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モブはモブなりに楽しんでおります
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おや?まぁ!
今日は、所用で付き人と街に出たのですけど、どういたしましょう。
前方に見える殿方がどうやら、知り合いの様なのですが、供も連れずにお一人でこちらにいらっしゃいます。
「シンシア様、どうなされましたか?」
「メル、アレを見て」
私の世話係でもメルに、小声で前方からみえる殿方を教えました。
「まぁ、シンシア様、人に指を差すなんてはしたない。旦那様がお嘆きになりますよ」
メルは、殿方を見ずに、私の行動を嗜め始めてしまいました。向かってくる殿方は、いつもの意地悪そうな笑顔で、こちらを見てきました。
あの方も、気づいていたのですね。
ここは、淑女の嗜みとして、微笑んで会釈をし、楚々と馬車に乗り込もうとしましたが、相手はこちらの行動は気にもせずに、ズカズカと大股で近づいてきます。
「やぁ、シンシィ、ごきげんよう。こんなところで、何をしているのかな?」
殿方は、一見笑顔のようですが、サファイアの様な青い目は、見たものを凍りつかせてしまうのではないかと思うほどの鋭さを持っています。
さて、どうしましょうか…
「え?イルファード様?」
メルが、庶民が近づいてきたと思い、私の前に立ち注意しようとしましたが、その顔を見て驚きの声を上げました。
知り合いの殿方は、ベージュのヨレヨレのシャツに、ブラウンのズボン、艶のない革靴に、目元を隠すように目深にかぶったハンチング帽で、庶民を装っておられましたが、立ち振舞いまでは装いきれていませんでした。
周りの人達も遠巻きに観て、ヒソヒソと話しております。立ち姿だけでも育ちの良さが分かってしまいますものね。
良からぬ事を考える輩に狙われでもしたらどうするのでしょう?…とはいえ、どうやら、影の中に何やら潜んで居るようです。護衛の使役獣でしょうか?
しかし、もう少し、自分の立場というものを考えて欲しいですわね。
その綺麗なお顔にサファイアの様な冷たい瞳、近くに来たことで、帽子に押し込まれている金髪も少し見えています。
メルは、すっかり固まってしまい、開いた口を閉じられなくなっているようです。
困りましたわねぇ…
「シンシィ…他人の事をジッと見ながら、考え込むのは、君の悪い癖だよ。直した方が良い」
「…ごきげんよう。イルファード様、ご忠告痛み入ります。ですが、第一王子なるお方が、変装しお城を抜け出す事の方が、悪い癖だと思うのですが、如何お思いですか?」
「ふん、これは癖では無いだろ。ちょっとした用事でね。供や護衛なんて仰々しくするほどの事ではないから、一人で出てきたのだ。別に悪いことじゃないさ」
はぁ…何を言ってるんですかねぇ?この王子は!
あなたが、抜け出す度に、側近である私の兄が怒られるのですよ!
まったくぅ、従兄で歳が近いからという理由で、幼少の頃より仕えている兄を軽んじてからにぃ~
馬にでも蹴られてしまえば良いのに!
「ぶるぅ?」
私の考えを聞いていたのでしょう。
馬車に繋がれた馬が、カツンと蹄鉄を鳴らしこちらを向いて、口許を震わせ『蹴りますか?』というように首を傾げました。
いいえ、そんなことしたら、あなたの首が飛んでしまいますわ、それは、いけません、ここは我慢をいたしましょう。
「ひん!」
素直に聞いてくれました。なんて、賢く良い子なのでしょう。
それを見たイルファード様が、驚きの顔で私を見ます。
「シンシィ…何か物騒な事を考えなかったかい?」
「とんでもありませんわ。それより、兄が心配しておりますでしょうから、早く城へお帰りください」
「ああ、ロイの心配か、アイツがもっと、融通をきかせてくれれば、こんな苦労せずに済むのに…」
はぁ…また、この第一王子は…
あなたのその悪癖のお陰で、兄があんなにも堅苦しい性格になったというのに、気づいてないのですか?
「イルファード様?第一王子である貴方さまが、このような場所にどのような用事がございましたのでしょう?」
ここは、王都の中でも特殊な商業区。一般の者が必要な生活雑貨や食品関係の店はなく、仕入れ業者の建物が多い所です。その様な場所に王族の方がいらっしゃるなんて…何か、新しい事業を始めるのでしょうか?
