エレメント

kaoru

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第一章 黒猫の夢?

二十六話

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「デカイ、猫だなぁ」

 マンションに、帰り着いた正兄が、瑞樹を見た最初の一言が、これだった。

「……正兄、普通過ぎ」

[正兄に、泣きつこうと思ってたのに…]

「悪い。サラマンドラの後だと、可愛くて普通に、見れちまう。本当に、瑞樹なんだなぁ」

 そう言って、瑞樹ネコを、抱えあげた。

[サッ、サラマンドラって、何?何があったの?]

 抱え上げられた、瑞樹が、正兄の肩を、前足で、てしてししながら、正兄と、俺を交互に見てくる。呑気にして良いわけではないけれど…かわいい。
 改めて、考えてみると、猫で良かった。
 これが、もし大蜘蛛だの、大蜈蚣だの、大蛇やワニなんてモノだったら、いくら瑞樹でも、無理だ。

 猫でホント良かったぁ…

[なんだよ。何が、あったか説明してくれよ]

 現実逃避している場合じゃないよな…やっぱり…

「まぁ、待て。先ずは腹拵え、駅で弁当買ってきたから、食べながら今までの事を整理してみよう」

「だね、俺は汁物とサラダ作るから、その間に、汗流してきたらいいんじゃない?」

「そうだな。そうするか、落ち着いて考えないとな」

 正兄は、荷物を自室に持っていき、洗濯物を抱えて、脱衣場に行った。
 俺も、荷物を置き、キッチンに入り、味噌汁とサラダを準備する。
 その俺の後で、瑞樹が、また前足で、俺の足をてしてししている。

[もう、何なのさー、早く、聞きたいのにー]

「そう言えば、ももんぐさん達は?」

[うあ?呼んだか?]

 姿が見えないと思ったら、瑞樹が育てている観葉植物の上で、寝ていたようだった。
 クワワッと、大きなアクビをすると、観葉植物から俺の頭に飛び乗って来た。

[その様子だと、瑞樹の事で進展してないですね…]

[ああ、まだ連絡来とらんな。しかし、お前さんは、何やら面白い気をまとって来たのう?こうして、頭に乗っても考えが読めなくなってしまったわい。東京で、なにしてきたのだ?]

[はぁ?どういう事です?]

[ん?いや、どういう事か分からんから、ワシが聞いとるんだが?]

[あっ、いや、その「気」っていうのは、どんなものかと思って]

[ああ、そうさな、この感じからいくと、神にでも会ったのか?お主、加護持ちだったのか?]

[加護持ち?]

[神や、それに近しいモノに、守られている存在じゃよ]

 えっと、サラマンドラって、四大精霊だよな。精霊って、日本だと神になるのか?
 火の神様って、事か?

[よく分からないですが、サラマンドラっていう、精霊に会いました]

[ほほー?そやつの「気」か、どうやら、ワシとあまり、相性がよくないようじゃのう]

 相性?ムササビって、火が苦手なのか?いや、動物は、もともと火が嫌いなんだっけ?今度、調べてみるか。

[この後、ここにサラマンドラを呼ぶつもりですけど、ももんぐさんは、どうします?]

[なに?こんな「気」を持つ奴を呼び出すのか?……怖いが、気になるのう]

 俺の頭の上で、少し悩んでいたが、恐怖より、興味の方が勝ったらしい。使い魔さん達と様子を見ていると言い出した。その使い魔さん達は、瑞樹がベランダで育てている野菜の間から、俺達の様子を伺っていた。

「なんで、外に?」

[なんか部屋の中だと落ち着かないんだって、森に行きたいけど、自分達だけで、行く勇気がないから、しばらく、あそこに住まわせてほしいって]

 思わず声を出した俺に、瑞樹が説明してくれた。しかも、住むかわりに、野菜の世話をしてくれるらしい。

「光輝どうした?デカイ…」

 風呂から上がった正兄が、リビングに入って来て声をかけてきたが、途中で止まってしまった。そして、目を見開き一点を見つめる…その先は、俺の頭の上のももんぐさん。

「えっと、…ももんぐ…さん、だっけ?」

「そう、ももんぐさん。俺達の保護者の正也叔父さんだよ」

 俺が紹介し終わると、ももんぐさんが、頭の上で、うーんと、うなり出した。
そして…

[やっ、お主!お主は、旨い卵焼きを分けてくれてた奴ではないか?]

「あっ、やっぱり、高校時代に、俺の弁当盗み食いしていたムササビか!」

 はぁ?盗み食いって?












 

 
 
 
 
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