【完結】あなたの愛を知ってしまった【R18】

凛蓮月

文字の大きさ
25 / 43

25.堕ちていく★

しおりを挟む
 
 久しぶりにリリィと対面したシュトラールは、トラウからリリィが後宮に入る準備が整った事を聞いた。
 整うまでが早すぎる事を訝しく思うと、結婚当初からルーチェが少しずつ準備をしていたことを明かされた。
 うまく呑み込めず呆然とし、心臓は痛いくらい早鐘を打つ。思わず執務机に肘を突き頭を抱えた。

「ルーチェは私の気持ちなど信じていなかったのだな」
「信じていない、というのではなく、王太子妃として様々な想定のもと動いていただけかと思います」
「いつの間にかリリィを教育して王宮に入れていたじゃないか……そんなにも私の事が信じられないか……!!」

 どん! と執務机を叩き再び頭を抱えた。
 ハナから信用されていなかったこと、いくら愛を囁いても無駄だったこと、それをルーチェがどんな思いで聞いていたのか想像するだけで腸が煮えくり返る。
 シュトラールとしてはルーチェを労り最大限に気遣い愛を伝えていたつもりだったが、ルーチェからすればいずれ心変わりすると思われていた屈辱。
 これ以上何かをしても信用されないならお望み通りにしてやるという怒り。
 だがそうすればルーチェは益々離れていくだろうという焦燥。
 シュトラールの中にぐるぐるととぐろを巻いたように渦巻いては蝕んでいく。

「殿下、男爵令嬢は手を付けずに然るべき所に下賜すべきです。妃殿下にこれ以上失望されては殿下の為になりません」
「うるさい! ルーチェは側室や愛妾を入れろと言った。添い寝係がいても構わないとも。私の事はどうでもいいのだろう? 何をしてもルーチェが言ったのだから文句を言われる筋合いなどないだろう?」

 子供のように駄々をこねる主にトラウは頭痛がした。
 この幼稚な主は拗ねているだけだ。妻に愛されていないと思い八つ当たりしているんだ、と思っても溜息が溢れる。

「後宮に行く」
「殿下!」
「ルーチェがお膳立てしたんだ。もう知るものか」

 制止するトラウを振り払い、シュトラールは後宮へ足向ける。だが思い止まらせようと侍従は扉の前に立ち塞がった。

「妃殿下は倒れられて眠っています。それでも後宮に行くのですか?」
「……眠っているならいいじゃないか。知らないままでいられるよ」

 その言葉にトラウは呆然とし、力無く腕を下ろした。
 邪魔する気配が無くなったとシュトラールは扉を開け、後宮の方へ向かおうとしたが幾分冷静にもなってきていた。しかし腹の虫は収まらず、くるりと方向を変えルーチェの部屋へと向かった。
 一言文句でも言ってやろうかとも思って。

 扉を叩こうとしたが少し開いていたのでそのままゆっくりと開く。
 すると弱々しくもルーチェの声が聞こえたのでそのまま入ろうとしたが、内容を聞いて足が止まった。

「夢を見ていたわ。貴方がこうしてずっと手を握っていてくれたから私は不安が無くなっていったの。ありがとう、シアン」

 その言葉にシュトラールはドクンと心臓が跳ねた。
 シアンとはだれだ? ずっと手を握っていたとは? と。
 見ればルーチェの手を握る男がいた。
 ぽつりと聞こえた呟きによれば、男は今帰って来たばかりだと言う。
 当たり前だ。ルーチェが眠っている間、ずっとそばにいて声をかけていたのはシュトラールだ。
 一週間眠っていたルーチェを思い出し、早く目覚めてほしいと手を握り励まし続けていた。
 それを他の男と間違えるなど、と侮辱されたと思ったシュトラールは、瞬時に怒りで沸騰しその場を離れた。

 ずかずかと早足で向かった先は後宮だった。

「王太子殿下、ご機嫌麗しゅう」
「リリィはどこだ」

 後宮管理人は笑顔のままリリィのいる部屋へ案内した。
 扉を開けると憔悴したようなリリィがベッドの端に座っていた。
 人が入って来た気配に顔を上げれば愛しの男。

「シュティ! ……あ、王太子殿下……」
「シュティでいい。リリィまで殿下と言わないでくれ」

 己の内に燻る激情をぶつけるように、リリィに荒々しく口付ける。
 何度も慣れ親しんだそれに、久しぶりだというのに難なく受け入れてくれたリリィに歓喜し、性急にリリィの服を脱がせにかかった。

