異世界人拾っちゃいました…

kaoru

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冒険の始まり

ハバー大陸一周の旅 6

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 夜間の火の番は、精霊達にお願いし、皆でテントに入り休みをとった。
 早朝、テントから抜け出し、昨夜、薪拾いのついでに、ミンテが拾ってきたオナガキジの卵と、薪にまぜて、虫除けに使ったローズマリーの残りを使い、オートケーキを作りはじめる。
 鍋に生地をいれて、ハリエンジュの花をちらし、焼き始めると甘い臭いが漂いはじめる。その臭いにつられるように、先ずはミンテが、よたよたと抜け出してきた。

『おはようです。美味しそうです。ミンテ食べます』

「こらこら。寝ぼけてないで、ちゃんとしろ、火傷するぞ」

 半開きの目で、匂いにつられるまま、口を開き鍋に向かうミンテを抱き上げるが、火の粉が鼻先を掠め、熱さに驚いて目を見開いた。

『はう。危なかったです。ミンテを罠にかける気でしたね。ひどいです』

「おい、何で罠になるんだ。斥候候補なんだから、もっと、注意力をつけないとダメだろう。それとも、後から、ついてくる荷物持ちだけのの方がいいか?」

『うーん、考えときます』

 あれ?荷物持ちで良いのか?

『道を切り開くもの』の守護者の血筋だから、先頭を走るのが好きかと思えば違ったのか…
 ちょっと、宛が外れたかな?

「うーん、なんか良い匂いするする。これ、なに?」

 リョウも寝ぼけ眼で這い出してきた。後ろには、クラリーちゃんと、ココも続いてる。

「ローズマリーのオートケーキだ。朝は、少し甘いもの食べた方が良いだろ」

「え?野営でも、ケーキ、作れるの?」

「何でそんなに驚く。材料さえあれば、作れるだろ」

「おおー、やったぁー」

 朝食の期待度が高まり、目を覚ましたリョウに、寝床の一部片付けを頼んだら、リョウが、地面に敷いたラグの土汚れを見て、何やら考え出した。
 クラリーちゃんは、ココを連れて小川へ身繕いに行ってもらった。

「ディル、これっていつもはどうしてるの?」

「日の当たる所に出しておいて、乾いたら、叩き落として仕舞うな。屋根に使った布と一緒で、防水加工してあるから、頻繁には、洗わない」

「ああ、防水加工か、他には何かついてる?」

「虫除け」

「ああ、成る程…」

 リョウは、俺の答えを聞いて、ちょっと、呆れ気味に返事をすると、クルリと向きを変え、ラグに向かって何やら呟き出す。

 虫除け大事だろう。と、思いつつ焼き上がったケーキを皿に移し、さっと、鍋をすすぎ、塩漬け肉をクレソンと炒めて水を入れ、スープを作る。
 すると、何やら、不思議な魔力を感じ、そちらに、視線を移すと、ラグが淡い光に包まれていた。

「リョウ、何をした?」

「ラグの表面に、異世界アニメや、マンガで見た『クリーン』をマネして、かけてみた」

「綺麗にしたってことか、良く思い付くな。しかも、さらっと魔術創りやがって…」

「思いついたんじゃなくて、マネだってば。他にも、生活に役立ちそうなの載ってたよ」

「ふーん、成る程ね。人族と魔族が相性良い理由か」

「え?魔族…あっ、いや、ここでは魔力量が多くて、生まれながらに魔術師の資格がある種族だっけ」

「そう、殆どが魔術の研究者なんだ。で、人族は、魔力は少ないけど、発想力がすごくて、発明家が多くいるんだ。だから、魔道具の研究機関は、魔族と人族で構成されている所が多いな」

「魔道具!そういえば、魔道具って、まだ、見てないよね?」

「ん?いや、見てるだろ」

「え?」

「社宅や貸家にある保存箱や、一部、灯りも魔道具だぞ。それから、キッチンやトイレの排水関係にも、魔道具が組み込まれているぞ」

「えっ?そうなんだ」

「まぁ、それは、帰ってきてから、説明するか、個人としては、クラリーちゃんの防具も魔道具類に入るぞ」

「あっ、そうか、前のも、自動サイズ調整とか付いてた。新しいのは、もっとすごいんだよね?まだ、着たところ見てないけど」

 そう、弱視がなくなったのと、冒険者になると宣言したことと、俺の婚約者にという話が出て、クラリーちゃん一家は大騒ぎし、カトリーナさんの実家でも、大喜びでクラリーちゃんへのプレゼントを用意した。
 モンディールを巻き込んで…

 そして、冒険者試験に合格したお祝いにと託されたフルプレートがあるのだが…

 自動サイズ調整、自動修正、自動清掃、重量軽減は当たり前、更に、物理攻撃無効、魔法攻撃無効、精神魔法攻撃無効、毒性物質排除、更に、生命危機管理として、モンディール召喚魔方陣まで、付けられていた。
 クラリーちゃんの魔力量が一定値を下回ると自動的に発動し、モンディールが召喚される仕組みらしい。

「……」

 俺の説明を聞いて、リョウは言葉を失っている。

「えーと、クラリーちゃん、最強?」

「ああ、装備すれば、ほぼ無敵と言っていいな」

「私が、どうかしましたか?」

 突然は割り込んできたクラリーに、内心あせりながら…

「い、いや、クラリーちゃんじゃなくて、バーンさんが作った防具について話してたんだ。リョウが、魔道具に興味をもって」

「ああ…あれですか…、過剰過ぎますよね?」

「神器になっちゃってるね…」

「はぁ、やっぱり…、良いのでしょうか、私なんかが持っていて…」

「いや、クラリーちゃんしか身に付けられないから…」

 ん?クラリーちゃんまで、固まってしまった。
 あれ?知らなかった?

「……え?」

「えーと、あの防具、クラリーちゃんの魔力にしか反応しないように、なってるよ」

「ええ!そんなこと知りませんでした。父様達も、そんなこと言ってなかったですよ?」

「まぁ、バーンさんが、張り切って作ったからねぇ。防具については、一生買い替えなくて良いかもしれないね」

「はぁ…家宝ですね。でも、あれがあれば、ディル様の足を引っ張ることは無いですよね?」

「…足を引っ張るどころが、俺達が置いていかれそうだけど…」

 うーん、装備については、もう少し、バランスみて、リョウと俺のを準備しないとな…モンディールのせいで、クラリーちゃんだけ特質してしまったから…



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