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冒険の始まり
ハバー大陸一周の旅 40
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「あのう、モンディール様、ウチのリーダーが、地竜の剣を力ずくで手にしていた場合どうなっていたのでしょう?」
サイガさんが、おっさんに伺う。
「ん?それは、ワシにも分からんな。まぁ、自分で、合わないと言っていた様なら、持つことすら出来んのではないか?闇魔術で強制的に従わせるのも無理だと思うぞ。まぁ、ミンテの祖父殿であれば可能かも知れぬが」
「え?ミンテって、コハクと闇魔術の訓練に行った灰色狐の子ですよね?ディルさんの従魔の」
「あやつは、灰色狐ではないぞ、ウプアートと
天狐の孫だ。しかも、祖父の血を濃く受け継いでおる。成長が楽しみだ」
「「「は?」」」
ん?サイガさん達の反応がおかしいぞ?ミンテもこういう反応されるのか?
「ウプアート様って、え?戦いの神ですよね。我らの大陸で戦が盛んだった頃に、降臨して戦場を駆け回ったとされる…」
ん?ウプアートって、戦いの神だったのか?
ここには、そんなこと伝わってないぞ?じいちゃん達が、なんかしたかな?じいちゃんと被ってるしな…
「天狐様って、九本の尾を持ち、齢三千年程になる御方で、魔術の苦手な獣人族のなかでも、魔族に匹敵するほどの高位の術者ですよね?」
へぇ、そうなんだ。同じ土地の者はやはり詳しいなぁ。
「「「え?その孫?」」」
「そうだ。だから、神と等しい闇魔術が使えるなら、使役出来よう…だが、そんなことをすれば、ユピロー様より、ヘパイトスが黙っとらんだろうな。まぁ、手を引いたお主達は、慧眼であったな」
ミンテの素性に驚きすぎて、ちょつと、ズレた事を言ってるおっさんの言葉をちゃんと理解しているのか怪しいが、黒狼の刃の皆は『ウプアート様や天狐様まで、出てくるなんて…リーダー止めといて良かった~』と、手を取り合っていた。
すると、その影がゆらりと立ち上がり、茶色ぽい髪をショートにし、黒い丸い目と焦茶の狼の耳が印象的な娘が姿を現した。六歳になる、コクヨウさんの娘で、黒狼の刃のメンバーの一人だ。
「呼んだ?」
その子の、問いかけに答える間もなく、今度は、俺の足元の影がポコンと膨らみ、続けてポンッと軽い音と共に、ミンテが飛び出してきた。
「やったー。やったです。コハク、影移動成功したです」
俺の膝の上でミンテが大喜びだ。
「え?ワタシ、呼ばれた気がしたから、待っててって言ったのに…え?何で?」
なぜか、教えたはずのコハクちゃんが、一番驚いている。
「コハクの魔力の動かしかた見て、マネたです。魔力探知で知っている魔力を見つけて、闇魔術の空間ごと移動するんですね。これで、ガラン様が使っていた。影収納も出来るようになったです」
「おお、それは、凄いな。よく頑張ったな、ミンテ。偉いぞー」
そう言いながら、頭を撫でてあげると、もっと、もっととスリ寄ってきた。
「…そういうことだけど…え?こんなに、早く出来るものだったの?て、いうか、ミンテちゃんのレベルの上がり方おかしくない?」
