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遊歩…土地開発?
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「おはよう。保坂、これ」
次の日、出社してきた飯田が、キッチンに立つ保坂に竹籠を差し出した。中には、新聞紙で包んだ物で一杯になっている。
「おはようございます。何です?」
手渡された籠の中から細長い一包みをとり新聞を開くと、細い筍が出てきた。
「お、根曲がり竹ですね。もう採れるところがあるんですか?」
「ああ、昨日の話をしたら、ラッシー達が張り切ってな。今朝、西の沢まで採りに行ってくれたんだ。他にもいろいろ採ってきてくれたから、こっちにも持ってきた。琴子のやつが、自分は洋風にするからと言っていたぞ」
「流石、琴子さん、山菜も洋風にアレンジですか、じゃぁ、俺は、昔ながらの煮物や椀物にしますか、筍の皮もあるから、小豆も煮て、きんつばなら、つまみやすいですかね」
「おや、きんつばですか?いいですねぇ。多めに作ってくださいね。あ、それから、大鋸屑の中にさつま芋が、まだあったと思うんですがねぇ」
薪ストーブの前のテーブルで、何やら書類を読んでいた社長が、保坂の声に反応した。
「芋餡のきんつばもですね」
甘党の社長の意図を読んで保阪が答えると、社長は嬉しそうに破顔した。
「ったくぅ…そんな、甘いものばかり食べてると、血糖値上がるぞ」
「その分、動いているから大丈夫です。野菜もしっかり食べていますしね。飯田は、昨年、健康診断で引っ掛かりましたから、控えなきゃなりませんが、私は大丈夫です」
「同い年なんだから、お前もソロソロくるぞ」
「仲間を増やそうとしないで下さい!」
「ただいまぁー、て、何、朝から、言い合ってるんですか?」
騒がしくなった『なんでも屋』に、早朝の畑作業の手伝いに行っていた神部と竜二が帰ってきた。
「別に言い合ってる訳じゃない。そろそろ、年も考えて、食べ物に気を付けないと、と言っていただけだ」
飯田の言葉に神部は遠慮なしに、視線を落として、飯田の腹を見る。
「ああ…」
「お前!それで納得するな!お前だって、今は良いかも知れんが、直ぐだぞ!」
「俺は、大丈夫です。動いてますから」
「くそ、久志と同じこと言いやがって…」
「常務もデスクワーク減らして、外作業多くすればいいんですよ」
「簡単に言うがな…」
「辻を鍛えましょう。それまでは、暇見て、スクワットでもして、自分の身体を鍛えてください」
「更に、簡単に言いやがって…」
「それなら、カウンターにでもパソコン持ってきて、立って仕事したらどうですか?」
「そういう、オフィスもあるみたいですね」
社長と保坂の言葉を聞き、少し考える。
「…それならできるか」
飯田は、渋々ではあるが、事務所から、ノートパソコンを持ってきて、カウンターの椅子をずらし広げ始める。
「神部くん、悦次さんの畑はどうでした?」
「やはりちょっと泥濘が出来てますね。朝御飯食べたら、重機を持って行って、ちょっと掘って見て、水抜が必要なら、側溝掘ってきます」
「藁とか撒くなら手伝いますよ」
「それは、竜二が居るから大丈夫です。それに、悦次さん達、昨年は、向日葵も大量に育てて、焼いてあったので、それも鋤き混む事になってます」
この辺の土は赤土で、保水性は良いが、酸性度が高く、粘土にもなりやすい。藁や籾殻、腐葉土、石灰なんかも大量に使わないと、植物を育てることは出来ない。
「雪や雨が多かったからな、古い所は粘土になっているような所もあるかもな」
困ったことだと、飯田がため息混じりに言えば、竜二がそわそわしだす。
「いや、今さらだから、責めはしませんけどね。だけど、これからは、気を付けて下さいね」