「私の方が先にその質問をしたのだが?」
あら、忘れてはいませんでしたわ、残念です。
「私は、アレですわ、祖母の用事でこちらに参ったのでございます」
「嘘をつくなら、もう少し考えなさい。それでも、新進気鋭の女流作家、シシィ・クレア女史ですか?」
あら、バレていましたわ。
「なんのことで、御座いましょう?」
昨日、担当者に渡した原稿に不備があったので訂正しに参りましたのですが、私が、作家活動をしていることは公にしておりませんので、困りましたわね。
「シラを切るのかい?私は、クレア女史の『フェルゼルの大冒険』のファンなんだよ。あれは、君の召喚獣のブラックウルフの事だよね?」
「さぁ?何の事か分かりかねますわ。それよりも、イルファード様は、何故そのような姿で、こちらに?」
「ふん。あくまでもシラを切るのかい?まぁ、良いだろう。それより、君の作家活動を助けている中に、鳥達も居たよね?」
「ですから…何の事なのか…」
「最近の流行りは、身分の高いものの世直し旅だと聞いてるよ」
うっ…うう…、正に先程、担当者から、読者層の年齢を上げる為に、世直し旅を書くことを提案されたばかりですわ。しかも、私自身が、現国王を兄に持つ伯爵の娘。更に、庶民から絶大の人気があるユーリス卿の令嬢で、この第一王子の婚約者であるアルテミシア様の派閥に属しております。
担当者が申しますには、ホンの少し真実を織り混ぜ話を膨らませた方が人気が出るのだとか…しかし、自分の事を書くのは抵抗がありますし、気に入らない従兄を主人公にし物語を考えるのは、反射的に拒否してしまったので、アルテミシア様をと言うことになるのですが、冤罪とはいえ憧れのアルテミシア様を断罪する話なんて…
「ほら、また、考え込む。言っただろ、私は、クレア女史のファンなんだ。その力になろうと言うんだから、素直に聞いた方が良いと思うよ」
悪魔の囁きとはこういうものを言うのでしょうか?
「シンシア様?どうなされました?」
少し赤みがかったとても珍しいストロベリーブロンドの髪を美しく結い上げ、丸みのある可愛らしい顔に、動物の赤ちゃん思わせる丸い目に、菫の瞳。
まるでお人形のようなキャロライン嬢が首を傾げてこちらを見ています。
「いえ、少し思い出したことがございまして。それより、キャロライン様、今日の授業はいかがでしたか?」
キャロライン嬢と私は、週に一度、お互いの家に行き来して、お茶を楽しんでおります。今日は、キャロライン嬢が、王子妃教育の後、こちらに寄って下さいました。
「はぁ…今日は、隣国との貿易関係を習ったのですが、商人の娘だと言うのに、ちゃんと、答えられなくてレナード卿に呆れられてしまいました…」
「まだ、始められたばかりなのですから、焦る事はございませんわ」
「ふふ、イルファード様と同じことを仰いますね。イルファード様とシンシア様は、本当によく似ていらっしゃいますね」
「はぁ?」
「え?」
「あ、ごめんなさい。つい…王子であるイルファード様と、私が似ているなんて、畏れ多いですわ。ホホホホ…」
「そうですか?」
コテンと首をかしげるキャロライン嬢は、本当に可愛らしい方です。
あのイルファード様を虜にしたのですから、当たり前なのですが…まさか、五歳の時の初恋を成就なさるとは…イルファード様は、恐るべき粘着体質でしたのです。幼少の時にチラリと見ただけの庶民の少女に一目惚れ、その少女を妃に迎えるために、あらゆる策をたて、実現なさったのです。一歩間違えれば、犯罪者のような気がしますが…
しかし、これで良かったのでしょうか?
あの日から、私の召喚獣である椋鳥がキャロライン嬢の側に居るのですが、知れば知るほど、従兄には勿体なく感じてしまいます。されど…
「見てください。今日は、パレットのフルーツタルトですわ。美味しそうですねぇ」
「本当に、見た目の鮮やかで素晴らしいですわね。でも、また、ご自身で?」
「そうなのです。わざわざそんなことを、なさらないように言ったのですが、その…」
「『私の愛しい人へのプレゼントを選ぶ楽しみを奪うのですか?』」
もう、耳タコ状態のセリフを、従兄を真似して言ってみると、キャロライン嬢も、いつもの通り顔を真っ赤にして、両の手で覆い恥ずかしがっております。
はぁ…、私達の前で、惚気ですか…馬に蹴られてしまいますよ。
おっと、危ない、これは、冗談ですから、実行しないでくださいね。
建物の外から、嘶く声が聞こえました。皆、賢い子達なので安心です。
しかし、私なんかより、従兄とアルテミシア様の方が似た者同士でしたわね。
一体、どんな教育を受ければあのようになるのでしょう?
