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第二部〜オールディス公爵家〜
あの時の真相
しおりを挟むリーゼロッテの両親の真実を探しに。
ランドルフは彼女の手を取り歩いて行く。
まだ女性をエスコートする、という意識は無い様だが、リーゼロッテがちゃんと着いて来れる速度で歩く。
「義兄上の遺品があるか、見せてもらえるかどうか、テレーゼに聞いてくる。
すまないがお前たちは待っててくれ。テレーゼは今つわりが酷くてな」
そうして向かった先は辺境伯の私室。オスヴァルトはランドルフたちに外で待つように言い、私室へと入って行った。
「不安か?」
「……別に」
「真実を知ればスッキリするだろ。
大丈夫だ。僕がついてるから」
リーゼロッテはランドルフを見やる。
自分より年上みたいに背伸びしているのが何だか面白くない。──実際ランドルフの方が一つ上なのだが。
「生意気よ」
「ははっ、違いないかもね」
それでも二人は繋いだ手を離さない。
リーゼロッテの不安が、少しでも和らぐようにランドルフは離すまいと思った。
しばらくしてオスヴァルトが部屋から出て来た。
「義兄上の部屋はそのままにしてあるらしい。見ていいという許可も貰ったから行こう」
二人は頷きそちらへ足を向けようとした時、先程オスヴァルトが出て来た扉がカチャリと開いた。
「義母さま!」
中から出て来たのは青白い顔をしたテレーゼだった。
「リーゼ……」
「義母さま寝てて。赤ちゃんがびっくりしちゃう」
「大丈夫よ……。リーゼ、これだけは、伝えておくわ。あなたは、望まれて産まれて来たの。
亡くなったあなたの両親は、産まれてくるのを楽しみにしてた。
間違いなくあなたは愛されていたというのを忘れないで……。
そして、私たちもあなたを愛しているわ」
自分の体調を意にも介さずテレーゼはリーゼロッテを気遣い出て来たのだ。
「ごめんなさい、義母さま……。でも、わたし、不安で…」
「いいのよ。……あなたの目で、耳で判断して、あなたが納得できるのは大きな意味があるから」
「義母さま……、行ってきます。義母さまも、寝ててください」
義娘となった姪をひと撫でし、テレーゼは夫に「リーゼをお願いね」と託して室内に戻った。
オスヴァルトも名残惜しそうに、妻の額に口付けると、ランドルフたちに向き合った。
「……なんだその目は」
「人目も憚らず妻を溺愛するのはランゲの血筋ですかね」
「ほっとけ!行くぞ」
ニヤニヤした甥を置いて、顔を赤らめたオスヴァルトは先にすたすたと足取り早く行ってしまった。
ランドルフも再びリーゼロッテと手を繋ぎ、その後を追った。
(いずれは僕もそうなるのかな)
ランドルフの疑問が現在進行系である事は、本人は無自覚なのだが。
リーゼロッテの亡き父ルトガーの部屋は、普段から掃除がなされているのか比較的綺麗だった。
亡くなった当時のままなのか、余り整理されていないその部屋は当時の事が偲ばれた。
オスヴァルトは中に入ると、一礼をした。
「義兄上、お部屋の中を拝見させて頂きます」
叔父が死者に対して礼をしたので、ランドルフも倣い頭を下げた。
リーゼロッテも戸惑いつつ、ぺこりと下げる。
少しの沈黙があって。
「よし、ランドルフ、リーゼ、日記とか手紙とかが無いかを調べてみよう」
オスヴァルトが頭を上げると、二人に合図をした。それを見て、「分かった」とランドルフは頷き、その後リーゼロッテを見て目を合わせ、部屋の中へ入って行った。
「日記があるとすれば、机か本棚か……」
それらしき物を丁寧に探っていく。
リーゼロッテは初めて入ったはずなのに、どこか懐かしいような不思議な感覚がしていた。
『あなた、ホラ、見て』
『うん?リーゼがどうしたんだ?』
『ほら、リーゼ、お父様よ。歩いて行けるかしら』
『うぶぅ…』
『お……おお!アンネ!リーゼが!リーゼがっ!』
『ふふっ、今日は2歩も歩いたのよ!』
『すごいぞ!うちの子は天才かもしれないぞ!……ハッ、今から鍛えれば凄腕女騎士になれるかも……』
『もう、あなたったら、気が早いですよ』
そんな幻を見た気がして、リーゼロッテは振り返る。だがそこに両親はいない。幻も、見えない。
途端に心細くなって、リーゼロッテはランドルフの服の裾を掴んだ。
「どうした?眠いのか?」
「うううん、そうじゃなくて…」
「リーゼロッテ嬢の方は何かあった?」
「…まだ何も…」
「そっか。見つけたら教えて」
「一緒に探す…」
リーゼロッテは少し俯き、握ったままの服の裾を引っ張った。
「分かった。じゃあ一緒に探そう」
頭をぽん、とされて、リーゼロッテは少し顔が熱くなった。
オスヴァルトは捜索しながら空気になるように努めた。
「あ、これは……」
探し始めて30分程経過した時。
机の引き出しの奥に無造作に突っ込まれた手紙を見つけた。
宛名はルトガー。
差出人は──かつての恋人の名前。
封は空いていた為まずはオスヴァルトから見る事にした。
読み終えて。
ランドルフに渡す。
『辺境伯子息様
私の軽率な態度により、奥様に誤解をさせてしまい申し訳ございません。
あの時はケヴィンに会いたくて心細くてついあなた様に縋ってしまいました。
誰から見られると思いもよらず、あなた様の評判を傷付けてしまいました。
奥様と何かあったら償っても償いきれません。
一度奥様とお話できる機会を設けて頂けると幸いです。
勝手な願いですが、どうかお願い申し上げます
ロジーナ』
それは、かつてアンリだったアーベルが見た、ルトガーと元恋人が寄り添い、抱き合っていた時の事をルトガーに、そしてその妻に詫びる手紙だった。
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