異世界人拾っちゃいました…

kaoru

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異世界人拾っちゃいました…

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「ディル・ハバー・ウィル・リュート、ディルと呼んでくれ。お前は?」

「タテ…あっ、違う…えっと、リョウ…、リョウ・タテマツ…です」

 この大陸では珍しい、黒髪に黒い瞳を持つ少年は、消え入りそうな声でそう名乗った。
 ここは特殊な森で、案内無しでは無事に出ることが出来ない森だ。でも、それは冒険者や採取者、研究者と言われる職種の大人であって、子供が一人で入れる森ではない。
 あまりにも不自然過ぎて、イヤな予感がするけど、放置するのも気になるので声をかけてみた。
  言葉は通じるようなので、名を訪ねたのだが…

「大陸名や族名は?」

 再び質問した俺に、困った泣きそうな目を向けてきた。

「分からないのか?」

 少年は、何も答えず、下を向いたままになってしまった。

「ここは、ハバー大陸のウィル族の森だ。ここでは、名前で出身地や部(種)族が分かるようになっているんだ。それがないのは、人族の一部の者だけだが、先祖の名を繋げ、本名は長い名前だと聞いたことがある。そういった名もないのか?」

 俺の説明を聞き、眉間にシワを寄せる。

「ないならいい。だが、住んでいた街か国の名前ぐらいは言えるだろ?何処から来たんだ?」

「………ニホン…」

 逡巡したあげく、また消え入りそうな声で答えた言葉を聞いて、イヤな予感が的中した事がわかった。

 ニホン…俺はその国を知っている。いや、正確には知っちゃいないが、そこから来た者の事を話に聞いたことがある。他にも、アメリカ、チュウゴク、イギリス、ドイツ、オーストラリア…………………エトセトラ…

「お前、異世界人か?」

「!?…これ、夢…だよね…」

「いや、時々あるんだ。複数ある世界で何かの拍子に、空間が一瞬繋がってしまって、転移門が開き、違う世界に入り込んでしまうんだ。こちらの世界では『神々のイタズラ』って、言われてる現象で、どの世界でも起こっていることだと聞いてる。お前の世界でも居るだろ?『転移者』とか言われてる者の事だ」

「マンガやアニメの話でしょ?」

「ああ、おとぎ話にされてるのか、いや、現実の話だ。子供だから、まだ、教えてもらってないのかな?」

「ウソだ!そんなのウソだー」

 リョウと名乗った少年はそう叫んで、泣き出し暴れた。
 リョウ曰く― 俺は、誘拐犯で自分が逃げ出さないように騙しているのだと、ウチはお金持ちじゃないから、身代金なんて取れない何が目的なのかと…そして、気を失った。
 

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