コハクちゃんが、物凄く戸惑っているが、仲間は、うんうん頷きながら、コハクちゃんの頭を撫で事情を説明したのだが、想定外すぎたのか、コハクちゃんは、目を白黒させて、情報処理が追い付かないようで、頭を抱えている。
「コハク、大丈夫ですか?」
ミンテが、首をかしげコハクちゃんを心配そうに見る。
「いや、ミンテが悪い訳じゃないから、直に良くなるよ」
「しかし、二日で、影移動出来るようになるとは…流石と言いたいが、いくらミンテでも、早すぎるだろ、ふむ、ああ、そうかディルの魔力のせいか、なるほどのう」
「俺?」
「そう、お主の場合、常に精霊達に囲まれとるからな、従魔のミンテも闇精霊が寄りやすくなっておる。それで魔術に変換しやすいのだな」
「そうなのですか?それは、よくわからないけど、コハクやメノウの教え方が分かりやすかったですよ」
「あっ、そうだ。母さんの事、忘れてた。ちょっと、迎えにいってくる」
ミンテの言葉で、コハクちゃんが、慌ててサイガさんの影の中に消えた。
「あっ、そうでした。メノウを置いてきたです」
メノウさんは、茶色に金が混じった毛がとても綺麗な狼人。コクヨウさんの奥さんで、コハクちゃんのお母さん。親子でミンテの指導をしてくれていたのだ。
メノウさんは、ほんわか優しい感じの美人で、治癒魔術が得意。
リョウが最初に懐いたサイガさんは、白銀の毛で、イケメンだ。しかも、獣人族ではかなり珍しい、氷系統の魔術が得意だと言う。
黒狼の刃で、メノウさん、コハクちゃん、サイガさんが主に魔術担当ということだ。
後のメンバーは、リーダーのコクヨウさんは名前の通り黒狼で、二メートル近いガッシリとした体つきで、刀を携えてる剣士。
同じく黒狼のミカゲさんは、俺と同じぐらいの小柄で細身の身体だけど、凄く鍛えているのが分かる。手裏剣や吹き矢が得意で、毒の扱いにも長けているそうだ。
最後も、同じく黒狼のサガンさんは、コクヨウさんほど大きくはないが、この人もガッシリとした身体で、刀と鎖鎌という、ちょっと、変わった武器を持っている。
この三人が集まって出来たのが、黒狼の刃なのだという。それから、メノウさん達が仲間入りし、今のパーティーになったそうだ。
因みに、ミカゲさんも、サガンさんも妻子持ちだけど、家族は冒険者になってない、しかし、サガンさんの次男坊は将来、冒険者になりたいと言っているそうだ。まだ、三才だけど…まぁ、獣人族は、成長が一番早いからな、たしか、十歳で成人する人種が殆どだと聞いている。
サイガさんが、おっさんに伺う。
「ん?それは、ワシにも分からんな。まぁ、自分で、合わないと言っていた様なら、持つことすら出来んのではないか?闇魔術で強制的に従わせるのも無理だと思うぞ。まぁ、ミンテの祖父殿であれば可能かも知れぬが」
「え?ミンテって、コハクと闇魔術の訓練に行った灰色狐の子ですよね?ディルさんの従魔の」
「あやつは、灰色狐ではないぞ、ウプアートと
天狐の孫だ。しかも、祖父の血を濃く受け継いでおる。成長が楽しみだ」
「「「は?」」」
ん?サイガさん達の反応がおかしいぞ?ミンテもこういう反応されるのか?
「ウプアート様って、え?戦いの神ですよね。我らの大陸で戦が盛んだった頃に、降臨して戦場を駆け回ったとされる…」
ん?ウプアートって、戦いの神だったのか?