「分かった…、気を付ける。土も良くなるようにしよう」
次の日、出社してきた飯田が、キッチンに立つ保坂に竹籠を差し出した。中には、新聞紙で包んだ物で一杯になっている。
「おはようございます。何です?」
手渡された籠の中から細長い一包みをとり新聞を開くと、細い筍が出てきた。
「お、根曲がり竹ですね。もう採れるところがあるんですか?」
「ああ、昨日の話をしたら、ラッシー達が張り切ってな。今朝、西の沢まで採りに行ってくれたんだ。他にもいろいろ採ってきてくれたから、こっちにも持ってきた。琴子のやつが、自分は洋風にするからと言っていたぞ」
「流石、琴子さん、山菜も洋風にアレンジですか、じゃぁ、俺は、昔ながらの煮物や椀物にしますか、筍の皮もあるから、小豆も煮て、きんつばなら、つまみやすいですかね」
「おや、きんつばですか?いいですねぇ。多めに作ってくださいね。あ、それから、大鋸屑の中にさつま芋が、まだあったと思うんですがねぇ」
薪ストーブの前のテーブルで、何やら書類を読んでいた社長が、保坂の声に反応した。
「芋餡のきんつばもですね」
甘党の社長の意図を読んで保阪が答えると、社長は嬉しそうに破顔した。
「ったくぅ…そんな、甘いものばかり食べてると、血糖値上がるぞ」
「その分、動いているから大丈夫です。野菜もしっかり食べていますしね。飯田は、昨年、健康診断で引っ掛かりましたから、控えなきゃなりませんが、私は大丈夫です」
「同い年なんだから、お前もソロソロくるぞ」
「仲間を増やそうとしないで下さい!」
「ただいまぁー、て、何、朝から、言い合ってるんですか?」
騒がしくなった『なんでも屋』に、早朝の畑作業の手伝いに行っていた神部と竜二が帰ってきた。
「別に言い合ってる訳じゃない。そろそろ、年も考えて、食べ物に気を付けないと、と言っていただけだ」
飯田の言葉に神部は遠慮なしに、視線を落として、飯田の腹を見る。
「ああ…」
「お前!それで納得するな!お前だって、今は良いかも知れんが、直ぐだぞ!」
「俺は、大丈夫です。動いてますから」
「くそ、久志と同じこと言いやがって…」
「常務もデスクワーク減らして、外作業多くすればいいんですよ」
「簡単に言うがな…」
「辻を鍛えましょう。それまでは、暇見て、スクワットでもして、自分の身体を鍛えてください」
「更に、簡単に言いやがって…」
「それなら、カウンターにでもパソコン持ってきて、立って仕事したらどうですか?」
「そういう、オフィスもあるみたいですね」
社長と保坂の言葉を聞き、少し考える。
「…それならできるか」
飯田は、渋々ではあるが、事務所から、ノートパソコンを持ってきて、カウンターの椅子をずらし広げ始める。
「神部くん、悦次さんの畑はどうでした?」
「やはりちょっと泥濘が出来てますね。朝御飯食べたら、重機を持って行って、ちょっと掘って見て、水抜が必要なら、側溝掘ってきます」
「藁とか撒くなら手伝いますよ」
「それは、竜二が居るから大丈夫です。それに、悦次さん達、昨年は、向日葵も大量に育てて、焼いてあったので、それも鋤き混む事になってます」
この辺の土は赤土で、保水性は良いが、酸性度が高く、粘土にもなりやすい。藁や籾殻、腐葉土、石灰なんかも大量に使わないと、植物を育てることは出来ない。
「雪や雨が多かったからな、古い所は粘土になっているような所もあるかもな」
困ったことだと、飯田がため息混じりに言えば、竜二がそわそわしだす。
「いや、今さらだから、責めはしませんけどね。だけど、これからは、気を付けて下さいね」
「分かった…、気を付ける。土も良くなるようにしよう」
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