「殿下、ダメです! 私は……ルーチェ様に……」
「ルーチェの名前は出すな! 黙って私を受け入れろ……!」

 声を荒げたシュトラールに、ビクッと肩を跳ねさせた。こんなに機嫌の悪い彼を見たのは初めてで、リリィはすぐに抵抗を止めた。

 深く口付け、服を脱がせながら胸を揉みしだき、顕になった乳首を指で乱暴に捻る。
 後宮にいるからか脱がせやすい服ですぐに白い素肌が晒された。
 乱暴にされても漏れ出る喘ぎ声が耳障りで片手を突っ込んで舐めさせた。
 ルーチェの付けた教育と手入れで滑らかになり、以前と比べ少し引き締まった身体にシュトラールはすぐに劣情を浮かべる。

「待っていてくれたんだな。嬉しいよ」

 己の為に健気に努力していたのだと思うと捨てたはずのものが沸々と湧いてくる。
 瞳を潤ませ頬を赤らめる仕草もシュトラールを煽っていく。
 あわいに手を添えると既に泥濘んでいて、わざと音を出すようにして指で解していく。

「リリィは濡れやすいんだな。……ルーチェとは大違いだ」

 皮肉めいた言葉に抗議しようとした瞬間、激しく出し入れされ親指で淫芽をぐりぐりと押し潰されてリリィは呆気なく達してしまった。
 はくはくと空気を求めて肩で息をしているうちにシュトラールは己の服を手早く脱ぎ、昂ぶりに手を添え一気に貫いた。

「や……ああっあ、ひや、あああああっ」
「……ハッ、きっつ。私以外を受け入れてなかったのか?」

 ビクビクと痙攣しながらリリィは達してしまった己に信じられない気持ちでいた。
 同時に涙が溢れてくる。

「泣くなリリィ。私はお前を愛してやるから」
「ああっ! はぁん! ひぃっぅっう、はぁっあっあああああっ」

 慣れた身体は激しい抽挿に蜜を噴き出し歓喜に震える。
 久しぶりだというのに素直に悦び心とは裏腹に求めてしまう。
 これは恩を仇で返すような真似だ。
 そう思っても快楽に弱いリリィは次第に気持ち良さに抗えなくなり、自分から腰を動かしてシュトラールを求めた。

「ハハッ、やっぱりリリィはいいな。最高だ。ルーチェなんかよりよほどいい」
「はあっああん! シュティ! イク! イッちゃう!」
「イケ! よがり狂って乱れろ! ……っ出る!」

 一際強く奥に押し込めるようにして腰を打ち付けると、シュトラールはリリィの腹の中に精をぶちまけた。
 一滴も溢さぬように、胸を揉みながらそのうねりを堪能する。
 少しして息を整え、再び腰を動かし始めた。

「シュティ、私、まだイッて……」
「こんなもんで終わるわけないだろう?」

 一度抜いて気怠げに息をするリリィをひっくり返し、シュトラールは白濁を押し込めるようにしてゆっくりと挿入する。
 浅く小刻みにイイトコロを擦るようにすればリリィの中がざわざわと絡み付いて吸い付いてくる。
 荒々しくしても自分勝手に好きに動いてもリリィは悦び付いてきてくれるという安心感で日頃溜まっていた鬱憤を晴らすように貪っていく。

 リリィもシュトラールの怒りを感じてはいるが、愛する男に抱かれた歓喜、そして先日見せつけられたルーチェとの交わりを思えば半ばあてつけのようにシュトラールを求めた。

 結局その日、ルーチェが目覚めても二人が後宮から出る事は無かった。
 互いの離れていた間を埋めるように寝て起きては繋がり、貪り、互いの身体に痕を付け合った。

 翌日になって、目覚めたはずのルーチェが何も言ってこないことに憤りを感じればいくらでも性欲が湧いてきてリリィにぶつけられた。

 ――ただ、性欲は満たされても、心は乾いていく一方で。

 精が尽き果てる頃には、なぜ今自分が抱いているのはルーチェではないのだろうと思いながらシュトラールは溢れ出る精をリリィの中に放った。

 薄れゆく意識の中、リリィはシュトラールが泣いているように感じて、「バカな人だ」と思いながら目を閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

愛される日は来ないので

豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。 ──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

私があなたを好きだったころ

豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」 ※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...