エレメント

kaoru

文字の大きさ
上 下
90 / 125
第四章 節約生活?

七十一話

しおりを挟む
『えっ、じゃぁ、パンの焼ける匂いも、クッキーの焼ける甘い香りも、分からないですか?』

『ミントの爽やかな香りや、バニラの甘く蕩けそうな香りも?』

『お茶やコーヒーもですか?』

 「多分ね。鼻をつまんで食べると、味覚が狂うとか聞くしね」

 俺がそう言うと、妖精さん達は…って、瑞樹まで、鼻をつまんで食べ出した。

「あっ、ホントだ。口に入ってから、何となく匂いを感じれば、味が分かるけど、でも、味気なく感じるね。嗅覚大事なんだ」

『確かに、あまり美味しくないです』

 ルルがそう言うと、妖精さん達は、ハリケーンの精霊達を、悲しそうな表情でみた。

「食べることに興味をもって、練習すれば、その内、分かるようになりますよ。まぁ、大気の精霊達は、嗅覚は、あまり発達しませんけどね。なっ、アルフ」

「そうね。私達の眷属は、嗅覚より視力が発達しやすいわ、好奇心旺盛で、あちこち飛び回るから、食事する子も少ないしね」

「そうだろ。だから、さっさっと、帰っていいですよ。そして、太平洋西部には、もう来ないで下さい」

「ダッ、ダリルくん?」

 ハリケーンさん達が来てから、ちょっと、不機嫌そうにしていたダリルくん(身体も、ファラムぐらい[いじけバージョン]になって、俺と瑞樹の間に、ちょこんと座って、トルティーヤもどきで、チキンカレーと、生野菜を包んで、かぶりついてて、可愛かったのに…)が、シッシッと、追い払うように、手を振りだした。

「アルフから、基礎は習ったのだろ?後は、己で、習得に励め。じゃあな」

 今日は珍しく人形で、食事をしていたキルさんが、ダリルくんの言葉で立ち上り、ハリケーンさん達をまとめて抱えあげ、窓から外に放り出した。

「えー、ちょっと、キルさん?」

「そんな、放り出したら、ヤバくないか?」

「どうするの?竜巻とか発生したら…」

「大丈夫ですよ。あんな未熟なモノ達が、力を集められるものですか、しかも、暴走した後でしょ?後何年か発達しませんよ。正也様の子達にだって、勝てないモノ達です」

「争い事の少ない土地だから、今まで、結界を張っていなかったが、あんな輩がいるなら、アルフとファラムのモノだけでなく、我らも、張った方が良くないか?」

「…って、そういう前に、張ってるじゃないか、あいつら、何か騒いでるよ。目障りだね」

 ダリルくんが、にっこり笑顔で、外を見ると、外で何か訴えていたハリケーンさん達が、消えた。

「「「……」」」

 なっなっ、なんか、二人から、黒いオーラが見えるような…

『どっ、どうしたですか?』

『ハリケーンさん達は?』

『消えたです…』

 『…触らぬ神にたたりなしじゃ』

 うう、ルフナさんを見習うことにしよう…

「えっ、えーと、そもそも、ハリケーンて、何だったの?台風と違うの?」

「瑞樹様、人間達が決めた法則によると、ハリケーンは大西洋北部、大西洋南部、太平洋北中部、太平洋北東部で発生した熱帯低気圧で、最大風速六十四ノット以上のモノを言うようです。台風は、太平洋西部及びその近海で発生した熱帯低気圧で、三十四ノット以上のモノのようです」

「場所によって変わるんだ。ハリケーンって、言っていたけど、日本に来たから、台風になるの?」

「そうなりますが、もう台風と呼べる風速も出せないので、風の子でいいですよ」

「そんなことより、光輝や、コレは、もう終わりか?もう少し、食べたいのじゃが」

 瑞樹とキルさんの会話に割って入ってきたルフナさんを見ると、小さい手で、市販のタコスチップスを持っている。ディップ類を沢山作ったから、ついでに出しておいたら気に入ったらしい。

 「あっ、まだ、ありますよ。あけますね」


 



しおりを挟む

処理中です...