異世界に飛ばされたら弱いまま不老不死にさせられて人生詰んだ件

異世界転生夢見るおじさん

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Chapter.2 ラットヴィル編

Episode.08 旅立ち

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 「すまなかった」
意識を取り戻した後、ルドルフさんにそう言われ頭を下げられてしまった。

「そんな、ルドルフさんのせいじゃないですよ」
そんな姿を見て居たたまれなくなり、俺は頭を上げて欲しいとお願いした。

わしが警戒をおこたったせいでお主を危険な目に合わせてしまった、本当に申し訳ない」
それでも頭を上げようとしないルドルフさんに俺は困ってしまった。

「はいはい、この話はもうおしまい」
そんな俺達を見かねたのか、フィオが話に割って入ってくれる。

「し、しかし」

「ロストがもういいって言ってるんだから気にするんじゃないわよ」
尚も折れずに謝ろうとするルドルフさんにフィオが釘を刺した。

「むぅ」

「あんた、いい歳して頭固いのよ」
フィオのその言葉にルドルフさんは何も言い返せず、悔しそうな表情を浮かべている。

どうやら、この二人の関係はルドルフさんの方が立場は上だと思っていたがそうでもないらしい。

俺はそんな二人を見ていたら自然と笑顔になった。

あの時、負傷してでもフィオをかばったのは間違いではなかったと思えたからだ。

 Episode.08 旅立ち

翌日、フィオから包帯を取ってもいいと言われた。

「いや、怪我したの二日前だぞ? 流石にまだ治ってないって」
そんな彼女の言い分を当然の反応で否定する。

「傷は治癒魔法で塞いだから大丈夫よ」

「え、まじか」
そういえば、魔法とか言う不思議パワーがこの世界には存在するんだった。

俺は恐る恐る巻いてある包帯を取り外し、自分の腕を確認する。

「す、すげぇ! 本当に治ってる!」
フィオが言った通り、傷一つない腕がそこにあった。

「よっしゃーっ! 完全復活!」
俺は喜びのあまり腕をその場でぐるぐると回した。

「あがっ」
直後、腕に激痛が走る。

「傷は塞いだけど痛みはそのままよ、知ってるでしょ?」

「そ、そうだった」
俺は痛みに耐えきれずに腕を抑え、その場でうずくまる。

「まぁ数日は安静にしときなさい」

「へーい」
俺は這いずる様に移動し、自分のベッドに潜り込んだ。

それから数日は何事もなく時が過ぎた。

フィオに助けた事の礼を改めて言われたり、ルドルフさんから仕事先での話を聞かせてもらったりなど特に説明する必要もないくらい平凡な日々だ。

「ロスト、少し良いか?」
一週間くらい経った頃だろうか、腕の痛みも引いてベッド生活におさらばしたタイミングでルドルフさんに声をかけられた。

「ルドルフさん、どうしたんですか?」
俺は痛みが引いた後、すぐに庭での薪割まきわり作業を再開していた。

「あんな事があったのにこれを言うのはどうかと思うのじゃが……」
ルドルフさんの話では再び仕事が入り、家を留守にする事になったのでどうするべきか俺に訪ねてきた様だ。

