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第1章 出会い
4話 俺は魔女じゃありません!
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流石に放っておけず、俺はなんとか彼を工房に運び、彼を応接間のソファの上に寝かせた。
寝顔を覗きむと、自然と言葉が溢れてきてしまった。
「ほんと、芸術品みたい……」
俺を捉えたあの蒼色の瞳は隠れているのにも関わらず、それでも尚美しさは健在だ。
透き通った白い肌に、色素の薄い長いまつ毛。
シュッとした輪郭に、高い鼻。
ここまで美しい人間になんて会ったことがない。
でも触れたら壊れてしまいそうなほど、どこか危険ぽさも孕んでいて。
初めてガラスと出会った時と同じようなそんな胸を掴まれるような感覚だ。
俺は気になって、彼の額に手を伸ばしてみたその時。
「っ、うぅ……」
酷く魘されているような声を聞いて、一旦手を引っこめた。
今度は興味本位ではなく、どうにかそれを落ち着かせる為に、恐る恐るふわふわな髪に触れてみる。
すると、無意識ながら強請るように子どものように俺の指先に肌を擦り寄せてきた。
何故か俺に不信感を抱いているようだったが、こんな無防備な姿を見ると、少し可愛く見えてくる。
しかし、額から汗が吹きでているし、息は苦しそうだ。
こんなきっちりとした服を着ているのだ。
着ている服のボタンだけ開けて、呼吸をしやすくしておこうと、彼の服に手をかけた瞬間。
「これが魔女のやり口か」
「……え」
伸ばした手がすごい力で掴まれていた。
彼の青空を映したような鋭い目が俺を逃さない。
「寝込みを襲い、陵辱の限りを尽くしてから身を屠り、材料とするのだろう」
「襲う気なんてさらさらないって……の……」
訳も分からない言いがかりに、咄嗟に反論しようとしたが、一旦冷静になって、自分の状況を整理してみる。
毛先から水が滴るほど濡れた髪に、適当に着替えたから、作務衣の結び目が緩んでしまって、胸元が見えてしまっている淫らな体裁。
それで彼の服を脱がせようとしている俺……。
めちゃくちゃ襲っているように見えるじゃないか!
自分がしでかしてしまっていることに気付いて、俺は慌てて彼と距離を取る。
「ご、ごめん!そういう意図は全くなくて!ただ、アンタが苦しそうだったから心配で」
「……口ではなんとでも言える。殺すなら早く殺せ」
俺の言葉には耳も貸さず、彼はずっと俺を訝しむような目で見て、最後にはそう吐き捨てた。
誤解はあったにしろ、全て善意からだったのに、そんな言われようをされるものだから、俺の中で何かが切れた。
「だから殺さねぇって!なんなの?助けてもらっておいて魔女とか、他人を殺人鬼扱いしてさ!まず、俺は男だし魔女じゃねぇ!」
「魔女の言葉なんて信じない」
この男、すげぇ頑固。
俺がどれだけ違うって言われても自分を疑わない。
「あっそ。じゃあ、言葉じゃなければいいの?」
「は?」
なんかもうムカッときて、動揺する男の手を引っ張って、自分の胸に当てた。
「ない……」
俺の胸に触れた彼は、目を見開いてポツリと呟いた。想像していた膨らみがなかったから吃驚しているのだろう。
いや、まず!生まれてこの方、女に間違われたことはないけど!なんで間違えられたの?!
そんなことを考えていると、その隙をついて彼は俺の下半身の大事な所をぎゅっと掴んできた。
「ある……」
「っ何してんだよ!」
真面目な声のトーンで目を丸くしながら、俺の下半身に確かにあるモノを確認してきた。予期していなかった突飛な行動に、声帯がブチ切れそうな程の大声を出してしまう。
しかし、当人は神妙な面持ちで顎に手を当ててブツブツと独り言を言っている。
「魔女の森に住める人間なんて聞いたことがない。これは魔女が姿を変えてしているのやも……」
もう何を言っても通じない。
この問答に面倒くさくなってきて……というか、早く飯食ってガラスと向き合いたくなってきて、俺は適当に会話を終わらせようとした。
「埒が明かねぇ。そんなに俺に助けられるのが嫌だったら出てって。俺もやりたいことに集中したいから」
俺は頭を搔きながらそう吐き捨てると、彼に背を向けて部屋を出ようとした。
「本当に……魔女じゃないのか?」
「違うってずっと言ってるだろ」
額に血管を浮き立たせながら、そう返事をする。
もうこれが最後だ。とっとと外に出よう。
男は俺の言葉から滲みでる怒気に戦いたのか、一歩後ずさった。それを見た俺は彼に背を向けて、応接間から出ようとドアノブに手をかけた。
その時、後ろで、何か意を決したような短い息が吐かれる音を聞いてふと立ち止まる。
「……クソ、もう、どうにでもなれ」
「は」
彼は、少し考えた素振りを見せたあと、投げやりにその言葉を言うと、勢いよく、俺の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。
そして、大きな手で俺の後頭部を掴んで無理やり唇を重ねてくる。
「……は、ふっ」
自分のものでない何かが口の中に入ってきて、なんか変な感じだ。抵抗しようにも、コイツの身体が思った以上にがっしりしていて、つき返せない。
口付けは愛情、親愛を示す行為というが……なんにも感じられない。何かを確かめるだけの行為だ。
なんだこのヤケクソ感は!
ずっとガラスと向き合ってきたこの人生。
ファーストキスは情緒もへったくれもない、粗雑なものだった。
やっと唇が離れて、俺は思わず殴りかかろうと思ったが、あまりにも顔が綺麗すぎたからそれはやめておいた。
ガラスみたいな美しいモノを殴ろうなんて思わない。それと同じ気持ちだ。
「な、なななにしてんの!?」
全ての怒りを目の前の男の顔の造形美で鎮めて、俺は咄嗟に状況を理解することにつとめる。
ヤツの蒼い瞳は揺れていた。
「僅かな魔力の動きすら感じない。お前、本当に人間なのか」
その時、彼がやっと俺自身を見てくれたような気がして、少し小っ恥ずかしくなる。
さっきのキスよりも、今、この蒼い瞳を向けられている方がなんかドキドキとしてしまう。
「信じてくれたんなら、まあ……超、癪だけどよかった」
「……その、なんだ。疑って、すまなかった。助けてくれたこと、感謝する」
男は面食らったような表情をしたあと、ほんの少し、ほっっっんの少しだけ頭を下げてきた。
頑固だった彼の塩らしい部分を目の当たりにして、俺もやっと頭が冷えてくる。
冷静に考えてみるとここは異世界で。
異世界には異世界の文化や考えがあって。
俺はそれを加味できていなかった。
「俺も、初対面なのにキツい言い方して、ごめんなさい。この世界の事情にあんまり詳しくないというか……」
「この世界の事情?お前は一体、何者なんだ?」
「俺は……」
異世界から来たことを話そうと口を開けると、ぐぅ、とでっかい両者腹の虫が共鳴する。
「……とりあえず、飯にするか」
俺は頬を掻きながらそう提案した。
寝顔を覗きむと、自然と言葉が溢れてきてしまった。
「ほんと、芸術品みたい……」
俺を捉えたあの蒼色の瞳は隠れているのにも関わらず、それでも尚美しさは健在だ。
透き通った白い肌に、色素の薄い長いまつ毛。
シュッとした輪郭に、高い鼻。
ここまで美しい人間になんて会ったことがない。
でも触れたら壊れてしまいそうなほど、どこか危険ぽさも孕んでいて。
初めてガラスと出会った時と同じようなそんな胸を掴まれるような感覚だ。
俺は気になって、彼の額に手を伸ばしてみたその時。
「っ、うぅ……」
酷く魘されているような声を聞いて、一旦手を引っこめた。
今度は興味本位ではなく、どうにかそれを落ち着かせる為に、恐る恐るふわふわな髪に触れてみる。
すると、無意識ながら強請るように子どものように俺の指先に肌を擦り寄せてきた。
何故か俺に不信感を抱いているようだったが、こんな無防備な姿を見ると、少し可愛く見えてくる。
しかし、額から汗が吹きでているし、息は苦しそうだ。
こんなきっちりとした服を着ているのだ。
着ている服のボタンだけ開けて、呼吸をしやすくしておこうと、彼の服に手をかけた瞬間。
「これが魔女のやり口か」
「……え」
伸ばした手がすごい力で掴まれていた。
彼の青空を映したような鋭い目が俺を逃さない。
「寝込みを襲い、陵辱の限りを尽くしてから身を屠り、材料とするのだろう」
「襲う気なんてさらさらないって……の……」
訳も分からない言いがかりに、咄嗟に反論しようとしたが、一旦冷静になって、自分の状況を整理してみる。
毛先から水が滴るほど濡れた髪に、適当に着替えたから、作務衣の結び目が緩んでしまって、胸元が見えてしまっている淫らな体裁。
それで彼の服を脱がせようとしている俺……。
めちゃくちゃ襲っているように見えるじゃないか!
自分がしでかしてしまっていることに気付いて、俺は慌てて彼と距離を取る。
「ご、ごめん!そういう意図は全くなくて!ただ、アンタが苦しそうだったから心配で」
「……口ではなんとでも言える。殺すなら早く殺せ」
俺の言葉には耳も貸さず、彼はずっと俺を訝しむような目で見て、最後にはそう吐き捨てた。
誤解はあったにしろ、全て善意からだったのに、そんな言われようをされるものだから、俺の中で何かが切れた。
「だから殺さねぇって!なんなの?助けてもらっておいて魔女とか、他人を殺人鬼扱いしてさ!まず、俺は男だし魔女じゃねぇ!」
「魔女の言葉なんて信じない」
この男、すげぇ頑固。
俺がどれだけ違うって言われても自分を疑わない。
「あっそ。じゃあ、言葉じゃなければいいの?」
「は?」
なんかもうムカッときて、動揺する男の手を引っ張って、自分の胸に当てた。
「ない……」
俺の胸に触れた彼は、目を見開いてポツリと呟いた。想像していた膨らみがなかったから吃驚しているのだろう。
いや、まず!生まれてこの方、女に間違われたことはないけど!なんで間違えられたの?!
そんなことを考えていると、その隙をついて彼は俺の下半身の大事な所をぎゅっと掴んできた。
「ある……」
「っ何してんだよ!」
真面目な声のトーンで目を丸くしながら、俺の下半身に確かにあるモノを確認してきた。予期していなかった突飛な行動に、声帯がブチ切れそうな程の大声を出してしまう。
しかし、当人は神妙な面持ちで顎に手を当ててブツブツと独り言を言っている。
「魔女の森に住める人間なんて聞いたことがない。これは魔女が姿を変えてしているのやも……」
もう何を言っても通じない。
この問答に面倒くさくなってきて……というか、早く飯食ってガラスと向き合いたくなってきて、俺は適当に会話を終わらせようとした。
「埒が明かねぇ。そんなに俺に助けられるのが嫌だったら出てって。俺もやりたいことに集中したいから」
俺は頭を搔きながらそう吐き捨てると、彼に背を向けて部屋を出ようとした。
「本当に……魔女じゃないのか?」
「違うってずっと言ってるだろ」
額に血管を浮き立たせながら、そう返事をする。
もうこれが最後だ。とっとと外に出よう。
男は俺の言葉から滲みでる怒気に戦いたのか、一歩後ずさった。それを見た俺は彼に背を向けて、応接間から出ようとドアノブに手をかけた。
その時、後ろで、何か意を決したような短い息が吐かれる音を聞いてふと立ち止まる。
「……クソ、もう、どうにでもなれ」
「は」
彼は、少し考えた素振りを見せたあと、投げやりにその言葉を言うと、勢いよく、俺の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。
そして、大きな手で俺の後頭部を掴んで無理やり唇を重ねてくる。
「……は、ふっ」
自分のものでない何かが口の中に入ってきて、なんか変な感じだ。抵抗しようにも、コイツの身体が思った以上にがっしりしていて、つき返せない。
口付けは愛情、親愛を示す行為というが……なんにも感じられない。何かを確かめるだけの行為だ。
なんだこのヤケクソ感は!
ずっとガラスと向き合ってきたこの人生。
ファーストキスは情緒もへったくれもない、粗雑なものだった。
やっと唇が離れて、俺は思わず殴りかかろうと思ったが、あまりにも顔が綺麗すぎたからそれはやめておいた。
ガラスみたいな美しいモノを殴ろうなんて思わない。それと同じ気持ちだ。
「な、なななにしてんの!?」
全ての怒りを目の前の男の顔の造形美で鎮めて、俺は咄嗟に状況を理解することにつとめる。
ヤツの蒼い瞳は揺れていた。
「僅かな魔力の動きすら感じない。お前、本当に人間なのか」
その時、彼がやっと俺自身を見てくれたような気がして、少し小っ恥ずかしくなる。
さっきのキスよりも、今、この蒼い瞳を向けられている方がなんかドキドキとしてしまう。
「信じてくれたんなら、まあ……超、癪だけどよかった」
「……その、なんだ。疑って、すまなかった。助けてくれたこと、感謝する」
男は面食らったような表情をしたあと、ほんの少し、ほっっっんの少しだけ頭を下げてきた。
頑固だった彼の塩らしい部分を目の当たりにして、俺もやっと頭が冷えてくる。
冷静に考えてみるとここは異世界で。
異世界には異世界の文化や考えがあって。
俺はそれを加味できていなかった。
「俺も、初対面なのにキツい言い方して、ごめんなさい。この世界の事情にあんまり詳しくないというか……」
「この世界の事情?お前は一体、何者なんだ?」
「俺は……」
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