあまり入れず、捜索が思うように出来なかったらしいけど、母親が持っていた物が、いくつか発見されたのと、湿地にあった足跡が、女性一人分しかなかったのが、決め手になったということだった。
その時に、じいちゃんには、夢の事は気にしないようにと言われたけど、俺達は気になって、怖くてしかたがなかった。
でも、それからしばらくは、二人同じ夢を見ることはなかった。
三度目は、五年前、小六の時だった。
輸入雑貨のバイヤーをしている叔父…母親の弟で、叔父さんと言うより、兄さん的で、祖父母の次に頼りにしていた。
その叔父が、乗った飛行機が乱気流に突っ込み墜落する夢だった。
その時には、自分達で、電話もかけれたので、叔父のケータイに連絡して、しばらく飛行機に乗らないように頼み込んだ。でも、叔父は大丈夫だと言って、次の日、飛行機に乗り込んだ。
俺達は、堕ちないようにと、ずっと、祈り続けていた。無事に着いたと連絡がきた時は、泣きそうだった。
帰りの事もあるけど、もしかしたら正夢じゃなかったのかも、思った矢先、叔父がいる国の近くの海上で、旅客機が消息不明のニュースが流れて、搭乗していたと思われる日本人として、叔父の名前がテレビから聞こえてきた。
やっぱり、正夢だったんだと、ショックを受けていた俺達に、じいちゃんは大丈夫だと言った。
母親の時と違って、笑顔で俺達の頭を撫でてくれた。
そして、その言葉通り、次の日浅瀬に胴体着陸した機体が見つかり、搭乗者は、軽傷者はいるものの、全員無事というニュースが流れた。
ばあちゃんと俺達は、笑いながら大泣きした。
今までの夢は、二人して全く同じ夢だった。
だけど、今回の夢は…
俺達の他に数人残っていたクラスメイトは、慌てて教室から出ていき、何故か、俺達だけが教室に残るかたちになった。
そして俺達も早くと思い瑞樹に、声をかけようとした瞬間。
ピカッ ドシャーン
と、雷、そう、あれは雷が落ちたのだと思う。
驚いて思考が停止しているところに、「ニャー」という鳴き声と[光輝ぃ]という、何か違和感がある瑞樹の声が聞こえてきた。
声がした方に目をやると、夏季の制服であるワイシャツと紺のスラックスが落ちていて、そのワイシャツから黒い物体が出てきた。
それからのコトは、あまり覚えていない。
黒猫に爪をたてられ、正気に戻ったと思っていたが、家に着き、バッグの中から猫の鳴き声と俺の名前が連呼されているのを聞いてから、自分がどうやって帰ってきたのか、思い出せなかった。
その後も、どうしていいのか分からないまま、腹が減ったので、買い置きしてあったパンを食べて寝たんだった。
夢であってくれって、願いつつ。
「ニャー?」
[瑞樹?]
「わるい、昨日のコト思い出してた」
[…それも、大変な事だけど、どうでもよくなるかもしれない]
「ん?どういうことだそれ、って、今お前鳴いたか?」
「にゃっにゃ」
[ううん]
「鳴かずに、俺に話しかけてみろよ」
[…マンガとか小説なんかに出てくる念話って感じか?]
「おっ、それ、そうやって話してくれよ。鳴き声と二重音声だとウザすぎる」
[そうなのか?]
「うん、スッキリして良い感じだ。で、イヤな夢ってなんだよ」
「にゃー」
[あー]
「だから鳴くな、しかも大声出しやがって」
[ごめん、でもさ、俺が鎧を着た人に斬られた夢みたんだよ。もしかして、光輝も見てたりする?]
鎧?あの紅い眼のイケメンは鎧を着ていたか?斬られた?刺されただよな…
[光輝?見たのか?]