ここには、そんなこと伝わってないぞ?じいちゃん達が、なんかしたかな?じいちゃんと被ってるしな…
「天狐様って、九本の尾を持ち、齢三千年程になる御方で、魔術の苦手な獣人族のなかでも、魔族に匹敵するほどの高位の術者ですよね?」
へぇ、そうなんだ。同じ土地の者はやはり詳しいなぁ。
「「「え?その孫?」」」
「そうだ。だから、神と等しい闇魔術が使えるなら、使役出来よう…だが、そんなことをすれば、ユピロー様より、ヘパイトスが黙っとらんだろうな。まぁ、手を引いたお主達は、慧眼であったな」
ミンテの素性に驚きすぎて、ちょつと、ズレた事を言ってるおっさんの言葉をちゃんと理解しているのか怪しいが、黒狼の刃の皆は『ウプアート様や天狐様まで、出てくるなんて…リーダー止めといて良かった~』と、手を取り合っていた。
すると、その影がゆらりと立ち上がり、茶色ぽい髪をショートにし、黒い丸い目と焦茶の狼の耳が印象的な娘が姿を現した。六歳になる、コクヨウさんの娘で、黒狼の刃のメンバーの一人だ。
「呼んだ?」
その子の、問いかけに答える間もなく、今度は、俺の足元の影がポコンと膨らみ、続けてポンッと軽い音と共に、ミンテが飛び出してきた。
「やったー。やったです。コハク、影移動成功したです」
俺の膝の上でミンテが大喜びだ。
「え?ワタシ、呼ばれた気がしたから、待っててって言ったのに…え?何で?」
なぜか、教えたはずのコハクちゃんが、一番驚いている。
「コハクの魔力の動かしかた見て、マネたです。魔力探知で知っている魔力を見つけて、闇魔術の空間ごと移動するんですね。これで、ガラン様が使っていた。影収納も出来るようになったです」
「おお、それは、凄いな。よく頑張ったな、ミンテ。偉いぞー」
そう言いながら、頭を撫でてあげると、もっと、もっととスリ寄ってきた。
「…そういうことだけど…え?こんなに、早く出来るものだったの?て、いうか、ミンテちゃんのレベルの上がり方おかしくない?」
コハクちゃんが、物凄く戸惑っているが、仲間は、うんうん頷きながら、コハクちゃんの頭を撫で事情を説明したのだが、想定外すぎたのか、コハクちゃんは、目を白黒させて、情報処理が追い付かないようで、頭を抱えている。
「コハク、大丈夫ですか?」
ミンテが、首をかしげコハクちゃんを心配そうに見る。
「いや、ミンテが悪い訳じゃないから、直に良くなるよ」
「しかし、二日で、影移動出来るようになるとは…流石と言いたいが、いくらミンテでも、早すぎるだろ、ふむ、ああ、そうかディルの魔力のせいか、なるほどのう」
「俺?」
「そう、お主の場合、常に精霊達に囲まれとるからな、従魔のミンテも闇精霊が寄りやすくなっておる。それで魔術に変換しやすいのだな」
「そうなのですか?それは、よくわからないけど、コハクやメノウの教え方が分かりやすかったですよ」
「あっ、そうだ。母さんの事、忘れてた。ちょっと、迎えにいってくる」
ミンテの言葉で、コハクちゃんが、慌ててサイガさんの影の中に消えた。
「あっ、そうでした。メノウを置いてきたです」
メノウさんは、茶色に金が混じった毛がとても綺麗な狼人。コクヨウさんの奥さんで、コハクちゃんのお母さん。親子でミンテの指導をしてくれていたのだ。
メノウさんは、ほんわか優しい感じの美人で、治癒魔術が得意。
リョウが最初に懐いたサイガさんは、白銀の毛で、イケメンだ。しかも、獣人族ではかなり珍しい、氷系統の魔術が得意だと言う。
黒狼の刃で、メノウさん、コハクちゃん、サイガさんが主に魔術担当ということだ。
後のメンバーは、リーダーのコクヨウさんは名前の通り黒狼で、二メートル近いガッシリとした体つきで、刀を携えてる剣士。
同じく黒狼のミカゲさんは、俺と同じぐらいの小柄で細身の身体だけど、凄く鍛えているのが分かる。手裏剣や吹き矢が得意で、毒の扱いにも長けているそうだ。
最後も、同じく黒狼のサガンさんは、コクヨウさんほど大きくはないが、この人もガッシリとした身体で、刀と鎖鎌という、ちょっと、変わった武器を持っている。
この三人が集まって出来たのが、黒狼の刃なのだという。それから、メノウさん達が仲間入りし、今のパーティーになったそうだ。
因みに、ミカゲさんも、サガンさんも妻子持ちだけど、家族は冒険者になってない、しかし、サガンさんの次男坊は将来、冒険者になりたいと言っているそうだ。まだ、三才だけど…まぁ、獣人族は、成長が一番早いからな、たしか、十歳で成人する人種が殆どだと聞いている。
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