幼少の頃から、自分の道を切り開く、ついでに、自分の立場や地位を餌に、異分子を一掃してしまうなんて…
これで、当面、この国の平和は保たれたのですから、文句は言えません。
私も、ホンの少し手を加えただけの物語で、ベストセラー作家の仲間入りが出来たので、否定するつもりはございませんが…
「シンシィ、また、考え込んで、キャロライン様が、困っていますよ。せっかくですから、紅茶が冷めないうちに、タルトも頂きなさい」
しれっと、執事の様に私達のテーブル横で給仕をしているお兄様が、そんなことを申しております。今日は、キャロライン嬢がウチに来る事になっていたので、ロイお兄様が護衛として一緒に来たのです。
「はぁ…お兄様の方が、イルファード様に似ておりますわね…」
「従兄だしな。五人兄弟の中で、国王と一番にているのがウチの親父だし、母上は、宰相の娘だ。政に明るくなければやっていけないだろう」
完全に砕けた物言いで推定して下さいました。しかも、さらっと、当たり前のように…はぁ…こんな、殿方が近くに居るのですから、私の理想が高くなってしまうのは仕方がないですよねぇ?
殿下が城を抜け出す手配を整え、抜け出した後もちゃんと召喚獣に護衛をさせていたのは、側近であるお兄様でした。
それを隠して、殿下の行いに対する不満分子の意見を聞き、殿下や国王と相談し、益にならない者達が狼藉を働く様に仕向け、イルファード様、アルテミシア様が考えた粗筋を、実現させるための脚本を書いたのもお兄様でした。
はぁ…私の物語は、その脚本を元にして書いております。
私は、兄離れすることが出来るのでしょうか?
ま、大好きなのでこのままでも良いかとも思っていますけどね…
幸いにも、ロイお兄様の他に二人の兄がおり、お二人とも既に結婚されていますから、下の私達は気楽なものです。
こうして、大好きな人達と、美味しい紅茶とケーキを楽しめる時間もありますしね♪
今日は、所用で付き人と街に出たのですけど、どういたしましょう。
前方に見える殿方がどうやら、知り合いの様なのですが、供も連れずにお一人でこちらにいらっしゃいます。
「シンシア様、どうなされましたか?」
「メル、アレを見て」
私の世話係でもメルに、小声で前方からみえる殿方を教えました。
「まぁ、シンシア様、人に指を差すなんてはしたない。旦那様がお嘆きになりますよ」
メルは、殿方を見ずに、私の行動を嗜め始めてしまいました。向かってくる殿方は、いつもの意地悪そうな笑顔で、こちらを見てきました。
あの方も、気づいていたのですね。
ここは、淑女の嗜みとして、微笑んで会釈をし、楚々と馬車に乗り込もうとしましたが、相手はこちらの行動は気にもせずに、ズカズカと大股で近づいてきます。
「やぁ、シンシィ、ごきげんよう。こんなところで、何をしているのかな?」
殿方は、一見笑顔のようですが、サファイアの様な青い目は、見たものを凍りつかせてしまうのではないかと思うほどの鋭さを持っています。
さて、どうしましょうか…
「え?イルファード様?」
メルが、庶民が近づいてきたと思い、私の前に立ち注意しようとしましたが、その顔を見て驚きの声を上げました。
知り合いの殿方は、ベージュのヨレヨレのシャツに、ブラウンのズボン、艶のない革靴に、目元を隠すように目深にかぶったハンチング帽で、庶民を装っておられましたが、立ち振舞いまでは装いきれていませんでした。
周りの人達も遠巻きに観て、ヒソヒソと話しております。立ち姿だけでも育ちの良さが分かってしまいますものね。
良からぬ事を考える輩に狙われでもしたらどうするのでしょう?…とはいえ、どうやら、影の中に何やら潜んで居るようです。護衛の使役獣でしょうか?
