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雷鳴き止まず… 2
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話は数日前に遡る。
「この写真が神隠しに会ったときのなんですね?」
「そう、夏祭りで、ちょっと、目を離した隙に迷子になって、三日間、村総出で探して見つけたということでした」
「その時に、竜神さまに唾つけられたって事ですね」
「もう、よしさん、言い方!見初められたでしょ。こんな可愛い子なんだから、竜神さま一目惚れしたのよね。この子が成長して、きっと、すっごい美人になってるわよね」
十五、六年前の事を収めたスクラップブックの一頁に、白地に赤紫と青の紫陽花が描かれた浴衣を着た子供の写真付きの新聞記事が貼られている。
その記事を皆で除き混み…
「紫陽花、可愛いのう。良人、妾も欲しい」
「桃色…帯…可愛い…」
…と、好き勝手に口にしていた。
そんな、あやかし達とは別に、人間達は…
「梓、確かに可愛いですけど、きちんと記事を読みましたか?」
「え?えっと…十九日早朝発見された…杉浦…充ちゃん?でいいの?女の子にしては、珍しい名前ね」
「まぁ、女の子でも、良い名前かもしれませんが、男の子ですよ。もう、十八になりますから、男性と言った方がいいですかね」
「え?だって、紫陽花の浴衣にピンクの帯だよ」
「ええ、なんでも、産まれたばかりの時に大病したそうで、丈夫になるよう女の子の服を着せていたそうです」
「そうなんだ…………ホントに男の子?」
「はい、見れば分かりますが…確かに、美人ではありますね」
「基ちゃんより?」
「え?え?…保坂くん?」
「ガハハハ、保坂が美人に見えるのは梓だけだ、アイドルかなんかを例えに出さないと皆わからないぞ」
「えー、なんでも屋の一番人気は基ちゃんだよ。よしさんなんて、この間、新人の治ちゃんに並ばれたくせに」
「は?なんだよそれ、俺は、そんなの知らないぞ。人気投票なんてどこでしてるんだよ。しかも、日置と並んだ?」
「あっ、しまった。…えっとぉ…ちょっと、たまに?時々…しばしば…女子会したときに?」
「なんだよ。その言い回しは…はぁー、まぁ、だいたい想像はつくな。ちっ、確かに、この中じゃ、保坂か…身長じゃ負けてないのにな、やっぱ、顔か?」
「にゃははー、よしさん、自覚あるんだ」
「笑うな。人の善し悪しは、顔じゃない!」
「良人には、妾がいるから、人間のおなごなどに、モテなくても良いのだ」
「えー、綾姫さま、前々から思ってたんですけど、綾姫さまは、よしさんの何が気に入ったんです?まぁ、器用で、資格も沢山持っててスゴい人だと思いますけど…」
「そういう、梓は、なぜ、保坂なのじゃ。聞けば、一目惚れだったそうだのう?」
「えー、それはですねー…」
「「……」」
仕事の話のハズが、何やらおかしな方向に向かってしまった。話題にされてる二人は、顔をひきつらせ絶句し、他の者もいきなり始まった女子トークに引きつつ、目を合わせ苦笑いになる…
「えーと、かなり脱線しましたが…コイバナしてる二人は置いといて、本題ですけども、この杉浦 充くんなんですけどね。さっきも少し話しましたが、かなりの美人さんで、色々と周りが騒がしいようでして」
「そのせいで、ここ最近の天気が安定しないんですね」
「そうなんですよ。このままじゃ、この辺の農家は大打撃を受けてしまうので、何とかしないといけないんですが…」
「どうしました社長?」
「そのぉ、ちょっかい出してる中に、正志も入ってまして…」
「えっ、正志くんて…そっち?」
「あっ、いや、正志は、異性が好きですけども、どうやら、竜神さまが目当てらしいんですよ」
「あっ、もしかして、志織さんの影響ですか?」
「ええ、志織は、祖父の仕事を受け継ぎたがってましたから…」
「ああ、それが、お兄ちゃんである社長に取られ、次の跡目にと思っていたら、梓が生まれて、志織さんも、正志くんもかなり遠退いてしまいましたからね。それで、強力な助っ人を手に入れようとしてるんですか?」
