異世界人拾っちゃいました…

kaoru

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異世界人拾っちゃいました…

転移者

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「はぁ…」

 困ったことになったと、何度目かのため息をつく。

 これが五日前で、集落の近くであったならここまで困る事はなかったのだが…俺は、四日前に成人の義である旅に出たところだ。
 
   ウィル族の成人の義は、一度集落を離れ一人で生活をするというもので、義として集落を出た者は、最低一年間は戻ってはならないという決まりがある。それを破った者は、家族揃って集落を追い出されてしまう。

  なので、集落には戻れない。

  なのに、とんでもないものを拾ってしまった。

転移者 ― 転移門を潜って、他の世界に降り立った者。

神々のイタズラ ― 自分の意思ではなく、転移門を潜ってしまう現象。何らかの力が作用して言葉の不自由はないことから『神々に呼ばれし者』とか『神々の使い』なんて言われていた時期もあったそうだが、その他の知識はゼロで、苦難を強いられるので、今では、『イタズラ』になっている……。希に特殊なスキルを持っている事があるらしい。

   話には聞いていたが、まさか自分がその異世界人を拾ってしまうなんて考えたことがなかったからどうすればいいのか…
   この少年の様に、ウソだと言って泣きたくなってくる。
   でも……そうだな突然、ひとりぼっちで異世界に飛ばされてしまったリョウという少年に比べれば、不安は少ないのか…

   本当は、今日中に森をぬけ最初の目的地であるシーズの街に着く予定だったのだが、変更して森の中にとどまることにした。シーズから集落に来る行商人や、冒険者に用意した野営用の人工の洞窟にリョウを運んで、今後の予定を考え直す。
 
   俺一人であれば、ここからなら半日でシーズまで行けるが、歩きなれていない者は三倍位かかると聞いたことがある。しかも、子供だとそれ以上か?
 そうなるとシーズまで、二日か三日掛かると考えていた方がいいだろう。食料は、多めに持ってきているし、資金作りの為に、森で採取もしてきたので、一人位の同行者であれば問題ない…
   ただし、協力的であってくれればだが…

 気を失う前のリョウを思い出し自然と眉間にシワがよってしまう。
 
   しかし…考えようによっては、リョウは幸運の持ち主かもしれない。転移門を潜る時に、こちらの世界に無いものは弾かれてしまうという。そして、近年現れる転異者の中には、持ち物は勿論、服さえも弾かれ全裸でおとされる者もいると聞いたが、リョウは、半袖シャツとズボンに靴下は身に付けている。靴は、こちらには無い素材だったのか履いていない。手荷物のようなものは見当たらなかったから、弾かれてしまったのだろう。

   先ずは、歩ける様に靴を用意しなくては…
 
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