しかし、もう少し、自分の立場というものを考えて欲しいですわね。
その綺麗なお顔にサファイアの様な冷たい瞳、近くに来たことで、帽子に押し込まれている金髪も少し見えています。
メルは、すっかり固まってしまい、開いた口を閉じられなくなっているようです。
困りましたわねぇ…
「シンシィ…他人の事をジッと見ながら、考え込むのは、君の悪い癖だよ。直した方が良い」
「…ごきげんよう。イルファード様、ご忠告痛み入ります。ですが、第一王子なるお方が、変装しお城を抜け出す事の方が、悪い癖だと思うのですが、如何お思いですか?」
「ふん、これは癖では無いだろ。ちょっとした用事でね。供や護衛なんて仰々しくするほどの事ではないから、一人で出てきたのだ。別に悪いことじゃないさ」
はぁ…何を言ってるんですかねぇ?この王子は!
あなたが、抜け出す度に、側近である私の兄が怒られるのですよ!
まったくぅ、従兄で歳が近いからという理由で、幼少の頃より仕えている兄を軽んじてからにぃ~
馬にでも蹴られてしまえば良いのに!
「ぶるぅ?」
私の考えを聞いていたのでしょう。
馬車に繋がれた馬が、カツンと蹄鉄を鳴らしこちらを向いて、口許を震わせ『蹴りますか?』というように首を傾げました。
いいえ、そんなことしたら、あなたの首が飛んでしまいますわ、それは、いけません、ここは我慢をいたしましょう。
「ひん!」
素直に聞いてくれました。なんて、賢く良い子なのでしょう。
それを見たイルファード様が、驚きの顔で私を見ます。
「シンシィ…何か物騒な事を考えなかったかい?」
「とんでもありませんわ。それより、兄が心配しておりますでしょうから、早く城へお帰りください」
「ああ、ロイの心配か、アイツがもっと、融通をきかせてくれれば、こんな苦労せずに済むのに…」
はぁ…また、この第一王子は…
あなたのその悪癖のお陰で、兄があんなにも堅苦しい性格になったというのに、気づいてないのですか?
「イルファード様?第一王子である貴方さまが、このような場所にどのような用事がございましたのでしょう?」
ここは、王都の中でも特殊な商業区。一般の者が必要な生活雑貨や食品関係の店はなく、仕入れ業者の建物が多い所です。その様な場所に王族の方がいらっしゃるなんて…何か、新しい事業を始めるのでしょうか?
「私の方が先にその質問をしたのだが?」
あら、忘れてはいませんでしたわ、残念です。
「私は、アレですわ、祖母の用事でこちらに参ったのでございます」
「嘘をつくなら、もう少し考えなさい。それでも、新進気鋭の女流作家、シシィ・クレア女史ですか?」
あら、バレていましたわ。
「なんのことで、御座いましょう?」
昨日、担当者に渡した原稿に不備があったので訂正しに参りましたのですが、私が、作家活動をしていることは公にしておりませんので、困りましたわね。
「シラを切るのかい?私は、クレア女史の『フェルゼルの大冒険』のファンなんだよ。あれは、君の召喚獣のブラックウルフの事だよね?」
「さぁ?何の事か分かりかねますわ。それよりも、イルファード様は、何故そのような姿で、こちらに?」
「ふん。あくまでもシラを切るのかい?まぁ、良いだろう。それより、君の作家活動を助けている中に、鳥達も居たよね?」
「ですから…何の事なのか…」
「最近の流行りは、身分の高いものの世直し旅だと聞いてるよ」
うっ…うう…、正に先程、担当者から、読者層の年齢を上げる為に、世直し旅を書くことを提案されたばかりですわ。しかも、私自身が、現国王を兄に持つ伯爵の娘。更に、庶民から絶大の人気があるユーリス卿の令嬢で、この第一王子の婚約者であるアルテミシア様の派閥に属しております。
担当者が申しますには、ホンの少し真実を織り混ぜ話を膨らませた方が人気が出るのだとか…しかし、自分の事を書くのは抵抗がありますし、気に入らない従兄を主人公にし物語を考えるのは、反射的に拒否してしまったので、アルテミシア様をと言うことになるのですが、冤罪とはいえ憧れのアルテミシア様を断罪する話なんて…
「ほら、また、考え込む。言っただろ、私は、クレア女史のファンなんだ。その力になろうと言うんだから、素直に聞いた方が良いと思うよ」
悪魔の囁きとはこういうものを言うのでしょうか?
