異世界人拾っちゃいました…

kaoru

文字の大きさ
62 / 149
冒険の始まり

ハバー大陸一周の旅 7

しおりを挟む
「うわー、す、凄い…、ウィル族の森って、こんなに広かったの?」

 朝食を食べた後、通常の街道には戻らずに、山道に入り頂上まで登り着くと、そこからの景色を見て、リョウが驚きの声を上げた。
 六百メートル程の小さい山だが、そこから大陸内部が見渡せる絶景スポットだ。
 手前に幾つかの牧場がある牧草地帯、その真ん中を南北に走る大きな街道があり、南の方に辿っていくと、シーズの岩山が見える。
 逆に視線を向ければこれから向かうシス湖が見える。
 そして、それらの奥、大陸中央にみえる広大な森。樹海と言っていい。

「ウィル族の集落は、どの辺りなのですか?」

「あそこに、回りの緑より少し薄い色の木々がドームみたいになっているでしょ。あそこが、集落だよ」

「ああ、少し白っぽい葉の木ですね。あの場所が、この大陸の真ん中なのですね」

「えっ、そうなの?」

「昔はな。長い年月のなかで、地殻変動があり、今は、ずれているけどな」

「いえ、位置的には、ズレたとしても、エルフは皆、あの場所が中心だと思っていますよ」

「まぁ、エルフの始祖が生まれた場所とされてるからな」

「おお、それなら、あの場所に、世界樹とかあったりするの?」

「世界樹?」

「何ですか、それは?」

「あ、あれ?エルフの里は、世界樹の木の下に在るって聞いていたけど?無いの?」

「聞いたことないなぁ、何か特別な木なのか?」

「ゲームとか、マンガなら、世界樹の葉が有れば、死んだ人を、蘇生させる事ができたり、エ、エクサ…?違うな…エリク…?なんだっけ?えーと、どんな病気でも治せる薬が作れたりするんだ」

「それは、すごいなぁ」

「本当ですね」

「世界樹、無いんだ…」

 あっ、リョウが何やらショックを受けている。
 
「ほら、右手を見てみろ、世界樹は無いが、風の大精霊シスの別宅が見えるぞ。これから、あそこに行くんだ。そこから、西に向かったところに、見えるだろトガレー連峰だ」

「風の大精霊…シルフじゃないの?」

「ん?シルフは、イフリートと同じ、風の精霊の人形ひとがたの事だな」

「…それって、水の精霊は、ウンディーネで、土の精霊はノームなの?」

「そうだ。四大精霊については、伝わっているのだな」

「うーん、いろいろな、話はあったね」

「どうした?何時もみたいに、喜ばないなぁ」

「え?うん、大精霊に会えるのは嬉しいけど…なんか、なんか違うって言うか」

「違うってなにが?」

「うーん、異世界ものって、魔物や、魔王が人間を襲っていたり、貴族が暗躍してたりして、それを、倒すために、勇者とか、賢者とかいて、そういう人を助けるために大精霊が出てきたりしてたから、こんな普通に会えるのが不思議って言うか…なんか違う」

「ああ、『英雄伝説』みたいに、人々を苦しめる相手が居て、それを、倒すために大精霊が力を貸して世界を救う冒険に憧れてた訳か」

「べっ、別に、憧れてた訳じゃ無いけど…ちょっと、魔物退治とかしてみたかったなぁとか、悪いことしてる貴族とか見てみたかったなぁ…とか…」

「魔物ねぇ」

「ディル様、魔物とは何ですか?魔獣とは違うのですか?」

「あ!もしかして、魔物もいない?」

 あれ?魔物について、クラリーちゃんも知らないのか?

 魔物とは、四層に居る小人族や巨人族を指すことが多い。リョウの感覚だと、悪魔という風になるのかな?そして、そういうモノに影響された動物や魔獣も魔物化してしまうことがある。
 ただし、この大陸には居ない。
 理由は、モンディールが居るからだ。
 しかし、神が常時いるこの大陸とは違い、他の大陸には、せいぜい、四大竜王(実質神ではないが、地上の者から神と同じ様に扱われている竜の事、竜神は別にいる)ぐらいの者しか居ないせいか、四層を隔離したのが、初代の魔王…最高魔術師で、神の結界とは違うのか、時々綻びが出来てしまい、魔物が地上に出てきてしまうことがある。
 以前、ダンジョンの話の時に、ちょっと説明したと思うのだが…魔物という言葉は、使ってなかったか?
 まぁ、そういった魔物退治を請け負うのが、討伐冒険者、俺達が目指してるものだ。

 そう説明すると、クラリーちゃんが、顔を赤らめ「そ、そうなのですか?よく、理解してませんでした…」と、項垂れた。
 タリクさん、どんな説明してたんだ?

「じゃ、じゃぁ、この大陸から出たら、魔物退治が始まるの?」

 おっ、リョウは、テンションが上がってきた。

「そうなるな、その為の、準備期間だし、そういったことを見越したから、バーンさんとモンディールは、クラリーちゃんの防具を作ったんじゃないか」

「おお!そうなんだ。よし!魔物に負けないように頑張る」

 リョウがやる気を出して山を降りようとしたが、折角、見晴らしが良く、風も気持ち良いので昼飯にする。

「…食事は大事だよ。空腹で魔物に殺られる冒険者の話もあったから、でも、でも、なんか違う…」

 あれ?また、おかしなテンションになっている。

「リョウは食べないのか?」

「え?食べる!食べるよ。食べて、早く出発しよう」

「まぁ、そういう場面も無いとは言えないが、休めるときには、休んでおいた方がいい、食べてすぐに動くのは、あまり良いことではないな」

「…やっぱり、なんか違う」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

処理中です...