何をすれば良い？[なんでも屋の日常]

花嫁修業？

「充くん！休日はどうしてるのかな？勉学に励んで、外出する時間はないのかな？それとも、気晴らしにアルバイトとかしようと思っていたりするかな？」

『ムッ！』

　バチッ！

『ナニ？』

　何でも屋の面々が、何やら話していたと思ったら、その中から神部が出てきて、充の肩に手を置き話しかけた。それが気に入らない竜神が妖力で痛い目に遭わそうとしたが…

「チッチッチッ、俺には効かないよ」

　神部は、ニヤリと笑い竜神に告げる。

『くっ…やはり、ワレは、最低のモノなのだな…生きている価値もないのだ。しかし、自害しようとしても出来ぬ。……近年は、人間もあまり頼み事をせんしな…やはり、ワレなどいない方がいいのかのう？』

　神部に軽くあしらわれた竜神が、ショックを受け何やら愚痴り出し、なんだ？と皆で聞いていると、随分自虐的な言葉が聞こえる。

「は？何を言い出すんだ？いや、そもそも自害しようとしたって、どういう事だ？」

『おぬし達も分かっておるのだろ、ワレは、蚯蚓や蛞蝓にも劣る最低なモノだと…だから、自害をしたのだが、中心の首が不死を司っておるからどうしても自害出来なんだのだ。だから、地に潜り身を潜めていたが、勝手に流れ出る妖気が人には毒だと責め立てられ、悲しんでおったところに役行者が現れ、知恵を貸してくれたのだ。だから、神に格上げされたが……最近では、皆、忘れたみたいでのう…そんな中、唯一の楽しみが、充の成長だったのだが……』

「「「…」」」

　


「ちょ、ちょ、綾姫様、どういうことです？」
「その辺は妾もよくわからんのだが、ととさまが言うには『ソウウツ』だと言っておった。散々暴れまわった後、突然何もかも投げだし、なんに対しても興味を見せなくなったと思っていたら、自虐行為をするようになったと、暫くしてそれが落ち着いたら、泣きながら地に潜って行ったと聞いたぞ」
「躁鬱って事ですか…竜神が？神にも、ストレス性疾患なんてあるのか？」
「良人は知っておるのか？」
「まぁ、なんとなくですがね。しかも、アイツ不死なんですか？」
「そうらしいな。しかし、お主なら、滅することは出来なくも、黄泉へ送ることは出来るのではないか？」
「いや、送ったとして、黄泉にアイツの居場所がありますか？」
「んーーー、それは、鬼共に任せればよいではないか」
「はぁ？鬼達アイツらに頭下げるなんて嫌ですよ。でも、鬱なんて聞いたら、引きこもれなんて事も言えないじゃないですか、社長の言うように、料理修業させますよ」
「ん？よくわからぬが、良人がいいなら、妾は別に反対はせぬ」

「はぁ…」

　神部は、綾姫様とのやり取りの後、ため息をつき、今度は竜神の肩に手を置いた。

「見守るだけじゃなく、充くんの為に何かしようと思ったお前は偉いと思う。でだ、その充くんに喜んでもらえるように、ここで料理修業をしないか？ここに居る保阪が調理師免許を持っているし、一応、全員料理が出来るんだ。更に、ここの社員として働けば、人として必要な金が稼げるぞ！いくら料理を、習っても、道具も食材も買えないんじゃぁ話にならないだろ？どうだ、やってみないか？」

『！、ワレに料理を教えてくれるのだな、しかも、人のように、金も稼げるのか？』

「そうだ。暫くは、住み込みでみっちり修業させてやる。どうだ悪くない話だろ？」

『……充とは暮らせんのか？』

「充くんが住んでるのは学生専用のアパートだから、無理だな。しかし、充くんがここでバイトをしてくれれば、月に何回かは、直接会えるぞ、きちんと料理が出来るようになるまで、それで我慢しろ」

『……わかった。充の為に頑張る』

　神部が竜神をなんとか言いくるめて、納得させてる後ろでは、充が驚きの声を上げたが、他の何でも屋の面々が何やら言いくるめてバイト契約してしまう。

「て、事で、土曜日から日曜にかけて、こちらに来てもらい、料理の進歩状況確認と畑仕事のお手伝いね」

「は、はぁ…」