「お主が嫌なら今回の仕事は断るつもりじゃ」

「いやいや、俺なんかの都合でルドルフさんに迷惑はかけられませんよ」
そう返すとルドルフさんはしばらく考え込み、何かを思いついたのか表情を明るくする。

「ならば、お主も一緒に来るか?」

「へ?」
急な申し出に俺は間抜けな返事を返してしまった。

「無理にとは言わんが……」

ここに来てから三ヶ月近く経とうとしてる、良い機会なので屋敷を出て外の世界を見てみるのも良いかもしれない。

それに俺は外の世界に期待しているものがあるのだ。

「いえ、行きます! 行かせて下さい!」
ルドルフさんの言葉に俺は大急ぎで返し、行きたいと懇願こんがんした。

「そ、そうか、なら今回は一緒に行くかのう」
俺の必死さにルドルフさんは若干引き気味で返事をする。

俺が外の世界に期待するもの、それは食事だ。

別にフィオの作ってくれる料理が不味い訳ではない。

ただ山奥で生活しているので野菜が中心のスープやシチュー、歯が欠けるレベルの固いパンなど育ち盛りの俺には物足りないメニューばかりなのだ。

たまに干し肉などは出るが、そろそろ新鮮な肉や魚が食べたい。

外の世界、村などに行けばそれらが食べられるんじゃないかと思った訳である。

「フィオにも伝えておいてくれるか?」

「はいっ!」
こうして俺はルドルフさんの仕事に同行する事になったのだ。

翌日から準備を始め、仕事に向かう途中で必要な最低限の食料や寝具などをルドルフさんに渡された背負うタイプの袋へ詰めていった。

準備をしている最中、フィオにルドルフさんの仕事へ同行する事を伝えると……

「めんどくさ」
嫌そうな顔をされてしまった。

そして、仕事先の村へ旅立つ日――

三人で屋敷の外へ出るとルドルフさんが杖をかかげ、屋敷に何やら魔法を唱えている。

「何やってるんですか?」

「結界じゃよ、これで瘴魔しょうまは屋敷に入る事が出来ん」
結界、その言葉を聞いて瘴魔襲撃の時の事を思い出してしまった。

「あれ、この前の時は普通に侵入されてましたよ?」

「…………」
俺のその指摘にルドルフさんはばつの悪そうな表情を浮かべ黙ってしまう。

「もうお爺ちゃんだから結界を張るの忘れたのよ」
フィオの言葉で侵入された理由が分かり、迂闊うかつな発言だったと後悔する。

「……すまない」
案の定、ルドルフさんは再び平謝りの状態になってしまった。

「ほら、張り終わったんならさっさと行くわよ?」
それを察したのか、フィオはそそくさと移動してルドルフさんに出発をうながす。

「本当にすまない」

「さ、さぁ、ルドルフさん行きましょう」
俺はフィオに便乗びんじょうして謝り続けるルドルフさんの背を押し、移動を始めた。

それから俺はルドルフさんの仕事に付いて来たのを後悔する事になる。

原因は移動する距離だ。

冷静に考えれば気付けた話だが、森の奥から離れた村に辿り着くのは相当な距離を歩く必要がある。

しかも、現実世界の様に整地された道を歩く訳ではないので険しい山を上ったり下ったり、凸凹でこぼこした道を何度も歩く事になった。

「……もう帰りたい」
そんな移動を何度も繰り返していたので俺の足は既に悲鳴をあげている。

「ふぅ、今日はこの辺で休むとするかのう」
休ませて欲しい、そう申し出ようとした所でタイミング良くルドルフさんが休む事を提案してくれた。

「そ、そうですね、もう空も暗くなってますし」
周囲を見渡すと薄暗くなっており、そろそろ野営する場所を決めないとまずい時刻になっていた。

「あっちに開けた場所があったからそこで休みましょう」
辺りの様子を見て帰って来たフィオが野営に適した場所を発見し、三人でそこへ移動する。

野営と言ってもテントの様な大掛かりなものは持ち運べなかったので焚火を焚き、その周りに持ってきた二枚の麻布をそれぞれ敷き布団と掛け布団の代わりに設置するだけである。

勿論、枕みたいな上等なものはないので背負っている袋を代わりに使うしかなさそうだ。

「ロスト、慣れない旅で疲れたであろう?」

「……はい、来たのを後悔するくらいには」
俺はルドルフさんの問いに格好つけても仕方ないと思い、素直に今の自分の心境を口にする。

「だらしないわね」

「ほっほっほ、なら今晩は頑張ったご褒美に奮発するかのう」
ルドルフさんは俺の言葉を聞き、笑いながら袋から干し肉を取り出した。

どうやら、今日は新鮮でないとは言え肉が食べられるらしい。

それからルドルフさんとフィオが二人で作ってくれた干し肉入りの豪勢なシチューを頂き、明日もあるからと早めに就寝する事になった。

「ね、眠れん」
しかし、疲れているから速攻で寝れると思っていたのに外で寝る事に慣れていないせいか中々寝付けない。

たまらず麻布を取り払い、焚火の近くに腰かけようと起き上がるとルドルフさんがまだ寝ずに座っている事に気付いた。

「何だ、眠れんのか?」

「はい」
そう返事を返しながら俺はルドルフさんの横に座った。

「……少し昔話でもするかのう」
少しの間、沈黙が続いたが唐突にルドルフさんが話を始めた。

俺は何を言うでもなく彼の話に耳をかたむける。

「儂には若い頃から共に旅をしていた仲間がおってな? 世界を旅して回っておったんじゃ」
そういえば、ルドルフさんが俺に昔の話をするのは初めてかもしれない。

「あの頃は楽しかった、色々嫌な思いもしたが仲間と一緒ならどんな苦難も乗り越えられた」
そう話すルドルフさんは嬉しそうに笑う。

「アイザックは酒癖は悪いが正義感の熱い男で、レナードは女にはだらしないが素敵な演奏家じゃった。カミラは治癒魔法の使い手で美しい女性であったのう」
ルドルフさんは昔を懐かしむ様に三人の仲間の名前を口にする。

俺にはその人達がどういう人物なのか分からない。

「へぇ」
でも、嬉しそうに彼らの話をするルドルフさんを見て素晴らしい人達なんだなと察する事が出来た。

「その人達は今はどうしてるんですか?」
そんな素敵な人達なら一度会って話がしてみたい、そんな気持ちから深く考えもせずに尋ねてしまった。

「それは……」
でも、それは配慮に欠けた発言だったと言い淀むルドルフさんを見て気付いた。

ルドルフさんに年齢を尋ねた事はないが、見た目から大分高齢なのは分かる。

そんな彼と同じ時を過ごしていた人達なら、既に亡くなっていてもおかしくはない。

「ごめんなさい、失言でした」
間違いに気付いた俺は頭を下げ、謝罪する。

「いや、気にせんで良い」
ルドルフさんはそう言ってくれたが、楽しそうに笑っていた姿は既になかった。

「今日はもう遅い、そろそろ寝た方が良いじゃろう」

「……はい」
寝る様に促され、重い空気にさせてしまった罪悪感から素直に従う。

地面に置かれた麻布に包まり、目をつむる。

明日もう一度ルドルフさんに謝ろう、そう心に決めて俺は眠りについた。
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