「ええ、そのようです。外から手を出してなんとかなる相手ではないのに、いくら言っても、聞いてもらえず。祖父も父も手を焼いている状況でして…」
「一度痛い目に…って、二度も、三度も、痛い目に遭っているんでしたっけ?」
「はい、いろいろ、やらかしてしまってます。私も何度か、ガツンとやってるんですがね…」
「学習能力無さすぎませんか?」
「耳が痛いです。身内の事なのでなんとか穏便に済ませたいのですが、今回は…困ったことになりそうです」
「ちょうど良いじゃないですか、竜神さまにガツンとやってもらいましょ。それで、治らなかったら、諦めるしかないんじゃないですか?身内とはいえ、他人ですよ」
「え…ええ、割りきってしまえれば良いんですけどね…」
「社長は、優し過ぎますよ。なんだったら、志織さんと、正志くんに竜神さまの相手してもらえば良いじゃないですか、格の違いってやつを見せつけましょう」
「はぁ…いや、それは、危険すぎます。それなら、神部くんが二人を説得してくださいよ。それこそ、格の違いが解るように」
「え?ヤですよぉ。それなら、保坂や梓…は、マズイか…あっ、日置のお婆さんのところに修行に出すとか?」
「え?え?待ってください。よく分からないですけど、なんか、危険なことに、ばあちゃんまで巻き込まないで下さい」
「ちぇっ、ダメか」
「神部、無茶振りしすぎだ。志織ちゃんも、そんなに悪くは無いんだ。ただなぁ…」
「ええ、祖母譲りの負けん気の強さが仇になったと言いますか…」
「優秀過ぎたんだよ。もうちっと丸くなれば、久志の代わりにお祓い師を受け継いでもやっていけると思うけどな」
「そうですね。あの他者を見下す態度がなくなれば譲れるんですけどねぇ…」
「しょうがないですねぇ、で、どうするんです。事が起こる前に、充くんとやらを餌に、竜神さま呼ぶんですか?」
「そうですね。ゴールデンウィーク中にはなんとかしないと、畑に影響出るので、お迎えする準備をしましょう」
「それまでは、志織ちゃんと、正志くんに、大人しくしてるように、伝えてくれよ」
「ええ、分かってますよ」
そんな会話が交わされた三日後の夕方、珍しく市街地に落雷があり、落ちた木の直ぐ側に居た大学生が意識不明の状態で救急車で搬送された。
「この写真が神隠しに会ったときのなんですね?」
「そう、夏祭りで、ちょっと、目を離した隙に迷子になって、三日間、村総出で探して見つけたということでした」
「その時に、竜神さまに唾つけられたって事ですね」
「もう、よしさん、言い方!見初められたでしょ。こんな可愛い子なんだから、竜神さま一目惚れしたのよね。この子が成長して、きっと、すっごい美人になってるわよね」
十五、六年前の事を収めたスクラップブックの一頁に、白地に赤紫と青の紫陽花が描かれた浴衣を着た子供の写真付きの新聞記事が貼られている。
その記事を皆で除き混み…
「紫陽花、可愛いのう。良人、妾も欲しい」
「桃色…帯…可愛い…」
…と、好き勝手に口にしていた。
そんな、あやかし達とは別に、人間達は…
「梓、確かに可愛いですけど、きちんと記事を読みましたか?」
「え?えっと…十九日早朝発見された…杉浦…充ちゃん?でいいの?女の子にしては、珍しい名前ね」
「まぁ、女の子でも、良い名前かもしれませんが、男の子ですよ。もう、十八になりますから、男性と言った方がいいですかね」
「え?だって、紫陽花の浴衣にピンクの帯だよ」
「ええ、なんでも、産まれたばかりの時に大病したそうで、丈夫になるよう女の子の服を着せていたそうです」
「そうなんだ…………ホントに男の子?」
「はい、見れば分かりますが…確かに、美人ではありますね」
「基ちゃんより?」
「え?え?…保坂くん?」
「ガハハハ、保坂が美人に見えるのは梓だけだ、アイドルかなんかを例えに出さないと皆わからないぞ」
「えー、なんでも屋の一番人気は基ちゃんだよ。よしさんなんて、この間、新人の治ちゃんに並ばれたくせに」
「は?なんだよそれ、俺は、そんなの知らないぞ。人気投票なんてどこでしてるんだよ。しかも、日置と並んだ?」
「あっ、しまった。…えっとぉ…ちょっと、たまに?時々…しばしば…女子会したときに?」
「なんだよ。その言い回しは…はぁー、まぁ、だいたい想像はつくな。ちっ、確かに、この中じゃ、保坂か…身長じゃ負けてないのにな、やっぱ、顔か?」