「…微妙に、違うと思う。お前の夢詳しく聞かせろよ」
[えっと、なんかものすごい、どしゃ降り中、西洋の城みたいな建物を、空から近付いていって、窓の1つを覗くと、赤い鎧を着た人と俺が向き合っていて、突然、その男が大剣を抜いて、俺を斬ったんだ。俺はその場に倒れると思ったら、赤い光に包まれて、二人は消えていた。そして、部屋に紅い石が転がっているのを見たところで、目が覚めた]
「…」
[なんだよ、難しい顔して、光輝の夢はどうだったんだ?]
俺達兄弟には、ちょっとした秘密がある。
最初は三才ぐらいの時だと思う。昼寝から覚めて二人揃って大泣きした。怖い夢を見たからだ。
大雨の中、父親が運転する車がスリップして、谷に転落した夢だった。
そして、その何時間後に現実になり、父親は帰らぬ人になった。
次は十一年前だ。小学校に上がる直前だった。
その時、住んでいた祖父母の家の近くの林の中、湿地帯に沼にちかい池が在って、そこに母親が入って行く夢だった。
父親の時は、ただ怖いというだけで、理解出来ていなかった…でも、この時、二人で同じ夢を見たら、正夢になるのかもしれないと、瑞樹と意見があった。父親の時は、ただ泣いて騒いで、母親を困らせただけだったから、なんとかしたかった。父親が死んだ後、俺達を祖父母に預けて、離れて暮らす事を選んだ母親だったけど、生きていて欲しかった。
でも、小さい俺達はどうすれば良いのか分からずに、その時、俺達の中で、一番頼りになる祖父に夢の事を話した。
祖父は…じいちゃんは、夢だからと、バカにすることはせずに、ちゃんと聞いてくれて、村の消防団の人に話をつけて、林の回りに立ち入り禁止の札を立て、なるべく見回りもして、母親を見かけたら、直ぐに連絡をしてもらえるようにしてくれた。
でも、その時に、じいちゃんは、凄く悲しそうな顔をしていた。
それから、三日後だった。見回りしていたのに、いつの間にか林近くに軽自動車が止められているのが発見され、母親のかと問い合わせがあり、じいちゃんが確かめに行って…
母親の遺体は見つからなかったが、早い段階で、入水自殺として、処理された。
湿地のせいで、人も重機もあまり入れず、捜索が思うように出来なかったらしいけど、母親が持っていた物が、いくつか発見されたのと、湿地にあった足跡が、女性一人分しかなかったのが、決め手になったということだった。
その時に、じいちゃんには、夢の事は気にしないようにと言われたけど、俺達は気になって、怖くてしかたがなかった。
でも、それからしばらくは、二人同じ夢を見ることはなかった。
三度目は、五年前、小六の時だった。
輸入雑貨のバイヤーをしている叔父…母親の弟で、叔父さんと言うより、兄さん的で、祖父母の次に頼りにしていた。
その叔父が、乗った飛行機が乱気流に突っ込み墜落する夢だった。
その時には、自分達で、電話もかけれたので、叔父のケータイに連絡して、しばらく飛行機に乗らないように頼み込んだ。でも、叔父は大丈夫だと言って、次の日、飛行機に乗り込んだ。
俺達は、堕ちないようにと、ずっと、祈り続けていた。無事に着いたと連絡がきた時は、泣きそうだった。
帰りの事もあるけど、もしかしたら正夢じゃなかったのかも、思った矢先、叔父がいる国の近くの海上で、旅客機が消息不明のニュースが流れて、搭乗していたと思われる日本人として、叔父の名前がテレビから聞こえてきた。
やっぱり、正夢だったんだと、ショックを受けていた俺達に、じいちゃんは大丈夫だと言った。
母親の時と違って、笑顔で俺達の頭を撫でてくれた。
そして、その言葉通り、次の日浅瀬に胴体着陸した機体が見つかり、搭乗者は、軽傷者はいるものの、全員無事というニュースが流れた。
ばあちゃんと俺達は、笑いながら大泣きした。
今までの夢は、二人して全く同じ夢だった。
だけど、今回の夢は…
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる