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Chapter.4 力の覚醒編
Episode.33 実力の差
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ソムニア歴1000年 再生の月(冬)
騎士団長さんに凄腕の剣士を紹介され、俺達は目的の人物がいると伝えられた酒場にやって来ていた。
「果たして話を聞いてもらえるだろうか」
先頭を立つクリフさんが酒場を前にして、急に弱気な発言をしはじめる。
「とりあえず、話すだけ話してみましょう」
俺達はそんなクリフさんを励まし、店の中へと進む。
すると、店に入った途端――
「ぐあぁ」
柄の悪い男が殴り合いでもしたのか、吹き飛んで目の前の床に転がる。
「全く、相手の力量も計れないで喧嘩を売るんじゃないよ」
その男を吹き飛ばしたと思われる綺麗な青髪の女性は、カウンターで酒を飲み続けながらつまらなそうに呟いた。
「くそっ、覚えてろ」
吹き飛ばされた男は最高にダサい捨て台詞を吐き、酒場から去って行った。
「「「…………」」」
俺達三人はその光景に驚き、暫し無言となる。
トールの店に慣れていたせいか、本来酒場とはこういったトラブルが起こる場所という認識を忘れてしまっていた。
「さ、さぁ、オデットさんという方を探そうか?」
気を取り直したクリフさんが先頭を歩き、それに続く形で俺達もオデットさんを探す。
「マスター、少しいいかな?」
闇雲に探しても埒が明かないと感じたのか、クリフさんが酒場の主人に声をかけた。
「なんだい?」
「すまない、此方に剣術大会優勝者のオデットという方がいると聞いたのですが……」
クリフさんが酒場の主人と話している最中、先程男を吹き飛ばした怖い女性が此方を見てくるので愛想笑いをしてやり過ごした。
触らぬ神に祟りなし、である。
「あぁ、それなら……」
そう言って酒場の主人が指し示した先には、例の怖い女性が座っていた。
どうやら、彼女がオデット、さん……らしい。
Episode.33 実力の差
「で、あたしに何か用かい?」
酒場の主人との会話を聞いていたオデットさんが此方に気を利かせて声をかけてくれる。
さっきの出来事で怖い印象があったが、案外良い人なのかもしれない。
「すみません、実は……」
そんな彼女にクリフさんが例の猪の瘴魔について説明する。
その結果、オデットさんの答えは……
「悪いけど、それは断らせてもらうよ」
拒否であった。
「ただし……」
何故ですかとクリフさんが尋ねようとするが、それを阻む様にオデットさんが続けて語る。
「町の連中に戦い方を教える……というのは、やってもかまわない」
要は戦い方は教えるから自分達でなんとかしろって事らしい。
「倒してはくれないんですか?」
横で聞いていたロナが黙っていられず、二人の会話に割って入る。
「そうだね、それじゃ解決にならないからね」
「?」
解決にならないって、問題の猪の瘴魔を倒すのだから解決になるんじゃないだろうか?
俺は心の中でオデットさんの答えにそう疑問を呈したが、吹き飛ばされるのは怖いので口にしないでおいた。
その後、俺達とオデットさんで話し合いをして町へ戦い方を教えに来てもらう事が決まった。
結局、戦うのは俺達になってしまったので前回と同じ様にならないか心配ではある。
でも、王都の剣術大会で優勝した人が戦い方を教えてくれるので大丈夫だと思いたい。
それから治癒師に治療してもらい、怪我が治ったエリック達と合流するとオデットさんを連れてウィンミルトンへ帰還した。
そして、オデットさんを迎えた翌日の朝――
「全員揃ったかい?」
早朝からオデットさんに招集された俺達は、眠いのを我慢しながら集合場所に集まる。
「では、稽古を始めようか?」
「すみませーん、一ついいですか?」
稽古を開始しようとしたオデットさんをトールが止め、何か言いたそうに手を挙げた。
「なんだい?」
「俺とエリックは怪我を治癒師に治療してもらったばかりで体調が万全じゃないんですけど……」
そういえば、すっかり忘れていたが二人は怪我をしていて昨日治療してもらったばかりだった。
「それで?」
「いや、その、暫く稽古をお休みとか……」
トールの言い分は最もだ、この世界の治癒魔法は怪我は治せても痛みはそのままなので辛いのだ。
だから、暫く体を休めて痛みが引いたら――
「頑張れ」
「え?」
え?