「にゃははー、よしさん、自覚あるんだ」
「笑うな。人の善し悪しは、顔じゃない!」
「良人には、妾がいるから、人間のおなごなどに、モテなくても良いのだ」
「えー、綾姫さま、前々から思ってたんですけど、綾姫さまは、よしさんの何が気に入ったんです?まぁ、器用で、資格も沢山持っててスゴい人だと思いますけど…」
「そういう、梓は、なぜ、保坂なのじゃ。聞けば、一目惚れだったそうだのう?」
「えー、それはですねー…」
「「……」」
仕事の話のハズが、何やらおかしな方向に向かってしまった。話題にされてる二人は、顔をひきつらせ絶句し、他の者もいきなり始まった女子トークに引きつつ、目を合わせ苦笑いになる…
「えーと、かなり脱線しましたが…コイバナしてる二人は置いといて、本題ですけども、この杉浦 充くんなんですけどね。さっきも少し話しましたが、かなりの美人さんで、色々と周りが騒がしいようでして」
「そのせいで、ここ最近の天気が安定しないんですね」
「そうなんですよ。このままじゃ、この辺の農家は大打撃を受けてしまうので、何とかしないといけないんですが…」
「どうしました社長?」
「そのぉ、ちょっかい出してる中に、正志も入ってまして…」
「えっ、正志くんて…そっち?」
「あっ、いや、正志は、異性が好きですけども、どうやら、竜神さまが目当てらしいんですよ」
「あっ、もしかして、志織さんの影響ですか?」
「ええ、志織は、祖父の仕事を受け継ぎたがってましたから…」
「ああ、それが、お兄ちゃんである社長に取られ、次の跡目にと思っていたら、梓が生まれて、志織さんも、正志くんもかなり遠退いてしまいましたからね。それで、強力な助っ人を手に入れようとしてるんですか?」
「ええ、そのようです。外から手を出してなんとかなる相手ではないのに、いくら言っても、聞いてもらえず。祖父も父も手を焼いている状況でして…」
「一度痛い目に…って、二度も、三度も、痛い目に遭っているんでしたっけ?」
「はい、いろいろ、やらかしてしまってます。私も何度か、ガツンとやってるんですがね…」
「学習能力無さすぎませんか?」
「耳が痛いです。身内の事なのでなんとか穏便に済ませたいのですが、今回は…困ったことになりそうです」
「ちょうど良いじゃないですか、竜神さまにガツンとやってもらいましょ。それで、治らなかったら、諦めるしかないんじゃないですか?身内とはいえ、他人ですよ」
「え…ええ、割りきってしまえれば良いんですけどね…」
「社長は、優し過ぎますよ。なんだったら、志織さんと、正志くんに竜神さまの相手してもらえば良いじゃないですか、格の違いってやつを見せつけましょう」
「はぁ…いや、それは、危険すぎます。それなら、神部くんが二人を説得してくださいよ。それこそ、格の違いが解るように」
「え?ヤですよぉ。それなら、保坂や梓…は、マズイか…あっ、日置のお婆さんのところに修行に出すとか?」
「え?え?待ってください。よく分からないですけど、なんか、危険なことに、ばあちゃんまで巻き込まないで下さい」
「ちぇっ、ダメか」
「神部、無茶振りしすぎだ。志織ちゃんも、そんなに悪くは無いんだ。ただなぁ…」
「ええ、祖母譲りの負けん気の強さが仇になったと言いますか…」
「優秀過ぎたんだよ。もうちっと丸くなれば、久志の代わりにお祓い師を受け継いでもやっていけると思うけどな」
「そうですね。あの他者を見下す態度がなくなれば譲れるんですけどねぇ…」
「しょうがないですねぇ、で、どうするんです。事が起こる前に、充くんとやらを餌に、竜神さま呼ぶんですか?」
「そうですね。ゴールデンウィーク中にはなんとかしないと、畑に影響出るので、お迎えする準備をしましょう」
「それまでは、志織ちゃんと、正志くんに、大人しくしてるように、伝えてくれよ」
「ええ、分かってますよ」
そんな会話が交わされた三日後の夕方、珍しく市街地に落雷があり、落ちた木の直ぐ側に居た大学生が意識不明の状態で救急車で搬送された。
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