エレメント

kaoru

文字の大きさ
46 / 125
第一章 黒猫の夢?

二十七話

しおりを挟む
[ももんぐさん、盗み食いしてたんですか?]

 瑞樹が、ジト目でももんぐさんに訪ねると、頭の上で、もぞもぞ動いて、瑞樹の視界から逃げるようにしてから、コホンと、咳払いした。

[いや、なに、あのな、そやつの遊び仲間の風の子達が、そやつの、母君の料理が旨いと言っとったから、つい、手が出てしまってのう]

「つい、って…あなたのせいで、ほぼ毎日、卵焼き弁当になったんですよ。肉食べたかったのに…」

[「ええ、なにそれ?どういう事?正兄」]

 「ああ、弁当食べながら、話をしよ」

 俺達が通う高校の卒業生である正兄は、高校入学直後、弁当に、隙間があるのが気になった。母親…ばあちゃんが、そんな隙間がある弁当を作る事が不思議で、家に帰って話をすると、じいちゃんが、弁当箱をみて、土地神様に、気に入られたのかもそれないと言い出した。
 それを信じたばあちゃんが、どこに隙間があったのか聞いて、どうやら卵焼きが、好きらしいという事が分かると、おかずのメインが卵焼きという弁当を持たされる事が多くなったそうだ。
 そして、卒業間近になって、初めて自分の弁当から卵焼きを抱えるムササビを見ることができたが、直ぐに姿が消えてしまった。
 そして、その事を家に帰って話すと、じいちゃんは、ハッハッハッと、笑って、『ももんじい』だったか、まぁ、あの森の主だろうから問題ないだろうと、言っていたそうだ。
 成長期だった正兄は、卵焼きも好きだが、肉の比率をもう少し増やして欲しかった…と、呟いた。俺達は、笑ってしまった。

[ああ、あん時は、たまげたな。姿を隠しておったのに、目があってしもうて、慌てて逃げたんじゃ、その後、お主が、来んようになってしまって、あの旨い卵焼きが、食べれんようになって、ほんに、残念じゃ]

「卒業して、ここを離れましたからね。でも、なんで、あの時だけ、姿が見えたのか不思議だったんですけど、お前達のせいだったんだな」



「どういう事?」

「ももんぐさんを見ることが出来た日は、一週間前に、幸夫さんが亡くなって、お前達が家に預けられた次の日だ」

 ……

 父さんが死んで、母さんが、一人で…というか、俺達を育てる自信がないとかなんとか言って、じいちゃん家に、俺達を置いて行った日の次の日…

[ほほー、風の子達を使う力だけだと、おもっとったのに、お前さん達の影響で、ワシが見えたのか、面白いのう]

 卵焼きが、好きというから、駅弁についていた卵焼きをあげたら、甘すぎるとか、なにやら雑味があるとか、なんとか、文句を言いながらも、全部食べきったももんぐさんに、そう言われたけれど…俺達は、なんの事か分からない。
 しかも、あの近辺の事は、あまり思い出したくない事ばかりがあったし、小さかったから、記憶も曖昧になっている。

「そう言えば、正兄。俺達の夢について、説明出来るって、言ってなかった?」

[えっ?ホント?]

 猫になって、のほほんとしていると思っていたけど、やはり不安だったのか、瑞樹は、正兄の膝の上で話を聞いていた。
 そんな、瑞樹の頭を撫でながら、正兄は、頷いた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

奪った代償は大きい

みりぐらむ
恋愛
サーシャは、生まれつき魔力を吸収する能力が低かった。 そんなサーシャに王宮魔法使いの婚約者ができて……? 小説家になろうに投稿していたものです

処理中です...