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冒険の始まり
ハバー大陸一周の旅 7
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「うわー、す、凄い…、ウィル族の森って、こんなに広かったの?」
朝食を食べた後、通常の街道には戻らずに、山道に入り頂上まで登り着くと、そこからの景色を見て、リョウが驚きの声を上げた。
六百メートル程の小さい山だが、そこから大陸内部が見渡せる絶景スポットだ。
手前に幾つかの牧場がある牧草地帯、その真ん中を南北に走る大きな街道があり、南の方に辿っていくと、シーズの岩山が見える。
逆に視線を向ければこれから向かうシス湖が見える。
そして、それらの奥、大陸中央にみえる広大な森。樹海と言っていい。
「ウィル族の集落は、どの辺りなのですか?」
「あそこに、回りの緑より少し薄い色の木々がドームみたいになっているでしょ。あそこが、集落だよ」
「ああ、少し白っぽい葉の木ですね。あの場所が、この大陸の真ん中なのですね」
「えっ、そうなの?」
「昔はな。長い年月のなかで、地殻変動があり、今は、ずれているけどな」
「いえ、位置的には、ズレたとしても、エルフは皆、あの場所が中心だと思っていますよ」
「まぁ、エルフの始祖が生まれた場所とされてるからな」
「おお、それなら、あの場所に、世界樹とかあったりするの?」
「世界樹?」
「何ですか、それは?」
「あ、あれ?エルフの里は、世界樹の木の下に在るって聞いていたけど?無いの?」
「聞いたことないなぁ、何か特別な木なのか?」
「ゲームとか、マンガなら、世界樹の葉が有れば、死んだ人を、蘇生させる事ができたり、エ、エクサ…?違うな…エリク…?なんだっけ?えーと、どんな病気でも治せる薬が作れたりするんだ」
「それは、すごいなぁ」
「本当ですね」
「世界樹、無いんだ…」
あっ、リョウが何やらショックを受けている。
「ほら、右手を見てみろ、世界樹は無いが、風の大精霊シスの別宅が見えるぞ。これから、あそこに行くんだ。そこから、西に向かったところに、見えるだろトガレー連峰だ」
「風の大精霊…シルフじゃないの?」
「ん?シルフは、イフリートと同じ、風の精霊の人形の事だな」
「…それって、水の精霊は、ウンディーネで、土の精霊はノームなの?」
「そうだ。四大精霊については、伝わっているのだな」
「うーん、いろいろな、話はあったね」
「どうした?何時もみたいに、喜ばないなぁ」
「え?うん、大精霊に会えるのは嬉しいけど…なんか、なんか違うって言うか」
「違うってなにが?」
「うーん、異世界ものって、魔物や、魔王が人間を襲っていたり、貴族が暗躍してたりして、それを、倒すために、勇者とか、賢者とかいて、そういう人を助けるために大精霊が出てきたりしてたから、こんな普通に会えるのが不思議って言うか…なんか違う」
「ああ、『英雄伝説』みたいに、人々を苦しめる相手が居て、それを、倒すために大精霊が力を貸して世界を救う冒険に憧れてた訳か」
「べっ、別に、憧れてた訳じゃ無いけど…ちょっと、魔物退治とかしてみたかったなぁとか、悪いことしてる貴族とか見てみたかったなぁ…とか…」
「魔物ねぇ」
「ディル様、魔物とは何ですか?魔獣とは違うのですか?」
「あ!もしかして、魔物もいない?」
あれ?魔物について、クラリーちゃんも知らないのか?
魔物とは、四層に居る小人族や巨人族を指すことが多い。リョウの感覚だと、悪魔という風になるのかな?そして、そういうモノに影響された動物や魔獣も魔物化してしまうことがある。
ただし、この大陸には居ない。
理由は、モンディールが居るからだ。
しかし、神が常時いるこの大陸とは違い、他の大陸には、せいぜい、四大竜王(実質神ではないが、地上の者から神と同じ様に扱われている竜の事、竜神は別にいる)ぐらいの者しか居ないせいか、四層を隔離したのが、初代の魔王…最高魔術師で、神の結界とは違うのか、時々綻びが出来てしまい、魔物が地上に出てきてしまうことがある。
以前、ダンジョンの話の時に、ちょっと説明したと思うのだが…魔物という言葉は、使ってなかったか?
まぁ、そういった魔物退治を請け負うのが、討伐冒険者、俺達が目指してるものだ。
そう説明すると、クラリーちゃんが、顔を赤らめ「そ、そうなのですか?よく、理解してませんでした…」と、項垂れた。
タリクさん、どんな説明してたんだ?