「シンシア様?どうなされました?」
少し赤みがかったとても珍しいストロベリーブロンドの髪を美しく結い上げ、丸みのある可愛らしい顔に、動物の赤ちゃん思わせる丸い目に、菫の瞳。
まるでお人形のようなキャロライン嬢が首を傾げてこちらを見ています。
「いえ、少し思い出したことがございまして。それより、キャロライン様、今日の授業はいかがでしたか?」
キャロライン嬢と私は、週に一度、お互いの家に行き来して、お茶を楽しんでおります。今日は、キャロライン嬢が、王子妃教育の後、こちらに寄って下さいました。
「はぁ…今日は、隣国との貿易関係を習ったのですが、商人の娘だと言うのに、ちゃんと、答えられなくてレナード卿に呆れられてしまいました…」
「まだ、始められたばかりなのですから、焦る事はございませんわ」
「ふふ、イルファード様と同じことを仰いますね。イルファード様とシンシア様は、本当によく似ていらっしゃいますね」
「はぁ?」
「え?」
「あ、ごめんなさい。つい…王子であるイルファード様と、私が似ているなんて、畏れ多いですわ。ホホホホ…」
「そうですか?」
コテンと首をかしげるキャロライン嬢は、本当に可愛らしい方です。
あのイルファード様を虜にしたのですから、当たり前なのですが…まさか、五歳の時の初恋を成就なさるとは…イルファード様は、恐るべき粘着体質でしたのです。幼少の時にチラリと見ただけの庶民の少女に一目惚れ、その少女を妃に迎えるために、あらゆる策をたて、実現なさったのです。一歩間違えれば、犯罪者のような気がしますが…
しかし、これで良かったのでしょうか?
あの日から、私の召喚獣である椋鳥がキャロライン嬢の側に居るのですが、知れば知るほど、従兄には勿体なく感じてしまいます。されど…
「見てください。今日は、パレットのフルーツタルトですわ。美味しそうですねぇ」
「本当に、見た目の鮮やかで素晴らしいですわね。でも、また、ご自身で?」
「そうなのです。わざわざそんなことを、なさらないように言ったのですが、その…」
「『私の愛しい人へのプレゼントを選ぶ楽しみを奪うのですか?』」
もう、耳タコ状態のセリフを、従兄を真似して言ってみると、キャロライン嬢も、いつもの通り顔を真っ赤にして、両の手で覆い恥ずかしがっております。
はぁ…、私達の前で、惚気ですか…馬に蹴られてしまいますよ。
おっと、危ない、これは、冗談ですから、実行しないでくださいね。
建物の外から、嘶く声が聞こえました。皆、賢い子達なので安心です。
しかし、私なんかより、従兄とアルテミシア様の方が似た者同士でしたわね。
一体、どんな教育を受ければあのようになるのでしょう?
幼少の頃から、自分の道を切り開く、ついでに、自分の立場や地位を餌に、異分子を一掃してしまうなんて…
これで、当面、この国の平和は保たれたのですから、文句は言えません。
私も、ホンの少し手を加えただけの物語で、ベストセラー作家の仲間入りが出来たので、否定するつもりはございませんが…
「シンシィ、また、考え込んで、キャロライン様が、困っていますよ。せっかくですから、紅茶が冷めないうちに、タルトも頂きなさい」
しれっと、執事の様に私達のテーブル横で給仕をしているお兄様が、そんなことを申しております。今日は、キャロライン嬢がウチに来る事になっていたので、ロイお兄様が護衛として一緒に来たのです。
「はぁ…お兄様の方が、イルファード様に似ておりますわね…」
「従兄だしな。五人兄弟の中で、国王と一番にているのがウチの親父だし、母上は、宰相の娘だ。政に明るくなければやっていけないだろう」
完全に砕けた物言いで推定して下さいました。しかも、さらっと、当たり前のように…はぁ…こんな、殿方が近くに居るのですから、私の理想が高くなってしまうのは仕方がないですよねぇ?
殿下が城を抜け出す手配を整え、抜け出した後もちゃんと召喚獣に護衛をさせていたのは、側近であるお兄様でした。
それを隠して、殿下の行いに対する不満分子の意見を聞き、殿下や国王と相談し、益にならない者達が狼藉を働く様に仕向け、イルファード様、アルテミシア様が考えた粗筋を、実現させるための脚本を書いたのもお兄様でした。
はぁ…私の物語は、その脚本を元にして書いております。
私は、兄離れすることが出来るのでしょうか?
ま、大好きなのでこのままでも良いかとも思っていますけどね…
幸いにも、ロイお兄様の他に二人の兄がおり、お二人とも既に結婚されていますから、下の私達は気楽なものです。
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