「稽古を続けていたら痛みなんて忘れる、だから頑張れ」
まさかの根性論、スパルタ指導がすぎる。
「む、むちゃくちゃだー」
トール、ご愁傷様。
……
…………
………………
……………………
「まず戦い方を教える前にあんた達がどれだけの腕前か見せてもらうよ」
その言葉と共にオデットさんが順々に俺達の力量を見て回る事になった。
「エリック! あんたは剣を振るのが大振りすぎる! 振り幅を減らせ!」
「は、はいっ!」
エリックから始まり……
「トール! 無駄な動きが多い! 戦う時は動きを最小限にっ!」
「へ、へーい」
トールに……
「ロナ! あんたは動きは良いから他の奴と連携した時の立ち回りをもっと鍛えなっ!」
「わ、分かりました!」
ロナと続き……
「ロスト! あんたは……」
最後に俺のはずだったが……
「…………」
オデットさんは、俺の剣の素振りを見て黙り込んでしまった。
「あ、あの?」
不安になった俺は、思わずオデットさんに声をかける。
しかし、返ってきた答えは……
「あんたは剣を捨てな」
戦力外、そう言われているのに等しいものだった。
騎士団長さんに凄腕の剣士を紹介され、俺達は目的の人物がいると伝えられた酒場にやって来ていた。
「果たして話を聞いてもらえるだろうか」
先頭を立つクリフさんが酒場を前にして、急に弱気な発言をしはじめる。
「とりあえず、話すだけ話してみましょう」
俺達はそんなクリフさんを励まし、店の中へと進む。
すると、店に入った途端――
「ぐあぁ」
柄の悪い男が殴り合いでもしたのか、吹き飛んで目の前の床に転がる。
「全く、相手の力量も計れないで喧嘩を売るんじゃないよ」
その男を吹き飛ばしたと思われる綺麗な青髪の女性は、カウンターで酒を飲み続けながらつまらなそうに呟いた。
「くそっ、覚えてろ」
吹き飛ばされた男は最高にダサい捨て台詞を吐き、酒場から去って行った。
「「「…………」」」
俺達三人はその光景に驚き、暫し無言となる。
トールの店に慣れていたせいか、本来酒場とはこういったトラブルが起こる場所という認識を忘れてしまっていた。
「さ、さぁ、オデットさんという方を探そうか?」
気を取り直したクリフさんが先頭を歩き、それに続く形で俺達もオデットさんを探す。
「マスター、少しいいかな?」
闇雲に探しても埒が明かないと感じたのか、クリフさんが酒場の主人に声をかけた。
「なんだい?」
「すまない、此方に剣術大会優勝者のオデットという方がいると聞いたのですが……」
クリフさんが酒場の主人と話している最中、先程男を吹き飛ばした怖い女性が此方を見てくるので愛想笑いをしてやり過ごした。
触らぬ神に祟りなし、である。
「あぁ、それなら……」
そう言って酒場の主人が指し示した先には、例の怖い女性が座っていた。
どうやら、彼女がオデット、さん……らしい。
Episode.33 実力の差
「で、あたしに何か用かい?」
酒場の主人との会話を聞いていたオデットさんが此方に気を利かせて声をかけてくれる。
さっきの出来事で怖い印象があったが、案外良い人なのかもしれない。
「すみません、実は……」
そんな彼女にクリフさんが例の猪の瘴魔について説明する。
その結果、オデットさんの答えは……
「悪いけど、それは断らせてもらうよ」
拒否であった。
「ただし……」
何故ですかとクリフさんが尋ねようとするが、それを阻む様にオデットさんが続けて語る。
「町の連中に戦い方を教える……というのは、やってもかまわない」
要は戦い方は教えるから自分達でなんとかしろって事らしい。
「倒してはくれないんですか?」
横で聞いていたロナが黙っていられず、二人の会話に割って入る。
「そうだね、それじゃ解決にならないからね」
「?」
解決にならないって、問題の猪の瘴魔を倒すのだから解決になるんじゃないだろうか?
俺は心の中でオデットさんの答えにそう疑問を呈したが、吹き飛ばされるのは怖いので口にしないでおいた。
その後、俺達とオデットさんで話し合いをして町へ戦い方を教えに来てもらう事が決まった。
結局、戦うのは俺達になってしまったので前回と同じ様にならないか心配ではある。
でも、王都の剣術大会で優勝した人が戦い方を教えてくれるので大丈夫だと思いたい。
それから治癒師に治療してもらい、怪我が治ったエリック達と合流するとオデットさんを連れてウィンミルトンへ帰還した。
そして、オデットさんを迎えた翌日の朝――
「全員揃ったかい?」
早朝からオデットさんに招集された俺達は、眠いのを我慢しながら集合場所に集まる。
「では、稽古を始めようか?」
「すみませーん、一ついいですか?」
稽古を開始しようとしたオデットさんをトールが止め、何か言いたそうに手を挙げた。
「なんだい?」
「俺とエリックは怪我を治癒師に治療してもらったばかりで体調が万全じゃないんですけど……」
そういえば、すっかり忘れていたが二人は怪我をしていて昨日治療してもらったばかりだった。
「それで?」
「いや、その、暫く稽古をお休みとか……」
トールの言い分は最もだ、この世界の治癒魔法は怪我は治せても痛みはそのままなので辛いのだ。
だから、暫く体を休めて痛みが引いたら――
「頑張れ」
「え?」
え?
「稽古を続けていたら痛みなんて忘れる、だから頑張れ」
まさかの根性論、スパルタ指導がすぎる。
「む、むちゃくちゃだー」
トール、ご愁傷様。
……
…………
………………
……………………
「まず戦い方を教える前にあんた達がどれだけの腕前か見せてもらうよ」
その言葉と共にオデットさんが順々に俺達の力量を見て回る事になった。
「エリック! あんたは剣を振るのが大振りすぎる! 振り幅を減らせ!」
「は、はいっ!」
エリックから始まり……
「トール! 無駄な動きが多い! 戦う時は動きを最小限にっ!」
「へ、へーい」
トールに……
「ロナ! あんたは動きは良いから他の奴と連携した時の立ち回りをもっと鍛えなっ!」
「わ、分かりました!」
ロナと続き……
「ロスト! あんたは……」
最後に俺のはずだったが……
「…………」
オデットさんは、俺の剣の素振りを見て黙り込んでしまった。
「あ、あの?」
不安になった俺は、思わずオデットさんに声をかける。
しかし、返ってきた答えは……
「あんたは剣を捨てな」
戦力外、そう言われているのに等しいものだった。
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