「じゃ、じゃぁ、この大陸から出たら、魔物退治が始まるの?」
おっ、リョウは、テンションが上がってきた。
「そうなるな、その為の、準備期間だし、そういったことを見越したから、バーンさんとモンディールは、クラリーちゃんの防具を作ったんじゃないか」
「おお!そうなんだ。よし!魔物に負けないように頑張る」
リョウがやる気を出して山を降りようとしたが、折角、見晴らしが良く、風も気持ち良いので昼飯にする。
「…食事は大事だよ。空腹で魔物に殺られる冒険者の話もあったから、でも、でも、なんか違う…」
あれ?また、おかしなテンションになっている。
「リョウは食べないのか?」
「え?食べる!食べるよ。食べて、早く出発しよう」
「まぁ、そういう場面も無いとは言えないが、休めるときには、休んでおいた方がいい、食べてすぐに動くのは、あまり良いことではないな」
「…やっぱり、なんか違う」
朝食を食べた後、通常の街道には戻らずに、山道に入り頂上まで登り着くと、そこからの景色を見て、リョウが驚きの声を上げた。
六百メートル程の小さい山だが、そこから大陸内部が見渡せる絶景スポットだ。
手前に幾つかの牧場がある牧草地帯、その真ん中を南北に走る大きな街道があり、南の方に辿っていくと、シーズの岩山が見える。
逆に視線を向ければこれから向かうシス湖が見える。
そして、それらの奥、大陸中央にみえる広大な森。樹海と言っていい。
「ウィル族の集落は、どの辺りなのですか?」
「あそこに、回りの緑より少し薄い色の木々がドームみたいになっているでしょ。あそこが、集落だよ」
「ああ、少し白っぽい葉の木ですね。あの場所が、この大陸の真ん中なのですね」
「えっ、そうなの?」
「昔はな。長い年月のなかで、地殻変動があり、今は、ずれているけどな」
「いえ、位置的には、ズレたとしても、エルフは皆、あの場所が中心だと思っていますよ」
「まぁ、エルフの始祖が生まれた場所とされてるからな」
「おお、それなら、あの場所に、世界樹とかあったりするの?」
「世界樹?」
「何ですか、それは?」
「あ、あれ?エルフの里は、世界樹の木の下に在るって聞いていたけど?無いの?」
「聞いたことないなぁ、何か特別な木なのか?」
「ゲームとか、マンガなら、世界樹の葉が有れば、死んだ人を、蘇生させる事ができたり、エ、エクサ…?違うな…エリク…?なんだっけ?えーと、どんな病気でも治せる薬が作れたりするんだ」
「それは、すごいなぁ」
「本当ですね」
「世界樹、無いんだ…」
あっ、リョウが何やらショックを受けている。
「ほら、右手を見てみろ、世界樹は無いが、風の大精霊シスの別宅が見えるぞ。これから、あそこに行くんだ。そこから、西に向かったところに、見えるだろトガレー連峰だ」
「風の大精霊…シルフじゃないの?」
「ん?シルフは、イフリートと同じ、風の精霊の人形の事だな」
「…それって、水の精霊は、ウンディーネで、土の精霊はノームなの?」
「そうだ。四大精霊については、伝わっているのだな」
「うーん、いろいろな、話はあったね」
「どうした?何時もみたいに、喜ばないなぁ」
「え?うん、大精霊に会えるのは嬉しいけど…なんか、なんか違うって言うか」
「違うってなにが?」
「うーん、異世界ものって、魔物や、魔王が人間を襲っていたり、貴族が暗躍してたりして、それを、倒すために、勇者とか、賢者とかいて、そういう人を助けるために大精霊が出てきたりしてたから、こんな普通に会えるのが不思議って言うか…なんか違う」
「ああ、『英雄伝説』みたいに、人々を苦しめる相手が居て、それを、倒すために大精霊が力を貸して世界を救う冒険に憧れてた訳か」
「べっ、別に、憧れてた訳じゃ無いけど…ちょっと、魔物退治とかしてみたかったなぁとか、悪いことしてる貴族とか見てみたかったなぁ…とか…」
「魔物ねぇ」
「ディル様、魔物とは何ですか?魔獣とは違うのですか?」
「あ!もしかして、魔物もいない?」
あれ?魔物について、クラリーちゃんも知らないのか?
魔物とは、四層に居る小人族や巨人族を指すことが多い。リョウの感覚だと、悪魔という風になるのかな?そして、そういうモノに影響された動物や魔獣も魔物化してしまうことがある。
ただし、この大陸には居ない。
理由は、モンディールが居るからだ。
しかし、神が常時いるこの大陸とは違い、他の大陸には、せいぜい、四大竜王(実質神ではないが、地上の者から神と同じ様に扱われている竜の事、竜神は別にいる)ぐらいの者しか居ないせいか、四層を隔離したのが、初代の魔王…最高魔術師で、神の結界とは違うのか、時々綻びが出来てしまい、魔物が地上に出てきてしまうことがある。
以前、ダンジョンの話の時に、ちょっと説明したと思うのだが…魔物という言葉は、使ってなかったか?
まぁ、そういった魔物退治を請け負うのが、討伐冒険者、俺達が目指してるものだ。
そう説明すると、クラリーちゃんが、顔を赤らめ「そ、そうなのですか?よく、理解してませんでした…」と、項垂れた。
タリクさん、どんな説明してたんだ?
「じゃ、じゃぁ、この大陸から出たら、魔物退治が始まるの?」
おっ、リョウは、テンションが上がってきた。
「そうなるな、その為の、準備期間だし、そういったことを見越したから、バーンさんとモンディールは、クラリーちゃんの防具を作ったんじゃないか」
「おお!そうなんだ。よし!魔物に負けないように頑張る」
リョウがやる気を出して山を降りようとしたが、折角、見晴らしが良く、風も気持ち良いので昼飯にする。
「…食事は大事だよ。空腹で魔物に殺られる冒険者の話もあったから、でも、でも、なんか違う…」
あれ?また、おかしなテンションになっている。
「リョウは食べないのか?」
「え?食べる!食べるよ。食べて、早く出発しよう」
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